音楽友に、今日も安眠

某大学教員の日記

NNNドキュメント「ネットカフェ難民−漂流する貧困者たち」を観た

http://www.ntv.co.jp/document/index2.html(番組案内)
http://www.be.asahi.com/20061223/W13/20061214TBEH0018A.html(「ネットカフェ難民」についての関連記事)


こういう番組こそ、深夜帯でなくゴールデンタイムに放送されるべきだと思う。再放送もいちおう2月3日(土)の深夜24時30分から放送されるが、こちらはCS限定で、地上波では放送されないらしい。


番組を見ててすぐに気がつくことは、住まいがなくネットカフェで寝泊りする10代、20代の男女が、決して失業者という部類には入らないことだ。彼らは携帯電話で日払いの仕事を請負う、日雇い労働者である。しかし300円のコンビニ弁当を2食に分けて食べるその生活が貧困では無いのとしたら、一体何なのだろうか。ここに、経済成長と景気回復を優先させれば貧困問題も解消されるとする言説の欺瞞が、はっきりと描かれている。


ネットカフェ難民」という現象には、実はそこまで目新しさはない。彼らの生活は、日雇い仕事にありつければその夜はカプセルホテルに泊まって、次の日からはまた路上で寝泊りするホームレスの人々のそれと、実質的に変わりはない。「ネットカフェ難民」の彼らは、若い分だけ日雇い仕事を得るチャンスがより多いから、さらに今が比較的好景気だから、路上生活を免れているにすぎない。確かに路上生活かネットカフェかと聞かれれば、選択の余地なくネットカフェの方がましだろう。しかしそのような選択肢に、いったいどんな意味があるというのだろうか。


番組制作者の水島宏明さんが以前に書いた主著『母さんが死んだ』は、学部時代に読んで社会科学の勉強を続けようと思うきっかけになった1冊だ。今回の番組も、自分がいったい何のために勉強しているのかを、再び問いかけてくれるものだった。

母さんが死んだ―しあわせ幻想の時代に ルポルタージュ「繁栄」ニッポンの福祉を問う

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