1734. ループ世界や並列世界を物語る最適の媒体とは?

随分前に購入して、そのまま積んでいた『TIME HOLLOW -奪われた過去を求めて-』をちょくちょくプレイ中です。この作品がいかに中二病かっちゅーエントリは、ひとまず次の機会に譲るとしましょう。


ゲーム媒体と「繰り返し世界」の相性

タイムリープ」「ループ世界」「並列世界」モノの作品系に、オレはめっぽう弱いです。マンガや小説でもその手のSFモノは好んで読みますが、こと時間を扱う作品はゲームとの相性が抜群なんですよ。

それ系のタイトルを書き並べるとキリがないけど、ミーハーなキーワードを挙げると『EVEシリーズ』『アーベル』『街シリーズ』『田中ロミオ』『Key』『KID』などでしょうか。チョイスが一昔前だとかイジメないでください。

マンガや小説や連続ドラマ・アニメなど、一過性のドラマしか表現できない媒体が多い中、ゲームだけは異質の媒体なんですよね。これは、「ゲーム文化」「制作サイド」「プレイヤー」の三点で利害が一致しているからだと思います。

  • ゲーム文化=繰り返し遊べるゲームは良作とされる
  • 製作サイド=素材が使い回せるので、低予算で複数シナリオを表現しやすい
  • プレイヤー=金銭の消費に見合うだけの暇つぶしを提供される

元々こうした土壌があり、そこに「繰り返し世界」の種を植えたら、ものの見事に成長(マッチング)したという感覚です。


繰り返し世界の表現に長けたメディア

例えば、ギャルゲーなどに代表される『ノベルゲーム』は、「同じシーンを何度も遊ぶのはダルい」という最大の弱点がありました。「繰り返し世界」の表現に長けたゲームはこの弱点を逆手にとり、「同じ時間軸を繰り返し体験させる」演出手法として利用します。

もちろん、「同じ文章と絵と音楽と操作」の繰り返しプレイを強いる状況に変化はありません。それを演出と捉えるか、無駄と捉えるかは、プレイヤーの受け止め方次第。そこで製作サイドも手を変え品を変え、演出に見せかける創意工夫を施します。

それはシナリオ面、システム面、ゲーム性など、作品ごとに多様なアプローチが見られます。そうしたプレイヤーを飽きさせないアイデアを、他の作品と比較して透かし見るのも、繰り返し世界ゲーを楽しむ一つの醍醐味です。


カタルシスの貯蓄と開放

『「繰り返し世界ゲー』には定番の型があります。簡単に表現するとこんな感じ。

  1. 『絶対不可避の不幸』が到来する(している、していた)
  2. 複数のシナリオを個別に攻略する
  3. 積み重ねた経験値・集めた解決材料で『絶対不可避の不幸』を解決する
  4. 真シナリオへ到達する

(1)と(2)の順番は前後することも多いですが、製作サイドのコンセプトを考えれば、この順序で語ってよいと思います。(1)〜(4)は起承転結の構成として読み替え可能です。

  • 起 ... 耐え難い不幸があり、
  • 承 ... その因果を変えたいと足掻き、
  • 転 ... ついに不幸を解決して、
  • 結 ... 変化した世界を歩みだす。

つまり『繰り返し世界ゲー』は、「複数の個別シナリオ」という小さな物語を内包しながらも、ゲーム全体として大きな物語構成(起承転結)を秘めているのです。従って、ゲームをクリアしたときの爽快感、やり遂げた感、大作を読破した感といった余韻は壮絶の一言です。


『繰り返し世界ゲー』の課題

残念ながら、『繰り返し世界ゲー』には課題もあります。それは、「(2)複数のシナリオを個別に攻略する」の時点で飽きられること。元来この手のゲームは、個別攻略シナリオ=特定キャラのシナリオというギャグゲーライクなゲーム性を持たせがちです。

そのため、物語よりもキャラクタへの愛情へ傾倒するプレイヤーは、自分の好きなキャラを攻略したら、それで満足しちゃうんでしょうね。あるいは、特定キャラ以外にはさっぱり興味が沸かず、やる気が殺がれることも。

魅力的過ぎるキャラクタを生み出してしまうのも罪作り?


作品の表現には適した媒体がある

『繰り返し世界』のゲーム表現は、他のメディア媒体には到底、真似のできない芸当です。このように、ゲームにはゲームの、ネトラジにはネトラジの、ブログにはブログの、そして同人誌には同人誌ならではのその媒体が持ちうる表現上の特質があるということでしょう。

いや、なんか以前の話題をチクチク蒸し返すような締め括りになってしまい、自分としてもすごく心苦しいのですが…。まったく、そんなつもりじゃなかったんですけれど……。ゲームの特性を最大限に生かした『繰り返し世界ゲー』。今後もたくさんプレイしていきたいます。


ここまで『TIME HOLLOW -奪われた過去を求めて-』ネタの前フリです!!