1761. 週刊少年ジャンプ48号 - バクマン。 11ページ『後悔と納得』

今週号の「バクマン。」について、大きくネタバレを含んだ感想記事です。最新号の週刊少年ジャンプを未読の方は、閲覧を控えて下さい。

今話の要点
ネタバレ注意してんのにあらすじ書く必要あるの? に関する回答はこんなんでどうでしょー。

  • 岩瀬→秋人:「私を選ばなかったこと、一生後悔するんだからねっ」(涙)
  • 香耶→秋人:ビンタ@1+グーパンチ@3で許してもらう。もう少しで膝枕!
  • 香耶の第一志望も谷草北高校と判明する。
  • 最高と秋人が選考評の反省会で集英社へ訪問。4階編集部へ。
  • 編集長はおじさん(川口たろう)の元担当だった。
  • 選考評ベースに手塚賞の反省と今後の検討。
  • 高校生でも連載できると再確認した。
  • 連載する一番の近道を問い正す最高。その時編集長が動いた!
  • 「面白いものは連載される 当たり前だ」


ポイント考察 - 赤塚賞手塚賞
今週号に掲載された赤塚賞佳作『ダストシューターズ!!』を読んだジャンプ読者、全員ガックリきたでしょうね。

いやいや、五十嵐正邦先生の作品を、本作と対比して悪く言いたくないんですよ…。無論、赤塚賞手塚賞は敷居も文化も求められているモノも違うから、同一視しちゃダメなんです。でもなあ、正直なところバクマン。の読者は比べちゃうよコレ。「このレベルで佳作が取れちゃうのか……」って思う。「最高と秋人のマンガって、実は相当なクソマンガだったんじゃ…」とか考えるよ。

なんてこったい。


ポイント考察 - モテメン秋人
秋人の三角関係だけでも、並の少女マンガなら4〜5巻は費やしてクリスマスに入るだろうに。大場マンガは人間ドラマに淡々としていて、展開が早い。ドラマのト書きを読んでるみたいですよ。例によって隙間時間は同人作家が埋めてくださいます。

論理的には「秋人×香耶」で丸く収まると予想できつつも、感情的には「秋人×岩瀬」の方がよっぽど面白そうだなあと、邪な気持ちがムラムラくる展開でした。先週の感想で記した「岩瀬さん予想」は…

  1. イメージ通りの「鉄の優等生」で、敵視していた秋人を今は心配してる。(クーデレ説)
  2. お勉強でしか自己主張の術を知らない不器用な性格だった。(高倉健説)
  3. いつも休み時間に読んでた小説、実はBL本とラノベでした!(隠れ腐女子説)
  4. 次週も一切喋らない。(ミステリアスカノジョ説)
  5. 「アイツへの気持ちは敵意だけだと思っていたのに 何? この切ない気持ち…」(初恋限定。説)
  6. 予想以上におっぱいが大きかった。(バクマン。の爆乳おっぱい要員説)

(1)が半分正解で、(5)(6)をも含みつつ、その実やっぱり(4)のミステリアスカノジョだったというオチ。しかも岩瀬さんの脳内では既に『本物のカノジョ』という仰天の事実までオマケ付きでした。最初の握手以降、コトバ一つ交わさずとも心は繋がってると思ってたんですよね。

そう考えると岩瀬さん、最高や美保並か、それ以上のロマンチスト使いなんですよ。きっと岩瀬さんってば、夏休みも、クリスマスも、体育祭も、文化祭も、修学旅行も、澄ました顔して実はずっと秋人にドキドキしてたんです。

バレンタインのチョコも、せっかく用意したのに二年とも手渡すことすらできなかったのです。クラス替えのたび、一緒のクラスになるか胃がキリキリしてたんです。休日は町を歩くたび、秋人と遭遇できるかもと期待しちゃってたんです。でも、奥手だから主張しないしできないんです。それがロマンチックと思っちゃってたんです。

そうした二年間に渡る恋が綻びて、ロマンチック周波数がまったく一致してなかったと判明して、そしてあの涙ですよ。重い…っ! チクショウ、あまりにも重い涙だぜ岩瀬さんッ!!


ポイント考察 - 選考評と反省会
選考評から見る最高と秋人の実力。

  • 評点 3
  • 評価 選外
  • 画力 4
  • 構成力 3
  • ストーリー 4
  • 演出力 3
  • キャラクター 1
  • オリジナリティ 3

キャラクターが弱い=ジャンプマンガっぽくないとは言い得て妙。ジャンプマンガって、キャラクタだけでバラ売りできる商用力を秘めてないと先は短いですね。連載化に向けて最高と秋人がどのような主人公を生み出すか、見物です。

他は全体的に3〜4止まりで、スゴいんだか微妙なんだか…。いずれかの項目で「これはカンペキに5点!」と思わせる評価がないから「選外」だとも言えそうです。短所は明確になったけど、これといった強みも表れず読者としてもちょっと反応に困ります。


ポイント考察 - 服部さんと反映会
服部さんのアドバイスから見る秋人の実力。

  1. ジャンプ作家にウケて、編集部側にウケない。つまり「ジャンプ」じゃウケない。
  2. 主人公が派手に活躍する設定=ジャンプ漫画のオリジナリティ。
  3. 最高たちはジャンプらしい主人公が描けていない。だがこの方向でもアリだと思う。
  4. 絵は素直に評価すれば「4」のレベル。まだまだ伸びる。この調子でいい。
  5. この評点で選外は今までになかったケース。

(1)〜(3)番目のアドバイスってばつまり、「変えた方がジャンプにウケるけど、変えない方がキミの個性だよ」という話。助言が巡り巡ってどないしたらえーねん! って、声出してすかさず突っ込んでしまった…。作風は現状維持してキャラは大胆かつ魅力的っつー話なんでしょうけど。

先週予想した「最高の絵がどうこう」って話はあくまで身内の杞憂に終わり、プロにはそこそこ通用してたという皮肉が面白いです。こういう事って往々にしてありますね。一番の欠点と自覚してたポイントは実は割とデキていて、問題はもっと別のところにあるという。だから第三者のアドバイスって大切なんです。


ポイント考察 - 二律背反の編集長
二律背反の思いを背負う編集長。

  • 「おじさんの担当で、おじさんを死なせた負い目」という最高への感情的な思い
  • 「マンガは面白ければいいんだ」という新妻エイジへの論理的な思い

今後、最高とエイジの対立が激化したときに、編集長のポジションは見物ですよ。感情論では最高たちに肩入れしたいけど、仕事人としては「面白いければいい」新妻エイジを支持せざるを得ない。無論、編集長というポスト故に冷酷な判断を下すはずです。

現時点ではもちろん、今後重大な局面がやってきたとき、編集長は最大のキーパーソンと言えましょう。


ポイント考察 - 最高とエイジの境遇対比

以前に新妻エイジと対面した編集長が、ついに最高とも初対面しました。なんとこの編集長、おじさん・川口たろうの担当でした。これで最高の七光りにもますます箔がついたよ!

あまりにお膳立ての過ぎる最高の境遇を思うと、わざとこんな設定にしてると疑ってしまいます。つまり、『巨人の星』『ガラスの仮面』『Kapeta』『ヒカルの碁』といった、従来「王道」として扱われてきた打倒ライバルマンガとは正反対なんですよね、バクマン。は。

ここで、従来扱われてきた「王道モノ」の設定というヤツを整理してみます。

条件 主人公 好敵手
環境 貧乏で劣悪な環境にある 裕福で何不自由ないサラブレッド
力の源 超越した「才能」 幼少からの英才教育による「経験」
成長 並外れた努力と根性
本能的にベストな発想を悟る
過去の知識・経験に頼る
機転が利かない

こうして見るとやはりバクマン。は、100%でないにしろ、上表のテンプレートとは立場が逆転していると再認識できます。例えば二人の境遇。

  • 田舎から上京して一人暮らしでマンガ家を目指すエイジ
  • 両親は裕福、都心の仕事場を貰い受け、編集長はおじさんの元担当な最高

漫画家の原動力にしてみてもそう。

  • あらゆる娯楽と俗を捨て、マンガを描くことだけに注力するエイジ
  • おじさんに学んだ知識を糧に、アニメ化を目指してマンガを描く最高

いうまでもなく恋愛面や友情面でも最高は恵まれ、対する新妻エイジは孤高にして努力を積み重ねる存在です。まあ、この辺は「王道モノ」では、劣悪な環境から這い上がる主人公側にこそ、仲間や恋人(候補)ができるものなのですが…。美味しい要素だけは最高が持っていったのね。


ポイント考察 - 集英社の広告塔マンガ
以前にも同じこと述べた気がするけど改めて。

やはりバクマン。は、その存在意義を集英社の広告塔』においていると再確認しました。よく、「新人作家を発掘するため」とか「閉鎖的な業界に風穴を開けるため」とか「マンガ業界の実態を紹介するため」とか言われがちですけど。これ完璧に、集英社とジャンプの求人広告マンガじゃないですか。

マンガ業界の厳しさをそれなりに表現しながら、集英社の「漫画家」や「編集者」という職業を最大限までカッコよく魅せるのが本作の使命です。個性的なキャラクタと魅力的なストーリーでもって過酷な労働環境をオブラートに包み、一握りの英雄だけにスポットを当てるやり口。

バクマン。を読んで「マンガ家」や「編集者」を目指す子供達は増えると思うんですよ。なにしろマンガやアニメの影響力って絶大です。小中学生のジャンプ読者もそう単純じゃないにしろ、大小あれ憧れの感情を抱くでしょう。憧れがやがて「夢」に成熟すれば、もはや集英社の一人勝ち。

バクマン。発で「マンガ家」「編集者」を目指した子供達は、第一志望に集英社を選択するでしょう。何しろ劇中で語られる舞台は、ありのまま(と思い込まされた)集英社そのもの。職場の状況や雰囲気、仕事ぶり表面的に伝わるので、働くことに安心感を与えます。かつまた、憧れの地で仕事ができる喜びもあります。この情報公開性は、同業他社を選ぶより低リスクなのです。

「ジャンプ読者が集英社に憧れるのはフツーでしょ?」と思うなかれ。

ジャンプマンガってのは、軌道に乗れば多方面にメディア展開します。アニメ化、グッズ化、ゲーム化、果てはドラマ化や映画化…。これを起点にして、他誌の雑誌や新聞、テレビやニュース、ゲーム、Webに『集英社』あるいは『ジャンプ編集部』の名が踊ります。話題作ともなれば、たちまち一般人に浸透します。

こうなると、本作の受信者はジャンプ読者に留まりません。そうなれば、『集英社』の利も計り知れないでしょう。本作には「ジャンプ編集部の実態を暴き、あわよくば業界を内部告発してやるぜ!」なーんて狂犬のような意思はないのです。

実のところ集英社の忠犬なんですよね。


今週のバクダン
岩瀬さん必殺、乙女の涙。彼女の好感度は一気に急上昇する予感。


次回予想
さあ今度こそ、クリスマスシーズン到来だぞー!

最高と美保の間でプレゼント交換なるか? 美保は天性の良妻賢母オーラで、その時ベストなプレゼントをチョイスしそうです。むしろ最高は美保に何を渡すのか予想できないなあ。その前に、この二人はプレゼント交換するのか正直不安です。

秋人と香耶の方は、香耶の図々しい性格からして無難にプレゼント交換したり、あわよくばデートしそうです。岩瀬さんに絡んでほしいけど、今週の幕引きでは望み薄でしょうか。せめて数年後、人間的にも成長したエリート岩瀬さんの再登場に期待したいです。

一気に冬休み、年越しまで時間が進むなら、冬休みを潰して連載会議用の原稿作りしてそう。というかそれ以外に選択しないですよね。先週の予想「プロ漫画家のアシスタント体験」も可能性はゼロじゃないけど、今現在の最高はそんなのまったく望んでなさそうです。


残存予想の答え合わせ
今回はいろいろと状況が動いたので、答え合わせしつつ。

  • [高][03-] 最高の父の正体(マンガ編集者の部課長クラス?)が明かされる
  • [中][03-] 父とおじさんの過去エピソードが語られる
  • [低][03-] 祖父の正体が明かされる

編集部に乗り込んだ最高の反応ぶりから見て、最高の父親が編集関係者って線は消えました。もちろん「他社の漫画編集者」って線も根強く残るけど、予想したポイントはソコじゃないので、ここで取り下げます。加えて、「父とおじさんの過去エピソード」は今後語られるかもだけど、それはあくまで兄弟の話だし、予想範囲から乖離したので取り下げ。祖父も以下同文。

  • [中][07-] 香耶も谷草北高に進学する
  • [低][09-] 岩瀬さん腐女子説。意外と鋭い意見を述べて、秋人たじたじ。

香耶の谷草北高は確定と見てよいでしょう。一方、岩瀬さんの大穴ネタ予想は案の定外れました。こうなったら楽しいな、程度の内容だったので、今回のミステリアスロマンチストカノジョ(ナガイ!)でも大満足でした。要は、フツーじゃないフシギな女の子でいてほしかったんだなあ。


残存するキーポイント

以下、これまでの感想で予想した内容をまとめてます。

  • [高][08-] 最高も秋人も挫折しない。「挫折しない不幸」を味わうことになる。
  • [中][06-] マンガ雑誌『少年スリー』は今後も何らかの形で再登場する
  • [中][07-] 高校進学以後、秋人は香耶を使って「美保の情報」を入手する
  • [中][09-] エイジと最高の評価に並び、エイジのプライドが傷つく
  • [中][09-] エイジは最高のマンガを打ち切りに指名する
  • [中][11-] 最高と美保のクリスマス! プレゼント選びで初恋限定。的な流れ。
  • [低][06-] 中学の同級生「石沢」は意外とプロになっちゃう
  • [低][11-] 秋人と香耶のクリスマス! デート現場を岩瀬さんに目撃されて…。


これまでのバクマン。感想