2008-11-12 石油危機後の世界
■ 今月のジェフ 
毎月楽しみなジェフ・ルービンのご講話。
先月のジェフ。
http://d.hatena.ne.jp/Soreda/20081001
なんといっても、強力な原油ブルなので、今般の原油下落に際してなんていうんだろうかと、そっちを楽しみにしていたのだが、特に言い訳なし。つか、まだ3桁時代は来ると言い切っていた。
で、今月のテーマは、リセッションの原因としてみんなサブプライムに端を発したアメリカの住宅価格の低下とそれに伴うなんちゃらかんちゃらをあげるけど、原油価格に注目してみえませんか、これはすごい関連してまっせ、というもの。
Just How Big is Cleveland?
http://research.cibcwm.com/economic_public/download/soct08.pdf
・戦後5回のリセッションのうち4回は、オイルショックの後に来ている。
・オイルショックとは、消費国(先進国)から産油国への所得の移転で、その移転分がウォール街に投資されてまわるっていうけど、全部回るわけでなし、結局は、お金が溜め込まれやすくなり@産油国、流れないから不況になるんだよ。
・今般のオイル価格の上昇は過去のものとは比べ物にならないぐらい大きかった。
・米国が外国に払った原油代金は、2005年以来毎年2000億ドル程度で、これは、今般の米による景気刺激策よりも大きい。
・オイルショック→リセッションの因果は、1年ぐらいのタイムラグがあるとの研究がある。
従って、このメインストリームの不況問題がオイルショックに原因があるってんなら、147ドルから60ドルに下がったのは朗報ではあるはずで、去年の3Qから一年である今がボトム近辺かな。
だそうだった。
で、予測データを見ると、今Qをボトムに、来年の年央ぐらいから上昇というシナリオを書いているっぽい。
過去30年の原油価格を参考にしながら読むと、一応ふむふむかなとは思った。
http://www.afpbb.com/middle/208/2395043
ジェフは、石油を中心に組む戦略家だから、なんでもかんでも石油の話にもっていってしまうのはそれはそれとして、いやしかし、言われてみれば、今般の金融危機に関して、石油価格高騰による実体経済へのインパクトの話が確かにあまりにも見過ごされているようには思った。いや、見過ごしてはいないから、米の主に共和党筋は、石油を掘れ、掘れとの掛け声のもとに、なんとかして高騰を抑えた。あれはすごかった。しかし・・・。
まったく身近な話だが、航空券8万円に対して、サーチャージ6万円だか7万円だかというのが付くのが今現在の世界。過去もう何Qぐらいか、サーチャージは取り除かれず、実際には要するに昔のようには人々は移動できない。人々が移動しなかったらそれに伴って観光系は劣化、低減、鈍化、そして、物の移動も減少気味になるに決まってる。で、今ここ。
サーチャージは1Q遅れているっぽいので、今は夏前のレートとして1月以降は多少下がるだろうが、でも、なくなりはしないわけで、実態価格は3年とか5年前と比べてとても高いままなわけだ。
で、この間に全体として経済が痛むから、原油価格がボトムに落ちたからといって急には復活しない。
で、いずれどこかの経済が復調しはじめたら、今度はまた原油は上がる。
非常に大きな経済主体が、まるごと石油に依存しないでもいられるようになるまで、いったり来たりということで、そして、その間に、仮にドルの価値が劣化した場合、原油価格のドル建額面は、今回見たよりもさらに上昇する可能性はあるだろう。
ということで、ジェフが再々、俺は200ドルだってなくはないと思ってると言っていたのは、おそらく、チャイナや原油産出国等による成長率の大きい主体による増加する原油需要の存在と、ドル劣化の合わせ技によるものなのであろうと、今さらのような気もするけど、多分そう。冷静に考えると、怖い。
ここから考えられるアメにとって最悪のシナリオは、自分んちの成長方向性が見えないうちに、他の経済主体、特に、チャイナあたりの需要が意外と堅調で、原油ボトムがボトムまで行かず、適当なところで切り返し、顕在、潜在を問わず反米基調が多い産油国が壊滅せず、そうこうするうちに、お前ら俺らの金がなけりゃこのザマだ、のBRICsが、なんとかんとか(ここが問題だが)リーグ内での資金流通スキームを作っちゃう、みたいなところか。
アメ的には、ガソリン依存の社会体制を変えるところまで行きたいんだろうし、これを経済の柱にしていくつもりなんだろうとはまぁ普通にそう思う。グリーンとかいろいろなテーマも込みで。でも、それは結構ばくだいな投資なわけで、それまで他の社会がまってくれる保障ないし、待たせられるほど力があるのかというのも問題。
ちなみに、天然ガスを買っておけ、ガスの株は売るな、ともジェフは言い続けている。他のエネルギーにするったってそら10年がかりの話なわけで、その間、北米で石炭燃やせるわけもなし(規制が厳しい)、手っ取り早くガスですよ、ガス、だそうだったが、これも真実味が出てきた。しかし、ガスといえばプーチン。そう、カナダって、冷静に考えるまでもなく、実のところトレンドとしては、ロシアがんばれなんだよね(笑)。アメリカへのエネルギー供給率23%だったかそのぐらいで、この数値は30%まで行くとかいう話しもある(メキシコは自分んちで使う分があるため、ネットでは石油輸入になってしまうんだそうだ)。
■ 先人の無念を思うのなら冷徹でありたい 
田母神俊雄・元航空幕僚長による「論文」について、何かこう、見たくないものを見せられているような気はちょっとしつつ、成り行きを見ていた。
読みましたよ、論文。
http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf
見たくないもののような気がしたのは、まずなんといってもその「論文」なるものの稚拙さ具合といったらああどうしましょう、だったことかな。もう少し、ほぉ、と読ませるものならまた私の受け取り方も違ったかもしれない。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/df3e160b0aedef2f3a173effebdd8dbc
他にもみなさんいろいろ詳しくご指摘だろうが、池田先生が指摘されているのを拝見したのでリンクさせていただく。
特に、VENONA文書についてのパラグラフについて私も、まったく、と思った。この文書の存在が明らかになり解読が進められたことによって、従来から噂されていたハリー・ホワイト財務次官が対ソ協力者であったことは多分間違いはない、とこまで来たものの、それがすなわち彼は「コミンテルンの指示」で動いていたと読むのは、いわゆる、don't jump to the conclusionってやつざましょう。結論まで持っていけてないのに飛ぶなよ、と。
最終的に決定を下しているのは米国政府だという点をどう考えてるんだろうか、この高級軍人さん、など私は思う。誰が謀議を図ろうとも、その名によって交付せしめられているという点をごまかしてみても、どうにもならんと思う。
むしろ、この文書の使い道というのは、ルーズベルト大統領ごと、米国民も日本国民も、私たちはみなソ連とその協力者に嵌められていたのです、そうではないですか、と諸国民に告ぐ、みたいなトーンで仕立てる方向にこそ意味がある、ってな感じじゃないのかしらね。何年か前にアメリカで出ていたFDRとはそういう意図だったのじゃなかった?
しかし、田母神氏にはそこまでの論を張る意図もなければ力もなさそうだ。従って、適度に、要するに、日本は悪くなかったといいたいがために使ってしまったということか。これではやっぱり半端にならざるを得ない。学部の中間レポートみたいな「論文」になったのはもって構想力のなさだと思うし、そういう訓練をしたことがないのだろう。査読してくださる先生はいなかったのか。
我が邦の航空幕僚長なる高級軍人の「論文」がこれかい、ってので私はすったまげる。これはいかんよ、これは。
それにもかかわらず、あるいはそれはそれとして、もしこのおじさんが個人でそういいたかったのならそれはそれれでそうする権利は彼にはあるし、私はそれを支持するよ、ではある。
が、しかし、微妙だなと思ったのは、これが該当する軍の全体または一部でこの人がこの考え方で影響を与えていたとしたら、つまり、職権を濫用していたとしたら、個人の自由ではすまんよな、とかは思った。といっても、イデオロギー的に右だから左だから影響させてはいけないという話ではなくて、この稚拙な頭で影響させるのかい、ということの方がもっと危険だという点からです。中身じゃない、真理追究法の形式に誤りがある。このあたり、我が邦のかつての軍人の悪しき例を見ているような気もする。説得力を持つ形式の軽視、真心重視みたいな。
高級軍人に求められるものは祖国愛にガイドされた知性であって欲しいっすよ。
それにもかかわらず、の、その2として、日本だけが悪いと言われるのは心外だ、みたいな感情は良く、非常に良くわかります。
この点に関しては、私の真心も氏と同じものかもしれない。
折りしも、11月11日は第一次世界大戦の終結を記念日で、それにちなんで、カナダではこの日はベテランズ・デー、つまり退役軍人の人たちを顕彰するの日、となっている。それに先立つこと約1ヶ月、人々は元軍人さんたちがあちこちで講演みたいなのをしたりなんだりかんだりで、人々はカナダのために戦った人々に尊敬を向ける。
軍を持つ国民としては何ほどかこうあって欲しいという感じがここにはある。
で、それもこれも、カナダは戦勝国リーグの国だからこういうことをなんの衒いも躊躇もなくやってのけられる。冷静に考えれば当時外交的に独立していたとはいえない、別にカナダ相手に侵略していったっつーのでもないのにカナダに敵扱いされて悪玉にされるドイツ人(そして日本人)とか噴飯ものだろうなとはまぁ思う。結局あんあら、むしろイギリスの植民地だったことを誇ってるかのようだよな、と見えないこともない。だって、戦争に参加しないという強いオプションはあったの?だから。
とはいえ、カナダとしては、実はその第一世界大戦での奮闘があったればこそ、大英帝国リーグ内での確固たる地位を築き、後の第二次でその地位が確立し、本当に独立していったという流れなので、軍人さんたちはカナダのために戦ったというのは本当。ただし、そんな内部事情で敵にされた側は、何か理不尽なものを感じてもまったく無理もないだろう。オーストラリアの事情も同様。
で、このように、今そこに本当にある危機、当事者としての危機のために立ち上がって戦争に突っ込んでいったわけではないからこそ、北米2国+オーストラリアにおける「敵」の姿は常に一様に不気味なまでに、時間軸、空間軸を飛び越えて「悪」である必要があるんだろうなぁ、など思う。つまり、プロパガンダ合戦で敵の像を構築しないと動機がないから人々を動員させられない。でもって、すぐにほころびてしまうので、常にやってないとならない、みたいな感じでここまで来てる、と。
しかも、この戦勝国、敗戦国体制は今に至るまで世界組織を形作る上での根幹みたいなものだから、それを維持される限りこの区分は必要みたいだ。
でもって、最近、ブレトンウッズ2なんてことがかまびすしく言われるわけだが、それにしたってどうやったらアジア勢の影響力を抑えながら、欧米チームが世界をコントロールするかに腐心しているわけで、ま、この区分がきれいに崩れることは現状期待できない。
期待できないからといって、じゃあ、60年前の敗戦国は唯々諾々とすべてを承服しつつ生きるしかないのか、といえばそうでもあり、そうでもなく、なんじゃないでしょうか。
というのは、「日本は侵略国家であったのか」(論文タイトル)という問いを、論文内の趣旨にあわせて「日本だけが侵略国家であったのか」に読み直すと、いまどきそんなことを本気にしている人も少ない、という現状が世界的にはあると思うから。
まったく関係ないけど、ぐっちーさんの昨日のエントリーで、アメリカにおける世代ごとの対日感みたいなのが上手くまとめられたいた。マケイン世代の人にとっては、自分たちが戦勝国ばりばりの気分が抜けず、その次の団塊の人は、いろいろなんだけどやっぱりそれを引きずり、その次、今50前ぐらいの人たちから下はみんな、かなり、なんつーか、そういうアメリカ観では生きてない、と。私もだいたい同意しますね。
CHANGEからCHANCEへ
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/debfc2ad1d640088d057b27bea4afdb0
で、「日本は侵略国家であったのか」問題も、こうした流れの中で解決していくべきもの、というのではなく、そう解決されていくのが私たちにとっても彼ら(不特定だが)にとってもいいと思うのね。味方してくれる人たちが増えて来ることこそ私たちはすべきであって、自分から無罪論をぶちあげてみても、あんまり効かないと思うのよ。いずれにしても、どういう動機であれ、誰かを傷つけるという行動を取ったわけだしね。ま、そうなるために遠まわしでも、きちんろ反論すべきところは反論し、奇妙な見解を構築されないよう多少の工作をするといったことは必要だと思うけど。
とりあえず、諸国民の信義を信じてるよ、私は。
■ 東の楔懸念 
それはそれとして、この「論文」問題が持ち上がったとき、中身を読まない前にピピっと私なりにアラートを受けた気がしたのは、おお、東の楔か?という点。実際まったく確認できないっすけどもさ。
とりあえず、この論文が出てきたのは、日本における「反共」リーグでしょ?
で、反共と書くとイデオロギー対立で、誰だって共産主義よりは現状の方がいいから、これらリーグ主体者は無理もない人たちだといいたくもなるけど、でも、多分、反共というのはその時代に付いた名前であって、このリーグの究極の目的は、対露の東の楔だと考えるべきなんだろうな、など思う。
西の楔は言うまでもなくドイツ。ドイツとロシアは常に反している必要があって、東も同様。
とはいえ、論文とその成り行きで何か特別なことがおきる感じは今のところしていないけど、こういうのは流れってものがあるから一応何ヶ月か何年かしたときに、ああ、と思うこともあるかもしれないとは思う。
田母神氏は、基本的に日本は欧米(の一部?)+チャイナに騙されたといったセンチメントが強いようにお見受けしたけど、集団が騙される時というのは、先行してしまった人々の感情を無にしたくないために、後続が切り返せない、冷徹になれないってことが被害を拡大していくのだと思うのね。
そんなことを考えた時、氏は自分がその先行集団となる懸念をお持ちではないのかしら?、といぶかしく思う私。高級軍人って学校でそういう心理戦みたいなの習うんじゃないんですか?
■ 第七官界彷徨 
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081112/1226451250
何をどう、というわけでもないのだが、自分のログにこのタイトルが来るのがうれしい気がしたのでリンク。
finalventさんがクリップしてらっしゃる「今日の1冊」で吉行和子さんが選んでらっしゃるようだ。
私は自分にとって大事な10冊を選べといわれたら多分「第七官界彷徨」を入れる。
本にとっての重要性など知らない。ただこれは私にとって大事だということを私はよく知っている、みたいなことを言い放ちたい。でもって、そういうぐりぐりっ、きりきりっとした感覚をよみがえらせてくれる本でもあった気がする。

