素領域日記 2012/3/2(金)-第3回『ビブリオ・カフェ』開催記録-

先週土曜の夜、今年初めての『ビブリオ・カフェ』を開催することができた。
今回の会場は第0回以来となる『喫茶室ルノアール』の新宿某店とした。
ビブリオ・カフェの参加人数は驚くべきことに回を追う毎に増えており、今回は前回からさらに2名増えて私を含め合計7名もの方々にご参加頂いた。感謝である。
ということで、私は席が確保できないことを恐れ、ビブリオ開始予定時刻の15分前には店でスタンバっていた。すると続々と私の携帯に「到着遅れます」メールが殺到した。皆、忙しい方々なのだ。なので私はしばしルノアールを満喫することにした。ちょうど手元には三省堂で当日購入したばかりで今回特に紹介する予定はなかった『知の欺瞞岩波現代文庫版もある。
そうこうして私が店の隅でマッタリしていたところへN氏がまず到着した。初参加である。いつもの笑顔で『ルノアール』の仕事空間としての素晴らしさについて語ってくれる。私も同感する。
続けてKomuma氏が到着。「今日は6冊紹介したい」とあっさりビブリオ・ルール(時間の関係上3冊まで)を破ることを宣言。それではということで、時間も押していたので他の参加者を待つ間、まずは氏に一冊紹介して頂くことにした:
Arctic Circle 北海道立北方民族博物館友の会季刊誌』(編集・発行 財団法人北方文化振興協会)

第61号を含め、数号を持って来て下さった。これは北海道以外では通販でしか手に入らないと思われる貴重な北方文化、近くて遠いオホーツク海辺域に関する情報源である。網走のこの北海道立北方民族博物館には以前から行きたいと思っていたが、この会誌も手に入れにますます行きたくなった。
続けて
山本淳一文、齋藤亮一撮影『サハリン 旅のはじまり』(清流出版、2007年)
サハリン 旅のはじまり
サハリンに意外にも韓国系の人々が多く生きていることをKomuma氏が初めて知った一冊。
N氏にも先行して一冊紹介してもらう:
コンラート・ローレンツ著『ソロモンの指環 -動物行動学入門-』(日高敏隆訳、早川書房、2006年)
ソロモンの指環―動物行動学入門
N氏が現在読みかけの本。氏が実は動物好きであることを紹介しながら告白。
途中、私のヒルズ時代の同僚Y田氏が無事到着。今回はまず見学という形で初参加して下さった。
そして上記3冊を紹介し終わった頃に休日出勤を終えたriloco氏と氏の同僚で初の参加となるO氏が来て下さった。
私がまだ読みかけの『知の欺瞞』の紹介をほどほどに、いわゆる「ソーカル事件」の概略を述べていたところへbotan氏も無事到着。
「業界」では有名なソーカル事件が皆さんには案外知られていないことを知る。
続けて私が
湯川秀樹著『目に見えないもの』(講談社学術文庫、1976年)
目に見えないもの (講談社学術文庫)
を紹介。この中の「真実」という1頁弱の章をもうすぐ出立する詩人たるKomuma氏のために朗読。
そろそろルノアール閉店時間も近付いたため、場所を移る前にKomuma氏に3冊目を紹介して頂く:
ヴォルテール作『カンディード -他五篇-』(植田祐次訳、岩波文庫、2005年)
カンディード 他五篇 (岩波文庫)
まだまだ本の紹介が終わらないため、2次会も兼ねて『食堂酒場 ハル★チカ』に移動。
2次会一冊目は初参加のO氏:
高村薫著『わが手に拳銃を』(講談社、1992年)
わが手に拳銃を
高村薫という作家の話を聞くのは久しぶりだった。ずい分前に何故だったかグリコ・森永事件を題材にした『レディ・ジョーカー』を読んだことを思い出す。
riloco氏には
ヘディン著『さまよえる湖 (上)』(福田宏年訳、岩波文庫、1990年)
さまよえる湖〈上〉 (岩波文庫)
をご紹介いただく。一次会で帰宅されたY田氏もこの本を斜め読みしたことがあるという意外と人気な一品。
botan氏には急いで家の棚から一冊取って来たという
モリエール著『守銭奴』(鈴木力衛訳、岩波文庫、1951年)
守銭奴 (岩波文庫 赤 512-7)
をご紹介いただく。モリエールの喜劇作品はフランスの中学・高校でよく取り上げられたものだが最近はどうなんだろうか。
botan氏の仏留学時の大家が「守銭奴」だったということ等を熱く語っていただく。
何とかこれで、見学のY田氏を除き、参加者全員のそれぞれの関心ある本についてのお話を聴くことができた。終電の時間も差し迫って来たので、最後に駆け足ながらKomuma氏の残り3冊とN氏の残り2冊をご披露頂いた。
Komuma氏:
石牟礼道子著『アニマの鳥』(筑摩書房、1999年)
アニマの鳥
「こんな文を書ける人は日本の何処にもいない」とKomuma氏が激賞する一冊。この本を紹介する時のKomuma氏は当日中最も興奮していたと思う。目前にいたO氏がそれを訝しげに見つめているのが印象的であった。
中村チヨ口述/村崎恭子編/ロバート・アウステリッツ採録・著『ギリヤークの昔話』(北海道出版企画センター、1992年)
山端庸介 -日本の写真家 23-』(岩波書店、1998年)
日本の写真家〈23〉山端庸介
N氏:
C.ダグラス・ラミス著『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか』(平凡社ライブラリー、2004年)
経済成長がなければ私たちは (平凡社ライブラリー)
平川克美著『小商いのすすめ -「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ-』(ミシマ社、2012年)
小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
N氏の日本の今後の経済成長に対する問題意識の下に選んで頂いた上記2冊だが、時間が残念ながら尽きてしまったため今後の我々のライフスタイルに関わってくるこのテーマについて皆で語り合うことは叶わなかった。氏の次回への参加を期待したい。
以上、今回も様々な書物の存在を知ることができ、会も和やかに進んだ。
忙しい中駆け付けて下さった参加者の方々に改めてお礼申し上げる。