馬の気持ちはわからない(一口馬主遺産)

『馬の気持ちはわからない(『傍観罪で終身刑』改メ)』(http://d.hatena.ne.jp/Southend/)の移転先にして遺跡です

(競馬の)神はカオスに宿りたもう

Songは抑制されないです: まったり血統派の茶飲み話
▼自分なりにまとめると、「血統論」と「血統理論」は違うよね、という話になるでしょうか。この辺は言葉の定義なので字面では伝わらないでしょうけど、

  • 様々な形の水の結晶の美しさを語るレトリックが前者
  • その水の結晶の美しさは「掛けられる言葉の良し悪しで決まる(変わる)」とする疑似科学が後者

・・・・・・と説明すれば分かりやすいかも。まぁ人によって言葉の定義は違うと思うのですが、とりあえず僕が疑義を呈したのは後者の方だ、ということでご理解いただければと思います。
 もちろん「結晶の形質」が条件によってある程度推測できることは傾向として認めますが、それは言葉によって決まるような代物ではないでしょうし、最終的にどんな形に出るか(そしてそれが「美しい」かどうか)は神、あるいはラプラスの悪魔の振舞い次第でしょう。もう少し散文的に言えば、馬の能力(適性)について「血統表の字面<だけ>で分かる(決まる)ことは無い(あるいは非常に少ない)」という表現になりますか。
 その辺、リンク先のりろんち氏の、

競馬は様々な人間の想いを巻き込んで転がり続ける『物語』であり、血統にまつわる言説はその物語を豊穣たらしめる最高のレトリックである―というのが基本的なスタンス。つまり自分にとって血統論は、<正しいか否か>ではなく<面白いか否か>という評価軸の上にあるというわけ。

という説明は、競馬ファン全体の認識の最大公約数的なところではないかとも思います。少なくとも個人的には完全に同意。血統論は優れた文学たりえるし、突き詰めれば一種の人文科学の域に達する場合もあるのではないかと思います。


▼一方、「配合」については、結局馬券術と似たようなものなのかなぁ、と把握してます。ある程度駒の評価が固まっている段階であれば特に、実力と実績がある馬が勝利(成功)する可能性が高いのは当たり前で、でもその分掛け金が上がるしトリガミも増える。といって穴馬を狙えば、当然的中率は下がるので数を打つ必要がある。どちらの手法を採るにせよ、長期的に見れば回収率は均されて大して変わらないのではないかと思います。
 ただ、それでも馬産に関しては完全に「本命狙い」、つまりベストトゥベストのやり方がビジネス的には正解。なぜなら、「種雄馬・種雌馬・幼駒の育成・管理費」という必要経費(「テラ銭」に喩えた方が分かりやすいか)はどんな血統レベルの馬も一緒(厳密には違うでしょうけど何倍も変わらない)だからです。累進課税でも固定資産税でもなく、人頭税。なので、資産家が絶対的に有利。リスクヘッジの観点からも、一定のパイの中で一度スケールメリットを獲得してしまえば、余程下手を打たない限り地位は安泰です。
 とはいえ穴狙いの貧乏人はノーチャンスかというとそうでもなく、市場動向を注視して過剰人気の買い目を避けたり、人気の盲点を突いたり、あるいは馬場状態や距離適性を考慮して適切なチョイスをしたり、という手管を用いることで回収率を上げることは十分可能ではないかとも思います。配合によって穴馬を本命馬に変えるのは無理だけど、オッズの裏をかくことはある程度できる、という感じでしょうか。
 とりあえず確実に言えるのは、「出目やタカモト式ではトータルで絶対に負ける」ということと、「本当に馬券を当てる能力がある人は他人に買い目を教えない」ということでしょうか。そして世の「血統理論」の多くは、この範疇に入ってしまうのではないかな、と。
 ・・・・・・でも、確かにタカモト式って「面白い」んですよねぇ。俯瞰的には「木を見て森を見ず」で終わってしまうんでしょうけど、うなじやら足首やらだけで女性を評価するようなフェティシストがいても別にいいじゃない、という(ちょっと違うか)。


▼個人的により興味があるのは、後半の

血統という情報と売却金額という情報との「相関関係」なら、絶対計算で定量化できうるだろうな

というあたり以降の部分です。こっちは「オッズ読み」の世界ですので、統計と計算でかなり片が付く面が大きいと思いますし、一口馬主としても直接関わってきますので。父馬の種付料、引いては募集される幼駒の価格設定が妥当かどうかというのは、収支を考えるなら常に意識しておかなければならないところだと思います。特に、僕のようにアホほどの頭数を出資してる一口廃人にとっては。
 例えば現3歳以前はわりと好きな馬に好きなだけ出資していたのを、現2歳からかなりコスト意識を持って馬を選ぶよう心がけた(つもり)んですが、その中でピックアップされた種牡馬は、例えばマイネルラヴだったりチーフベアハートだったりマーベラスサンデーだったりオースだったりニューイングランドだったりします。あと、割安な設定になりやすいブライアンズタイムの牝駒なんかも意識的に狙ってみたり。ただ、

「まったく詐欺的で、買い手は大いに騙されている」

とか、

牝馬所有者がこの種牡馬でどれだけ損をしたが、想像するだけで怖い!」

なんて言えるところまで厳密に考えてはなかった(すっかり馬体と厩舎派になってしまった)ので、この辺は改善の余地があるなぁと思った次第。これまで「一口的厩舎ミシュラン」みたいな記事は書いたことがあった気がしますが、種牡馬版もできたら面白いなぁ、とか。引いてはクラブの値付けまでバッサリやれたら・・・・・・と、そこまで行くと後が怖いか。