「慰安婦」問題を解決する気ゼロの日本政府 その2(追記あり)


国連の自由権規約委員会による第5回日本政府報告書審査についての国連プレスリリースが出た。

またしても読んでいるうちに翻訳する気力がなくなった。「慰安婦」問題については、これまでと同じ主張をしただけ。とにかく、日本政府ヤル気なし。会議では多くの件に関してかなりケチョンケチョンに批判されたようだが、日本政府は「聞く耳」を持ってはいないようだ。多くのNGOがこれだけ大量のカウンター・レポートを出し続ける国はないし、それらの訴えが実現してきたわけでもない。

Experts noted the remarkably strong interest by mainly national non governmental organizations. However, it was repeatedly regretted that observations from several earlier country reviews of Japan had not had any effect and that Experts were making the same recommendations again. Sometimes, it seemed to be a dialogue of the deaf*2. The question was asked what value the delegation itself did see in the exercise that they were engaging in. There was no use in simply telling the Committee in what way they were doing things and then going back to their country and continuing to do things as before instead of discussing the implementation of the provisions of the Covenant.

複数の専門家が、主に日本国内のNGOが寄せた非常に強い関心について言及した。その一方で、これまでの日本についての幾つかの国別レビューの結果の効果が見られず、専門家が再度同じ勧告を行なっていることは返す返すも遺憾である。時に、議論が全くかみ合っていないように思えることすらある。日本代表自身が関わってきた活動にどのような重要性を認めているかどうかが問われているのである。日本政府が行なっていることを伝えるだけで、帰国後に人権条約の諸規定の実施について議論せず、今まで通りの行いを続けるのは無益である


(emphasis added)


ちなみに、日本人の人権は絶対ではないそうだ。何でも「公共の福祉」とかいうわけのわからんもんとの兼ね合いで人権も制約を受けるらしい。おれたちは独裁国家で暮らしているのか?

According to the report, Japan does not see human rights as absolute. They may be subject to restriction so that conflicting fundamental rights can be balanced and each individual’s rights can be respected on an equal level. This idea is reflected in the concept of “public welfare” in the Constitution. The concept of “public welfare” cannot be used to restrict an individual’s rights where there is no possibility of those rights interfering with the rights of other people. But for example, in a case where speech or publication leads to damaging a person’s reputation, there is a conflict between the protection of the reputation of the individual as a personal right and the guarantee of freedom of expression which requires balancing.


(emphasis added)

日本の死刑、代用監獄に批判続出 国連委、10年ぶり対日審査 (47 NEWS - 2008年10月17日)

ジュネーブ17日共同】国連のB規約(市民的および政治的権利)人権委員会による対日審査が15、16の両日、ジュネーブの国連欧州本部で行われ、法律専門家など有識者18人の委員からは、日本の死刑制度や代用監獄制度の廃止を求めるなど厳しい意見や質問が相次いだ。


あかん、むちゃくちゃ気が滅入る・・・


(追記)
気を取り直して、国連のプレスリリースから注目した部分をそれなりに日本語にしてみた。

事前に日本政府に送られた質問に対する回答(Response to Questions Sent to Japan in Advance)

  • 公共の福祉の観点から自由権規約で保障されている諸権利の制限について
    • 公共の福祉とは異なった人権の間の調整を取るために、人権に特定の制限を加えるという概念で、人権の保護は絶対ではなく無制限でもないということ。
    • 日本では、公共の福祉をたてに国家が人権を恣意的に制限することは許されていないし、国家はそういうことはしない。
  • 婚姻年齢の下限に女性は16歳、男性は18歳という差異があることについて
    • 男性と女性では、結婚できるほどに成熟する年齢に関して、身体的差異および精神的差異がある。結婚可能な年齢の差異は、このような男女間の精神的差異および精神的に差異を反映したものであり、その妥当な根拠に基づき条文が定められている。
    • 尋問期間を短くしろとか、起訴の基準を緩めろとかいった市民国民の強い要望はないので、『刑事収容施設法*3』をただちに改訂して代用監獄を廃止するのは適切ではない。
  • 死刑について
    • 複数殺人や誘拐殺人などの極悪非道な犯罪には死刑も止む無しというのが大多数の民意であるから、このような犯罪で死刑宣告を受けた者におしなべて執行猶予を与えるのは適切ではない。
  • 留置場抑留者に対する尋問時間の制限について
    • 確たる理由がある場合をのぞき、容疑者を深夜以降もしくは長時間にわたって尋問しないとする警察の内規がある。
  • 強制退去について
    • 出入国管理及び難民認定法』には、拷問の文言も定義もないけれども・・・
    • 国籍あるいは市民権を有する国に送還できない者は、本人の希望により日本入国直前に居住していた国か入国前に居住したことがある国かに送還する。
    • 原則的に、本人の生命もしくは自由が脅かされる地域には送還しない。


あれだけ追求されていた「慰安婦」問題への言及はこの段階ではなされていない。
あかん、また気が滅入ってきた・・・ということで、この続きはまた後日。


参考資料



*1:結構長い英文。しかも非常にムカつくのでご注意あれ。

*2:「話が全然かみ合っていない状態」のこと。英語ではこういう表現はしないが、フランス語で"dialogue des sourds"という言い方がある。

*3:刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律