デフレは漢方薬、持続可能経済に移行させる

(1) 今の米国経済は日本の1995年に似ている
(2) 米国の既視感;デフレに社会不安と戦争

※敬称略 ◆は参照報道、①〜はその要点


………(1) 今の米国経済は日本の1995年に似ている………

◆米消費者物価 2か月連続で下落(NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151015/k10010271591000.html

米国もデフレ経済に突入。ガソリン価格の下落が原因というが、この数年間米国のガソリンは激安状態が続いているから、この言い方は嘘であろう。米国も長期停滞、デフレ経済に突入したのではないか。

2008年に金融恐慌(リーマンショック)、産業成長を伴わない高リスク高リターンの不良債権商品を世界規模でバブルさせ大崩壊。それから6年、本質治療なく表面だけを繕ってきた。オバマ再生可能エネルギー雇用も進まない。日本の円安政策が米ドル高を起こし、賃金の下落が拍車をかける。

今の米国経済は1995年の日本経済に似ている。デフレと長期経済停滞だ。 日本は1985年プラザ合意円高を強制され、内需依存経済に移行を余儀なくされた。だが、高度成長の美酒に酔いしれてきた現役世代は輸出の代わりに「財テク」「都市計画」におぼれ、1991年にバブルが大崩壊。

1991年から1995年の間は試行錯誤しながら、バブルの夢にマヒした現役世代を退場させた。経済は静かに、内需依存経済に移行した。10年かかったが、GDPの半分を占めた輸出が1割に激減し、それは持続可能なバランスであった。

この間、円高で輸入物価が下がり、生涯雇用が崩壊して低賃金不安定雇用にシフトしたから、生活はデフレを要求した。デフレなしには内需依存経済に移行できないのだ。

現象は逆に見えるが、インフルエンザに罹患すると高熱がでる。ウイルスが発熱しているのではない。ウイルスは高温に弱く、また人の免疫力は高温で強化されるから、発熱は専守防衛行動。だから解熱剤を用いることは免疫力を弱めウイルスを活性化させ病状が長期化する。

インフルエンザに対しては体温を上げることで克服する。
内需依存経済への移行は体温を下げ、基礎代謝のエネルギーを減少させることによって持続が可能になる。強引な政策でデフレをインフレに変えようとしても持続可能でない。政府が強行すれば、市民は生活苦に陥り、社会不安が発生する。

そういう観点から私は1995〜2011のデフレ期はとても健全で、持続可能な、周辺国からも嫌われることのない内需依存経済を実現していたと考える。

だがそれが強欲なる新自由主義者の経済閣僚(竹中平蔵)によって「インフレ目標の設定」と「適度のバブル奨励」が打ち出され、狂ってしまった。

米国は2008年に不良金融資産を束ねた高リスク高リターン金融商品のバブルが崩壊し、オバマのクリーンエネルギー新産業も、安価天然ガス採掘法の実用化で、吹き飛ばされ、そこに日本政府の強引なる円安政策で米ドルが高騰し、米国もデフレに入った。日本の1995年に似ていると思うのだ。

すると米国経済はデフレ長期停滞期に入ったことになる。ここでデフレ退治政策を強行すれば、インフルエンザに罹患した患者を低体温症にするのと同じだ。米国社会は再び社会不安が高まり、暴動が相次ぐ可能性もあり、それをFBIの容疑者射殺の多発から予感させ、米国社会は社会主義化している。

米国社会はバブルと戦争に疲弊しきった。日中に国債を買わせ、それで自動車や住宅ローンの不良債券にまで投資を煽ることはもう不可能。日中に国債を買わせて、その玉突きで中国やASEANに投資するギャンブルも持続不可能。欧米には新世界は無くなった、ユーラシア大陸に移住でもないかぎりは。


………(2) 米国の既視感;デフレに社会不安と戦争………

今の米国経済が日本の1995年に似て、デフレ長期停滞に入った可能性があると言いました。ただし、米国社会を見るとそれには日本とは異なる既視感があるのです。

米国の既視感とは経済大国の維持にきゅうきゅうとなり、追われる恐怖を戦争によって打ち消そうとしてきたことなのです。安倍政権はそんな米国の既視感を日本の政治経済に持ち込み、覆い尽くすかのようで、米国の既視感は安倍ニッポンの近未来の姿なのです。

WWⅡの勝利に酔う米国社会は共産主義国の拡大に恐れをなし、朝鮮戦争ベトナム戦争を起こし、膨大な軍事産業を維持させる一方で、実体経済の骨格となる産業の近代化を怠りました。

朝鮮戦争ベトナム戦争の「特需」だけで日本経済が高度成長しえたわけではないのです。戦争経済に支配された米国産業が老朽化を進めて競争力を激しく毀損した、その隙間を日本企業が侵食しえたから、輸出による高度成長を実現できたのです。

1970年代、私は技術屋の企業戦士で、米国の基幹産業に「プラント輸出と操業技術指導」でほぼ7年を過ごしました。その時の日本人と米国人の関係は、今の中国人と日本人の関係に似ています。違いは、当時の米国は日本のGDPの数倍だったが、今の日本は中国のGDPの1/3でしかないという点。

話を米国経済の浮沈に関する既視感に戻します。米国は朝鮮戦争は引き分けで何らの戦利品も無く、無駄な戦争でした。ベトナム戦争は米国政府か米軍がでっち上げた戦争で、惨めな大敗北でした。米軍はインドシナ半島の大地から南中国海に投げ落とされたのでした。

そのとき米国社会には失業が蔓延し、停電が多発し、高速道路には幹線ですら直径1m深さも1mといった穴が空いたままで、NYのハドソン川の橋が老朽して車ごと崩落するしまつ。ベトナム反戦運動に米国社会の新世代がのめり込み、黒人社会は「打ち壊し」で社会改革へと・・・

米国産業は日本から最新の操業技術を逆輸入して少しだけ再生し、それを土台にしてシリコンバレーを開花させました。けれども、電子産業やITソフトが何千万人もの安定した中所得雇用を実現するはずはありません。社会不安の病根は残されたのです。

米国は社会不安の病根を残したまま、それを国家の暴力装置で鎮圧し、新しい米国の強みであるシリコンバレーを脅かす日本のIT産業の息の根を止めるために姑息な介入を繰り返したといわれています。

社会不安を国家の暴力装置で鎮圧し、国際経済の不安を軍事外交で鎮圧するという、とても悪い癖を米国は身に着けてしまったのです。それが国連や世界銀行IMFへの介入を露骨化させ、世界の庶民を貧困の奈落へと落とし込むと、その怒りが3.11同時多発テロを発生させた(自作自演でないなら)。

3.11に襲われた米国社会はブッシュJrの愛国法を受け入れました。それはまるでファシズム全体主義国と同じでした。ブッシュは3.11の原因を自らの態度に求めることはなく、アフガンとイラクを軍事情報のでっち上げで侵略しました。それによって米国の病根は一層ひどくなったのです。

3.11を起こさせた病根は黄昏の経済大国が陥った「追われる」という贅沢な恐怖だったのですが、それを戦争で解決できると愚かにも考え、実行し、ベトナム戦争と同様に大敗北を喫したのです。米国社会は厭戦気運に満ち、経済財政は破綻寸前、これもベトナム戦と同じで、既視感なのです。

自爆テロが世界に拡散し多発し、ISを蔓延らせたのは米国の政府と企業の責任である。彼らが標榜する民主主義と自由主義の押しつけが、世界を貧困の奈落へと突き落とし、「打ち壊し」による社会改革を「自爆テロ」による無理心中へと追い詰めたからです。貧困問題の解消でしか解決しません。

米国が体温を下げて、基礎代謝を半減さえるか、米国企業が得た利益の大半を世界の貧困解消に再配分するしか答えはないでしょう。