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たなからぼたもち

2012-03-02

ジャッキー


 一週間前のことになるが、ジャッキーの家に行った。
金曜の夜、家でごはんを食べていたら、
「ある人と大げんかをしてイライラしている」
とジャッキーからメールがきた。
本当はその日ジャッキーとお酒でも飲もうと言っていたのだが、
ジャッキーに人と会う用事ができてしまい、会えなくなった。
そして、その人とけんかをしたのだと言って、
メールがきたのだ。

 けんかした、というけど、相手は60歳を超えたおじいさんだ。
ジャッキーは今度その人と仕事をするらしく、
何度も打ち合わせをしたが、お互いどうしても譲れない部分があって、
いつもそのことで言い合いになってけんか別れするのだという。
そして案の定、その日も会ってすぐにけんかになって別れたらしい。

 じゃあ話でも聴きましょう、ということで、
夜の11時過ぎだったがジャッキーの家まで行くことにした。
井の頭線に乗る頃にはもう終電の時間になっていた。
金曜の終電間際の井の頭線は、窒息しそうなほど混んでいた。

「ぶーやん、かっこいいね。
 明日、仕事でしょ。
 仕事なのに、今から人の家に来てお酒飲むなんて、
 かっこいいね。
 私にはできないよ。」
会うなりジャッキーは言った。
こうして会うのは何ヶ月ぶりだろう。
お酒を呑むのは、多分1年ぶりだ。
この機会を逃したら、次はいつまた会えるかわからない。
私にはそのことしか考えられなかった。

 お腹がすいたと言って、ジャッキーはコンビニでおでんを買っていた。
私はかまぼこを買った。
白いかまぼこを一本買えば充分かと思ったけど、
ジャッキーも食べると言うので紅いかまぼこも買った。
ジャッキーの家でかまぼこを切って、
交互に紅白にして並べたら
「出たよ。」
と、うんざりしたように言われた。
いいじゃないか、こういうのが、私は好きなのだ。

 ジャッキーは
「ぶーやんの方が朝早く起きるから、外側ね」
と、同じベッドで寝るようすすめてくれたが
なんとなく恥ずかしくて私はコタツで寝た。
少し大きめのシングルベッドだったが、
なんだかとても恥ずかしくて、とてもそこに入ることができなかった。


高校生の頃、友達らしい友達のいなかった私は、
退屈で居心地の悪い休み時間を、
ジャッキーへの手紙を書くことでしのいでいた。
今でも、高校時代の友達と言って思い浮かぶのはジャッキーしかいない。
だけど私は、
他のどんな人の前にいるときよりも、
ジャッキーの前にいるときが一番恥ずかしい。
この恥ずかしさを、どう表現したらいいだろう。
太宰治的な恥ずかしさだ。
自分はとても情けなくて、みっともなくて、恥ずかしいなぁと思うのだ。
ジャッキーの前に立つと、
他の人の前では隠されている
自分のダメなところや未熟なところが急に露呈されるような気がしてしまう。
そして、そのうちジャッキーがこんな私をつまらない人間だと思って
付き合ってくれなくなったらどうしよう、と思うのだ。
高校生の時からずっとそうだった。
他の人といるときにはそんなことは気にならないのに、
ジャッキーといると、どうもだめなのだ。
それは私が、ジャッキーを好きすぎるからなのだと思う。
ジャッキーとの関係について、
「恋人でもないのに、恋人よりも深い関わり方をしているね。」
と人から言われたことがあるが、本当にそうだと思う。
でも恥ずかしくてベッドには入れない。

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