ピザを焼く

  ピザを焼いた。
ピザ用の粉を買ってきて、こねて、のばした。
トマトソースも作った。
会社から持って帰ってきたちょっといいオリーブオイルを使って、
ニンニクの香りをだして、少しトマトソースを煮詰める。
ピザ生地にトマトソースをのせ、モッツァレラチーズものせ、
焼けた後、最後にルッコラをこんもりのっけた。


  何か残念なことがあると凝ったことをしたくなるのは昔からで、
いつかの年末、オダギリジョー香椎由宇と並んで結婚会見を開いた時も、
ジンジャーマフィンを焼いた。
ジンジャーマフィン用の香辛料で香りをつけたバターまで作った。
なぜジンジャーマフィンだったのか、理由を聞かれても困る。
ただ、材料が多くて、手間がかかって、
かつ、一度も作ったことのないものを作りたかったのだ。
その条件さえ揃っているなら、他のものでも良かった。


 「好きになった人が、たまたま結婚していただけ」
樋口可南子のかの有名な言葉を思い出した。
久しぶりに、心の底からいいなと思った人を見つけたのだけど、
どうも結婚しているようだとわかった。


  悲嘆にくれていたら、珍しい人から電話があった。
ちょうどその時間、携帯電話の電源を切ってしまっていた。
着信記録を見て、何だったのだろうと慌てて掛け直したが、出なかった。


  夏が終わる頃になると、貴重品を落とす。
去年の夏は財布を落として、その次に定期を落とし、挙句の果てに別の日に携帯を落とした。
財布以外は全て戻ってきた。
  今日もまた、定期を落とした。
運良く戻ってきた。
夏の疲れが出てきた頃が、危ない。