2012-02-01
ボリショイ・バレエ『スパルタクス』―超重量級の迫力
観劇 | |
(画像はWikipediaのスパルタクスより、ただしボリショイの公演ではない)
ローマの支配者に対して反乱を起こした奴隷たちの指導者・スパルタクスをテーマにしたバレエ『スパルタクス』は、いくつかの点で珍しいバレエ作品だ。
ひとつは、女性主体のバレエの中で、珍しく男性ダンサーが主役のパワフルな作品であること。
主役だけでなく、群舞も男性がメインで、30人か40人近い男性ダンサーがジャンプやターンを繰り返す様は重量級。舞台を揺らしかねない迫力だ。
ふたつ目は、日本ではめったに上演されないこと。
これはひとつめと関係しているのだと思う。男性のソリスト数名を揃えることは、今の日本では簡単にできる。しかし、一定のレベルの男性バレエダンサーを数十名規模で集めることは、難しい。
ダンサーの層の厚いボリショイ劇場だからこそ上演できる作品だ。
三つ目は、旧ソ連で制作された作品であること。旧ソ連時代に作られたバレエはたくさんあるはずだが、いまも上演されているものは、『スパルタクス』くらいしか思いつかない。
このバレエ音楽の作曲はハチャトゥリアン。民族音楽風の旋律も取り入れたこの力強い曲で、レーニン賞を受賞した。
旧ソ連時代には、小説や映画はいうに及ばず、バレエのような芸術作品も労働者の意識啓蒙をすべきだという考え方があったそうだ。『白鳥の湖』も、悲劇は良い影響を与えないということで、ハッピーエンドに変えて上演されたこともあったと聞く。
この『スパルタクス』は、奴隷たちが支配階級に対して反乱を起こすというものなので、プロレタリアートの意識改革にもつながるストーリーと評価されたのだろう。
古典的バレエ作品といえば、恋愛が中心になるものが多い中では異色の作品だ。恋愛要素はあるけれど、あまり重要ではない。
怒りが踊りで表現されている点も、バレエ作品では珍しいように思う。
それから女性の扱いがひと味違う。ローマの執政官クラッススの愛人は、スパルタクスたちの隠れ家を発見して通報したり、自ら意思を持って行動する。
この作品を生で観たのは初めてだが、普通のバレエは苦手という人にもおススメできる作品だと思う。
『白鳥の湖』や『ジゼル』では、青白いライトに白一色の衣装を着た人しか出てこない静かなシーンが続く。バレエファンにとっては一番大事な場面なのだが、バレエ通でない人の中には眠くなる人がいる。でもこの作品はそういうところがなく、ずっと刺激的な場面が続くから、飽きないで楽しめるのではないだろうか。
もちろん、ボリショイのソリストたちの超絶技巧には、バレエおたくも満足できる。
今回の公演では、奴隷の反乱軍のリーダー・スパルタクス役のパヴェル・ドミトリチェンコのダイナミックな超絶技巧はさすがの迫力。執政官クラッスス役のユーリー・バラーノフも良かった。
クラッススの愛人役マリーヤ・アレクサンドロワは、悪女の貫禄が伝わってきて、三幕目のソロが良かった。クラッススを手玉にとってる感じだった。
スパルタクスの妻役アンナ・ニクーリナは、しなやかな身体を生かしたていねいな踊りが印象的。ちょっと影が薄い感じがしたのだけれど、奴隷の女の子だからいいのかな。
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