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月明飛錫

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2011-02-04

年金革命4 高齢化と貯蓄率低下

| 03:49 | 年金革命4 高齢化と貯蓄率低下を含むブックマーク

前回、ドラッカーのいう「逆貯蓄」の状態について、年金基金について見た。今日は、高齢化に伴ってわが国の家計貯蓄率が低下しており、マイナスに転じる可能性があることについて書きたい。


1.家計貯蓄率の減少

国民経済計算における家計貯蓄率は、1980年代初めの2割近い水準から、近年は2〜5%台まで低下している。

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2008年度と2009年度の貯蓄率は上昇しているものの、これは家計可処分所得が2005年からほぼ横ばいの中で、2年連続で家計最終消費支出が減少したためだ。サブプライム問題をきっかけにした不況で、消費を減らした家庭が多くなったと見られる。従って現段階では、トレンドとして貯蓄率が上昇傾向に転じたとはいいがたい。


2.無職高齢世帯の増加

近年、総世帯数のうちの無職世帯数の比率が著しく上昇している。

総務省の家計調査「平成21年平均速報結果の概況について(要約)」には、次のような記述がある。


「二人以上の世帯に占める無職世帯(世帯主が無職の世帯)の割合をみると, 人口の高齢化が進んでいることから, 長期的に上昇傾向で推移しており,昭和60年は10.7%であった割合が,平成21年は27.8%となっている」


さらに、単身世帯も含めた総世帯に占める無職世帯の割合は、2009年度で3割を超えている。実にわが国の世帯のうち、3世帯に1世帯が無職なのだ。無職世帯のほとんどは60才以上の高齢者であり、無職世帯が増加した理由は、人口構成のなかで高齢者比率が上昇しているためだ。そして、高齢無職世帯(その多くは、年金暮らしをしている人々)の貯蓄率はマイナスとなっている。

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グラフからわかるように、無職の60才以上の人々の貯蓄率(黒字率)は一貫してマイナスだ。人口構成において高齢者比率が上昇し、世帯数の約3割を占める高齢無職世帯の預金が取り崩されていることが、貯蓄率低下の大きな要因といえる。


年金を貰いつつ、過去の貯蓄を取り崩して生活する。これは個々のライフスタイルでいけば、あたりまえの姿である。退職に備えてコツコツと貯蓄をしていき、定年を迎えて引退してからは、蓄えた貯金を使って旅行に出かけたり、これまで十分楽しめなかった趣味を堪能する。理想的な姿ともいえる。なにも死ぬまであくせく働き、ずっと貯金をし続けることはない。

しかし日本全体で見た場合、高齢化が進展する社会においては、高齢者が貯蓄を取り崩すということは、日本全体の貯蓄率が下がり、資本形成ができなくなっていく点が問題となる。

 

3.勤労者世帯数の減少

勤労者の母体となる15〜64才までの生産年齢人口は、2009年の8,164万人から2040年には5,733万人へと2,400万人も減少する

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現在、15〜64 歳の就業者は,平成22 年平均で5686 万人(2010年平均、総務省労働力調査)。15〜64 才の女性は63.1%しか働いていないため、女性が働く比率が上昇すれば、生産年齢人口に占める就業者の比率は上昇する余地はある。それでも、15〜64才の人々が全員が働いても、就業者は今より700万人以上減少する。働く割合が現在の74.0%から80%へ増加すると仮定しても、1700万人近く就業者が減少することになる。

そして、高齢世帯(世帯主が65才以上の世帯)が一般世帯に占める割合は、国立社会保障・人口問題研究所によると、2005年の27.6%から2030年には39.0%に上昇する見通しだ。

参考:国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2009年12月推計)


従って、あと20年で無職の高齢世帯数が4割近くにものぼり、貯蓄率はさらに低下していくことが考えられる。そうすると、家計貯蓄率はマイナスに転じるだろう。その頃には、前回触れた年金基金も団塊の世代の受給によって支払い超過になる。


4.国債発行の抑制が求められる

以前書いたように、日本の個人金融資産は約1,442兆円。その55%が預貯金だ。

そして、日本の国債の買い手である銀行の主な資金源は、個人の預貯金。預貯金の取り崩しが進めば、金融機関の国債購入余力が低下する。

さらには、個人金融資産をバックに国債の買い手を担ってきた銀行、それに加えて郵貯、年金、生命保険等の金融機関は、国債の売り手に廻ることも考えられる。

そうなった時に、国債の買い手を海外に求めようとしても、支払い能力が問われて、高い金利を要求されることになるだろう。

家計の貯蓄超過を前提に成り立ってきた財政赤字は、貯蓄不足によって維持できなくなる。もはや、財政健全化に猶予は残されていない。


5.社会保障の思い切った削減が必要

それにしても、20年後に総世帯数の40%が「働かずに年金でくらす」ということは可能なのだろうか。

現在、約1,000兆円の国債を、2030年の就業者4,586万人*1で返済しようとすると、一人当たり2,180万円の負担になる。これだけの過去の借金を払いながら、さらに現役3世帯で2世帯の高齢者を支えるのは、保険料方式であろうと、税方式であろうと、相当難しいのではないかと思われる。


日本の年金受給者は現在3,700万人。もし、4,000万人に月7万円、年間84万円の年金を支給すると、約33.6兆円の負担になる。

一方、日本の消費税収は、現在約10兆円。税率を2倍の10%にすると単純計算で20兆円、3倍の15%で30兆円の消費税収となる。将来消費が落ち込まないと考えても、消費税10%どころか15%まで上げても、年金を支給するだけで消費税は消えてしまう。


将来の現役世代の負担をこれ以上増やさないためには、年金をはじめとする社会保障制度改革や財政改革の実施が必要だ。そのためには残念だが、年金の支給年齢の引き上げや、高額所得者や高額資産保有者への年金給付の削減といった思い切った方法、そして自分で年金を用意する積立方式の積極活用なども考えていくべきだろう。


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*1:15〜64才までの生産年齢人口5,733万人のうち8割が働くと仮定

kuromori999kuromori999 2011/02/06 14:25 逍花さま、こんにちは。

<年金をはじめとする社会保障制度改革や財政改革の実施が必要だ。年金の支給年齢の引き上げや、高額所得者や高額資産保有者への年金給付の削減といった思い切った方法、そして自分で年金を用意する積立方式の積極活用なども考えていくべきだろう>

その通りです。私は、高齢無職世帯の一人として、はなはだ、居心地が悪い思いで読んでいますが、いずれは、公正のため高齢者の持つ既得権にも手をつけないといけないと思います。

かって、『たけし・逸見の平成教育委員会』にレギュラー出演していた俳優の天本英世氏(『仮面ライダー』の「死神博士」役が有名)が、テレビのインタビューで「国民年金(保険料)など払ったことがない。いくら年を取っても国の世話にだけはなりたくない」と発言していたのを思い出します。

天本英世氏が、自由主義者・無政府主義者だという点を割り引いても、国に頼らないという心構えは貴重です。彼は「年金暮らしで目が死んでいるやつは見たくもない」とも言っていました。いまも、私の戒めの言葉にしています。

SyoukaSyouka 2011/02/06 15:05 kuromori999さま

こんにちは、逍花です。
>高齢無職世帯の一人として、はなはだ、居心地が悪い思いで読んでいます
すみません。念のため申し上げますと、数十年も働いたあと、自由人として過ごすのはひとりの人としては、あたりまえの人生の過ごし方です。
問題は、人口構成がいびつなことがわかっていたのに、世代間扶養という年金の仕組みを改めないで、今に至ったことです。90年代にやるべきでしたが、今からでもやらないよりましでしょう。

ところで、国がなんとかしてくれるという考え方が成り立つのは、国に余裕があると信じているからで、今の若者は、そこまで頼りにしていないと思います。だからこそ、年金の未納率が高いのではないかと思います。

kuromori999さまのように、退職しても知的好奇心をもち続けるような人が増えていくと、世の中変わるのかもしれません。
コメント、ありがとうございました。