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月明飛錫

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2011-02-22

グローバル化のもたらす不条理感

| 02:33 | グローバル化のもたらす不条理感を含むブックマーク

1年半ほど前に、日本のイルカ漁を描いた映画『ザ・コーヴ』が話題となった。

和歌山県太地町でイルカ漁に携わる人々にとっては、なんとも不条理な話だったのだと思う。先祖代々行ってきたことを踏襲して生計を立てていたのに、突然外国人の過激な動物愛護団体がやってきて、全く違う価値観を一方的に押し付けられ、非難される。しかも隠し撮りで勝手に編集された動画が、世界に向けて発信されてしまったのだ。

地元の人々は、関係のない外国人から非難されるのは理不尽だ、という思いを抱いたはずだ。

(個人的には、イルカ漁やクジラ漁がダメで、ウサギや鹿を食べても問題ないのは、納得がいかないところだ。)


次元は違うけれど、エジプトのムバラク大統領や中東の王族たちも、突然ルールが変えられたような、ある種の不条理感を感じているのではないかと思う。

長年の圧政と貧困の放置という大きな問題はもちろんあったにせよ、今回の一連の動きのきっかけは、アメリカの量的緩和によって、マネーが商品市場に流れ込み、穀物価格が高騰し貧困層を直撃したことで、社会的な不満が拡大したことだった。

日本やアメリカでは、そもそもエンゲル係数が低いうえ、穀物といってもパンやパスタなどの加工品を購入することが多いので、原材料の変動はそれほど気にならないが、途上国の貧困層は、エンゲル係数が高いので、すぐに影響を受けてしまう。

さらに中東の支配者とは関係のないアメリカ発のソーシャルメディアなるものが、人々の動きを加速させた。


傍観者的に見ていると、もちろん世界はつながっていて、アマゾンを舞う1匹の蝶の羽ばたきが、遠く離れた場所に大雨を降らせることになりうるのだということなのだけれど、当事者としては、自分たちと関係のないことがきっかけとなってしまったという感覚はあるのではないかと思う。

(念のために書いておくと、エジプトやチュニジアの民衆にとっては、民意を無視した政治を長年続けた支配者が倒されるのは当然の帰結である、ということになるだろう。)


そして、今月20日にドイツ北部のハンブルク市の選挙で、メルケル首相率いる与党・キリスト教民主同盟を大敗させたのも、市民の持つある種の不条理感だったのではないだろうか。


ギリシャの公務員天国と浪費が、ヨーロッパの経済統合への深刻な脅威になり、ドイツは欧州の単一通貨ユーロを守るため、巨額の救済を決めた。

極東の島国に住む私から見ると、ギリシャやスペインが浮かれて消費してくれたおかげで、ドイツの輸出は増大したのだから、ユーロの受益者であるドイツが多少負担するのは理にかなっているようにも思える。

ドイツが今月9日に発表した貿易統計(速報値)によると、2010年の輸出額は前年比18.5%増の9519億ユーロ(約107兆円、約1兆3000億ドル)と好調だ。


しかしながら、ドイツにも輸出産業にかかわりのない人はいるわけで、例えばレストランで働く人や年金生活者が、自分たちの血税で、見たこともない南の人々の浪費の尻拭いをさせらるのは理不尽だ、という気持ちを抱いても不思議はない。

メルケル首相の欧州統合の理想を推進する姿は、普通の人々の日常での生活感覚では納得がいかないというか、共感できないのだろう。


経済活動もマネーも情報も国境を越えて自由に行き交う時代に、原因を作り出した人と、結果を引き受ける人が違う、もしくは非常に複雑な因果関係で結ばれていて、そこに不条理感を抱いてしまうということは、短期的にはまだまだ起こるように思える。

そして、グローバル化する経済に対して、政治がローカル化するドイツのような現象が起こるのは、今が過渡期にあるからなのだと思う。


異なる文化を持つ人々が相互に承認しあい、人権が重視される社会が世界的に広まり、環境や金融、資源といった国際的な問題に対して共同体意識を持って取り組むことができるようになるまでは、まだ時間がかかるのだろう。

凜 2011/02/23 23:23  本当に多くのことを考えさせてくれる契機となりうる記事で、拝読させていただいた後、いろいろなことを思いました。
 近代化=西欧化と言われ、多かれ少なかれ、世界中が欧米の影響を受けさるを得ない現在、そしてグローバリゼーションにより各国の結びつきが強まっている現在だからこそ、おっしゃるとおり、相互に他人の文化を尊重できる社会ができることを私も望んでおります。

SyoukaSyouka 2011/02/24 01:23 凜さま

こんばんは、逍花です。
凜さんが、トラックバック先の記事で触れられているように、私も冷戦が終わってから、これほど宗教紛争が多発するとは思ってもいませんでした。
今回も、革命はおこっても、民主的な政治が機能するにはまだまだ時間がかかりそうです。
グローバル化とインターネットの普及は人々の着実に意識を変えていき、いずれは新たな社会的秩序が生まれるのでしょうけれど、エジプトの様子を見ていると、今はまだソーシャルメディアなどがそれにどうかかわるのか不透明なところがあるように思いますし、新たな断絶の芽があるような気もするのが、歯痒いところです(登場したばかりのメディアに期待しすぎかもしれませんが)。
コメントありがとうございました!

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