2012-01-24
劇団四季『エビータ』
観劇 | |
アルゼンチンの片田舎に私生児として生まれた一人の少女が大統領夫人となり、33歳で生涯を終えるまでを描いた『エビータ』は、アンドリュー・ロイド=ウェバーの傑作ミュージカル。
ちょっとミュージカルから離れて、当時のアルゼンチンの状況について、おさらい。
以前の記事「日本がアルゼンチンに!? 英エコノミスト誌日本特集」にも書いたことだが、20世紀半ばまで、アルゼンチンは世界の経済大国だった。1920年代の1人当たり実質国内総生産額は、アメリカ、イギリスには及ばないまでも、ドイツより若干高く、日本の約2倍を誇っていた。
アルゼンチンの低迷の大きな要因は、第二次世界大戦後、工業への産業構造の転換に失敗したこと。日本がアルゼンチンに追いついたのが1960年代後半。たった20年で、アルゼンチンは世界の経済大国の地位から滑り落ちた。
この間に大統領を務めたのがエバの夫、ペロン。
1946年に政権の座についたペロン大統領は、政権初期に重工業の発展に力点を置いたが、地主層の反発にあい、政権後半には農業重視に方針を転換するなど、政治は混乱した。
Wikipediaによると、「労働組合の保護や労働者の賃上げ、女性参政権の実現、イギリス系、アメリカ系などの外資系企業の国営化、貿易の国家統制などの政策を推し進め、労働者層から圧倒的な支持を受けるが、一方で独裁政権を敷き反対派は強制収容所に投獄した」ということで、ポピュリズム路線を推進した大統領だ。
そして、庶民出身で大統領夫人となったエバは「エバ基金」を設立し、金持ちや貴族から容赦なく金を取り立て、貧しい人々にばらまいた。その結果、現在もアルゼンチンの国民から“聖母”として親しまれているそうだ。慈善事業に熱中して若死にしたダイアナ妃のことをなんだか連想した(もっともダイアナ妃は貧しい生まれではないけれど、宮廷生活にはなじめなかったらしい)。
エバは聖女なのか、それとも野心から売名行為をしただけなのか? という疑問がある。
貴族への反感と自らも体験した貧しさへの素朴な同情が最初の動機で、あとは貧しい人々が喜ぶ顔を間近で見ることになるって、自分はいいことをしている、人々のために役に立っていると思いこみ、だんだんと熱中していったのではないかなぁと思う。
ところでこのミュージカルは、以前マドンナが主演した映画を観た事があるのだが、舞台は初めて。
労働者階級の貧困と惨めさを嫌というほど味わってきたエバが、男を踏み台にしてのし上がっていく様子は、マドンナが演じると、まさにはまり役といった感じだった。
バルコニーで広場を埋め尽くす民衆に向かって語りかける様子も、スーパースターだけにさすがだった。
しかし、今回のエビータ野村玲子さんは、正統派美人だからなのか、イマイチ野心満々で上りつめていくって雰囲気ではなかった。歌も音域が広くて苦しそうだったのが、残念。
狂言回しとして出てきて、「彼女は本当にそれほど素晴らしい人物だったのか?」と、疑問を投げかける革命家・チェを演じる芝清道は、安定感があった。でも、映画のアントニオ・バンデラスのほうが、さまになっていたんだけど、比べちゃいけないかな。



