鴉 -KARAS-.


【ネタ】…アニメ 鴉 -KARAS-(2005.11-2007.10) 制作:タツノコプロ 監督:さとうけいいち
 
【説明】…タツノコプロ製作のオリジナルビデオアニメ(OVA
夜を忘れた街・東京。 隣り合う妖怪の存在を忘れ、浮かれて暮らす人間たち。 古来より、からみ合うこのふたつの世界の秩序は“ゆりね”と“鴉”によって守られてきたが、ここにきてそのバランスは大きく乱れつつあった。
「街」の下僕であることをやめ、自らを廻向と名乗り始めた“鴉”。新宿に舞い戻った流浪の妖怪“鵺”。 連続猟奇殺人の影に、廻向に生み出された妖怪の正体を見て取った“鵺”がライフルをかまえた時、もう一人の“ゆりね”と“鴉”が現れる。
本作はタツノコプロ40周年記念作品として制作された。全六話構成。
第5回東京国際アニメアワードオリジナルビデオ部門優秀作品賞受賞作品。

 
【独断】…ザ・ヒーロー
GOPさんのオススメアニメを見ようツアーその2。『鴉 -KARAS-』。
リアル友人GOPがススメてくれるアニメやゲームはほぼ100%の確率で面白い。私とはかなり趣味が違うはずなのに、なぜかクリティカルにイイ物をススメて下さる。本当にありがたい。
今までススメてもらった中でハズレだったのは、彼が桑島法子信者だった頃に無理矢理押し付けてきた『Blue Gender』(ブルージェンダー)という虫アニメだけである。(ヒロイン役が桑島法子さんだった)
 
本作『鴉』は、タツノコプロ設立40周年を記念して製作されたオリジナルヒーローアニメだ。
タツノコプロといえば、ゴールドライタンを始めとして、ゴールドライタンゴールドライタン、またゴールドライタンなど、多くのオリジナルヒーローを生み出してきたアニメ制作会社である。
そのタツノコプロが40周年の節目に全力投球して生み出したニューヒーローがこそが、この「鴉」なのである。

 
まぁ、もう、問答無用。とにかくベラボーに格好いい。
程良く未来的で薄汚くなっている東京を舞台に、サイバーな妖怪とアーマーなヒーローがハイスピードバトルを繰り広げる。
自らを機械化し、人を喰らわねば生きていけなくなった妖怪「御座(みくら)衆」。「鴉」は、街の精霊である「ゆりね」の意志に従い、街の調和を乱す御座たちを排除していく。
本作の主人公である青年・乙羽(おとは)は、ゆりねから授かった力により甲冑を纏い鴉に変身する。超常の力を持った御座と鴉は、人の知覚を超え、空を豪速で駆け抜け、巨大なビルをいとも容易く破壊する。
 
作画が終始超高品質なのはもちろんだが、何しろバトルの演出がハンパではなく凝っている。
ハイスピードカメラで撮ったような半静止映像、そこから緩急を使って弾け飛ぶように動き回るキャラクターたち。
縦横無尽に動き回る彼らをカメラが切り替わり切り替わり執拗に追い回す。しかしその姿を微妙に捉え切れていなかったりする感じがむちゃくちゃシビれる。
 
鴉は、刀を操る人型モードを基本とし、車や戦闘機にも変身できる。その変身も動き回りながら瞬間的に行われるので、バトル中の方向転換や加減速も一々スピーディーで迫力に満ちた形で描かれている。
壮絶な斬り合い! と思ったら、次の瞬間にはドッグファイトが行われていたり、敵が逃げた! と思ったら、いきなり車になって猛追したり、かなりはっちゃけたアクションを見せてくれる。
パッと変身しての切り返しって、ある意味『星のカービィ』っぽいというかなんというか、やっていること自体はどことなくゲーム的だ。鴉の鎧に搭載されているギミックも全般的にどこかアクションゲームっぽい。で、それが見事に映画的演出と噛み合って爆裂な格好良さを生み出している。
 
…そもそも、今時、鎧を着て日本刀を持ったヒーローってあり得ないよな。中2病を通り越して、博物館に展示してあるレベルである。
でも、『鴉』はそこを敢えて伊達で貫き通したからこそ、ヒーローモノの極致に達したのだと思う。
血も涙もない世紀末なこの21世紀にあって(←もはや日本語じゃない)、ここまで格好付けてて、そして実際に格好いいヒーローが他にいるだろうか。
…いる。ドラゴンクロウ。
まぁ、ドラゴンクロウは置いておくとして、こういった硬派でドストレートな等身大ヒーローアニメって、最近じゃ本当になかなかない気がする。
だって鴉の決めセリフが「鴉…参る!」だぞ。もぉ〜コッテコテにもほどがあるだろう。まさに千両役者といった風情。

 
ストーリー自体はわりとシンプルで、大筋としては、孤独なヒーローが破滅志向の悪の親玉を打ち倒す…という古典的なものになっている。
一応、劇中様々な謎や人間ドラマが鏤められているし、舞台となる東京都心部の街並みもキッチリと描き込まれているので、作品の雰囲気には浸りやすい。
正直、アクション面でのクールっぷりに対して、物語がちょっとダサくてパワー不足になっている感は否めないのだが、このアニメの場合、物語の細かいデキがどうのってものでもないので、視聴者自ら進んでノるのが正解だろう。(でも、乙羽はずっと謎の人物ままでも良かった)
 
惜しむらくは、主人公・乙羽役を担当されていたのが声優初挑戦の俳優さんだったことだろうか。
基本、無口なキャラクターではあるし、雰囲気的には声も合っているので大丈夫っちゃ大丈夫なのだが…
キーキャラクターとなる鵺(ぬえ)役の藤原啓治さんや、ラスボスの廻向(えこう)役の櫻井孝宏さんら、第一線の声優さんたちが熱演しているので、掛け合いの場面になるとさすがに差が歴然としてしまっていた。

 
…で、俳優起用で話題を作ろうとしていたわりには、それほど大々的に広報していたわけでもないようで、作品のクオリティに反して一般認知度はかなり低い。
しかもDVD三巻の発売から四巻の発売まで1年9ヶ月も空くというテンポの悪さもあり、商売としてはとても上手くやっていたとはいえなかった。(コケたというほどではないが)
2ちゃんアニメ板のスレッドでも、視聴者のフラストレーションが溜まりに溜まっていた様子がうかがえる。「40周年記念作品って言っておいて、もう45周年じゃねーか」「50周年に完結するんですね。わかります」等々。
諸々事情はあるのだろうが、営業的に非常にアンバランスで不遇な作品と言える。
 
…そんなわけで、レンタルビデオ屋の片隅で不良在庫として埋もれるにはあまりにもMOTTAINAI本作『鴉 -KARAS-』。
とにかく、等身大ヒーローが好きな人は必見です。雰囲気は全然違うけど、『バイオメガ』みたいな速いアクションが好きな人は絶対にハマると思う。
私がもし小学生の頃にこの作品を見ていたら、将来鴉になるための修行を積み重ねていたことだろう。…というか、今まさに鴉になりたい。なりたいというか、なるために体を鍛えている。
そこの白い目で見ているあなた、そう、あなただ。人のことをバカにしているが、あなたも『鴉』を見れば絶対にそうなるだろう。そのうち職場で日本刀を振り回すこと必至である。
 
タツノコの魂がこもったニューヒーロー「鴉」。
全6話、ブルーレイもBOXでフルに出ております。是非一気視聴してみてください。
 
おわり

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