飼い犬にかまれ続けて

勝手気ままにライトノベルの感想を書いています。

「平安残酷物語」感想

平安残酷物語 (講談社BOX)

平安残酷物語 (講談社BOX)


平成から平安に移り変わり、引きこもりが貴族の特権になった時代。

そんな退屈な時代に生きる引きこもりのこづえと、その親友の小春がゆるい日常を過ごす様を書いた短編連作…ではあるものの、どのエピソードも大小様々な残酷さが含まれていて、読者を時にゾッとさせる。こづえにしろ、小春にしろ、こんなにも可愛いキャラクターたちが取り留めもないことを考えて日常を送る物語なのに、不意打ちのように酷く歪んだ世界を見せつける展開はもう詐欺だよ。この作品を手に取り、箱から本を取り出し、千葉サドルさんの可愛い口絵を確認してからレジへと持って行った本読みは見事騙されたんじゃないのかな。読み始めは小さな残酷さだけだったけど、読み終えた時の虚無感に声が出ない。でも、正直、この残酷な世界の結末を目にして受けた衝撃は、決して悪いものじゃなかった。
期待していた物語は違った。けれども、こういう物語の作り方もあるのかと、してやられた感じがする。
同時発売の『のばらセックス』とは全く違う読了感に面食らった。が、どちらも日日日さんらしい作品で、読み終わってみれば両方買った甲斐があったよ。