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TOKYO大樹法律事務所 コラム

2018-08-23

任意後見契約を知っていますか

12:50

 近頃、身寄りのないお年寄りから、自分が財産を管理できなくなったときにどうすれば良いかと相談をされることが増えてきました。また、親族に成年後見が開始されると見ず知らずの人が後見人になって、家族の意向が無視されたと不満の声を聞くことがあります。これは法定後見のことですが、任意後見という制度も用意されています。任意後見契約はご本人がお元気なうちに信頼する方との間で公証人役場で任意後見契約を締結し、将来、ご本人の事理弁識能力が不十分になった際に信頼する方に任意後見人になってもらうという契約です。任意後見人にはご本人の生活や療養看護、及び財産の管理等必要と考える範囲で代理権を与え、報酬を契約で決めることができるので、安心です。任意後見契約を発動するにはご本人の事理弁識能力が不十分になった際に、家庭裁判所に任意後見監督人の選任をしてもらう必要があります。そして、任意後見監督人は任意後見人の後見事務について監督を行いますので、安心して任せることができます。公証人役場で締結することから、公正証書遺言の作成と併せて任意後見契約を締結することも多くあります。将来の安心を確保しておくために有用な制度です。

(2018年2月)

弁護士 木下 泉

2018-02-07

暴力団と振り込め詐欺

16:46

 振り込め詐欺というと、息子や孫のフリをした加害者がお年寄りに電話をかけて、お金をだまし取る犯罪です。暴力団の幹部が積極的に振り込め詐欺に関わっているという印象を持つ人は少ないのではないでしょうか。

 ところが、最近は、振り込め詐欺などの特殊詐欺などに暴力団が関与している件数が増えています。一部報道によれば、暴力団対策法が施行されてから、暴力団員の人数が減少しています。そして、人数の減少に伴い、暴力団員による傷害や恐喝などの摘発件数は減少しています。しかし、その一方で、暴力団員が詐欺で摘発される件数はむしろ増加しているのです。暴対法で追い詰められた暴力団が、新しいシノギの場として、振り込め詐欺を選んだということでしょうか。

 振り込め詐欺に暴力団が関与しているといっても、実際に被害者に電話をかける役の「かけ子」や被害者から振り込まれた金銭を口座から引き出す役の「出し子」などの実行犯は、学生などの一般の若者にやらせていることが多いのです。そして、暴力団の構成員自体は、それら実行犯の背後にいるケースがほとんどです。また、振り込め詐欺グループの組織図は、複雑なピラミッド構造をしています。暴力団の組長などの幹部は、そのピラミッド構造の頂点に位置します。

 ここからは法律の話しになります。さて、被害者としては、振り込め詐欺の実行犯が刑事事件で逮捕・処罰されるだけでは気持ちが収まりません。民事事件で、だまし取られたお金を返して貰いたいというのが一番でしょう。ところが、逮捕された実行犯は、すでに使うなどしてお金を持ってないことが多いのです。そのため、実行犯を相手に民事裁判を起こしても、だまし取られたお金の回収は難しいのです。

 そこで、これまで、一部の弁護士グループで、民法の使用者責任の規定(同法715条)や、暴力団の威力を利用した資金獲得行為を規制した暴対法の規定(同法31条の2)を使って、暴力団組長の責任を追及する民事裁判を提起できないか検討されていました。そして、実際に、現在、全国各地の裁判所で、特殊詐欺の被害者の方々が暴力団幹部らの責任を追及して損害賠償の支払いを求める民事裁判を提訴しています。

 民暴案件に関わる弁護士としては、この裁判の今後の成り行きに注目しています。

(2017年11月)

弁護士 佐々木 学

2017-12-01

性犯罪の規定が大幅に改正されました

15:50

 今年の通常国会で、刑法が改正され、性犯罪に関する罰則規定が大幅に変わりました。既に7月13日から、この改正法が施行されています。

 今回の刑法改正の主な内容は、次の5点です。

 1点目は、「強姦罪」が「強制性交罪」という名称に変わり、対象が大幅に拡大されたことです。今までの「強姦罪」は、対象の行為が膣性交に限定されていましたが、今回の改正で、肛門性交や口腔性交も対象となりました。その結果、被害者は女性に限定されなくなり、また、これまで強制わいせつ罪でしか処罰されなかった性交類似行為が強制性交罪で処罰されることになりました。この改正により、これまでなかなか表に出てこなかった、男性の被害者、LGBTの性暴力被害者に対する救済の道が大幅に広がったといえます。

 2点目は、法定刑の下限が「3年」から「5年」に引き上げられたことです。この引き上げによって、強制性交罪では、情状酌量されない限り執行猶予がつかないことになりました。また、一般の強姦罪(強制性交罪)の下限が引き上げられたことにより、集団強姦罪の規定(刑の下限は4年)は廃止されることとなりました。

 3点目は、非親告罪化です。これまでの強姦罪は、親告罪で、被害者が告訴をしなければ被疑者は起訴されませんでした。これが、被害者の告訴がなくても起訴されうるように変わったのです。これまで、被害者は、告訴をするかどうか捜査機関等に迫られ、精神的に辛い思いをしてきました。また、被疑者側の弁護士から、執拗に告訴の取り下げを迫られるというようなこともありました。非親告罪化により、このような問題は改善されると思われます。

 4点目は、監護者類型の罰則が新設されたことです。18歳未満の者を監護している者が、その影響力があることに乗じてわいせつな行為をした場合には監護者わいせつ罪、性交等をした場合には監護者性交罪で処罰されることになりました。この規定は、通常の強制わいせつ罪・強制性交罪に要求されている「暴行又は脅迫」の要件を要しないという点で、画期的な規定です。この規定の新設によって、性的虐待を受けている児童に対する救済の道が広がることが期待されます。

 5点目は、強盗罪と強制性交罪(強姦罪)が同じ機会に行われた場合の規定の整備です。これまでの規定では、強盗強姦罪として重い処罰を受けるのは、強盗が先に行われた場合のみでした。これをどちらが先に行われても強盗・強制性交罪として処罰されることになったのです。

 以上が主な改正点です。

 この刑法改正は、性暴力・性犯罪の被害を受けた方や支援者により切望され、支持された結果、実現したものです。私も、長年にわたって性暴力・性犯罪被害者の支援に携わってきた者として、今回の改正は本当に嬉しいです。

 今後、刑法改正により、より広く、性暴力・性犯罪の被害者が救済され、必要な支援を受けることができますよう願っています。

 また、同時に、今回の改正では落ちてしまった様々な重要な論点もあります。例えば、強制性交罪の要件である「暴行・脅迫」が最強度の暴行・脅迫でなければならないと解釈されているという問題や、自ら被害を訴えることが困難な年少の被害者について時効を停止等すべきではないかという問題、性交同意年齢とされている13歳があまりにも低すぎるのではないかという問題、夫婦間の性暴力が処罰されていないのではないかという問題等です。

 今回の刑法改正について、与野党は、衆議院で、施行から3年を目処に必要があれば性犯罪の実態に応じた措置を講じることで合意し、付則に盛り込みました。

 さらに良い改正がなされるよう、私も、被害を受けた方や支援者とともに、尽力してきたいと思っています。

(2017年7月)

弁護士 村田 智子

2017-07-27

シンポジウム「メディアとLGBT “ホモネタ”って笑っていいの?」ご報告

11:14

 2017年2月21日、私が所属する東京弁護士会・性の平等に関する委員会(2016年11月に、「両性」の平等に関する委員会から改名しました。)主催のシンポジウム「メディアとLGBT “ホモネタ”って笑っていいの?」が開催されました。同委員会によるLGBTに関するシンポジウムは4回目でしたが、今回の来場者は150名以上に上り、過去最高の人数となりました。本シンポジウムは、タイトルのとおり、同性愛者やトランスジェンダーといったLGBTの人々が、未だに笑いの「ネタ」や侮辱・嫌悪の対象とされている風潮に疑問を投げかけ、性的指向性自認に関する差別・偏見を解消するにはどうすればいいかを考えるために企画したものです。

 シンポジウムでは、「シノドス」編集長で評論家の荻上チキさん、タレント・文筆家の牧村朝子氏さん(自身の性的指向がレズビアンであることを公表しています。)、「BuzzFeed Japan」記者の渡辺一樹さんを招き、パネルディスカッションを行いました。

 牧村さんは、メディアでのLGBTの伝えられ方の現状について「笑えるオネエ、泣ける性同一性障害」といった象徴的な言葉を口にしました。同性愛やトランスジェンダーが一種のタブーのように扱われていた過去に比べ、肯定的な取り上げられ方も増えてきたが、笑える「オネエキャラ」や、支援すべき対象として語られるトランスジェンダーばかりが主に取り上げられる傾向にあり、それ以外のLGBTは隠れてしまっているというのです。

 荻上さんは、「LGBT」という言葉がメジャーになりつつあることについて、キャッチーな言葉は見えない存在とされていた人たちを目にみえる人たちとして意識できるようにする効果があるものの、逆に個々の人々が見えにくくなる弊害を指摘しました。また、メディアが偏見を煽るような伝え方をした場合、受け手がその都度指摘することが大切と提案しました。

 渡辺さんは、メディアの伝え方は受け手に模倣・再現されることがあり、そのことにより特定の人たちを傷つける危険性を意識してブレーキを踏めるようにしておくことが大切であり、他方で、LGBTの人たちの日常的でポジティブなニュースも提供することで社会意識に一石を投じる、というアクセルを踏むことの必要性を語りました。

 そして、LGBTの人々が、特別な存在としてでなく、自然な普通の存在として広く受け止められるようにするには、という問いかけに対し、渡辺さんは、メディアが押しつけるものではないが、セクシュアリティは個人の尊重の問題であるという価値観をいかに提供できるかを考えていると述べ、牧村さんは、LGBTであってもなくても、ありのままの自分らしさを大切にすることの重要さを発信し続けたいと話しました。荻上さんは、●●中心主義(たとえば、異性愛中心主義、男性中心主義、健常者中心主義など)を解体することが必要であり、LGBTを特別なカテゴリーとして閉じ込めるのではなく、個性・特性という意味での「タグ」として伝えるようにすべき、と提案しました。

 盛りだくさんな内容で、終了時間を若干超過しましたが、途中で席を立つ人はいず、終了後もゲストへの質問等で大勢の人が会場に残り続け、本テーマに対する関心の高さと真剣さがうかがわれました。

 LGBTは、異性愛者や身体的性別に違和感のない人たちを含めた、セクシュアリティ(性的指向・性自認)のあり方の個性・特性であり、特別視されたり、差別される理由はありません。LGBTの人々が、本当の意味で、目にみえる普通の存在になるためには、私たち個人個人が、「性の多様性」を理解し行動することが大切です。そのことが、メディアからも日常生活からも「ホモネタ」をなくすことに繋がり、ひいては、同性愛やトランスジェンダーを否定的に特別視してきた社会意識を変えることに繋がるはずです。そんな手応えを得たシンポジウムでした。

2017年4月

(弁護士 上杉 崇子)

2017-04-10

HPVワクチン薬害訴訟提訴・第一回期日のお知らせ

13:18

 平成28年7月27日、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種により、深刻な副反応被害を受けた63名の被害者が、国及び製薬会社(グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社)に対して、損害賠償請求を東京、名古屋、大阪及び福岡の各地裁に提訴しました。

 私は、東京訴訟(第一次原告28名)の弁護団員として、主に医学的知見の検討の分野で、この裁判に関わっています。

 HPVワクチンは、子宮頸がんそのものを予防する効果は証明されていません。一方で、その接種により重篤な副反応(免疫系の異常による神経障害等)が多数報告されています。

 そもそも子宮頸がんは、原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しても発症に至る確率は極めて低く、また、子宮頸がん検診によって、がんになる前の病変を発見し、負担の少ない治療で予防できる疾病です。それにもかかわらず、有効性にも安全性にも問題のあるHPVワクチンの製造販売が承認されました。国は、平成22年11月から、緊急促進事業により公費を助成し、平成25年4月からは定期接種の対象とし、接種勧奨を行い、その結果、300万人を越える中学生・高校生に接種されました。その後、深刻な副反応が相次いだことから、定期接種化のわずか3ヵ月後である平成25年6月より接種の積極勧奨が一時中止され、現在に至ります。

 HPVワクチンによる副反応はとても深刻で、全身の疼痛、知覚障害、運動障害、記憶障害など多岐にわたります。ハンマーで殴られるような激しい頭痛や不随意運動、突然の脱力、不眠・過眠、簡単な計算すらできなくなる知的障害など症状は非常に多様かつ深刻です。原告の少女たちの多くは、学校に通うことや進学が難しくなり、この副反応により人生を狂わされ、苦しんでいます。日々、医療者による研究が進んでいますが、未だ治療法も確立されておらず、将来に対する不安は計り知れないものです。

 この裁判を通じて、被害者が将来にわたって、医療や社会全般にわたって安心して生きていけるようにするとともに、真相を解明し、同様の被害を繰り返さないようにしていきたいと考えています。訴訟により国と企業の法的責任を明確化し、それを基盤に真の救済と再発防止を実現していきたいと思います。

 いよいよ、東京訴訟の第1回期日が2月13日15時と決まり、裁判が本格化します。ご支援よろしくお願いします。

2017年1月

(弁護士 安孫子 理良)