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TOKYO大樹法律事務所 コラム

2013-01-07

チチハル事件

14:30

f:id:TOKYOTAIJU:20130107143108j:image:medium:right皆さんは、「チチハル事件」をご存じでしょうか。

この事件は、2003年8月に、中国の黒竜江省(ロシアと隣接)のチチハル市内のマンションの地下駐車場工事現場から、旧日本軍が遺棄した毒ガス入りドラム缶が発見され、市民1名が死亡、43名が負傷したという事件です。

私も被害者の弁護団の一員です。健康被害に苦しむ被害者たちは医療保障や生活支援の制度確立を目指して交渉してきましたが決裂。

やむを得ず2005年1月に日本政府を提訴しました。第1審は残念ながら、請求棄却で敗訴。

去る9月21日、東京高等裁判所(101号法廷)で第2審の判決がありました。

結果は、同じく控訴棄却の敗訴判決。「チチハル市内に毒ガスが埋まっていることは把握できたかもしれないが、事故発生現場に毒ガスが埋まっていたことまでは把握できない。

だから、日本政府が被害を防止することはできなかった」というのが、その理由です。

しかし、この世で発生する事故の多くは、それが何処でどのような経緯で発生するか事前にわかりません。

だから事故になるのです。控訴審の判決の理屈で行けば、巷で起きている多数の死傷者が出る事故ほとんどを「事前に把握できなかったから、しょうがないね」と免責してしまうことになります。

弁護士になって10年。これほど、裁判所に失望したことはありません。

被害者たちは、事故が原因で就労不能となり、健康被害に苦しみ、将来に不安をもって過ごす貧困層の中国人です。

メディアが「反日分子」として描き出す中国人像とはほど遠い存在です。

日中関係が悪化している今だからこそ、日中政府が手を取り合って、このような何の罪もない中国の市民を人道的にサポートする。そのことが必要ではないでしょうか。

被害者支援の制度設計に向けて、弁護団としては政府と交渉し、また上告して控訴審の誤りを糺すつもりです。

ご支援のほどよろしくお願いいたします。

2012年10月

(弁護士 井堀 哲)