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2006/04/18/Tue

[][]DVDが高い理由

・迎賓館裏口「ボったくり死すべし」

・おれはおまえのパパじゃない「誰がボったくってて誰がボったくってないのかはいまいちわからないのだけど」


「DVDが高い」という声はよく耳にするのだけど、たしかに僕もそう思う。上のリンク先ではアニメのDVDが一枚6300円という話になっているが、僕も好きな映画のDVDはけっこう買うのだけど、安くても4000円はする。邦画はとくにそうだ。

 ただこれにはそれなりの理由もある。劇場公開の邦画とTVアニメでは内実は異なるが、最初の公開や放送(一次利用)の段階で、製作費のリクープ(回収)が難しいことは共通する。DVDの価格が高く設定されているのは、このためだ。

 まず邦画の場合は、興行での回収はそう簡単ではない。いま日本映画の平均製作費は約3億円と言われているが、劇場の興行だけでこれを回収するためには、たぶん約7億円ほどの売り上げ(興行収入)を記録する必要がある。しかし、昨年、日本映画で興収10億円を突破した作品は実写が18本で、アニメが8本だ。公開作は邦画だけで356本だから、興収だけでリクープした作品がほんのわずかだと推測できる。

 これには興収の半分ほどが劇場の取り分になるという背景がある。日本は地価が高いこともあり劇場運営上は仕方のないことかもしれないが、劇場に対する製作側の不満はよく耳にする。このような状況だから、製作側はDVD販売やテレビ放映権、キャラクターグッズなどの二次使用料で回収していくしかないのだ。

 TVアニメの場合は、劇場で公開するというリスクはないが、深夜アニメの場合はさほどスポンサードを期待できないので、それだけで回収することは難しい。そのために製作費をDVDやCD販売、ゲーム化などによってリクープするという方法論が確立している。アニメがUHF局やCSなどでも放映されるのはこのようなビジネススキームがあるからだ。

 ただ、結局のところそのしわ寄せは、DVDを手元に所持しておきたいという欲求を持つ熱心なファンのところにくる。「コアなファンは少々高くても確実に買う層だ」とは、映像にかかわらずどの業種の人々もよく話すことだし、まぁ実際そうなのだろう。しかし、逆に考えれば新たなコアユーザーを育てる障壁を設けているということでもある。

 そのかわりに、というわけではないが、日本ではレンタル業が盛んだ。レンタルビデオ店へのDVDソフトの販売価格は、一般向けのものよりもかなり高く(たぶん3倍ほど)設定されている。制作側が見越しているDVD販売は、もちろんレンタル業者も含めてのものだ。だが、これによりレンタル料が1週間で360円ほどの安さとなり、劇場への足は遠のき、また一般向けDVDは高くなっている。

 つまり、劇場公開映画もTVアニメも、DVDなどの二次利用を含めてビジネススキームを構築しているので、DVDを販売するパブリッシャーが悪いというわけではない。だから、どこかのメーカーが中心的に「ボったくっている」というわけではなく、非常に構造的な問題によって引き起こされている現象と言えるのだ(これによって映像エンタメが産業的に保たれてきたのもまた事実だが)

 この改善案として僕が雑感的に思いつくのは、レンタル業者向けのDVD販売価格をいまの倍にし、逆に一般向けのものを半分にするということだろうか。これにより、レンタル料金は上がるかもしれないが、その分一般向けDVD販売は伸びる可能性が高まる。トータルのDVDの売り上げにも大きな変化はないはずだ。また、邦画の場合は、劇場への足が増えるかもしれない。

 他にもレンタル業者への販売価格は据え置いて、ソフトのレンタル回数によって業者から製作者側へ支払いが行われる従量制の採用も講ずることができるだろうか。このシステム構築は複雑だが、作品の人気がそのまま製作者に跳ね返ってくるので、かなり健全なシステムではあるだろう。

[追記:このシステムはすでに大手レンタルチェーンTSUTAYAなどが採用している。PPT(ペイ・パー・トランザクション)システムと呼ばれる]

 もちろんそれらは、DVDレンタルに依存しているファン(僕もそのひとりだが)にとっては辛いことでもあるし、TSUTAYAやGEOなどの大手レンタルチェーンからは強い反発もあるだろう。だが、中長期的なことを考えれば熱心なファン層を拡大することに繋がるので、映像業界全体にとって有益かなと思えたりもする。

 まぁただそのような策をいくら講じても、日本の映像産業に横たわる構造的な問題はやはり大きい。シネコンがここまで増えたのに映画館の入場料が1800円というのはいくらなんでも高すぎるし、TVアニメもレンタル店のスペースを考えると現状のようなDVD売り上げが続くとは思えない。また、なによりも問題なのは製作者側が潤わないシステムが、製作のモチベーションを下げることだ。

 このような話はかなりむかしから議論されていることだが、韓国では国がファンド制をバックアップするなどして製作費の平均が5億円ほどとなっており、それもあって『オールドボーイ』や『JSA』などの良質のエンタテインメント大作が生み出されていたりもする。それを考えれば、日本の映像産業が現状のままでいいとはやはり言えない。邦画やアニメが調子の良いいまだからこそ、次の手が打たれるべきだと思う。

●関連:映画「製作委員会システム」のメリットとデメリット

http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20060320/p2