
2007/07/02/Mon
■更新します
一ヶ月くらい放置していたのだけど、更新します。ブログ用に文章書く暇ないので、mixiメモからのアウトプットで映画レビューをたくさんします。今日から(忘れなければ)一日おきくらいにアップしたいです。まだ公開前で試写で観ている作品もあるのだけども、それはタイミングを見てかな。ラインナップは以下の予定。既に掲載した分は省いたのだけど、半年で35本くらいだから、それほどたくさん観ているわけではないです。試写状が来ても、滅多に行かないし。
『ただ、君を愛してる』監督:新城毅彦(2006年)以下更新↓
『神童』監督:萩生田宏治(2007年)以下更新↓
『サッド・ヴァイケション』監督:青山真治(2007年:秋公開予定)
『キサラギ』監督:佐藤祐市(2007年)
『大日本人』監督:松本人志(2007年)
『監督・ばんざい』監督:北野武(2007年)
『あしたの私のつくり方』監督:市川準(2007年)
『しゃべれどもしゃべれども』監督:平山秀幸(2007年)
『パッチギ!LOVE&PEACE』監督:井筒和幸(2007年)
『パプリカ』監督:今敏(2006年)
『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』監督:水田伸生(2006年)
『県庁の星』監督:西谷弘(2006年)
『夜のピクニック』監督:長澤雅彦(2006年)
『DEATH NOTE』『DEATH NOTE : the last note』監督:金子修介(2006年)
『好きだ、』監督:石川寛(2005年)
『HINOKIO ヒノキオ』監督:秋山貴彦(2005年)
『ルート225』監督:中村義洋(2005年)
『インストール』監督:片岡K(2005年)
『笑の大学』監督:星譲(2004年)
『沙羅双樹』監督:河瀬直美(2003年)
『アメリカン・パイ in ハレンチ・マラソン大会』監督:ジョー・ヌスバウム(2006年)
『ディパーテッド』監督:マーティン・スコセッシ(2006年)
『グエムル 漢江の怪物』監督:ポン・ジュノ(2006年)
『クィーン』監督:スティーブン・フリアーズ(2006年)
『ラッキーガール』監督:ドナルド・ペトリ(2006年)
■[映画]『ただ、君を愛してる』監督:新城毅彦(2006年)
●『ハチクロ』に勝ったスマッシュヒットサブカル映画は“かまやつ女”にダメ出し!
新城毅彦は、今度TBS製作・東宝配給のサーファー映画『Life 天国で君に逢えたら』の監督を担当するひと。出演は、玉木宏、宮崎あおい、黒木メイサ。原作は、市川拓司が書いた映画『恋愛寫眞』の外伝小説。
変な意味でとても興味深い作品であった。部分的に爆笑するほどに面白いシーンもある。
物語は、メガネをかけた“かまやつ女”スタイルで変わった行動ばかりする静流(宮崎あおい)と、コミュニケーションが苦手が誠人(玉木宏)が、大学の入学式の日に出会うところから始まる。ふたりは写真を通じてコミュニケーションを取って交流を重ねていく。静流は誠人のことが好きなんだけど、彼はお姉系の美人・みゆき(黒木メイサ)に恋をしていて、静流のことはあまり気にかけない。静流は誠人に想いも伝えるが、その気持ちは届かない。
中盤、静流は家出して誠人と同棲生活を始める。だが、それは決して恋愛ゆえのものではなく、静流が家出をしたから。同棲初日には、「私を抱いて」と迫るが、誠人はお姉系が好きだからその意に応えない。据え膳は食わないのである。しかし同棲生活はさらに続く。
ある日、静流は突然誠人の前から姿を消し、大学も中退する。それから何年かして、突然海外から誠人のもとに静流からのメールが届く。静流はNYで写真の個展を開いているという……。
この作品は、悲恋系の純愛モノなんだけども、基本的には大した話じゃない。それよりも、ディテールとか、この作品がスマッシュヒットした理由を考えると面白い。
まず、宮崎あおいが演ずる静流なんだけども、僕が「ルーズカジュアル」、三浦展が「かまやつ女」と名付けたファッションスタイルである。「裏原系」と呼べるようなスタイルではもはやない。彼女がメガネをかけてそのようなファッションである理由は「遺伝性の病気」にある。それはけっこう早い段階から匂わされ、彼女はどうも発育に不良があるらしく、乳歯が残っていたり幼児体型のままらしい。あのスタイルは、そういった幼児体型を隠すというものなのだろう。
一方、誠人はそんな彼女に恋慕されながらも一向に相手にすることなく、お姉系のみゆきに恋をする。誠人はみゆきたちと海に行って、そのナイスバディなみゆきの水着姿に見とれるシーンまである。なのに誠人が静流と交友は続けるあたりは、現代的というか、鈍感というか。
▼以下ネタバレ注意▼
誠人が静流の気持ちになんとなく応えるのは、物語の中盤だ。静流は「キスの写真作品を撮りたいの」と誠人をそそのかし、「作品のため」という理由でチューをする。非常にありえない展開である。そして、その際に静流はメガネをはずす。そのとき誠人ははじめて静流の可愛さに気づくのだ。宮崎あおいなので、もちろんえっらい可愛いが、このときの彼女の表情も恐ろしい媚び方である。そして、誠人のクソみたいな鈍感ぷりに大笑いできる。
このチューのあとにいきなり静流は姿を消す。そして、社会人になって手紙が来て、会うためにNYに渡航すると実は静流はもう死んでいたという怒濤の展開になる。気を取り直して誠人が静流の個展に行くと、彼女の作品は世界中のいろんなひとのキスを撮った写真で、そのなかに誠人と静流のチュー写真もある、という流れだ。そしてさらに、発育した静流は大人っぽいセルフポートレートも掲示している。それを見てドキドキする感じの誠人。しかし時既に遅しということだ。この流れを考えるに、結局、誠人は“かまやつ女”をぜんぜん好きになれないというオチである。この映画は、かまやつ女ターゲットのはずなのに、最後でも思いっきりダメ出しするんだよね。
また、最後に静流が誠人に残した手紙がまたすごい。文面は「変人じゃなくて、人より少しだけオリジナルなだけ」。“個性系”爆発である。
この作品はカメラでコミュニケーションを取るという要素や、あの宮崎あおいのファッションもそうだけど、非常にサブカル的な雰囲気もある。だけども、同時にケータイ小説的な(チープな)悲恋物語のテイストがふんだんに盛り込まれていたりもする。
その結果、興行的にけっこうヒットしたのは重要なポイントだ。興収8億円で、製作費を考えればプチヒットと言える。事実、先日取材した東映のひとは「ホームランではないがこういうヒット作を連発することが大切だ」と述べていた(これは誌面にも書いた)。それはそのとおりだろう。
この作品は去年の秋公開だったんだけど、興行成績では夏公開の『ハチクロ』5億5000万に勝ってるということだ。サブカル映画(?)として『ハチクロ』を上回ってしまったと言えるだろう(公開規模はほぼ同じくらいだ)。
また、この作品はこの間の仕事で各所で訊いた話を総合するに、『セカチュウ』ヒットを受けて創られた純愛モノらしい。映画は企画から公開まで2〜3年かかるから、去年の夏から秋に純愛モノが5本くらい重なったんだとか。そのなかでの8億円だから、けっこうな支持を集めたと言える。TV局が出資していたりもしないなかでこの成績はたしかに健闘したと言えるだろう。
また、この映画はちょっと製作・配給過程が変なんだよね。広末が主演した映画『恋愛寫眞』の製作委員会は、松竹・TBS・衛星劇場・小学館・カルチェア・パブリッシャーズで、配給は松竹。その外伝小説が『ただ、君を愛してる』なのに、こっちの製作委員会は、STUDIO SWAN・東映・エイベックス・小学館・スカパー・ウェルシンク・SWANフィルムパートナーズで、配給が東映。STUDIO SWANは製作会社IMJの子会社。出資者がぜんぜん違うし、配給まで違う。監督やキャスティングなどもまったく違う。どういう経緯があったのかは知らない。松竹が製作・配給に乗らなかったのだろうか。
まぁこういうふうに、映画単体としてはともかくとしても現象としては非常に面白い作品だ。秋には東宝がケータイ小説原作の『恋空』を公開するんだけど、こういう映画がヒットするってことは、『恋空』も変な出来じゃないかぎりは当たることが推察できる。
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■[映画]『神童』監督:萩生田宏治(2007年)
●成海璃子と松山ケンイチの存在感が際立つ佳作
監督は『クロエ』などの萩生田宏治、脚本は『リンダ リンダ リンダ』の向井康介。原作はさそうあきらの同名マンガ。主演は松山ケンイチと成海璃子。
音大を志す浪人生・ワオと、天才的なピアノの能力を持つ女子中学生・うたが出会う。年齢の離れた十代のふたりが、音楽を介して交友を深めていく。
それなりに良い出来の映画ではある。
クラシック音楽と透明感のある映像がとてもいい雰囲気を出しているし、主演のふたりの存在感もあり十分最後まで飽きずに観られる。ただ、それゆえにもったいない点もいくつか目についた。
▼以下ネタバレ注意▼
いちばんの見どころは、もちろんピアノの演奏シーンである。だが、ここのインパクトがあまり感じられなかった。流れるような指の動きがピアノの側部に反射してシンメトリックになるという映像などは美しいのだけど、カット割りはもうちょっとなんとかなったんじゃないか、とも思う。べつにひどくもないし、退屈でもないんだけども、うたが弾いているクラシック音楽がとてつもなく素晴らしいものに聴こえたかというと、ちょっと疑問なのだ。これは僕にクラシック音楽のリテラシーがないからかもしれないけども。
原作はもう10年ほど前の作品だけど(もうそんなに前か)、細かくは思い出せないが、あの作品でいちばん印象的だったのは、メロディを魚が泳ぐ絵で表現しているところだった。これはたしか夏目房之介さんも褒めていたけれども、音楽をヴィジュアルだけで表現するという点で画期的かつとても効果的だった。これによって原作ではうたの天才性=神童っぷりが見事に出ていたのだが、それほどのインパクトは映画からは感じられなかった。
また、原作ともっとも違う大きな点は、うたが小学5年生ではなく中学2年生くらいだったことである。原作では青年と子供の関係だったが、映画ではワオとうたは、恋愛とも友情ともつかない関係である。うたはワオに恋をしているが、ワオはうたを子供扱い。だけどもそれがちょっと不自然だったかな。それはうたを演ずる成海璃子の顔立ちがあまりにも大人っぽいためだ。
物語の展開は、多少説明不足の部分はあった。たとえば、うたの病気がメニエル氏病であることは、たしか観ているかぎりでは説明されなかった。
もうひとつ中途半端だったのは、うたに恋する同級生の男の子だ。彼の出演量が中途半端だった。彼の存在感を消してワオとうたの関係を煮詰めるか、もっと登場させてうたの等身大的な日常性を描いたほうが良かっただろうと思ってしまう。ラストで、彼が倉庫裏でひとり佇むシーンはとても印象的だったのでそこがちょっと惜しかった。
もうひとつこの映画のもったいないところは、空間の拡がりがぜんぜん感じられなかったことだ。あの倉庫やワオの部屋、うたの父親の部屋など、ピアノが置いてある場所ばかりだから屋外のシーンがぜんぜんない。ラストでやっとそれは感じられるんだけども、逆に唐突にすら思えた。冒頭はワオとうたが公園で出会うシーンなんだけど、そこを多用すりゃ良かったのにとか思う。
とかなんとか思いつつ、悪くない映画なのは間違いない。それは、やっぱり成海璃子と松山ケンイチの存在感とお芝居に尽きる。キャストは素晴らしいのだ。とくに成海璃子の魅力が爆発だ。ああいう凛々しさを持つ女優は他にはいない。彼女を言い表すなら「瑞々しい透明感」という感じではなく、「凛然とした存在感」という感じだろうか。あの世代では、明らかに群を抜いた演技力の彼女は、確実に女優として大成するだろう。
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