
2008/10/28/Tue
■[Hit!][ART][another view]chim↑pom「ピカッ」パフォーマンス騒動について
現代美術グループ・chim↑pomが、広島現代美術館での展覧会に際して、広島市の上空で飛行機の煙を使って「ピカッ」という文字を書いたパフォーマンスをしたところ、被爆者団体から抗議に合って謝罪し、展覧会も自粛する結果にいたった。
広島で生まれ育った僕にとって、こうした即座の謝罪や自粛発表まで含めて、それはヒロシマではありがちな、どこか見た光景でしかなく、正直「ヒロシマ的予定調和またひとつ完成」という感じである。
ゲリラでやる以上は謝罪しては元も子もないし、そんなヒロシマ的予定調和を招きたくなければ、事前に上手く交渉すれば良かっただけの話だ。少なくとも、原爆語りに疑義を呈することがタブーと化している街・ヒロシマで、一朝一夕には問題提起することなんてできるわけがない。60年以上続いているタブー=思考停止の街なのだから。
しかし、その後におこなわれた蔡国強による、原爆ドームそば(厳密には市民球場となり)での「黒い花火」プロジェクトは、滞りなく終わったようだ。花火を使うため、一定地域を出入り禁止にするために警察などの協力が必要だったことや、chim↑pomの件があったので被爆者団体にも事前に説明していたのだろう。
被爆者団体も、chim↑pomについては、「事前に一言いってくれればいいのに」と話しているように、それがあれば、こういう事態は避けられた可能性がある。広島の被爆者団体とは、複雑な政治性を等閑視しつつも(これが思考停止の最たる点だが)、「悲しみ」の一点が共通したうえでの共同性であるから、それはトラウマの共同体と言える存在だ。その点では、解放同盟や在日韓国人の団体が、差別の体験を共同性の担保としていたのと近しい。
そういう団体が、ときには言論封鎖も辞さない構えで強い権力を持っているのがヒロシマで、そんな彼らの面子を潰すようなことを無鉄砲にすれば、当然怒るに決まっているし、今回のように即座の謝罪・自粛に追い込まれるのは当然の帰結だ。
要は、そういう被爆者団体の意見がすべてではないにもかかわらず、そこに権力が集約されて自由な議論が封殺されている状況が、ヒロシマなのである。僕が思考停止の街=ヒロシマと評するのはこういうことを指している。
僕なんかはそういうヒロシマにいまもむかしもうんざりしているのだけど、結局chim↑pomの行動はそういうヒロシマの不自由性を打破しようとして、逆に再強化してしまった印象を持つ。そこが非常につまらない。
被爆者団体も話し合いに赴けばしっかりと耳は傾ける。おうかがいをたててたとえ決裂しても、そこでの立場・意見の違いを事前に説明することが大切なのである。なぜならば、(被爆者団体も含めた)一般のひとたちが現代美術を簡単に理解できるはずないのだから、突然それを見せられれば彼らにとっては嫌がらせにしか感じないのだ。彼らの面子を維持することは、戦略として必要だったのだ。
そこで生じている齟齬というのは、現代美術と被害者感情という、まったくもって噛み合わないふたつのフレームのズレで、そのズレを合致させる努力が事前に必要だったということである。
chim↑pomや広島現代美術館の学芸員のひとは、被爆者団体の権力をまったくもって想定できてなかったからこそゲリラでやったのだろうけども、ヒロシマをよく知る者にとってはそれは自殺行為に近い。こうなるに決まってる。
まぁただ、当事者に取材したいところでもある。取材に行ったら、chim↑pomには「こういう事態(被爆者団体の権力)が想定できなかったのか?」、美術館には「どういう圧力喰らったの?」、被爆者団体には「結果として言論封鎖をしていることに対して自覚はあるの?」って突っ込むのだけど。僕がそこまでできるのは、祖母の兄弟が3人原爆で亡くなっているからだ。
しかし、こういった記事を載せる媒体がないだろう。東京のメディアのひとは、そこまでこの一件を大きな出来事だと思っていない。現代美術の注目度はその程度だし、ヒロシマの扱いもその程度。この一件はネタとして弱すぎる。なにより、それに付き合う気骨のある媒体や編集者は、現状ほとんどいないだろう。もちろんこれまでchim↑pomをプッシュしていた『美術手帖』などが取り上げるだろうが、こうしたヒロシマの内情までどれほど切り込めるかはあまり期待できない。文芸誌にジャーナリスティックな取材能力は、期待するのは酷な気もするので。
そういうふうに世論も巻き起こせない程度の一件なので、すぐにみんな忘れて、広島はヒロシマとしてこれからも続くのだ。元広島市民としては、げんなりな一件である。
○関連
・ヒロシマに起きた天災
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20071229/p1
・8月6日ということ









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