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2010/01/01/Fri

[]『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』監督:サーシャ・ガヴァシ(2009年)

監督:サーシャ・ガヴァシ/製作:/レベッカ・イェルダム/製作総指揮:サーシャ・ガヴァシ、クリス・ソース/撮影:クリス・ソース/編集:ジェフ・レンフロー、アンドリュー・ディックラー/音楽監修:デイナ・サノ/出演:スティーヴ・“リップス”・クドロー(アンヴィル)、ロブ・ライナー(アンヴィル)、ラーズ・ウルリッヒ(メタリカ)、レミー(モーターヘッド)、スラッシュ(ガンズ&ローゼズ)、トム・アラヤ(スレイヤー)、スコット・イアン(アンスラックス)/北米配給:Abramorama/日本配給:アップリンク/原題:"ANVIL! THE STORY OF ANVIL"/2009年10月24日/81分

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 そろそろ公開終了。

 80年代前半に一世を風靡したヘヴィメタルバンド・アンヴィルの現在を追ったドキュメンタリー。エンタテインメントとして十分面白いが、気になる点もあった。

 カナダのロックバンド・アンヴィルは、80年代前半にメタリカなどとともにメタルロックを盛り上げた存在だった。現在も人気のあるバンドの多くがアンヴィルに影響を受けるほどの存在だったが、当のアンヴィルはその後まったく売れなかった。それから20年以上が経ち、結成時からのメンバーである、ギター&ヴォーカルのリップスと、ドラムのロブ・ライナーは、給食の宅配や建設作業員の仕事をしながらバンド活動を続けていた。

 監督のサーシャ・ガヴァシ(スピルバーグの映画『ターミナル』の脚本)は、若き日にローディーとして彼らのツアーを回ったこともある大のアンヴィルファンだという。彼が、アンヴィルの中心メンバー2名をはじめ、彼らの家族、ファン、スタッフなどを取材し、ヨーロッパツアーや日本のイベントにも同行して創り上げたのがこの作品だ。

 メンバーのふたりは、泣き言や愚痴をそれほど言わない。売れないことへの苛立ちはあるようだが、自分たちが目指すヘヴィメタルと真摯に向き合っているように見える。彼らの家族や多いとは言えないファンたちは、それを暖かく見守っている。

 この映画がエンタテインメントとして十分な一般性を持つのは、彼らの音楽性=ヘヴィメタルを前面に出さず、「一世を風靡したミュージシャンのその後」という点にのみポイントを絞っているからだ。だからこそアンヴィルの姿は、他ジャンルのミュージシャンやクリエイターにも重ねて見ることができる。

 そんな彼らの姿は、それほど痛々しくはない。彼らは十分な大きさの家に住み、家族とも上手くいっているように見える。実際、過去に成功しているので富も名声も一度は獲得している。好きな音楽も、細々とではあるが続けているし、ヨーロッパや日本からも呼ばれるだけの需要はある。なにより、ヴォーカルであるリップスがとても楽天的な性格で、深刻に悩んだりはしない。

 だが、巧妙に隠蔽された「痛い」点もある。それは彼らの音楽性だ。アンヴィルの音楽やパフォーマンスは、それがいかに時代遅れかは特段ヘヴィメタに詳しくなくてもわかる。むかしながらのゴツゴツとした威圧的なサウンドやリリック、そして露悪的なパフォーマンスは、とても時代錯誤だ。だから、アンヴィルがいくら一時代を築いたとしても、現在売れるはずがない。なにより、ラストに映される日本で行われた「ラウドパーク」でのグダグダのライブパフォーマンスを見ると、技術的にも問題がある。

 そんなアンヴィルを長年支え続けるファンもいる。たとえば、長年彼を応援しているファンのひとりで、ブルーザー・ブロディのような風貌の中年男性が言う。「メタルは、鬱憤を晴らす最高の音楽さ!」と。もうひとりのファンは、電話販売サービスの会社の副社長で、お金に困っているリップスを雇う。この会社の様子が映されるのだが、これが凄まじい。SPAMに近い無差別電話営業なのである。

 このふたりは、言葉は悪いがひどいボンクラで、ルックス的にもかなり厳しい。そして彼らの日ごろの鬱憤を晴らすのが、アンヴィルの音楽なのである。

 そして、この作品はしばしば6月に公開された映画『レスラー』(→レビュー)と似ていると指摘される。実際、ミッキー・ロークとリップスの風貌や、元スターのその後を描いた点は似ている。だが、『レスラー』は、生死や身体に重大な影響を与える職業としての問題も赤裸々に描き、その内容は(元)プロレスファンにとっては非常に忸怩たる思いを導く。

 映画『アンヴィル』に、そういうことはない。アンヴィルは死に向かってダイブすることはないし、売れなくとも音楽は続けるだろうし、それを応援し続ける一部のファンもいるだろう。

 だがやはり、アンヴィルという“(旧来的な)ヘヴィメタゾンビ”の姿は漏れ出てしまった。この作品の問題点は、やはり彼らの音楽性と正面から向きあっていないことだ。向きあわないからこそエンタテインメントとして一般性を獲得したが、それゆえミュージシャンを追ったドキュメンタリーとしては不徹底なのである。

 この映画を観てからちょっと後に『M-1』を観た。連続出場を続けており、毎回優勝候補と言われながらも王座を勝ち取ることのできなかった笑い飯は、今回もダントツの評価で決勝に進んだものの2位に終わった。彼らの姿にアンヴィルが重なった。

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This Is Thirteen~夢を諦め切れない男たち~

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