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2010/01/09/Sat

[][]2009年・この外国映画が面白い!

 先日書いた「2009年・この日本映画が面白い!」に引き続き、2009年の外国映画についてまとめる。対象となる作品は、昨年2009年の1月1日から12月31日までに公開された外国映画だ。

 評価基準も日本映画編と同様である。

〈1〉プロダクト(作品)としての完成度

〈2〉映画(映像)表現としての新規性

〈3〉作品テーマの新規性

 〈2〉と〈3〉は厳密には分けることはできないが、便宜的に分けている。〈2〉は表現論的な見地からの新規性で、〈3〉はどちらかと言えば社会反映論寄りの評価ということになるだろうか。

 とは言え、外国映画の上位20作品ほどは、どれも完成度が高いために甲乙はつけがたい。なので、一応は順位をつけているが、あまりそれには意味がないと思っていただいて結構である。

 また、前回の日本映画編のブックマークで、以下のようなコメントをいただいたので、ここで補足しておく。

作品の評価基準は大賛成だが、だからこそエントリ主にとっての「日本映画」の定義や、こんだけスタッフも資本も多国籍化してる中で「日本映画」の枠で「映画」を語る意義をどう考えているのかが気になった。

id:pipettesさん

 たしかに、昨年の『ノーボーイズ,ノークライ』(→レビュー)やもうすぐ公開される『彼岸島』のように、日韓共同で創られた作品は目立ってきた。また、一昨年の『片腕マシンガール』のように、外国資本で創られた日本語の映画もある。現状では、概して作品の出資比率がもっとも多い会社の所在国によって分類されるし、僕もそれに沿っているが、日本映画/外国映画という分類は、本来的には曖昧なものである。

 しかし、それでも分ける理由がある。というのも、そうしないと日本映画の出来では外国映画のなかに埋没してしまい、触れられなくなってしまうからだ。僕は、80年代から90年代に日本映画がひどい状況だったときにも、しぶとく観続けてきたほど日本映画が好きなので、やはり日本映画だけを語りたい欲求がある。

 また、日本に住むわれわれにとって、日本映画の観方は外国映画とは異なる。たとえば、ドラマやCMも含めた芸能界の動向があるからこそ、『ROOKIES』などはより楽しむことができる。その善し悪しはともかく、日本映画は外国映画と捉え方がどうしても異なる。


 話を外国映画に戻して、昨今の外国映画の状況については、1年ちょっと前に「外国映画が不振の理由」というエントリでも触れたが、むかしのようにヒットしにくい状況になっている。しかし、一昨年も昨年も外国映画の質は充実しているし、東京が世界各国の映画をもっとも観られる都市であることにも変わりない。日本の映画人口は北米の12%ほどなのに、公開本数は北米よりも200本近く多いのだ(明らかに公開しすぎなんだが)。

 というわけで、以下15位から発表していく。ご自身が観賞される際の目安にしていただければ幸いだ。


●15位『フロスト×ニクソン』監督:ロン・ハワード(東宝東和)

D

・レビューなし。

・ウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領にインタビューをする、イギリスのテレビ番組司会者フロスト。両者の駆け引きがあたかもボクシングかのように描写される。

・インタビューにおける政治的な議論などが面白いわけじゃない。二人の男性俳優のぶつかり合いと、当時の海外メディアの有り様が面白い。

・このフロストってひとは、日本で言えば久米宏とか古舘伊知郎みたいなひとだろうか。もともとはバラエティ番組の司会者だけども、政治畑に転身しようとしている。しかも、イギリスからアメリカへ。番組の製作費を自分で捻出するとか、そういうあたりが山師的で面白い。

・ニクソンを影響力を増す一方のテレビとの関係で語ったのが斬新。

・ウォーターゲート事件についての知識がないひとは、事前に知っておいたほうがいい。

・演出はロン・ハワードなので、超安定している。

・個人的にも、あのインタビューの駆け引きが面白かった。フランク・ランジェラ演じるニクソンのノラリクラリとしたかわし方が絶妙。ああいうひといるんだよね。そして、それをいかに崩すかがインタビュアーのテクニック。


●14位『シリアの花嫁』監督:エラン・リクリス(シグロ、ビターズ・エンド)

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・レビューなし。

・2004年のイスラエル映画。2004年モントリオール世界映画祭グランプリ受賞作品。

・現イスラエル領の旧シリア領ゴラン高原に住むアラブ女性が、シリアの男性のもとに嫁いでいく一日を描いた話。

・久しぶりに集合する家族のなかにはロシア人女性と結婚した長男がいたり、シリアの新大統領を支持する運動家の父親がいたりする。嫁いでいく娘は、シリアに渡るとイスラエルへ戻ることはできなくなる。

・前半は家族の話が描かれ、後半は軍事境界線での一悶着。イスラエル側、シリア側双方が、政治的な理由を持ち出してなかなかことが進まない。

・国際政治に翻弄されるひとりの女性を描いているのだけれど、一方で彼女の父親は政治運動をしているので、その女性が単に弱くてかわいそうな存在という捉え方も簡単にはできない。宗教や政治は、彼女たちの日常とは決して切り離せないものである。

・複雑なテーマを扱っているが、それほど雰囲気が重くない。結婚式に向かうから、いろいろ問題はあるけれど登場人物たちは、みんなけっこう明るい。ダルデンヌ兄弟に見習ってほしいな、と(笑)。

・これが04年の本国公開から5年経ってやっと公開されたという事態は、いまの日本映画業界の一端を表している。

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●13位『九月に降る風』監督:トム・リン(グアパ・グアポ、アジア・リパブリック)

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→レビュー

・90年代中期の台湾を舞台にした青春映画。

・高校生たちの青春時代と社会=台湾プロ野球を繋げた点が見事。

・非常に観賞感が良い作品。すがすがしい気分になる。

・後に登場する「哈日族(ハーリーズー)」にも繋がる、日本のサブカルチャーの受容のされ方も、けっこう興味深い作品。

・映像が非常に美しい。

・この壁紙は素晴らしかった。

・また、やたら可愛いかった紀培慧(チー・ペイホイ)って子は、1月16日公開の映画『台北に舞う雪』にも出ていた。

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●12位『グッド・バッド・ウィアード』監督:キム・ジウン(CJ ENTERTAINMENT、

ショウゲート)

D

→レビュー

・韓国映画。1930年代の満州を舞台とした“キムチ・ウエスタン”のアクション映画。

・ひたすらエンタテインメントに徹していて、むちゃくちゃ面白い。

・昨年は韓国映画の当たり年だったが、そのなかでも重要度の高い作品。これまでの韓国映画にはなかったタイプの作品だから。

・『スキヤス・ウエスタン ジャンゴ』と比較してはならない。『ジャンゴ』が不憫に見えて仕方ないから。

ソン・ガンホはやっぱりすごい役者だってことが、とてもよくわかる作品。


●11位『チェンジリング』監督:クリント・イーストウッド(東宝東和)

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→レビュー

・1920年代のロサンゼルスが舞台。ひとり息子が失踪したシングルマザーが、必死に子どもを探しまくるという話。けっこう実話に忠実らしい。

・観たときは不完全な作品かと思ったのだけど、後になってジワジワくる映画だった。というのも、話があっちに行ったりこっちに行ったりと、構成が安定しない。でも、後になってそれが非常に意図的なものに思えるようになってきた。

・レビューでは「冗長」と表現したけれども、「しつこい」映画だ。「これでもか」と言わんばかりに映画が続く。それが異様で、そのためにジワジワくる。

・それが送り手側の意図かどうかは別にどうでもいいのだが、半年以上経ってもジワジワくるこの「しつこさ」は、やっぱり作品に力があったということ。

・映像も綺麗でよろしい。

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●10位『アバター』監督:ジェームズ・キャメロン(20世紀FOX)

D

→レビュー

・「3D元年」の真打ちの3D映画。とにかく3Dを楽しむための映画。

・10年、20年スパンで映画を捉えたときに、おそらく重要なポイントとなる作品である。

・この映画は2Dで観てもそれほど意味はない。もし単なる2Dの映画であれば、こんなに評価は高くならない。

・それゆえ、この順位はご祝儀的なところもあるが、でもこういうタイプの作品はめったにないので。


●9位『グラン・トリノ』監督:クリント・イーストウッド(ワーナー・ブラザーズ

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→レビュー

イーストウッド、2本目。

・ハリー・キャラハンのその後の姿であり、ポスト・フォーディズム時代に余生を送る、老いた元ブルーカラーの生き様を描いた物語。

・年寄りから若い者へなにを遺すか、その伝達のプロセスを描いている。

・正直、僕はイーストウッド作品で驚きを感じることはあまりなく、レビューにも書いた「ズラし」も含めて「ベタだなぁ」と思う(『チェンジリング』はそうでもないんだが)。来月公開の『インビクタス』も観たが、非常にベタ。作品から新規性を感じることはほとんどない。

・でも、上手いのは間違いない。言うなれば「極上のベタ」である。いい喩えかわからないが「高級な漬け物」みたいな感じ?

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●8位『ボルト』監督:バイロン・ハワード、クリス・ウィリアムズ(ウォルト・ディズニー)

D

→レビュー

・ディズニーのCG映画。犬のボルトが飼い主を捜すという話。

・完璧なビルドゥングスロマン

・話はシンプルなんだが、前半の伏線がラストに効く。これが見事すぎるほどに見事。

・ディズニーのベタさと、ピクサーのエッジが丁度良く溶け合っている感じ。

・『カールじいさんの空飛ぶ家』(→レビュー)よりもずっと出来はいい。『ウォーリー』とも甲乙つけがたいほどの出来。

・出来はいいんだけど、公開時期が夏休みで競合作品もあり、思ったほどはヒットしなかったんだよね。それが残念。

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●7位『レスラー』監督:ダーレン・アロノフスキー(日活)

D

→レビュー

・人気レスラーのその後を描いた作品。ミッキー・ロークが大復活。

・この後に、WWEのトップレスラーであったブレット・ハートを追ったドキュメンタリー映画『レスリング・ウィズ・シャドウズ』を観た。『レスラー』の中でゲームをやるシーンがあるが、あれはこの作品をヒントにしている。

・『レスラー』は、「男の生きざま」を描いた作品として捉えられがちだし、別にそれでもいいんだけども、僕はあるプロレスラーと、プロレスラーという職業について描いた作品として観た。

・というのも、実は、僕は小学生の頃にプロレスが好きで、会場にも足を運んでいたりした。だが、その頃観ていた外国人選手の多くはもう亡くなった。アドリアン・アドニス、ディック・マードック、アンドレ・ザ・ジャイアントテリー・ゴディ、バッドニュース・アレン等々。亡くなるには若すぎる歳で死んでいる。

・そして、この作品が日本で公開された日に三沢光晴がリンク上で死んだ。

・正直、プロレスというエンタテインメントや、プロレスラーという職業はどうなんだろう、と思わされた。生死がかかわる仕事は他にもあるし、職業に貴賎はない。とは言っても、ステロイドと鎮痛剤で身体をボロボロにしながらリングで戦うレスラーを素直に応援できるか?

・かように、プロレスファンには、忸怩たる思い導く作品である。これを観てただ感傷に浸るだけでは不十分。

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●6位『ダウト 〜あるカトリック学校で〜』(ウォルト・ディズニー)

D

・レビューなし。

・演劇の映画化。メリル・ストリープ主演、劇作家のジョン・パトリック・シャンリィの監督2作目。

・1964年のニューヨークのカソリック学校が舞台。ストリープ演じる校長が、中年の男性教師/神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)と黒人生徒との性的な関係を疑い、追求するという話。

・物語の筋はすごくシンプル。男性教師の疑惑が物語の牽引するが、主題はそこにはない。神の名のもとに「疑い」を正当化し、校長は中年教師を追い詰めていく。

・1964年という時代設定が重要。この年はカソリック教会のミサがラテン語から英語になった年。アメリカもJFKの暗殺を経て、この年に公民権法が制定され、黒人の地位が向上される。ちなみにJFKはカソリックだった。

・そのなかで、守旧派の(不寛容な)校長が、改革派の(寛容な)男性神父を追い詰めていく。カソリック学校に転校してきて、問題の渦中に置かれる子供が黒人で、そんな彼を改革派の神父が守ろうとするあたりも時代背景を表している。

・主要な登場人物は4人。見どころは、メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンの芝居。この対決がすごい。俳優の演技だけで、ここまで映画には説得力が出るというお手本のような作品。

・テーマは、深そうで実はそんなに深くない。あるカソリック教会における保守派と改革派の対立を通して、変わりゆく時代を見せる。小さな世界を描くことで、大きな世界を照らすというタイプの作品。


●5位『スラムドッグ$ミリオネア』監督:ダニー・ボイルギャガ・コミュニケーションズ

D

→レビュー

アカデミー賞作品賞受賞作。

・スラム出身のインドの青年が、テレビ番組『クイズ・ミリオネア』に出演し、勝ち進んでいくという話。その過程で、幼い頃からの彼の人生が描かれる

・実は大味な物語。だけど、それがすごく上手く映画的な処理をされている。

・タイトルにもあるクイズ番組が注目されがちだが、家族の物語であり、恋愛映画である。

・アカデミー賞がこれを受賞したのは、非常に良かった。べつにハリウッド映画でなくても、英語の映画であれば受け入れるその姿勢がフェアでいい。

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●4位『レイチェルの結婚』監督:ジョナサン・デミ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

D

→レビュー

・姉の結婚式のために、薬物治療リハビリ施設から一日出所してきたキムが、家族のなかで浮いた存在であるさまがドキュメンタリータッチで描かれる。

・これほどまでに「気まずい雰囲気」を描いた映画は、過去にあまり観た記憶がない。

・一昨年公開の是枝裕和監督の『歩いても歩いても』とよく似ている。

・母親像という点でも、『歩いても歩いても』と『レイチェルの結婚』を比較すると面白い。


●3位『チェイサー』監督:ナ・ホンジン(クロックワークスアスミック・エース

D

→レビュー

・韓国映画2本目。サスペンス映画。

・猟奇殺人犯に拉致されたデリヘル嬢を、デリヘル経営者の元刑事が捜、容疑者を追うという物語。

・映画でサスペンスをやるならこういうこと、っていうお手本のような作品。小説だったら、おそらく大して面白くない話。画と俳優の肉体力、構成の妙味で魅せる。

・この映画が良いのは、追う方も追われる方も、内面がよくわからないところ。セリフもけっこう少ない。

・犯人役のハ・ジョンウは、昨年、日韓合作の『ノーボーイズ,ノークライ』(→レビュー)に妻夫木聡とともにダブル主演もしている。この作品とは、ぜんぜん雰囲気が違う。

・監督のナ・ホンジンは、これがデビュー作だから凄い。韓国映画の層の厚さがわかる。

・なお、日本での興行成績は、30スクリーンで6000万ほどだったとか。これは、韓流スターの出てない韓国映画では、十分な結果だそうだ。


●2位『イングロリアス・バスターズ』監督:クエンティン・タランティーノ(東宝東和)

D

→レビュー

タランティーノ作品。

・ナチスを打倒するイングロリアス・バスターズが主人公かと思いきや、ナチスのランダ大佐に家族を皆殺しにされたユダヤ人女性が主人公。

・5章立てだが、タランティーノ節が1章から全開。

・粗は目につく。居酒屋のシーンが長いとかね。だけど、それも全部「仕様」に見えてしまうのがタランティーノ。バスターズも1人だけカッコよく紹介されるけど、他は紹介されないとか。ああいう意図的なデタラメもタランティーノ節。

・とは言え、それでもタランティーノ監督作品では、『パルプ・フィクション』に次いで一般性がある作品。「タラちゃん、趣味に走らずよく抑えた! 感動した!」って印象。

・クライマックスの煙に映る顔は、ホント素晴らしかった。ゾクッとしたなぁ。

・厳密に言うと、タランティーノがかかわった作品で、いちばんエンタテインメントとして面白いのは、タランティーノが脚本を書いて、トニー・スコットが監督した『トゥルー・ロマンス』。

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●1位『母なる証明』監督:ポン・ジュノ(ビターズ・エンド)

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→レビュー

・殺人罪の容疑者となった知的障害者の息子を、初老の母親が必死に守ろうとする作品。母親は自ら捜査に出る。

・完璧。そして、凄まじい。

・完成度は『殺人の追憶』よりも高い。すべてのシーン、カットに必然があり、いっさいの無駄がない。最初のシーンから凄い。

・ちょっとした仕草で、そのひとの奥行きを見せるシーンが上手いんだ。たとえば、廃品回収業者の男性が、雨のなか母親からお金(お札)を渡されるシーン。数枚差し出した母親から、男性は1枚しか受け取らない。細かいけれど、こういうところの積み重ねによって説得力が増す。そして、セリフを使わなくても、人となりを出せる。

・この映画に問題があるとすれば、それは完璧すぎるところ。完璧すぎて余剰がない。『殺人の追憶』には、何気ない余剰にゾッとするようなリアリティが潜んでいたりする。

・ポン・ジュノは、2000年に『ほえる犬は噛まない』で長編デビューし、それから、『殺人の追憶』、『グエムル -漢江の怪物-』、そして『母なる証明』と、3年おきくらいにコンスタントに発表してきたが、どれもレベルが高い。2000年代を代表する映画監督である。

DVD発売未定

今月中旬まで一部地域では上映中


 以上、甲乙つけ難いことは前述したとおり。というか、レベルが高い作品は、順位付けは無理がある。でも、ひとまず現段階ではこんな感じということで。

 ただ、観てから3ヶ月とか半年とか時間が経ってから、ジワジワ来る作品があったり、逆に、観た直後は面白くても、時間が経つとあっさり感じる作品があったりもする。3年とか5年とか経つとまた違うんだけどね。

 次に、16位以下を。リンク先は、当ブログレビュー。


・16位『THIS IS ENGLAND』監督:シェーン・メドウス(キングレコード、日本出版販売)

・17位『ジュリー&ジュリア』監督:ノーラ・エフロン(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

・18位『アンナと過ごした4日間』監督:イエジー・スコリモフスキ(紀伊國屋書店、マーメイドフィルム)

・19位『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』監督:デイヴィッド・フィンチャー(ワーナー・ブラザーズ)

・20位『エスター』監督:ハウメ・コジェ=セラ(ワーナー・ブラザーズ)

・21位『人生に乾杯!』監督:ガーボル・ロホニ(アルシネテラン)

・22位『3時10分、決断のとき』監督:ジェームズ・マンゴールド(シナジー)

・23位『湖のほとりで』監督:アンドレア・モライヨーリ(アルシネテラン)

・24位『ミルク』監督:ガス・ヴァン・サント(ピックス)

・25位『バーン・アフター・リーディング』監督:コーエン兄弟(ギャガ・コミュニケーションズ、日活)

・26位『インフォーマント!』監督:スティーヴン・ソダーバーグ(ワーナー・ブラザーズ)

・27位『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』監督:サム・メンデスパラマウント

・28位『消されたヘッドライン』監督:ケヴィン・マクドナルド(東宝東和)

△△△△△△△超えられない壁△△△△△△△

・29位『カールじいさんの空飛ぶ家』監督:ピート・ドクター(ウォルト・ディズニー)

・30位『2012』監督:ローランド・エメリッヒ(ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント)

・31位『誰がため』監督:オーレ・クリスチャン・マセン(アルシネテラン)

・32位『人生に乾杯!』監督:ガーボル・ロホニ(アルシネテラン)

・33位『あの日、欲望の大地で』監督:ギジェルモ・アリアガ(東北新社)

・34位『牛の鈴音』監督:イ・チュンニョル(スターサンズ、シグロ)

・35位『パッセンジャーズ』監督:ロドリゴ・ガルシア(ショウゲート)

・36位『ノウイング』監督:アレックス・プロヤス(東宝東和)

・37位『96時間』監督:ピエール・モレル(20世紀フォックス)

・38位『スペル』監督:サム・ライミ(ギャガ)

・39位『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』』監督:サーシャ・ガヴァシ(アップリンク)

・40位『ファッションが教えてくれること』監督:R・J・カトラー(クロックワークス)

・41位『モンスターVSエイリアン』監督:ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン(パラマウント)

・42位『ATOM』監督:デヴィッド・バワーズ(角川映画、角川エンタテインメント)

・43位『くもりときどきミートボール』監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー(ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント)

(以上、追加することあり/2010年11月15日現在)

 この43作品は、どこか必ず秀でている点がある作品だ。これ以外は、そこそこの出来か、あるいはダメな映画かということである。

 なお、他にも面白い作品は確実にある。以下、観逃した作品を列挙する(公開順)。

 『キャラメル』『花の生涯〜梅蘭芳〜』『ダイアナの選択』『ザ・バンク 堕ちた巨像』『子供の情景』『ウェディング・ベルを鳴らせ!』『夏時間の庭』『路上のソリスト』『サガン -悲しみよ こんにちは-』『マン・オン・ワイヤー』『扉をたたく人』『セントアンナの奇跡』『ココ・シャネル』『キャデラック・レコード 〜音楽でアメリカを変えた人々の物語〜』『ココ・アヴァン・シャネル』『リミッツ・オブ・コントロール』『私の中のあなた』『狼の死刑宣告』『パイレーツ・ロック』『ジェイン・オースティン 秘められた恋』『脳内ニューヨーク』『戦場でワルツを』『カティンの森』『ずっとあなたを愛してる』。


 ワースト作品はもちろんあるのだけれども、外国映画を特別に取り上げても、日本語で書いてもさしたる面白みはないのでやめる。また、そんなに外さなかったので、ワーストと呼べる作品も少ない。挙げるとしても、やっぱり『DRAGONBALL EVOLUTION』と『ザ・スピリット』になってしまうので。


●総評

 興行成績については2月頭くらいに恒例の分析エントリを書くので、ここでは内容についてのみ。

 上位15本のうち、アメリカ映画は9本、韓国映画が3本、イギリス映画・台湾映画・イスラエル映画が各1本。僕は広島の老舗ミニシアター・サロンシネマで青春期を過ごしたので、非ハリウッド映画もよく観る傾向にある。そして、その分ハリウッドメジャーの作品が減る。北米でメジャー配給だった作品も、『ボルト』、『グラン・トリノ』、『アバター』、『チェンジリング』、『フロスト×ニクソン』と、アメリカ映画9本中5本のみだ。

 しかし、去年のアメリカ映画は面白かった。それは『アバター』に尽きるところもある。やはり、こういう作品はハリウッドからしか出てこないものだ。ちなみに、『アバター』は世界レベルで記録的なヒットを続けており、既に全世界・オールタイムの興行収入で史上2位に躍り出た。3Dなので単価が高いという理由もあるが、日本も含めてこれからさらにヒットすると見られる。

 そうした歴史に残る大作の一方で、イーストウッド作品が2本あったり、ディズニー(ピクサー)のCGアニメが安定していたり、インディペンデントではタランティーノがちゃんとエンタテインメント作品を送り出したりと、バラエティに富んでいた。

 また、外国映画の買い付け金額(MG)が2000年代に入って急騰したことは、以前べつのエントリでも触れたが、そのために、いま日本で公開される非英語圏の映画は厳選されており、レベルが高いものばかりの印象がある。

 たとえば、台湾の『九月に降る風』やイスラエルの『シリアの花嫁』、デンマークの『誰がため』、イタリアの『湖のほとりで』などがそうだ。来週1月16日から公開されるスウェーデン映画『ミレニアム〜ドラゴン・タトゥーの女〜』も、ものすごく面白い(年末に発表された各ミステリー大賞で、原作がどれも上位に来ていたので知名度も高まった)。

 ただ、フランス映画にむかしほどの勢いがない。『96時間』や『サガン』を観逃して言うのもなんだが、90年代は、リュック・ベッソンをはじめ、レオス・カラックスにジャン=ジャック・ベネックス、ジュネ&キャロ、フランス人ではないがクシシュトフ・キェシェロフスキなど、フランス映画がとても面白かった。ルイ・マルもまだ現役だったし、アキ・カウリスマキが『ラヴィ・ド・ボエーム』でパリを舞台にした。ヌーヴェルヴァーグ作品の影響を受けた監督が多数いたのである。

 あの時代に比べるとフランス映画は配給本数も減り、2000年代からは韓国映画が増えた。たしか、2003年頃には日本で公開される外国映画で2番目に多いのは韓国映画になっていたはずだ。

 昨年の外国映画でもっとも大きなトピックは、この韓国映画の当たり年だったということだ。

 韓国映画は、2000年代になってから急激に面白くなり、日本でも『シュリ』(2000年)や『JSA』(2001年)、『ブラザーフッド』(2004年)、『僕の彼女を紹介します』(2004年)、『私の頭の中の消しゴム』(2005年)、『四月の雪』(2005年)とヒットが続いた。だが、2006年以降の韓流ブームの退潮や日本映画人気とともに、急速にヒットしなくなった。

 2000年代前半のこれらの映画には、ある傾向があった。たとえば『シュリ』や『ブラザーフッド』、『シルミド』などは南北関係における軍事アクション映画、『JSA』や『トンマッコルにようこそ』も南北関係のなかでの理想を描いた作品、『僕の彼女を紹介します』や『私の頭の中の消しゴム』はメロウな恋愛映画であり、タイプが偏っていた。それゆえ飽きられたところもある。

 しかし、昨年の韓国映画には、『グッド・バッド・ウィアード』という非常にユニークな作品があった。これまでの韓国映画にはなかったタイプなのである。

 『母なる証明』と『チェイサー』はミステリーだが、これらはポン・ジュノの『殺人の追憶』や、パク・チャヌクの『復讐者に哀れみを』や『オールドボーイ』の流れにあるもの。日本では、ホラー映画やシリアスなサスペンス映画はヒットしない状況が続いているが、これらは日本の人気ミステリー小説原作の映画よりもずっと面白い。

 他にも、『映画は映画だ』(→レビュー)という低予算の野心作や、日韓合作の『ノーボイズ,ノークライ』(→レビュー)など、韓国映画は確実に厚みを増している。日本映画よりも数段レベルは上、というか、おそらくハリウッドに次いでレベルが高い状況にある(むかしはこのポジションがフランス映画だったのだが)。

 なぜ韓国がこうした水準になったかというと、まず国が積極的に支援してきたことが挙げられる。韓国国立映画アカデミーは25年の歴史を持つが、ポン・ジュノやホ・ジノなどを送り出した。中長期的な視野に立って蒔いた種が、しっかりと結実しているのである。

 次に、国内のマーケットが限定的なことがかえって映画人のモチベーションを上げているところもある。韓国の人口は約4800万人で、日本の38%ほどだ。映画人口は日本とほぼ同じ1億5000万人ほどだが(つまり、ひとりあたり平均年に3回以上映画館に足を運んでいる)、平均入場料金は日本の半分ほどであり、DVDレンタルやセールスのマーケットも日本ほど大きくはないために、大作が国内だけで十分な収益を得ることは容易ではない。

 それもあって、韓国映画は海外市場を視野に入れた創りをする。それは日本やヨーロッパでのヒットを狙うということもあるが、リメイクも狙っている。たとえば、『イルマーレ』は既にリメイクされたし、『私の頭の中の消しゴム』もリメイクが決定、『チェイサー』はレオナルド・ディカプリオがリメイク権を獲得したと報じられた。『猟奇的な彼女』や『私の頭の中の消しゴム』が、日本でドラマとしてリメイクされたのは周知の通り。日本のように、ドメスティック市場で充足できないがゆえに、かえってクリエイションへのモチベーションが高いのだと推察できる。

 今年は、昨年韓国で大ヒットした『海雲台(해운대=ヘウンデ)』という作品が公開されると予想される(ただし、未公開のままになる可能性もある)。これは「韓国初のディザスタームービー」と銘打たれた作品で、トレイラーを観るとどうやら津波ものらしい。「海雲台」とは地名で、釜山の東にあるリゾート地である。

 ディザスタームービーでは、昨年ローランド・エメリッヒ『2012』が記憶に新しいが、ハリウッドでは定番のジャンルだ。自然災害が少ないヨーロッパではあまり創られないが、日本ではディザスタームービーの歴史は長い。もちろんそれは『日本沈没』があるからであり、より遡れば『ゴジラ』も天災みたいなもの。天災が多い国だからこそ生まれる表現も独自に展開し、それによって特撮技術も発展した。最近でもリメイク版の『日本沈没』や『252 生存者あり』などがヒットした。

 ただ、周知の通りリメイク版『日本沈没』や『252』は酷い出来である。それに対して、「韓国初のディザスタームービー」の『海雲台』がどれほどの出来になっているのか。ポン・ジュノが『グエムル』で怪獣映画にチャレンジして、しっかりとしたものを残したようになるのかどうか。そういうところが観どころである。

 と、ちょっと韓国映画について長々と書いてきたが、それくらい昨年は韓国映画の当たり年だったということである。