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2010/04/19/Mon

[]『17歳の肖像』監督:ロネ・シェルフィグ(2009年)

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 1961年のロンドンを舞台に、16歳の女子高生と30代の中年男性との恋愛を描いた物語。原作はイギリスのジャーナリスト、リン・バーバーの回想録。非常にウェルメイドな青春映画。

 16歳のジェニー(キャリー・マリガン)は、名門・オックスフォード大学を目指す優等生。ある日、彼女がチェロを抱えながら雨に濡れて帰っていると、30代半ばの中年男性・デイヴィッド(ピーター・サースガード)に声をかけられる。彼は、「君のチェロが心配だ」と言葉たくみにジェニーを車に乗せ、家まで送る。その後、デイヴィッドは厳格なジェニーの両親も上手く取り入り、彼女とともにパリ旅行などもする……。

 なにか特別な新しさがある映画ではない。まだ社会を知らないひとりの少女が、経験豊かな中年男性にコロッといってしまうというもの。それでもこの作品がとても魅力的なのは、登場人物や当時の社会風俗がとても丁寧に描かれているからだ。

 ジェニーは、日々の生活に退屈している。厳格な父親(アルフレッド・モリナ)は彼女を名門大学に入学させたいと思っており、校長(エマ・トンプソン)や担任教師(オリヴィア・ウィリアムズ)も優等生の彼女に期待している。一応の彼氏(マシュー・ビアード)もいるにはいるが、なんだか彼はイケてない。そんななか、彼女はシャンソンを聴き、パリに憧れ、真っ当な将来をなんとなしにつまらなく感じている。

 デイヴィッドは、そんな彼女の前に現れる。はじめてのデートに誘う際、ユーモアやウィットを織り交ぜた巧みな話術で生真面目なジェニーの父親もあっという間に篭絡する。次に彼は、オックスフォード大学の見学ということで、お泊り旅行の許可も出させてしまう。そして、オークション会場、ドッグレース、そして盛り場と、ジェニーの知らない世界を体験させる。

 デイヴィッドは、当初から怪しげだ。1961年とは言え、30代半ばの男が16歳の少女を熱心に口説く時点で、とにかく怪しい。仕事もなにをしているかはわからないし、彼の友人たちもなんだかチャラチャラしている。ジェニーはそんな彼らをじゃっかん訝しげに思いながらも、刺激的な彼らとの交友を満喫する。

 撮影当時22歳だったキャリー・マリガンは、無邪気なジェニーを見事に演じている。凄いなと思わせるのは、その笑い方だ。彼女は、「エヘヘへ」と子供っぽい笑い方をする。彼女の一挙一動は、なるほど中年男性がナンパするだけの魅力がある。

 実話とは言え、1961年という舞台設定も絶妙だった。当時は、まだビートルズはデビューしておらず、イギリスにはまだまだ保守的な空気が流れていた時代だ。この作品では、ファッションや家具、自動車など、当時の雰囲気が見事に表されている。それは50年前の建物や道路が現存しているからこそ可能だった、イギリスならではの描写だ。

 また、原題が"An Education"であるように、これはひとりの少女をめぐる「教育」の物語だ。この作品が凡百の青春映画と異なるのは、彼女に教育を施す大人たちの姿をしっかりと描いているからでもある。彼女の父親や学校の教師がジェニーに厳しく当たるのは、彼女のことを思ってのことだ。それが、後半しっかりと描かれる。

 かように、特段に斬新なところはないが、それでも十分に満足できるとても良くできた映画だ。

監督:ロネ・シェルフィグ/製作:フィノラ・ドワイヤー、アマンダ・ポージー/製作総指揮:ジェームズ・D・スターン、ダグラス・E・ハンセン、ウェンディ・ジャフェット、デヴィッド・M・トンプソン、ジェイミー・ローレンソン、ニック・ホーンビィ/原作:リン・バーバー/脚本:ニック・ホーンビィ/撮影:ジョン・デ・ボーマン/プロダクションデザイン:アンドリュー・マッカルパイン/衣装デザイン:オディール・ディックス=ミロー/音楽:ポール・イングリッシュビー/出演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパーロザムンド・パイク、アルフレッド・モリナ、カーラ・セイモア、エマ・トンプソン、オリヴィア・ウィリアムズ、サリー・ホーキンス、マシュー・ビアード、アマンダ・フェアバンク=ハインズ、エリー・ケンドリック/日本配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/英国配給:Koch Entertainment、北米配給:ソニー・ピクチャーズ クラシックス/原題:"An Education"/2010年4月17日公開/100分

An Education

An Education

AN Education

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[]『アリス・イン・ワンダーランド』監督:ティム・バートン(2010年)

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 ティム・バートン監督の3D映画。『不思議の国のアリス』をモチーフに、19歳のアリスが「不思議の国」に迷い込む物語。ティム・バートンらしさが随所に出ている佳作だが、3Dの特性を活かしきれていない。2Dで観ればより楽しめるはず。

 イケてない男の求婚から逃げ出した19歳のアリス(ミア・ワシコウスカ)は、うさぎの穴に落ちてしまう。そこは「アンダーランド」と呼ばれる不思議の国だった。不思議の国は赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)に支配されており、マッドハッター(ジョニー・デップ)は、預言の書に書かれた救世主としてアリスを待っていた。そして、マッドハッターはアリスを連れて白の女王(アン・ハサウェイ)のところへ向かうが……。

 ティム・バートンらしい奇妙な世界観を3Dで体験できるということで、やはり期待は大きかった。が、すごく中途半端な出来になっている。それは、そもそもは予定されていなかった3D映画にしてしまったことが最大の原因だ。

 3Dとしての失敗とは、あの頻繁なカット割りだ。会話のシーンなどでは、登場人物が相互に映される。2Dであれば通常のカット割りだが、3Dで観ている観賞者は意識を散らされてしまう。カットが替わるたびに、画面の奥行き感覚がリセットされ、観賞者は新たな奥行きに眼を慣らすことを要されるからだ。カットが替わっても、被写界深度(奥行きのボケ具合)が一定ならば違和感がなかったはずだが、カット割りで画角も奥行きも違うので、カットが替わるたびに脳内リセットがかかる。

 ストーリーも、こうしたカット割りに集中力を奪われ、なかなか頭に入ってこない。物語は決して複雑ではなく、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をモチーフとしているので、わかりにくくはない。しかし、映像に気を取られて物語に集中できないのだ。結論的に言えば、この作品は3Dで観ないほうがいい。2Dで十分、というよりも2D向きだ。

 物語構成は、完全に不要なキャラクターがひとりいる。白の女王だ。邪魔ではないが、いなくても物語は成立する。あるいはアリスが白の女王のポジションに収まるようなシナリオにもできたはずだ。もちろんそれは、アリスをジャンヌ・ダルクとして描きたかったバートンの意図には適合しないのだが、白の女王の存在がやはり唐突なのである。

 ティム・バートン独特の世界観は、十分に堪能できる。チェシャ猫や双子の兄弟などのCGで創られたの生き物だけでなく、マッドハッターやアン・ハサウェイ演じた白の女王の衣装やメイク、そしてなによりも顔だけが大きい赤の女王の珍妙さなどたまらない。クライマックスに登場する兵士たちの造型も非常に良い。が、しかし、残念なのはラスボスのデザインだ。これがまるでバートンらしくなく、凡庸なモンスターなのだ(あの階段落ちのイヤらしさは面白いのだけど)。

 かように、この作品は3Dとしてはイマイチだけれども、ティム・バートン作品としてはそれなりの佳作となっている。周囲には「2Dで観たほうがいい。と言っても、どうせ3Dで観るだろうけど」と薦めているが。

 最後に、このこの作品が反面教師的に教えてくれたのは、『アバター』(→レビュー)が、いかに3Dに特化した創りをしていたかということだ。カット割りや被写界深度と画角の一定化など、『アリス〜』が見せた3D表現の課題はとても多い。

監督:ティム・バートン/製作:リチャード・D・ザナック、ジョー・ロス、スザンヌ・トッド、ジェニファー・トッド/製作総指揮:クリス・レベンゾン/原作:ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』/『鏡の国のアリス』/脚本:リンダ・ウールヴァートン/撮影:ダリウス・ウォルスキー/衣装デザイン:コリーン・アトウッド/編集:クリス・レベンゾン/音楽:ダニー・エルフマン/シニア視覚効果監修:ケン・ラルストン/出演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイ、クリスピン・グローヴァー、マット・ルーカス/声の出演:アラン・リックマンマイケル・シーン、スティーヴン・フライ、ティモシー・スポール、ポール・ホワイトハウス、バーバラ・ウィンザー、マイケル・ガフ、クリストファー・リー/制作プロダクション:Roth Films、The Zanuck Company、Team Todd/日米配給:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/原題:"Alice in Wonderland"/2010年4月17日公開/108分

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