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2010/04/27/Tue

[]『シャッター アイランド』監督:マーティン・スコセッシ(2010年)

※英語版トレイラー

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 スコセッシ&ディカプリオコンビの新作。閉鎖空間サスペンス。作品じたいはけっこう面白い。が、「謎解き」を強調する宣伝手法や、上映前に流される「読み解きヒント」など、非常に下劣な宣伝が観賞者をミスリードに誘う。とにかく宣伝が最悪で、結果として作品の品位も落としてしまった。

 時代は1950年代。孤島“シャッターアイランド”の精神病院で、ひとりの女性患者が行方不明となった。保安官のテディ(レオナルド・ディカプリオ)は、相棒のチャック(マーク・ラファロ)とともにこの地に来て聞き込み捜査を始める。テディは放火で妻を亡くしており、その犯人がこの病院にいることを知って行方を捜す。一方で、テディは病院がなにかを隠しているのではないかと嫌疑を抱く。

 前述したように、この作品は最悪の宣伝をしている。意図的に観賞者に「謎解きミステリー」としての観方を促す。それがあの不出来な日本版トレイラー(→リンク)だけならまだしも、本編が始まる前に作品読解のヒントまで入れる。「あなたは、これから騙されますよ」と、強制的に映画の観方を示唆するのだ。

 おそらくこれは、映画を観ても理解できないひとたちの「意味がわからない」といったクチコミを、配給・宣伝サイドが想定し、それを避けるためだと考えられる。だが、それはマーケティング的にどれほど正解だったのか?

 その戦略は、映画にふだん親しんでいる観賞者をミスリードに誘う。これは、ブログやYahoo!映画、はたまた2chなどに書き込むような、それなりに熱心な映画ファン=クオリティユーザーを大切にしていないということである。ロジャースの流行理論で言えば、アーリーアダプターがクチコミ伝播の端緒となるが、こういう層を大切にしなかったのだ。

 それよりもこの宣伝が狙ったのは、下品な言い方をすれば「おバカさんの下の世話」だ。しかし、彼らが見なす「おバカさん」は情報のハブにはならないし、公開2週目、3週目を維持するクチコミとして機能しない。そもそも、こうしたタイプの映画が少なくない昨今、彼らは本当に「おバカさん」なのだろうか?

 この映画は、吹き替えを「超吹替え版」と謳う宣伝など、現在客の入りが悪い外国映画に注目を集めようと必死だが、そのマーケティングはどれほど機能しているのか。

 なお個人的には、映画を観てこんなに腹立たしい気持ちになったのは、はじめてかもしれない。映画がつまらないなら時間を無駄にした徒労感に襲われるだけだが、今回は、映画内容とはべつのところで観賞体験が損なわれたことに対して、頭にきた。それは、これまで味わったことのない、腹立たしさである。

▼▼▼▼以下ネタバレあり▼▼▼▼

 ここからは内容について。

 一言で述べると、本作は叙述トリックを使ったサイコサスペンスだ。すべては精神病院の患者である主人公の妄想という話。だからこそ、この作品のポイントは、謎解きなどにはない。この映画が描いているのは、悲しい過去から抜け出せないひとりの男の物語だ。

 このトリックには、気づくひとはかなり早い段階で気づく。僕が気づいたのは、上映開始1時間が経ったあたりだろうか。上映前のアナウンスがなければもっと早く気づき、そして、その上で男の苦悩を描いた作品として観ることができたのだが。

 叙述トリック作品は、『シックス・センス』以降、非常に増えた印象がある。去年公開の『パッセンジャーズ』もそうだし、日本映画でも『アフタースクール』やいま公開している『×××××××××』など、有効に機能している作品が多い。しかし、叙述トリックを考えなしに使っただけであれば、観賞者をひどい徒労感に追いやるだけだ。たとえば、先日まで公開されていた『ランニング・オン・エンプティ』のように。叙述トリックは、その技巧とテーマが上手く結びついてこそ効果を見せる。

 この作品は、原作がそもそも叙述トリックを用いており、それを映像化したものだ。テーマとトリックの結びつきはある程度機能しているが、彼の懊悩を表わす映像(たとえば、前半にある夢で妻と抱き合うシーン)などは、より工夫が必要だったのではないか。深い懊悩によって引き起こされた個人の倒錯を描いた作品なので、あの部分の工夫がより必要だった。もっと言うならば、トリックや妄想の描写を必要とするこの原作は、スコセッシ向きのではなかったようにも思う。

 とは言え、作品自体は悪くない。だからこそ、あの宣伝がひどくもったいない。

監督:マーティン・スコセッシ/製作:ブラッドリー・J・フィッシャー、マイク・メダヴォイ、アーノルド・W・メッサー、マーティン・スコセッシ/製作総指揮:クリス・ブリガム、レータ・カログリディス、デニス・ルヘイン、ジャンニ・ヌナリ、ルイス・フィリップス/原作:デニス・ルヘイン『シャッター・アイランド』(早川書房刊)/脚本:レータ・カログリディス/撮影:ロバート・リチャードソン/プロダクションデザイン:ダンテ・フェレッティ/衣装デザイン:サンディ・パウエル/編集:セルマ・スクーンメイカー/音楽監修:ロビー・ロバートソン/出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレーミシェル・ウィリアムズ、エミリー・モーティマー、マックス・フォン・シドーパトリシア・クラークソンジャッキー・アール・ヘイリーイライアス・コティーズテッド・レヴィンジョン・キャロル・リンチ、クリストファー・デナム/制作プロダクション:Phoenix Pictures、Appian Way Productions、Sikelia Productions/日米配給:パラマウント/原題:"Shutter Island"/2010年4月9日公開/138分