
2010/05/02/Sun
■[映画]『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』監督:三池崇史(2010年)

2003年に公開された『ゼブラーマン』の続編。前作同様のユルいヒーローものだが、プロダクトとしてミスが散見される。ただし、主人公の敵役である仲里依紗の魅力が爆発しており、それだけでも十分見ごたえはある。
舞台は、前作から15年後の2025年。東京は、新都知事・相原(ガタルカナル・タカ)によって、ゼブラシティと名を変えていた。そこでは朝と夕方の5分間だけ、警察官が市民を銃撃してもいい「ゼブラタイム」が施行されており、犯罪率は激減した。世間では、都知事の娘で、ゼブラクイーンこと相原ユイ(仲里依紗)が歌手として大人気だった。そんなある日、過去にゼブラーマンとして騒がれた市川新市(哀川翔)は、ゼブラタイムに警官から銃撃される。大怪我をしたものの、彼はレジスタンス組織の浅野(井上正大)に助けれる。浅野は市川の教え子だったが、髪が真っ白となっている市川は過去の記憶を失っていた……。
前作は、平凡なユルい日常がどんどんシビアになっていく流れだったが、今作はその逆。ディストピア世界の過酷な状況から始まるが、クライマックス以降急激にユルくなる。こうした硬軟の奇妙な同居=B級性は、明確にこのシリーズのコンセプトであり、送り手が意図するところでもあると思われる。そしてある程度は、それが達成されている。
今作においてそれを成立させた最大の貢献者は、間違いなく圧倒的な存在感を見せるゼブラクイーン=仲里依紗である。この作品の実質的な主人公がゼブラクイーンだと言っても、まったく過言ではない。仲里依紗は、先日公開された実写『時をかける少女』(→レビュー)に続き、その演技力でしっかりと映画の見どころを作っている。
それは仲里依紗が、美女だからではない。以前にも触れたが、彼女は決して美女ではない。ときどきひどくブサイクな顔も見せるなど、表情がクルクルと変わる。いろんな顔ができる。この作品では、露出の激しいボンデージスタイルに、目元を真っ黒に塗ったメイクをし、ひどく挑発的な笑顔や底なしの悪意を見せる。戦闘シーンでは、歯をむき出しにしたりする。
歌手として登場するPVは、「セクシー」よりも「猥雑」という言葉が似合う出来だ。このPVは、ハッキリ言って、非常にウサン臭い。しかし、仲里依紗が臆することなく思いっきり演じたことによって、ウサン臭さが反転して強い説得力を見せている。これまで高校生の役が目立っていた彼女だが、こうした現実離れしたキャラクターも見事にやりきったのである。
それはもちろん彼女だけの力ではなく、PV監督や三池監督が彼女の魅力を完璧に見抜いたから可能になったことだ。たとえば、それはPVで彼女の腰から太もものあたりが抜かれたカットや、三池監督が彼女の下半身を重点的に押さえていることからとてもよくわかる。これは非常に正しい。凡百の監督なら、あのオッパイばかりに気を取られるが、それはやはり違う。
仲里依紗は下半身である。レザーのニーハイブーツから溢れ出る、ムッチムチの太もも霜降り肉。仲里依紗の膝上から股下までは、「絶対領域」ななどいった生ヌルいものではない。「神領域」である。三池監督は、そのことをとてもよくわかっている(まぁ、オッパイのサービスカットもあるけども)。作品のなかでの存在感は、同じく三池監督の『ヤッターマン』(→レビュー)における深田恭子演じるドロンジョよりも、確実に上である。
ただ、いくら仲里依紗が素晴らしくても、映画として面白いかと言うと、そうではない。物語の詰めは甘い。しかも、ゼブラクイーンの詰めが、極めて甘い。
ゼブラクイーンは、ボンデージスタイルの外見がキャットウーマンを連想させ、絶対的な悪として人格タイプが『ダークナイト』のジョーカーを感じさせる。それ自体は悪くない。問題なのは、それが徹底されていないことだ。
▼▼▼▼以下ネタバレあり▼▼▼▼
中盤で判明するが、ゼブラクイーンはゼブラーマンが遠心分離機にかけられ、善と悪に分割されたときの悪の結晶である。それゆえ彼女は、白ゼブラーマン(白髪の哀川翔)が銃撃されたときは自らも苦しんだりし、また「お前は私、私はお前」と白ゼブラーマンに吐き捨てたりする。ゼブラーマンの負の部分だけ集めた分身が、ゼブラクイーンなのである。
この設定であれば、このふたりは相手を攻撃することが、すなわち自分を攻撃することになる。もし相手を殴れば自分も痛いはずだ。が、中盤以降、ふつうに闘ってる。じゃあ前半の銃撃シーンで、ゼブラクイーンが痛がっていたのはなんだったの?
そして、このふたりはクライマックスを前に、(非常にくだらない下ネタで)再統合=合体する。しかし、ゼブラクイーンは「絶対悪」である。ジョーカーなのである。「絶対悪」がなぜ安々と「絶対善」と寝るのか? その時点で、「絶対悪」などではない。それは、善と悪の遠心分離に失敗していたということでしかない。だから、セックスによって善と悪が再統合されるという理屈ならば、あそこはレイプじゃなきゃおかしいのだ。もちろん、そんな描写はできない。ならば、この展開を見直さなきゃダメなのだ。
ただ、こうした理屈はそれほど大きな問題ではない。そもそもB級映画ならば、それは揚げ足取りでしかない。実際、こうした問題は、仲里依紗の存在感がかなり吹き飛ばしてくれる。この作品は、彼女の凄まじい存在感を堪能するしかない映画だ。
しかし、仲里依紗だけを観ていると、今度はべつの決定的な欠点が浮揚する。それは、映画のラスト約20分間にゼブラクイーンが登場しなくなることだ。これが最大のミスだ。
この映画の実質的な主人公は、怪我を負って記憶喪失のままぼんやりしてるゼブラーマンではなく、父親殺しという非道なことまでもするゼブラクイーンだ。そんな彼女が、ゼブラーマンに再統合されるから、その時点でお役御免となり、最後の20分間いない。なぜ最後まで見せないのか?
もちろん、残り20分のグダグダの展開は、非常に意図的なものだ。合体からあのテロップの出るギャグ(ダダすべり)、そしてラスボスの倒し方(これまたダダすべり)まで、「ゼブラクイーンいないし、ヒーローものの形式だけ通して適当に終わらせましょう」というもの。その意図はすごくよくわかる。しかし、それは5分でちゃっちゃとやること。せめてあと15分間、主人公を見せなければ。
つまりこの映画は、仲里依紗の存在感が爆発しているのにもかかわらず、そっちを切り上げて作品としてのまとめを取ったわけだ。しかし、それはB級映画として二流だ。理屈はどうでもいいから、快楽原則で突っ走れば良かったのだ。ゼブラクイーンを最後まで描かなかったのは、B級映画というコンセプトを徹底できなかったということでしかない。
監督:三池崇史/企画プロデュース:平野隆/プロデューサー:岡田真、岡田有正、服部紹男/脚本:宮藤官九郎/音楽:池頼広/美術:坂本朗/主題歌:ゼブラクイーン『NAMIDA〜ココロアバイテ〜』/出演:哀川翔、仲里依紗、阿部力、井上正大、田中直樹、ガダルカナル・タカ/製作:TBSテレビ、東映、毎日放送、電通、毎日新聞社、WOWOW、小学館、木下工務店、中部日本放送、東映ビデオ、ビンゴ、OLM、RKB毎日放送、ハピネット、Yahoo! Japan/制作プロダクション:セントラル・アーツ/配給:東映/2010年5月1日公開/106分
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