
2010/07/04/Sun
■[映画]『ボローニャの夕暮れ』監督:プピ・アヴァティ(2008年)
イタリアの“巨匠”と呼ばれるベテラン監督が、ひとつの家族を第二次世界大戦を挟んだ15年間に渡って描いた作品。主演のシルヴィド・オルランドは、第65回ヴェネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞。しかし、3時間の話を無理やり1時間54分にまとめた印象を抱かせる、非常に忙しない映画であった。また、ケータイ小説とそっくりなのが非常に興味深い作品である。
1938年、イタリアの中都市・ボローニャ。高校教師のミケーレ(シルヴィオ・オルランド)は、同じ学校に通う一人娘・ジョヴァンナ(アルバ・ロルヴァケル)が人気者の同級生に恋していることに気づく。しかし、母親のデリア(フランチェスカ・ネリ)は、地味な娘がそんなイケメンと上手くいかないと思っている。ある日、女友達・マルチェッラのパーティーに行ったジョヴァンナだったが、イケメンが自分と踊ってくれないことに傷ついて塞ぎこむ。その数日後、学校である事件が起きる……。
ミステリーかと思いきやそんなことはなく、映画は崩壊していく家族を順を追って描いていく。同時に、戦況も悪化し、家族はバラバラになっていく。
この映画、中盤から恐ろしく駆け足だ。シーンが変わっても、状況の説明などほとんどなく登場人物は終始話しまくる。次のシーンでもいきなり話しまくる。これが延々と続く。それはとても単調だ。また、登場人物の内面が描写されるシーンなどはない。登場人物がどういう思いのもとそのような行為に至ったか、ほとんど説明的な描写はない。登場人物の表情から感情を読み取れということかもしれないが、シーンもカットもコロコロ変わるから、そんな余韻はさっぱりない。物語的にも、母親のデリアの描き込みが不足しており、彼女の行動理由が意味不明である。
結局、この映画で描かれているのは、出来事のみなのだ。シーンがあって、人間がいて、情報だけをやりとりする。そこには、登場人物の関係性や彼らの行為の動機などは、あまり描かれない。これは、ケータイ小説(とその映画)と酷似している。そこが興味深い。
なぜこういう表現が可能になるのか?
おそらくそれは、登場人物に観賞者各自の有する知識(≒記号的なパターン)を代入することで、その動機や感情を補足するからだ。よって、作品の中で登場人物の感情や動機、そして関係性などが描かれなくても、この映画は成立するわけだ。もちろんそのパターンとは、世代や社会(文化)によって異なるが。
ケータイ小説が共感ベースだったのは、こういう構造(事件のみが生じ、読者のクラスタが共通していた)があったからだが、この映画も中高年男性の主人公の行動を描くことで、観賞者の中高年男性は各自持つ知識(記憶)を代入することで共感可能になる。逆に言えば、中高年男性以外に面白いと思える可能性がなかなかない映画だ。ふつうの映画として観れば、駆け足で説明不足な駄作でしかないからだ。
そして、こうした限定的なクラスタ相手の共感ベースの物語は、非常に慰撫的になる。ケータイ小説は、「取り返しのつかないことばかりですが、私は元気です」といった記憶の読み替え(「ポジティブシンキング」とも言う)だったが、この作品も同様である。
中高年男性は、娘を守るためにひたむきに生き続け、やはり彼は報われる。最後など、まったくもって意味不明に報われる。なんだそれ?って言わんばかりに報われる。
つまりこれは、単なる世界の狭い年寄りでしかない“巨匠”が、優しく慰撫されたい中高年男性の感涙を誘う映画なのである。実際、マスコミ試写にいらっしゃるお年を召された映画評論家と覚しき中高年の方々が、しみじみと「いい映画だった」と話していた。評論家がそんなことでいいのかどうかはさておき、そういう映画なのである。そしてまた、こんな映画が『恋空』などを嫌悪してそうな客が集まるアート系シアターで上映されているのも、とても面白いと思う。
監督・原案:プピ・アヴァティ/製作:アントニオ・アヴァティ/脚本:プピ・アヴァティ、アントニオ・アヴァティ/撮影:パスクァーレ・ラキーニ/音楽:リズ・オルトラーニ/出演:シルヴィオ・オルランド、フランチェスカ・ネリ、アルバ・ロルヴァケル、セレナ・グランディ、エッジオ・グレッジオ/日本配給:アルシネテラン/イタリア配給:Medusa Film/原題:"Il papà di Giovanna"=「ジョヴァンナの父」/2010年6月26日公開/104分
■[映画]『しあわせの隠れ場所』監督:ジョン・リー・ハンコック(2009年)
金持ちの白人一家が貧しい黒人少年を援助するという、実話ベースの「深イイ話 in USA」。主演のサンドラ・ブロックが、アカデミー賞とラズベリー賞の主演女優賞をダブル受賞。ひねりのないベタな話だが、「実話」という担保がさまざまに機能してしまうタイプの映画。
巨漢の黒人少年、マイケル・オアーは、運動神経は抜群で大人しい性格だが、家庭は貧しくホームレスになりかけていた。スーパーマーケットを経営する夫や子供たちと裕福な生活を送っているリー・アン・テューイ(サンドラ・ブロック)は、薄着で冬の夜道を歩くマイケルを見かけて思わず声をかけ、家まで招き入れる。当初は食事と暖を与えていただけだったが、彼女は優しいマイケルの性格を知り、アメフト部に入れ、家庭教師をつけ、そして養子として迎える。
これが実話であることは、冒頭で説明される。マイケル・オアーは、ドラフト1巡目でNFLに入団するほどの選手だ。彼がそれにいたるまでの流れを描いたのが、この映画だ。それは、なんともひねりないの話。ただ、実話という担保がそこに批判を許さない仕組みになっている。
たとえば、マイケルをはじめ、テューイ一家もみんな善人だ。マイケルと同い年で、アン家の一人娘・コリンズ(リリー・コリンズ)も素直にマイケルを受け入れる。一方で、この映画には、悪いひとがほとんど出てこない。スラムにあるマイケルの実家周辺にたむろする黒人たちも、悪者だとは描かれない。こうした描写は、偽善くさくも感じる。たしかにそのとおりなのかもしれないが、あまりにも上手く話が転がりすぎるからだ。
もう一点気になったのは、リーがマイケルを養子として迎え入れる決め手とした人格調査だ。このテストによって、マイケルの保護意識がとても強いという数値が出る。逆に言えば、マイケルの人格が悪ければ、リーは受け入れない可能性もあったということだ。
この映画には、政治的な揶揄をする描写もいくつか出てくる。サンドラ演じるリーが、スラムの役所に行って長く待たされるシーンがある。怒った彼女が「責任者を出しなさい!」と窓口の女性に怒ると、その窓口の女性は壁を指さす。そこにはブッシュ元大統領の写真がある。また、マイケルにつける家庭教師(キャシー・ベイツ)が、リーからオファーを受けた後に声を潜めて言う。「実は私、民主党員なの。それでもいい?」と。
これらは、「白人の金持ち=保守派の共和党員」というイメージをちょこっと皮肉ってるわけだ。そこには、一応この映画をただのイイ話では終わらせないような意図が感じられる。日本映画じゃありえない描写ではある。
ただ、結局このように格差や社会政策をいろいろ揶揄しても、その主張はアメリカ社会の推進力として再利用される印象を受ける。もちろんそれはいい方向に働くこともあるんだけど、なんだかマッチポンプ的にも見える。こういう実話があって、それを感動作として送り出しても、社会制度を変えないことにはこれからもマイケルのような存在は生まれてくる。そして、この映画はマイケルを一例を通して、アメリカ社会の問題を抜本的に解決する主張を盛りこんではいない。そこが偽善くさい。
が、もう一方の見方としては、これを大ヒットするベタな物語にし、そこに共和党や資産家への皮肉も混じえ広く伝えることで、これで十分な役割も果たしたとも言える。ただ、この皮肉もちょっとだけだから、免罪符に見えなくもない。そこにはマイケル・ムーアやオリバー・ストーンのような怒りもない。
なんにせよ、こういう小さな“深イイ話”を相変わらずアメリカ人は好きなんだな、ということはよくわかる作品だ。
監督・脚本:ジョン・リー・ハンコック/製作:ギル・ネッター、アンドリュー・A・コソーヴ、ブロデリック・ジョンソン/製作総指揮:モリー・スミス、ティモシー・M・バーン、アーウィン・ストフ/原作:マイケル・ルイス『ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟』(ランダムハウス講談社刊)/撮影:アラー・キヴィロ/音楽:カーター・バーウェル/出演:サンドラ・ブロック、クィントン・アーロン、ティム・マッグロウ、キャシー・ベイツ、リリー・コリンズ、ジェイ・ヘッド、レイ・マッキノン、キム・ディケンズ、キャサリン・ダイアー、アンディ・スタール、トム・ノウィッキ/制作プロダクション:Alcon Entertainment/日本配給:ワーナー・ブラザーズ/北米配給:ワーナー・ブラザーズ/原題:"The Blind Side"/2010年2月27日公開/128分
![]()
しあわせの隠れ場所 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/07/21
- メディア: Blu-ray
- 購入: 2人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
![]()
- 作者: マイケルルイス,河口正史,藤澤將雄
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2009/11/25
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 54回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
購入: 1人 クリック: 66回












![bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD] bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51aaQS5SVCL._SL75_.jpg)








![ハート・ロッカー [DVD] ハート・ロッカー [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51QFCD0ZiUL._SL75_.jpg)








![ズームイン!!から生まれた感動リアルストーリー 書道ガールズ甲子園 汗と涙の舞台裏 [DVD] ズームイン!!から生まれた感動リアルストーリー 書道ガールズ甲子園 汗と涙の舞台裏 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51Tq7WWkCvL._SL75_.jpg)

![(500)日のサマー [DVD] (500)日のサマー [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ZzHE4k3pL._SL75_.jpg)



![ゼブラーマン [DVD] ゼブラーマン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/415TAGE6BPL._SL75_.jpg)
![ゼブラミニスカポリスの逆襲 [DVD] ゼブラミニスカポリスの逆襲 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51G-Wt68pOL._SL75_.jpg)
![ゼブラーマン [DVD] ゼブラーマン [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51uAaULORoL._SL75_.jpg)



![シャッター アイランド [DVD] シャッター アイランド [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51GYj9CG%2BML._SL75_.jpg)











![17歳の肖像 コレクターズ・エディション [DVD] 17歳の肖像 コレクターズ・エディション [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/510W8gg0cFL._SL75_.jpg)
