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2010/07/05/Mon

[]『ザ・ウォーカー』監督:ザ・ヒューズ・ブラザーズ(2010年)

D

 崩壊した世界で一冊の本を持って西へ向かう男を描いた物語。終盤のアクションシーンなど見どころはあるのだが、テーマの掘り下げや物語の展開など、全般的に中途半端。もっと面白くなったはずなのに、もったいない作品だ。

 崩壊した世界で、黒人の中年男性・イーライ(デンゼル・ワシントン)は、世界に一冊だけとなった本を持って、アメリカを西に向かって歩く。容赦なく暴徒が襲うが、彼は長い刃物で切り捨てる。イーライがある町に立ち寄ると、その町の独裁者・カーネギー(ゲイリー・オールドマン)が、その本を奪おうとする……。

 カーネギーがこの本を欲するのは、ひとびとの心をコントロールする兵器となるという理由からだ。一方で、イーライはひとりで静かにこの本を読む。

 もちろんこの本は、“アレ”である。なぜか宣伝では日米ともに明らかにしないが、それは中盤で明らかになるし、タイトルからも予想はつく。やはり“アレ”なのである。イーライがその本を大切に持って歩くのも、一冊だけならば説得力はある。一方で、カーネギーはそれをひとびとを支配するための「兵器」だと認識する。彼の姿は、もちろん昨今のアメリカ、つまり熱心な福音派だったブッシュへのアイロニーとして観賞者に受け止められる。

 一冊の本で成立した社会、その本によって癒され赦される社会、そしてときにはそれが兵器となってしまう社会――この映画がテーマとしたのは、この本の西洋社会における強力な価値である。

 が、しかし、その掘り下げが足らない。結局、その本をめぐって男たちが右往左往しているだけだ。結局この本は、機密文書程度の役割しか持っていないような描写に留まっている。

 一方で、この映画はそれなりに見せ場のあるアクションシーンが盛り込まれている。ひとつが、イーライの長ナイフによる立ち回りであり、もうひとつが後半の銃撃戦だ。とくに銃撃戦は、ワンシーンワンカットで手持ちカメラがかなりのスピードで動く。これはかなり見ごたえがある。しかし、それくらい。ほかに良かったのは、そのアクションシーンで登場する不気味な老夫婦くらいか。

 まとめると、崩壊した世界(アノミー状態)の倫理の掘り下げも足らないし、一方でアクションサバイバル映画としても中途半端。さらには、ラストに明かされるあの“ビックリ”も、物語上は機能しているものの、もう一段階ヒネリが欲しかった。なんだか、あのラストを導くためだけに置かれていたようにしか見えないからだ。だってさ、覚えてるなら、大事に本を運ぶ必要あるのかな?

 企画としては申し分ないと思うのだけど、小さく中途半端にまとめてしまい、もったいないなぁと思ってしまう作品だ。

監督:アレン・ヒューズ、アルバート・ヒューズ(ザ・ヒューズ・ブラザーズ)/製作:ジョエル・シルヴァー、ブロデリック・ジョンソン、アンドリュー・A・コソーヴ、デヴィッド・ヴァルデス、デンゼル・ワシントン/製作総指揮:スティーヴ・リチャーズ、スーザン・ダウニー、エリック・オルセン/脚本:ゲイリー・ウィッタ/撮影:ドン・バージェス/プロダクションデザイン:ゲイ・バックリー/衣装デザイン:シャレン・デイヴィス/編集:シンディ・モロ/音楽:アッティカス・ロス/音楽監修:デヴァ・アンダーソン/出演:デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン、ミラ・クニス、レイ・スティーヴンソン、ジェニファー・ビールス、フランシス・デ・ラ・トゥーア、マイケル・ガンボントム・ウェイツ、エヴァン・ジョーンズ、ジョー・ピングー、クリス・ブラウニング、リチャード・セトロン、ラティーフ・クラウダー、マルコム・マクダウェル/制作スタジオ:Alcon Entertainment、Silver Pictures/北米配給:ワーナー・ブラザーズ/日本配給:角川映画、松竹/原題:"The Book of Eli"/2010年6月19日/118分

Book of Eli

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