妥協しない選挙戦

 細川護煕氏は徹頭徹尾、脱原発を主眼において選挙戦を戦った。後半戦は現行の行政体制をそのまま保持するという趣旨の演説も混ぜてはいたが、あくまで脱原発、特に原発再稼働を阻止して、原発ゼロを維持しながらオリンピックを実現すると繰り返し明言された。 元総理、しかも、自民党政権を倒しアメリカと対等に渡り合った方が「原発再稼働阻止」を高らかに掲げて選挙戦を戦ったのだ。細川氏が現役の頃を知る年齢で政治に興味がある人なら、これに血沸き肉踊らないわけもない。
 だが、私は選挙戦に入る前から創価学会が総力戦で挑んでいることが分かっていた。恐らく都知事選史上最高の人・モノ・カネの動員をしただろう。選挙戦中盤に創価学会反核の広告を全国紙に打った。広告費は3億円とも言われている。反核なのだが、脱原発ではないところがミソであり、マスメディアに対するあめ玉であり、資金力を使った言論統制でもあったのだろう。創価学会以外の宗教票も宗教法人許認可を抱える東京都知事選では団結する。当然、自民・公明の地方議会も名簿を駆使して票を固めた。この岩盤票に対抗するのは至難の業であり、風を吹かし無党派層の山を動かさなければ勝てなかった。

 福島夫妻と共産党宇都宮健児候補に肩入れして、後に社民党吉田党首が一本化を呼びかけたが、もはや後の祭りだった。私は宇都宮氏には疑義がある。ツィッターにはさんざん書いた。まとめてかいたら、それこそ「弁護団を組織」されちゃうので、仔細は書かない。国会前の集会で保守系議員に罵倒を浴びせる共産党の在り方にも疑問がある。
 一つだけ言えば、細川氏は「森の長城プロジェクト」で瓦礫を埋めていた人で、共産党社民党は瓦礫焼却に賛成してきた勢力である。脱被曝という点では細川氏が的確な対応をしてきたということが分かるし、どちらの勢力が本当の脱原発を遂行する胆力があるのか、深く考えるまでもない。
 細川陣営の主体は海江田万里民主党である。菅直人総理-海江田経産大臣(当時)は仙谷由人の裏をかいて稼働中であった浜岡原発3・4号機の停止を実現した。野田政権では仙谷由人-枝野幸男経産大臣(当時)は大飯原発3・4号機再稼働を遂行した。宇都宮健児凌雲会議員の仙谷由人枝野幸男らに献金し、パーティ券を購入していた。デモクラTVのインタビューによると弁護士会会長として「立法をお願い」する都合上、自費で購入していたそうだ。立法はお願いするけども、原発再稼働阻止はお願いしないのであるから、宇都宮のいうところの脱原発とは言うだけの「脱原発風味」な政策でしかない。
 海江田民主党細川氏の主張を理解した上で支援に踏み切った。電気・鉄鋼労連を抱える連合が離反しても、細川氏を支援した。この意義は大きい。将来の政界再編の先駆けとなる動きである。
 さすが「殿」と言われるだけの御仁である。終盤戦敗色が濃くなっても主張を曲げなかった。脱原発で突き進んだ。選挙は残念な結果だったが、種火は残った。核燃廃絶に向けて決定的な文章を書いてみようと思う。脱原発運動の敗北は極論すると人類文明崩壊の引き金となりかねないのだから。