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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2017-09-23

感謝

実は9/13に電子情報通信学会 ソサイエティ大会で、電子情報通信学会 エレクトロ二クスソサイエティ賞を頂きました。

まだ、今年の受賞者は学会のWebに掲載されていませんが。

受賞タイトルは「多値NAND型フラッシュメモリSSDシステムへの応用に関する先駆的研究」です。

一部、東芝の時に行った多値フラッシュメモリの回路設計も部分もあるけど、基本的にはここ10年間、大学で行ってきたフラッシュメモリのSSDシステムへの応用、誤り訂正システム(ECC)に関する成果を評価して頂きました。

大学での研究では旗を振っているだけで、実際に研究をしているのは学生や研究員の皆さんです。

大学で10年やって来て、このような成果に至ったのは、人に恵まれたためです。一緒に戦ってきてくれたみなさん、研究の場を与えて下さった東芝、東大、中央大学、研究を支援して下さっている秘書さんはじめ多くの方々に心から感謝します。

ECCの研究では、竹内研の初代学生であり、東大の総長賞を取りISSCC/IEDMで5度発表した田中丸周平君、中大に移ってからは、ISSCCのSilkroad Awardを受賞した徳冨司くん、小林惇朗君、出口慶明君、その他にも多くの優秀な学生のおかげで受賞となりました。

また、フラッシュメモリを開発することになったのは、大学の時に先輩のオマケで会社訪問した時に、当時東芝の舛岡富士雄先生と出会ったから。

舛岡先生との出会いが無ければ、今の自分もありませんでした。

そして、東芝に入社してついた上司の田中智晴さん(現在、マイクロンジャパン)。

まさに天才設計者と言える方で、自分では一生追いつくことができない、生涯の師匠と勝手に思っています。

もしフラッシュメモリに関してノーベル賞が出るとしたら、フラッシュメモリのコンセプトを発明した舛岡先生と、ビット毎ベリファイなどフラッシュメモリの動作方式、回路を発明した田中智晴さんが受賞されると良いのではないですかね。

自分は大した才能はありませんが、もしあえて自分に取り柄があるとしたら、こうした天才たちを見抜くことができる。そして、徹底的に天才たちについて行くことかな(たとえそれが学生であっても)。

東芝で指導頂いた先輩方や、一緒に研究をしてくれた学生たちの代表として、たまたま私が受賞になったわけですが、この賞は到底自分だけのものではないです。

いま古巣の東芝メモリが大変なことになっているように、浮き沈み、いろんなことがあった冒険ですが、一緒に戦ってきてくれたみなさんに、感謝の曲を!

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最後に、受賞の対象となった研究は大学でやって来た研究の一部にすぎません。ストレージクラスメモリを使ったハイブリッド・ストレージシステムなど、まだまだ私たちが発展させなければいけない分野はたくさんあります。

これからも頑張りましょう!

また、東芝メモリはウエスタンデジタルからの訴訟など、厳しい状況が続くと思いますが、こんなことでへこたれる人達ではないと信じています。

今まで何度も逆境はあって、それを乗り越えてきたのだから。

頑張って下さい!

2017-09-13

アップル、iPhone Xの発売と東芝メモリへの出資の相似形

アップルからiPhone Xの発売が発表されました。前の機種との違いは、有機ELを使った全画面ディスプレイ、無線給電、顔認証のよるロック解除やモバイルSuica搭載など。

どうやら顔認証などのために機械学習専用のLSI(AIアクセラレータ)が搭載されたようなのが、興味深いです。Siriもローカル(iPhone)で音声認識するのですかね。iPhone Xの登場によって、端末がAIなどの高度な処理を行う、本格的なエッジコンピューティングの時代の幕開け、となるのかもしれません。

さて、アップルがiPhoneの商売では、フラッシュメモリを高く売ることで利益を上げているというブログを4年前に書きました。

iPhoneではアップルはフラッシュメモリを10倍高く売って儲けている

今回新発売になった、iPhone X、iPhone 8S、iPhone 8のフラッシュメモリは64ギガバイト、256ギガバイトと2種類のモデルがあります。

2つのモデルではフラッシュメモリ以外には(ほとんど)何も変えてないと思いますので、iPhoneの256ギガモデルと64ギガモデルの価格差は、(差分の)192ギガバイト・フラッシュメモリの価格になるわけです。

4年前のブログでは、iPhone5Sの価格から、一般では1千円程度の16ギガバイトのフラッシュメモリを10倍の価格、1万円程度で売っていると書きました。差分の9千円がそのままアップルの儲けになっていたわけです。

今回発売されたiPhone Xでも価格を調べてみました。

 iPhone X 64ギガバイトモデル:121824円(税込み)

 iPhone X 256ギガバイトモデル:140184円(税込み)

両者の容量の違い、192ギガバイト(=256-64)のフラッシュメモリを18360円(=140184-121824)でアップルを売っていることになります。

フラッシュメモリの容量の違いによるiPhoneの販売価格の違いは、iPhone X、8S、8のいずれの機種でも同じです。

つまり、どのiPhoneで売っても、大容量のモデルさえ売れれば、フラッシュメモリ分だけでもかなり儲けることができる。

一方、フラッシュメモリを搭載したSDカードを価格.comで調べると、128ギガバイトで約4500円。192ギガバイトに換算すると、6750円となりました。

つまり、アップルはおおよそ6750円のフラッシュメモリを2.7倍の18360

円で売っていることになります。

普通にフラッシュメモリを売るよりも11610円も高く売っているわけで、これは儲かりますね・・・

4年前のブログには「こんなにお手軽に儲けてしまうビジネスモデルが、いつまで続くんでしょうね」と書きましたが、今でも続いているというわけです。おそるべし、アップル。

さて、アップルがフラッシュメモリで儲けている、というのはiPodの時代からiPhoneやiPadまで長年続いているビジネスモデルですが、以上の計算にはフラッシュメモリの原価の違いは考慮されていません。

アップルにとってみれば、フラッシュメモリベンダからメモリを安く買うほど儲けが増えます。

アップルのフラッシュメモリの購入価格はわかりませんが、大量購買の見返りに安くフラッシュメモリを買っているとすると、アップルのフラッシュメモリによる利益は、上に書いた数字以上かもしれませんね。

アップルの強みとして、iPhoneのデザインや機能が取り沙汰されますが、アップルという企業が利益を高めるには、「いかに安くフラッシュメモリなどの部品を安く調達するか」がビジネス戦略上、極めて重要になります。

ところで今朝は、iPhone Xの発売という華やかな話題の一方、フラッシュメモリ事業を手掛ける東芝メモリについても、ニュースが入って来ました。

東芝“日米韓連合”中核の米投資ファンドと優先交渉で調整へ

相手がある交渉事なので、東芝メモリの売却先については2転、3転しており、まだこれからも買収先が変わるかもしれません。

現段階で有力な売却先の候補である“日米韓連合”にはアップルが入っており、アップルは東芝メモリに3350億円を出資する意向のようです(「日米韓連合が2・4兆円最終提案 巻き返しへ研究開発費も 東芝メモリ売却で」)。

また、やり手のウエスタンデジタル(WD)が東芝メモリの経営を握ることに、アップルが難色を示しているとも報道されています(「半導体売却、アップルがWDによる将来の経営権取得に懸念 最終協議に影響も」)。

過去にWD(あるいはWDが買収したサンディスク?)がアップルへのフラッシュメモリの供給を絞ったり、フラッシュメモリの値上げをしたことに、アップルが反発しているなどと伝えられます。

アップルはアップルでお人好しのはずもなく、フラッシュメモリを大量に購買することを盾に、フラッシュメモリベンダに対してメモリを買い叩いているでしょうから、どっちもどっちなんでしょうが。

東芝メモリを誰が最終的に買収するかはまだわかりませんが、ラッシュメモリを大量に安く確保することがアップルにとっていかに重要か、iPhone Xの値付けを見ても明らかですね。

一方の東芝メモリ。

東芝と東芝メモリの利益が必ずしも一致しないので、中で交渉を頑張っておられる方は大変でしょう。

外野から報道を見ると、もはや東芝の債務超過を何とかする、という目的で東芝メモリを売るというよりは、東芝メモリの将来のために、資金があって自力で経営できる環境に東芝メモリを離脱させる、という方向に向かっているようで良かったです。

交渉事は相手もあるし時間は掛かったのでしょうけど、よくぞここまで来たものですね。

2017-08-04

夏休みは大学のオープンキャンパスに行こう

大学は変わらないようなイメージがあるかもしれません。私も企業に居た時にはそう思っていました。でも大学に転職してわかったのは、驚くほど大学自体が変わっている事。

大学は建物や教員はストックと言えるでしょうが、学生はフローです。入ったら数年もすれば出て行ってしまう存在です。また、学生の志望分野も社会の状況に応じてすぐに変わります。

この移り気な学生を獲得し続けるには、大学だって変わらざるを得ないのです。

大学のホームページをご覧になればわかりますが、今や、船舶、原子力、土木、金属といった名前の学科はかなり減っているか、消滅してしまっています。もっとも看板(名前)を変えてしぶとく生き残っている場合もありますが。

このように社会状況を反映して大学も激しく変わるので、高校生が志望先を決めることは大変です。

そういう高校生にとって、夏休みに各大学で開催されるオープンキャンパスは、その大学だけでなく様々な分野を知る良い機会になるでしょう。

大学にとっても「黙ってもお客さんが来てくれる(高校生に志願してもらえる)」時代ではないので、オープンキャンパスや学園祭などで、大学を知ってもらうための広報活動を一生懸命やっているわけです。

また、オープンキャンパスに行かれた人は気付いたでしょうが、今や親子で行くことが非常に多いですね。

それは、特に理系学部では、先に書いたように社会状況を反映して学科の名前や組織が激しく変わっており、昔の知識だけでは一体、何が何だかわからない、という事情もあるでしょう。

どこの大学のオープンキャンパスに行くか、選ぶにはコツがあって、できるだけ多くの研究室が公開しているところに行くのが良いでしょう。

研究室を主宰する教員や学生から研究の第一線の状況をただで聞ける、貴重な機会でもあるのです。

私も実は時々他大学のオープンキャンパスの研究室公開を覗いて、「AIの研究はどうやって立ち上げているのですか?」と実際に研究をしている学生に聞いて偵察したりします。

またオープンキャンパスでは公開講義や模擬授業をしている事も多い。第一線の研究者からこれも「ただで」話を聞けるのは、貴重な機会ではないでしょうか。

最近の大学の理系学部で力を入れているのは、女子学生のリクルーティング。女性の社会進出、なんて言葉が昔はありましたが、今や死語で、結婚・出産後も女性が働くことが当たり前になりました。

社会の様々な機関で女性が働く様になりましたが、それでも圧倒的に理系・技術の世界では女性は少ないのはもったいない事です。

研究開発と言うと、油にまみれたり、力仕事のようなイメージがあったかもしれませんが、今やどの分野でもコンピュータを使って開発をします。研究開発をしている現場を見ても、オフィスにコンピュータとディスプレイが並んでいるだけ、ということも多い。

もはや、女性が働けない理由などないのです。

一方、技術開発の世界では、結果が数字で表しやすく、「良いものを作った人が勝ち」の実力勝負で、女性だからと言って変な偏見も少ないと思います。

また、顧客対応などの仕事に比べれば、時間はフレキシブルに使えるので、子育てなどと両立しやすい。

むしろ技術は女性に向いた仕事ではないでしょうかね。

そうは言っても、誰もやっていない世界に踏み込むのは勇気がいるでしょう。まずはオープンキャンパスに行ってみて、実際に研究・開発の現場を見て、そこにいる女性の話を聞いてみてはどうでしょうか。

特に最近は多くの大学の理系学部では、オープンキャンパスで女性向けの相談会や説明会を開いています。実際に理系で活躍している女性に会って相談することもできるのです。

8月の週末には多くの大学でオープンキャンパスが開かれます。例えば私が所属する中央大学 理工学部でも明日・明後日(8/5,6)に後楽園キャンパスでオープンキャンパスを開催します。

電気電子情報通信工学科の女子学生・教員が中心となって、女性向けにた説明や、相談を受ける「エレ女広報部with電電相談室」もあります。

ぜひ、理工系への進学を考えている女子高校生と親御さんは、お越しになって下さい。

電気というとは、電気工事?というイメージがあるかもしれませんが、いまの社会の至る所にエレクトロニクス、ITが入り込んでいますから、裾野が広く、つぶしが効く分野です。

また、オープンキャンパスでは100を超える研究室が最先端の研究を公開します。竹内研も1号館地下1階1034号室で研究紹介を行います(知的情報処理システム研究室)。

他にもオープンキャンパスをやっている大学は多いので、夏休みにはお近くの大学を訪問し、将来の進路を考えてみてはどうでしょうか。

2017-07-09

潮目が変わって来た日本の半導体

久しぶりの更新になります。ブログを更新していないので、最近どうしたのか?、と聞かれることが時々ありますが、元気にやってます。

いまAI向けLSIというフロンティアが開けつつあり、必死でAIという新しい分野を勉強しています。何才になっても、新しいことをやるのは楽しいですね。

世界の中で市場シェアを落とし続ける日本の半導体。1990年頃に50%もあった市場シェアが、今では10%ちょっと。

韓国・台湾と言ったアジア勢の市場シェアが増加している一方、アメリカやヨーロッパのシェアは横ばいですので、日本が一人負けしているわけです。

最先端半導体では日本の最後の砦ともいえる、東芝のフラッシュメモリ事業が東芝メモリとして分社化され、売却されようとしています。

落ちるばかりで良い事なんて何にもない・・・と思える日本の半導体ですが、潮目がひょっとしたら変わってきたのではないか、と感じています。

6月に京都で開催された、半導体のプレミア学会、VLSIシンポジウムの参加者が過去最高を記録しました。

私自身はプログラム委員として、特定のテーマに関して専門家達を招いて丸一日、講演・議論して頂くショートコースの企画を担当しました。

今回のショートコースでは、機械学習向けLSI(いわゆるAIアクセラレータ)と自動運転などのConnected Carという2つの企画を行い、過去最高の参加者数でした。

参加者はなんと倍増で、当日は座席が足りるか心配になるほどでした。

参加費が数万円以上と決して安くない学会への参加者数がこれだけ増えたという事は、日本でも半導体への関心が戻ってきているのではないか。

また、学会では自動車関連メーカーやITベンダに転職した、旧知の元半導体技術者に会いました。

日本の半導体の関心が戻りつつあると言っても、以前のような半導体ではなく、日本が得意とする自動車やロボット・医療機器などIoT端末に使われる半導体、ということでしょうか。

つまり、半導体メーカーのエンジニアが半導体のユーザー企業・サービス企業に移り、システム側から半導体への関心が高まっているのではないか。

こういった半導体を巡る業界の変化は、日本だけではないでしょう。

最近話題の東芝メモリの買収に名乗りを上げる企業からもわかります。東芝メモリの買収を提案しているとされる、グーグル、アップル、アマゾンなど半導体のユーザーだった企業が、半導体を手掛けるようになっている。

学会の参加者が増えたのは、AIや自動運転車という象徴的なテーマがあることが大きいでしょうが、よりシステム側・サービスに近い企業が半導体に進出することで、再び日本でも半導体が注目される時代が来るのかもしれません。

AIでもソフト(アルゴリズム)・ハードの融合、全体最適化が重要ですが、最終的にビジネスで参入障壁を築いて利益を手に入れるのは、LSIのようなハードを持っている企業なのかもしれません。

だからグーグルやアマゾンもLSIの開発を手掛ける。

金融情報サービスを手掛けるブルームバーグが、なんだかんだ言っても端末というハードで顧客を囲い込み、儲けていることと似ているのかもしれません。

2017-05-04

ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に 最適なSSD を開発 〜 データの「価値」を判断する ことで、300 倍の長寿命化、26%の高速化に成功

CICCで発表したValue-Aware SSDに関してプレスリリースを行いました。

【概要】

中央大学 理工学部 教授 竹内 健のグループは、ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に最適な記憶デバイス(SSD)を開発しました。開発したSSD は画像データの「価値」を判定し、重要なデータは高信頼なメモリセル、重要性が低いデータは信頼性が低いメモリセルに記憶するように制御します。また、ディープラーニングを用いた画像認識では、認識精度が保てれば計算の精度は低くても影響しないことに着目し、読み出しの高速化と高い画像認識を両立する、メモリのエラーを訂正する誤り訂正回路(ECC)を開発しました。これらの制御技術の開発により、SSD の寿命(データの保持時間)を300 倍長寿命化し、SSD を26%高速化することに成功しました。

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2017-03-17

東芝のフラッシュメモリ事業をアメリカ企業に買ってもらい、「日米連合」という幻想

東芝のフラッシュメモリ事業は4/1に分社化され、東芝メモリという会社になるようです。

そして原発事業の損失の穴埋めのために、東芝メモリは完全に売却されると言われています。メモリ事業は現在絶好調の上、データセンタ用途の市場の拡大も期待されるため、売却金額は1.5-2兆円にもなると言われています。

これだけの高収益事業、しかも日本が生み出した製品ですので、むざむざと外資系にくれてやるのはもったいない。

こういう時こそ、政府系の金融機関、政策投資銀行や産業革新機構の出番ではないか、と主張し続けてきました。

これは決して東芝を「救済」するわけではなく、ましてや東芝本体の「再建」になるわけでもありません。

もう随分前から(10年以上前から)東芝のメモリ部門の独立というのは何度も取りざたされており、本来はとっくの昔に分社化・独立してIPOをすべきだったのです。

今回の政府系の金融機関やファンドから出資を受けるというのも一時だけのことで、1-2年くらいかかるでしょうがIPOによってExitを目指すべきでしょう。IPOにより「政府系金融機関の投資へのリターン」として国民にも利益を還元する。

ところで、東芝メモリの買収先を巡る報道で気になるのは、政府高官(って誰でしょう?)の話として、アメリカ企業に買ってもらいたい、日米連合、などという報道もされています。

候補となるマイクロンやウエスタンデジタル(WD)はいくつもの企業を吸収・合併してのし上がって来た企業です。

WDの現CEOのスティーブ・ミリガンなど、WDの幹部をやっていたのに辞めてライバルのHGSTに移ってCEOになり、その後HGSTをWDが買収した時にのし上がってWDのCEOになったツワモノです。

アメリカの半導体企業のトップなどこういう人達ですから、東芝メモリが買収されたら「日米連合」などになるはずありません。

マイクロンなどはメモリの開発拠点がアメリカにありますので、日本からはエンジニアのキーパーソンだけをアメリカに呼び寄せて技術を吸収し、日本は単なる製造拠点になってしまうかもしれません。

マイクロンに買収されたエルピーダメモリはそんな状態ではないですかね。

買収される側に何らかの主導権が残る、と思うのは多くの場合は幻想です。

外資系企業が買収する場合、買収先の企業の上の方のマネージャーはクビを切り、自社からマネーシャーを送り込み、買収先を支配することが普通です。決して連携でも連合でもありません。

買収した方からしたら、支配することが当然なのです。買収先が大企業であるほど、買収先の自由を許していたら、組織を統括できませんから。

だからこそ、東芝のメモリは外資系企業、特に同業他社には買収されてはいけない、と思うのです。

それは買収先の国籍によりません。買収先が中国や台湾がダメで、アメリカなら良い、という事ではないのです。

ですから、政策投資銀行や産業革新機構が東芝メモリに出資するのならば、東芝メモリの全株式の51%以上(つまりマジョリティ)を取って欲しいのです。

翻って東芝の原子力事業を考えると、買収したウェスチングハウス(WH)にそうした支配・統制をできなかったからこそ、WHの暴走を招き、現在のような悲惨な結末になってしまったのでしょうかね。

2017-02-17

東芝記者会見の異様な光景

かつての古巣の東芝のことが心配でもあり、産業界がしっかりしてくれないと大学で研究・教育をしていても仕方がないこともあり、東芝の記者会見はネット中継で見ています。

2/14の記者会見は異様なものでした。記者会見の内容は様々なところで報道されているので割愛しますが、まず質疑応答で、記者さんが「反省して下さい」「まだ隠しているんじゃないの」と怒っている。

年末の記者会見くらいから、東芝からメディアにきちんと会見の連絡さえすることができなくなり、業を煮やした記者さんたちが(勝手に)東芝に押し掛ける、ということが続いているらしい。

記者さんも人間です。企業と良好な関係があれば、記事も多少は好意的になるかもしれませんが、こうして関係が悪化してしまっては企業の方が損をしてしまいます。

実際に取材に来て下さる記者さんとお話しすると、記者さんも本当は東芝には立ち直って欲しいんだと感じます。東芝は日本を代表する企業ですし、取材で会う記者さんも、友達や知り合いに東芝に居る人も多いですから。

そして会見の内容も異様でした。

利益の8割を叩き出し、いわば一本足打法のフラッシュメモリを完全に売却することもあると発表。

東芝が発表したパワーポイントの事業の資料からはフラッシュメモリが「完全に消滅」していたので、事実上完全売却することを決めたのでしょう。

現在の東芝の時価総額が8000億円程度。フラッシュメモリ事業が独り立ちすると、1兆5000億円もの価値があるともいわれています。

単純計算すると、フラッシュメモリ以外の東芝の事業の価値は、-7000億円です。もちろん、コングロマリットディスカウントがあるので、こんなに単純ではありませんが。

いずれにせよ、一本足のメモリ事業を手放したら、大きく稼げる事業はありません。

しかし、社長さんは「廃炉や保守などの原発事業を継続し、社会的責任を果たす」と何度も強調。

企業にとって利益を叩き出すことは、社会的責任ではないのでしょうか?

もはや利益など眼中になく、原発事業を維持する目的の(国策?)企業になった、と社長自ら言っているように聞こえました。

そして社長さんの言い方も紋切型というか、投げやりで支離滅裂。

もはや社長さん自身が、自分が言っていることを信じてないのでしょうね。

考えてみればこの社長さんも、気の毒です。医療事業出身でありながら、突然、社長に祭り上げられて、「そんなに原発で責められても、自分は何も知らないし、関係ないよ」と思っているのでしょう。そう思っても社長という立場上、ひたすら頭を下げ続けなければいけない。

このようにもはや学級崩壊したような異様な記者会見を見て、東芝という企業の経営が機能しなくなっているように感じました。

社長さんは、「貸した金を返せ」という銀行に背中を突かれて、ひたすら事業を切り売りすることしか考えてないのかもしれません。

本当はアメリカのチャプター11のように、倒産を選んだ方が事業・従業員を守ることになるのでしょうが、借金を踏み倒されたらかなわない銀行としては、そんな思い切ったことができない「無難で良い人」を社長に選んでいるのでしょう。

電力事業については、様々なメディアで取り上げられているように、中国での原発事業の遅れ、ランディスギア(スマートメーター)の減損やLNGの買取契約など、まだまだ「地雷」が潜んでいると言われています。

稼ぎ頭のメモリ事業を失った後に、このような状況で東芝という企業が生き残れるのか・・・

ここまで追い詰められたら、何を残して、何を淘汰するのか、決断しなければいけない。

一連の原発問題で企業としては危機的状況ですが、好調な事業やその中で頑張る優秀な社員の方も残っています。

こうした事業や従業員の方を決して潰してはいけない。

今後の東芝の動向はどうなるのか。

記者会見では社長さんが「原発を維持して社会的責任」と述べていたように、どうも最優先は問題の原発・電力関係のようです。

これから本当に国は税金を投じて、東芝の問題事業を支えるのでしょうか?

もういい加減に、落ち目の問題事業に対して優先的に税金を投入するのはやめませんか。

例えば、産業革新機構は落ち目の企業の延命に税金を投入し続けたため、評判が悪かった。

東芝の場合は、ゾンビ化した原発事業には投資すべきではないでしょう。

一方、儲かっていて将来性もある東芝のフラッシュメモリ事業が身綺麗になって、外に切り出されるならば、産業革新機構は投資すべきではないでしょうか。

税金を投じるならば、リターンが期待できる、前向きな投資を考えて欲しいものです。

2017-01-15

中央大学 竹内研ではAI・機械学習に関するソフト・ハードの研究開発に従事する方を募集します。

竹内研では機構助教・研究補助員の公募を行うことになりました。

分野はAI・機械学習のソフト・ハードの融合領域です。

関心のある方は、ぜひ応募の方、宜しくお願いします。

以下、公募内容です。

●公募対象: 機構助教・研究補助員(1名)

●所属: 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 竹内研究室

●勤務地: 中央大学 理工学部 後楽園キャンパス(東京都文京区春日1-13-27)

●研究分野

1.脳型LSI(ニューロモルフィックLSI)

2.機械学習を高速・低電力に実行するAIアクセラレータ

3.AI/機械学習のアルゴリズムとプロセッサ・メモリ・ストレージなどのハードを融合したApproximate Computing

4.データの価値に応じてデータを保存するコグニティブストレージ

5.1000年記憶メモリと誤り訂正符号技術(ECC

 以上の1〜5のうち、1つまたは複数の研究に従事する。

 ハード・ソフトの境界領域の研究のため、専門外の方の応募も歓迎します。

 本人の希望・適性に応じて業務を決定します(上記の全てをやる必要は無い)。

●プロジェクト

NEDO「IoT時代のCPSに必要な極低消費電力データセントリック・コンピューティング技術の研究開発」プロジェクト、またはJST CREST「デジタルデータの長期保管を実現する高信頼メモリシステム」プロジェクトに従事。

●着任時期: 2017年4月以降できるだけ早期

●任期: 1年毎に更新。最長5年

●応募資格

2017年3月31日の時点で博士の学位を有する方あるいはそれに準ずる方。博士の学位が無くても産業界での経験がある方も歓迎します。

●応募期限

2017年3月31日必着。

詳しくは以下のwebページにアクセス下さい。

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D117010437&ln_jor=0

2017-01-03

あけましておめでとうございます

本年もどうぞ宜しくお願いします。

昨年から研究室の方向性をよりソフト、AI関係の研究にシフトさせて来ましたが、それをやり遂げるのが今年になります。

変わるかどうかを迷っている場合ではなく、いかに素早く変われるかが問われている勝負の年になりました。

古い分野にしがみついてジリ貧になるくらいならば、積極的に新しい世界に打って出た方が良い。

どうせ倒れるならば、のけぞってではなく、前のめりに倒れたい。

私自身としては今年はなんと50歳になってしまいます(ウンザリ)。変化が早い最先端の研究分野でそんなオッサンが新しい分野で価値を出せるかというところですが、オッサンはオッサンなりのやり方で変われることを証明したいと思います。

加齢は誰にでも訪れるものです。年を取ると若い時と同じやり方では通用しなくなる。

上の世代の方を見ると、50代、60代になっても新しい分野を切り拓いて活躍し続ける方もいれば、過去に素晴らしい実績を残しながら残念ながら研究者として全くダメになってしまう人もいる。

両者を分けている理由は正確にはわかりませんが、間違いなく差があるのは、やる気。

年をとっても活躍されている方は例外なく、年とともにエネルギーが増えていくように傍から見えます。

一方、ダメになってしま人は、過去の実績にすがりついたり極端に新しいことに取り組むことを拒否したり。一言でいえば、やる気がないように見える。

ならば、情熱さえ持ち続ければ、オジサンでも活躍できる場所はあるのではないか。

幸い新しいアイデアを考える力はまだ衰えていないと自分では思っています。学生にも恵まれており、自分が方向性さえ出せれば、新しい分野でも十分勝負になると思っています。

新しい分野に出ていくために、いろいろな方にご指導頂くことになるかと思いますが、どうぞご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願いします。

2016-12-25

自分の限界よりも、ほんのちょっとだけ頑張ってみる

クリスマスですね。大学生のころ、まだ研究室が立ち上がったばかりで自前で高額な装置を持てず、東大の駒場リサーチキャンパスにある先端研に実験装置を使わせに頂きに行っていました。学生の間では「出稼ぎ」と呼んでいました。今の駒場リサーチキャンパスは建物も建て替えられとても立派ですが、当時は生産研が移転する前でした。クリスマスは、人気のない寂れた建物の中にポツンとあるクリスマスツリーのライトアップを見ながら徹夜の実験。いったい何をやってるんだろう・・・と思ったものでした。そういった経験も今の自分にきっと役に立ってるんでしょうね。

ところで、大リーグ マーリンズのイチロー選手は毎年この時期に地元の愛知県で少年野球の大会を主催しているそうで、「第21回イチロー杯争奪学童軟式野球」での挨拶がちょっとした話題になっています。

21回も続けていることは素晴らしいし、そこからドラゴンズの田島選手、ベイスターズの関根選手とプロ野球の選手まで誕生しているとは凄いですね。

イチロー選手の挨拶を一部引用させて頂くと、

「今年メジャーリーグで3000というヒットを達成することができました。こういうことがあると、たくさんの人から褒めてもらえます。そして、イチローは人の2倍も3倍も頑張っていると言う人が結構います。

でも、そんなことは全くありません。人の2倍とか3倍頑張ることってできないよね。みんなも頑張っているからわかると思うんだけど。頑張るとしたら自分の限界…自分の限界って自分で分かるよね。

その時に自分の中でもう少しだけ頑張ってみる。ということを重ねていってほしいなというふうに思います。」(イチロー杯、大会長挨拶全文「自分の中でちょっとだけ頑張ってきた」より引用)

いきなり2倍、3倍と大きな目標をたてるのではなく、ちょっとだけ限界を超えてみる、そしてそうした努力を継続する、ということでしょう。

無理やり数値化すると、1年で10%成長できたとすると、10年で1.1の10乗になるわけですから2.6倍にもなるのです。1年で10%の成長を20年間続けたら、6.7倍に。

もちろん、継続的に努力し続けるのは難しいし、年々成長が難しくなるし、スランプになることもあるでしょう。

こうやって計算することは簡単でも現実は難しい。

自分に厳しく、限界を超える努力を続けられる点がイチロー選手が「天才」である理由でしょう。

その一方、凡人の私たちにもやってできないことではないかもしれない、とも感じます。

事実、私たちの生活を支える、エレクトロニクス・コンピュータはムーアの法則という「継続的なちょっとした努力」によって進化してきました。

ムーアの法則とは、集積回路LSI)を年々小さくすることにより、18ヶ月(1.5年)ごとに集積度(LSIに搭載されるトランジスタの数)を2倍にするというものです。

これは18か月ごとにトランジスタのサイズ(一辺)を約30%小さくすることに相当します。縦・横両方の方向に30%小さくすれば、0.7x0.7で面積は約半分になりますので。

ムーアの法則は物理法則ではなく、技術者コミュニティ・産業界の指針、目標です。

18ヶ月というと1つのプロジェクトを行うにはちょうど適切な期間で、その間に30%だけトランジスタのサイズを小さくしよう、そしてそれを継続しよう、というものです。

これならば凡人の自分たちにもできるような気がしてしまう。野心的過ぎず、簡単過ぎないちょうど良い目標だったと思います。

そしてムーアの法則こそ、イチロー選手が言う、「ちょっとだけ限界を超えよう、その努力をずっと続けよう」だと思いませんか。

こうしてエンジニアたちが継続的に「ちょっとだけ限界を超えてきた」努力の結果を見てみましょう。

私が生まれた年、1967年から40年後の2007年までのLSIの進化を見るため、1967年のメインフレーム(大型コンピュータ)IBM 7094と2007年のノートパソコンを比べます。

・CPUの性能:0.25MIPSから4000MIPSへ「16000倍向上」

・メインメモリ(DRAM)の容量:144KByteから1GByteへ「6900倍向上」

・価格(2003年当時の物価に換算):2億円から20万円へ「1000倍安くなった」

つまり、コストパフォーマンスでいえば、40年間で約一千万倍向上したわけです。

これは年々約50%向上(1.5の40乗が約一千万)したことになります。

ムーアの法則は数多くのエンジニア、研究者が達成したことですので、単純にイチロー選手のような個人の業績とは比較できません。

ただ、いきなり「40年で一千万倍にせよ」と言われたら達成できたでしょうか? むしろ、毎年ちょっとだけ向上させる、ということならばエンジニアもできるような気がする。そして、激しい競争と市場の拡大により「ちょっとした向上」が何十年も継続され、結果として凄まじいばかりの業績を成し遂げてしまったわけです。

こうした事例は実はいろんな分野であるのでしょうね。

新年になると一年の目標を立てる方も多いと思います。あまり過剰な目標にするよりは、ちょっとだけ今までの自分を超えてみる。そしてそれを毎年続ければ、10年後、20年後にはとんでもなく成長しているのではないでしょうか。

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