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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2016-09-10

年をとって身に染みる、「好きなことを仕事にしよう」という若者へのアドバイスの大切さ

最近のAIブームは凄いものがありますが、多くの本が出版されている中、甘利俊一先生の「脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす (ブルーバックス) 」はとても良かったです。

技術的な内容に加え、AIの研究が現在に至るまでの歴史が書かれており、とても勉強になりました。

そして何よりも驚くのは、この本を書かれている甘利先生が80歳であるという事実です。

本では甘利先生の今までのご自身の研究や生き様を総括された上で、今後やるべき研究について述べられています。

伝え聞くところによると、今でも現役で研究をされているそうで、失礼ながらご年齢を考えると「ばけもの」です。

実は私は東大工学部の応用物理(略して応物、学科としてはその中の物理工学科に私は所属)の出身です。甘利先生も応物ですので、同じ場所で修士も含めると3年間を過ごさせて頂きました。

しかし、当時の自分は感度が悪く、「甘利先生って変なことをやっているな・・・」くらいの認識でした。

恥ずかしながら、一度も甘利先生の講義を選択せず、今から考えると貴重な機会を自ら捨ててしまっていたわけです。

大学を卒業してから20年以上たって、今更、甘利先生の仕事をご著書で勉強するとは思いませんでした。学生の時に講義を取っておけばよかったのに・・・

さて、このような(失礼ながら)「ばけもの」のような研究者は甘利先生以外にもおられます。

「50代のオジサンは使えない」という特集が雑誌にのるように、年を取るにつれて役に立たなくなってしまう人が多い一方、何歳になっても仕事の第一線で活躍されている方はいます。

大学でも、定年になる時まで研究の第一線で活躍される方は少なくありません。

研究や技術以外の世界でも、そんな方はおられますよね。

功成り名を遂げているのに、遮二無二頑張り続け、業績を挙げ続ける方は、なぜそこまで頑張るのだろう、と私も若い時には不思議に感じていました。

忙しすぎて、階段から落ちたり、何かにぶつかって怪我をしたり、ものをなくしたり。そんなに無理しなければいいのに。

このように高齢になっても頑張り続け、成果を出し続ける方のモチベーションは何だろう?、と若い時には不思議に思っていました。

自分も年を取るにつれて少しわかってきた気がするのは、年をとっても遮二無二頑張り成果を出し続ける方はきっと、その仕事が本当に好きなんだと思います。

ワーカホリックのように長時間没頭していても苦にならない。

技術者や研究者に限らないかもしれませんが、年を取っても価値を出せる人は、好きな事、得意な分野で、若いとき以上に馬車馬になって働いているのではないでしょうか。

自分も年を取るにつれ、新しい事を学ぶ効率や集中力は落ちてきていると思います。

若い人と同じ土俵で競ってはひとたまりもありません。

当然、過去の経験に根差した、できるだけ若い人と競わない土俵を選ぶわけですが、それでも若い時以上に頑張らないと、生き残れません。

40才を過ぎても活躍しているスポーツ選手は、若い時以上に練習をしているようですね。42歳でも現役を続け、「投手が安打を放った最多連続年数」という記録まで持つ、プロ野球の横浜ベイスターズの三浦選手のインタビュー記事からの引用です。

「肉体的な衰えも進行している…それは毎年あるよ。もう30代半ばから、ずっとある。だから、こうやって練習するんだよ。球場に来る時間も(年々)早くなって、準備する時間がどんどん長くなっている。」(ハマの番長が語った“引き際の美学”より引用)

スポーツ選手ほどではないにしろ、エンジニアや他の仕事でも同様ではないでしょうか。

急速に変わる技術や環境についていくには、若い時以上の努力をするのが当然で、過去に実績がある人でも、油断して努力を怠ったら、引退や失職に追い込まれるのは、スポーツ選手だけではない。

また、自分もそうですが、年を取るにつれてこだわりが強くなり、好きな仕事しかやりたくない、この仕事は嫌だとなりがちになります。

それが周囲の環境と合わなければ、ただの「使えないおじさん」になるわけです。

ですから、若い時に好きな仕事を見つける、そして年を取るにつれて、その仕事を徹底的にやる。これしか年をとって生き残る道はないのではないか。

一方、若い時にそれなりに活躍していたのに、年をとってダメになった人もたくさん居ますよね。

なぜこの人はこんなになってしまったのか?、と言われる人。

そういう人は好きな事、没頭できる仕事を見つけられなかったんでしょうね。

サボって見えますが、ある意味で気の毒です。

結局のところ、年と共に時間を掛けて頑張らないと、若い人に負ける。若い時以上に頑張るには、長時間没頭しても苦にならない好きな事を仕事にしないと、もたない。

就職活動の時など、若い人に向けて「好きなことを仕事にしよう」というアドバイスがありますね。

実は若い時に好きな仕事を見つけられないと、年を取ってから厳しいよ、というのが実際にオジサンになった感想です。

2016-08-25

50代のオジサンでも必要とされるためには

50代のおじさんへの風当たりが強い。日経ビジネスでは、「どうした50代! 君たちはゆでガエルだ」という特集が組まれ、「環境の変化に気づかず、危機意識が薄い…50代に未来はあるか」と手厳しい。

あるいは、鴻海がシャープを買収したことで社長になった戴氏は、「あまり仕事をしないで、遊んで給料をもらっている人は修理しないといけない」(引用:産経WEST)と述べている。

これも中高年の管理職への警告でしょう。

50代と言っても現場でバリバリに働いて、プロとして尊敬を集めている方も居るし、マネージャーや経営者として組織を切り盛りしている方もいるでしょう。

問題は、何となく年功序列で昇進して中間管理職として過ごしてきたオジサン。

かつての日本の大企業のように組織が長く存続すれば、「使えないオジサン」と陰口をたたかれながらも雇用は維持され、人生としては逃げ切ることも可能でしょう。

ところが、最近は企業が生き残るためには、不採算の事業を切り売りすることは当たり前。以前でしたら、不採算部門の人員は他の部門で吸収しようとしたでしょうが、今では事業とともに人も切り売りされる時代です。

事実上、終身雇用が難しくなっている時に、50代で突然仕事を探さなければならなくなる。

転職できたとしても、元の会社よりも小さなところに移るケースが多いでしょう。そこでなかなか活躍することができない。

こうした50代の問題は、雑誌に取り上げられるほどですから、色々な企業・組織で起こっているのでしょうね。

ところで大学の研究室は人材の再生工場のような面もあります。大企業をリストラなどで辞めざるを得なくなった方を研究開発プロジェクトの中で採用し、大学での研究を踏み台にして、再び企業で活躍して頂く。

大学の研究室はちっぽけな組織ですので、大企業とは全く違います。そうした大企業出身のオジサンがうまくいく場合も、いかない場合もあります。

うまくいかない典型的なケースは、「なぜこんなことを自分がしなければいけないのか」となる場合。

中小企業もそうでしょうが、小さな組織では、誰もが多くの分野をカバーしなければいけません。

また、大企業でしたら間接部門の人がやってくれる仕事も自分でやらなければいけないことも多いのです。

それができない。

プライドもあるのでしょう。

「こんな仕事は自分にふさわしくない。この組織はダメだ。」という発想になると、いくら他の能力があっても仕事になりません。

細かい事務仕事をやろうとしなかったり、途中で事務仕事を投げ出したり、いわば仕事の入り口で躓いてしまうオジサンも相当数おられます。特に大企業で地位や実績のあった人ほど。

小さな組織に移ったならば、小さい組織の仕事のやり方に自分を合わせる必要があるのです。

とはいえ、現場で必要とされるパソコンやITのスキルは若い人には到底かなわない。

熟練したスキルや素晴らしいリーダーシップがあれば良いのでしょうが、そんな人は少数ですし、そもそもそんな人は「使えないオジサン」などとは言われません。

問題は、大企業で現場から10年以上も離れ、何となく中間管理職をやっていた方。

50代以上のオジサンの転職で成功例と思える方は、プライドを取り敢えず捨て、数十年前、自分が担当として仕事をしていた時のことを思い出し、大昔の経験やスキルを磨きなおすことで、もう一度現場で必要とされるようになりました。

50代の方が現場で働いていたのは20年以上前だとしても、案外、若い時に必死で身に付けたスキルは蘇るものです。

私の研究室にいた方でも、企業から大学に移って数十年ぶりに現場の仕事をやり、技術を磨きなす。そして、何よりも「自分は技術ができるのだ」という自信を取り戻し、再び産業界に戻って活躍されている方もいます。

私自身も40代で「使えない」と言われてしまう世代です。現在の50代が直面する厳しい現実はまさに明日は我が身。

いつでも現場に戻れること、泥臭い仕事もやり続けることこそが、生き抜く術なのかなと思っています。

逆に過去の実績にすがり続けていたり、自分を良く見せることばかり考えていたり、地位のある人との関係ばかりを求めているオジサンは、一時的にポジションが得られても、すぐに仕事ができないことがバレて、長くはもちません。結局、行き場がなくなっているように感じます。

2016-08-24

日経テクノロジーオンラインに記事が掲載されました、「エンジニアは専門家を目指すべきか? IoTの時代では多様な経験こそが武器になる」

3か月ぶりになりますが、日経テクノロジーオンラインに記事が掲載されました。

エンジニアは専門家を目指すべきか? IoTの時代では多様な経験こそが武器になる

言いたいことは、IoTのように、多種多様な分野でIT技術が使われるようになると、エンジニアのキャリアも単線路線でなく、一つの分野を極めたら、できるだけ多くの分野をやっておいた方が良いよ、という今から考えるとごく当たり前のことです。

ただ、現在の中高年エンジニアのキャリアを見ると、一つの分野しかしてきておらず、その分野が廃れたら行き場がなくなってしまっている、という人は多いのですよね。

悪い言い方をすると、専門バカは専門分野が廃れたら行き場が無い、ということです。

私の世代、40代以上で苦労されている方を見るにつけ、リスクヘッジのためにもいろいろな分野に手を出しておいた方が良いと思うのです。

2016-08-09

理解している事と、相手に伝えられる事の違い

Flash Memory Summit(FMS)に参加するため、シリコンバレー(サンタクララ)に着きました。

FMSでは竹内研からはカーボンナノチューブメモリと、アプリケーションに最適化したSSDの発表を行います。

最近、竹内研のOBはシリコンバレーで働く人が増えてきており、OBたち4人と食事会を行いました。

こうして自分がかかわった人たちが、競争が激しくチャンスも大きいシリコンバレーで活躍しているのは嬉しい反面、なぜ自分はまだ日本に居るのだろう、とちょっと寂しくなる部分もあります。

まあ、自分ができない事を、教え子たちが実現してくれているのだから、これはこれで良いです。教師冥利に尽きる、というか。

それはさておき、お互いに近況を話す中で、ちょうど研究室では論文投稿の佳境になっているので、

「研究ができて、自分で技術を理解しているのに、他の人に伝える部分がまだまだという人が多いんだよね。それができないと論文が書けない。」

と言ったところ、OBたちから、

「自分も学生の時に散々、先生にそう言われた。伝えることはとても大事だけれども、それを身に付けるのは、大変でした。」

と言われました。

論文などで、自分の考えを表現し、相手に理解してもらうには、自分が技術をわかっているだけでは不十分なのです。

まず、伝える「相手」を知ることが大切。論文の場合は、査読者ですね。

査読者のスキル・バックグランド(専門分野など)を思い浮かべて、もし自分がこの人だったら、何を理解できるだろう?と考える。

そして、相手の立場に立って、相手が理解できる言葉で自分の主張を表現する。

研究や開発の主体は「自分」ですが、コミュニケーションの主体は「相手(論文の場合は査読者)」なのです。

ですから、自分が言いたい事をいくら主張したところで、相手のことがわからなければ、伝わらない。

こんなことは、いわゆる文系の仕事をしている方には当たり前のことでしょう。

ただ、理系で研究や技術開発をしていると、ともすると「自分」にこもりがちになります。これは必ずしも悪いことではなく、徹底的に自分で考えるからこそ、新しい技術のアイデアが生まれてくることも多いのです。

しかし、自分が作り出した技術を世に出し、広く認めてもらうためには、考え方のスイッチを「自分」から「相手」に切り替える必要があるのです。

この両方を最初からできる人は稀で、おそらく、ほとんど居ないと思います。

ですから、表現が苦手であっても、悲観する必要はありません。

OBたちと話をしていて感じたのは、彼らも最初から技術を生み出すことと、それを伝えることの両方ができたわけではありませんでした。

(私に散々言われながら?)伝えることの大切さを時間を掛けて学んでいったようです。

そもそも生み出した研究成果を相手に伝えられないと、論文が採択されないわけですが。

自分で技術を生み出すことができた人は、次のステップとして少しずつでも、伝えることを学んでいってくれたらと思います。

2016-08-06

中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科では助教を最大3名公募します。竹内研も配属対象です。勤務場所は後楽園キャンパス。応募締め切りは9/20(必着)。

私が所属する中央大学 電気電子情報通信工学科では最大3名の助教を公募することになりました。

竹内研も配属対象の一つです。是非、奮ってご応募下さい。

以下、公募情報です。

●公募対象: 助教 最大3名

●所属: 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科

●勤務地: 中央大学 理工学部 後楽園キャンパス

     (東京都文京区春日1-13-27)

●業務内容

1. 研究活動、および学科の運営・教育活動の補助

2. 実験・実習における学生指導および評価

●募集分野

.▲鵐謄福ε甜波工学(白井宏教授)

固体レーザおよび非線形光学(庄司一郎教授)

IoT向けコンピュータシステム・集積回路・半導体デバイス(竹内健教授)

ぅ蹈椒謄クス・空間知能化・電力応用(橋本秀紀教授)

上記の 銑い里い困譴の研究室に所属し研究を実施

●着任時期: 2017年4月以降できるだけ早期

●任期: 1年毎に更新。最長5年

●応募資格

2017年3月31日の時点で博士の学位を有する方あるいはそれに準ずる方。

●応募期限

2016年9月20日必着。

詳しくは以下のwebページにアクセス下さい。

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=3&id=D116080309&

2016-08-02

理工学部への進路を考えている高校生に向けて、8/6,7に中央大学後楽園キャンパスで竹内研の公開を行います。どなたでも参加できます。

8/6,7に中央大学後楽園キャンパスで開催されるオープンキャンパスで、竹内研の公開を行います。主な対象は大学進学を考えている高校生ですが、もちろんどなたでも参加いただけます。

最先端のIT技術、特に国家プロジェクトを実施中の高速ストレージ技術に興味のある方もご参加ください。

公開場所は工学部1号館地下1階1034号室です。アクセスマップはこちらになります。

特にこれから進路を決めようとしている高校生は、実際に研究室を訪問して、大学生・大学院生と話すことで参考になると思います。

研究内容を完全に理解することは難しいでしょうが、研究室の雰囲気を感じたり、学生の日々の生活を聞いたり、理工学部ってどんなところだろう、というイメージをつかむには良い機会です。

2016-07-20

なぜ理系に進む女性は少ないのか?

最近、理系の大学に進学した女性を「リケジョ」と呼ぶようになったようですが、わざわざそんな言葉が生まれたのは、女性が少ないから。

更に理系の中でも女性が集中している学科とほとんど居ない学科に極端に別れがちです。

理系でも女性が比較的多いのは生命、化学、建築などでしょうか。食品、化粧品、洋服の素材、デザインなど女性に好まれやすい仕事につながる学科には比較的女子学生が多くいるようです。

一方、女子学生が極端に少ないのは、私が所属する電気・電子・情報や機械。電気や機械は人数も多いですし、卒業後の産業界の裾野も広い。

電気というと「電機メーカー」と思われるかもしれませんが、自動車、IT、通信、電力・・・電気を必要とする産業は実に多いのです。

産業規模が大きく、就職が良いにもかかわらず、女子学生が極端に少ない。

こうした理系の卒業後の職場では、成果が数字で表しやすいため、比較的実力主義です。

技術者は顧客対応などの仕事に比べて個人で勤務時間を調整しやすい仕事でしょうから、育児をしながらも働きやすいでしょう。

採用数が多く、女性にとって働きやすい職場だとは思いますが、そもそも志望してもらえないというのは、もったいないことです。

電気だけでなく機械などでも似たような状況でしょう。

そこで、身近の知り合いや学生に、なぜ理系(特に電気)に進学する女性が少ないのか、聞いてみました。

・高校生の段階では将来の仕事が想像しにくい

・高校で学ぶ物理が抽象的で、何の仕事をするのかわからない

・電気に進学すると、電気工事や街の電気屋で仕事をすると思っていた

・男の仕事だというイメージがある

・電気など女性が行くところではないと親に言われた

・高校では理系女子が少なく、その中でも物理選択の女性はもっと少ない

・女性が少ないので行きづらい

・身近に電気を専攻している女性、仕事している女性がいない

・物理や電気は抽象的で黙って考えることが多い、おしゃべり好きな女子学生には敬遠される

まとめると、「勉強する内容や将来の仕事に興味が持てない」「ロールモデルがいない」「イメージが悪い」というところでしょうか。

いくら仕事として得だからと言って、損得勘定だけで仕事を選ぶわけではないでしょうから、仕方ないと思うところも多いです。

その一方、電気、エレクトロニクス、ITという分野は劇的に変わってきているという状況もあります。

IoT=Internet of Thingsと言われるように、社会のあらゆるモノ、医療、農業、電力インフラ、建物、交通・・・などにセンサが配置され、センサで収集したデータを解析して実際の社会にフィードバックする。

電気や情報は「手段」になり、私たちが生きるリアルな社会の理解や経験なしには、IoTのビジネスを行うことは難しい。

技術だけでなく、技術の使い方やデザインが大切になっているのです。

こうした社会の変化によって、女性が活躍する分野が広がっていくのではないかと思います。

企業にとっても、人口の約半数を占める女性の視点なしには、立ち行かなくなる。

最近は女性エンジニアが立ち上げた美容家電が話題になるようになりました。

また、ITを駆使したスマートホームの技術開発では、女性エンジニアたちが提案するアイデアが次々に実用化されつつあるとも聞いています。

実際にどのような家を作るかを考える上で、男性エンジニアだけの発想では限界があるのです。

こうして産業が変わり、電気を始めとする理系が変わりつつあるのは、女性にとってはチャンスではないでしょうか。

ただ、そういった事情を将来の進路を決める高校生が知ることは簡単ではありません。

産業も社会もこれだけ劇的に変わっている時代ですから、(女子学生に限らず)高校生は大学のオープンキャンパスや学園祭に行き、最新の動向を(無料で)知ることが、進路を決める上では参考になるのではないでしょうか。

夏休みには様々な大学でオープンキャンパスが開かれます。高校生にとっては、どこの大学に進学するかは大事でしょうが、それと同じくらい、どの分野に進学するかも大切です。

例えば私の所属する中央大学の理工学部では、8/6,7に後楽園キャンパスでオープンキャンパスを開催します。

オープンキャンパスでは、特に理系に興味のある女子学生を対象に、

「エレ女広報部with電電相談室(対象は電気電子情報通信工学科、場所は5号館1階5136教室)」

「理工系女子のチカラ(対象は理工学部全体、場所は5号館1階5134教室)」

というイベントを開催します。

先に女性に不人気な理由として、ロールモデルが居ないので進学しずらい、というのがありましたが、こうした企画(ブース)に行って、実際に女子学生やOGと話して実情を聞くのも良いかもしれません。

女性向けの理系の企画は中央大学だけに限りません。先週末に開催された、電気通信大学のオープンキャンパスでは、「電気通信大学で自分を磨く女子学生たち」というとても気合の入った資料を配布していて感心しました。先輩やOGがどう考えて進学し、大学で何を経験し、どのような仕事を選んだか、生の声を聞くことはとても大切だと思います。

女性が少しずつでも電気や機械といった分野に進むことで女性が活躍する場が広まり、同時にIoTの時代の日本の産業力が向上するWin-Winの関係になれば良いと思います。

実は中央大学の電気電子情報通信工学科では女子学生の入学者数が今年、激増しました。と言っても、やっと1割程度ですが。この傾向がこの先も続くと良いのですが。

2016-07-18

理系に進む高校生も国語の勉強や作文は積極的に取り組んで欲しい

日本の大学入試改革では米国の大学を真似て?「思考力・判断力・表現力」を重視するようになる、と言われています。

ボランティア活動や面接重視などと言われていますが、日本の大学の入試(東大の学部、大学院)と米国の大学院の入試(スタンフォード大学等のMBA)を経験した身からすると、米国の大学(院)の入試で求められるエッセイ(作文)が日本の大学(院)入試と比較して、大きな違いだと感じました。

アメリカの大学の学部の入試は経験していないので良く知りませんが、MBA(大学院経営学修士)の入試では、学部の成績(GPA)や数学・国語(英語)の試験であるGMATで足切りをした上で、エッセイ(作文)が重視されます。

自分の弱点は何か、今までで自分が成し遂げた一番重要な成果は何か、なぜ本学を志望するのか、などが一般的なエッセイの課題です。

スタンフォードのMBAでは名物となっている課題として、

「What matters most to you, and why?(あなたにとって最も重要なことは何か?、そしてなぜか?)」

がありました。

この課題などは、志望者の価値観・それまでの生き様を問いているわけで、自由度が高い分、余計に答える難しい。

最初は何を書いて良いかわからず、呆然としたものです。

英文でエッセイを書くためには、英語の文法の力、英語の作文の仕方(構成)などで高いレベルが求められることは当然ですが、理系に進んで文章を書くことが苦手だった自分の場合は、そもそも文章を書くこと、作文自体に大変苦労しました。

留学する前に英文で技術の論文は書いていましたが、ファクト(事実関係)を論理的に順序立てて書く技術の論文と違い、フリースタイルの作文を書くことは子供のころから苦手にしていました。

課題を前に「書けない・・・」と悶絶したわけです。そして、そもそも英文を書く以前に、自分は日本語でも作文を書けないことに気づきました。

そして、まずは日本語で作文を書くことから始めました。

小学生くらいから積極的に作文をやっていれば良かった、と後悔しました。

理系に進学すると、受験科目にない場合にはどうしても国語や作文は避けるようになりがちです。

私の場合は東大の入試で国語があったので、受験勉強で国語は学んでいましたが、それではエッセイを書く上で全く不十分でした。

この米国の大学院入試では、膨大な量のエッセイを書くことになりました。10校以上を受験したので、おそらく書いた作文の量は下書きも含めると、数百ページになったと思います。

作文が苦手だった私が米国の大学院入試で仕方なく英文で作文をするうちに、不思議なことに日本語でも文章が書けるようになりました。

その結果、こうしてブログを書いたり、日経テクノロジーOnlineに連載「エンジニアが知っておきたいMOT」を持たせてもらったり、本(10年後、生き残る理系の条件世界で勝負する仕事術)さえも出したり。

昔の自分から考えると想像できない大変身です。おそらく、大学院入試のエッセイで膨大な文章を書かなければ、日本語でも文章を書けるようにはならなかったと思います。

理系の大学や大学院を卒業して、企業の技術開発の現場で仕事をすると、最初は技術だけできればある程度は何とかなります。

しかし、研究チームをマネジメントしたり計画を立案したり、開発資金を確保するためには、国語や作文の能力が求められるようになるのです。

大学教員はちょっと特殊な立場かもしれませんが、研究費を獲得するためには、100ページを超えるような提案書を書く必要があります。

先日応募した国家プロジェクトの公募では、提案書の制限が「厚さ1センチメートル以下」となっていて、少々驚きました。

ページ数の制限ではく、厚さの制限とは・・・

それだけの分量の文章を書くことが求められているのです。

私の場合はMBA留学の入試とMBAコースで作文を鍛えられたのが、今になって研究費の獲得などでも役に立っているのです。

よくコミュニケーション能力というと、プレゼンテーションが重視がされがちですが、それに負けず劣らず文章を書くことも重要です。

日本の大学入試がどのように変わるかはわかりませんが、入試とは関係なく、理系に進む高校生のみなさんは、「受験科目にないから国語は捨てよう」と思わずに、国語や作文には積極的に取り組んでもらいたいものです。

学校の授業は苦手という人でしたら、SNS、ブログやツイッターなどに文章を書くことでも良いと思います。

媒体は何でもよいので、文章を書き続けることが、コミュ力向上には大切ではないかと。

2016-07-14

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

東芝の会計事件に関して、スクープを連発した日経ビジネスから出版される「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」を、発売に先立って献本いただきました。

まだ最初の方を読んだだけですが、なかなか読み進めることができません。

というのも、この本の大半が内部告発の生々しい証言を引用し、いかにして不正が行われたかについて書かれており、一つ一つの文章がとても重いのです。

読んでいると、それぞれの人がどういう思いで内部告発したか、と考えてしまい、簡単に読み進めることができません。深く考えてしまいます。

おそらくリスクがとても大きい中、東芝が立ち直ってほしいという思いもあって、告発したのでしょう。

この本は直接的には、8名の日経ビジネスの取材陣が執筆していますが、800人以上もの内部告発者の思い、人生を集大成した本になっています。

これ以上生々しく不正を暴いた本はそう無いのではないかと思います。

その一方、私の知り合いの東芝のOBの中には、

「そんな本は読みたくない。みんなやっているようなことだろうに、何が悪いのかもわからない。知らんぷりすればよい。」

と言う人も居ます。

そういった態度こそが、あれほどまでの巨額な会計不正を生み出したのでしょう。

自らのリスクを顧みず内部告発する人も居れば、不正をいまだに悪い事とも思わない人も居る。

それが現実なのでしょう。

だからこそ、この本の1ページ、1ページは、日本社会の矛盾やその中で苦悩する人々の生きざまが垣間見れて、深いのです。

山崎豊子さんの著書、例えば「沈まぬ太陽」に通じるものがあるな、と思いました。

2016-07-12

IoTはおじさんだけの発想では対応できない

今日は研究の打ち合わせを兼ねてパナソニックさんのお台場にあるショウルーム、Wonder Life-BOXに行ってきました。

ここは「パナソニックが考える、「2020年〜2030年のより良いくらし」をひと足先にご体感いただく施設」というだけあって、まだ実用化していない研究開発段階の製品や技術を見ることができる、大変貴重な場所でした。

一般公開もしていますので、ぜひ行ってみてください。

パナソニックさんですから、展示は家や生活に関係したものが中心です。例えば未来の家での暮らしを再現した展示では、説明員のおねえさんから、「ミリ波のレーダーを使って、睡眠中の心拍数など体調を布団越しにモニタできます」と教えてもらい、びっくりしました。

IoT=Internet of Thingsという言葉のように、これからは社会の至る所にあるものやサービスがIT化していきます。

応用分野は医療、家電、交通・運輸、農業、気象、電力、社会インフラ等々。

今までITとは別だと思われた分野でもセンサによってデータが収集、解析され、実世界にフィードバック(アクチュエーション)される。

そうすると、決定的に問題になるのは、ITやエレクトロニクスの技術者では、技術をどのように使ってサービスに繋げれば良いのかわからない、何を開発すべきかもわかりにくくなるのです。

例えばパソコンを開発していた時には、高速化、低電力化(バッテリーの長寿命化)、軽量化といった技術目標の方向性を見極めるのは、それほど難しくありませんでした。

あるいは液晶テレビを大画面化、低コスト化するとか、イメージセンサを高画素化する、メモリを大容量化するというのも、わかりやすい目標ですね。

こうした目標設定が簡単だった時代では、おじさん、と言うと語弊があるかもしれませんが、男性の同じような経験を積んだエンジニア中心の開発でもさほど問題にならなかったのかもしれません。

ところが、IoTでは先ほど述べたように、技術開発の目標を設定する時にも多様な経験が必要ですし、開発チームのメンバのバックグランドも多様性が必要になります。

端的に言って、現在の大手メーカーのように、理工系の大学院・大学を出た男性ばかりが集まり、新卒入社から何十年も同じような職場に居る男性のエンジニア集団だけでは、対応できなくなっているのではないでしょうか。

パナソニックのショウルームでは、実用化前の最先端の技術を展示して、どれが実際に消費者に受け入れられるのか、調査のためにも展示を使っているようで、これはなかなか良いアプローチだと思いました。

開発陣だけでは将来のニーズがわからないのならば、ショウルームで直接消費者の声を聞けば良い、ということです。

また最近、電機メーカーに限らず、色々な業界で、女性社員が提案した商品やサービスが当たった、と聞くようになりました。

特に女性向けのサービスでは、おじさん中心の経営陣には理解されず、女性の消費者に後押しされることで、ようやく社内で認められるようになった、というわけです。

もはやIoTのサービスなどは、単線路線のキャリアを進んだ、同じようなバックグランドのおじさんたちに優位性などないのでしょう。

私も十分におじさんの一人ですが、学生と比べても、IoTの将来を見通すという面では、自分が優れていると考えてはいけないのでしょう。

かつて仕事で成功した方で、昔話を自慢する方がいますが、過去の成功体験がもたらすプラス面もあるでしょうが、柔軟な発想をするための足枷になるマイナス面の方が大きいのかもしれません。

自分も過去の成功体験にすがるのではなく、過去は振り返らず、常に未来を考え続けるおじさんでありたいと思います。

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