Hatena::ブログ(Diary)

竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2018-04-30

デジタルデータを100年以上保管するメモリ

本日の朝日新聞 朝刊に竹内研が推進している、JST CREST「デジタルデータの長期保管を実現する高信頼メモリシステム」プロジェクトが紹介されました。

(科学の扉)「想定外」を考える 消えるデータ、失われる過去 短命のデジタル媒体、社会・文化引き継げず

メモリといえば、主要な市場であるスマホなどのモバイル機器、パソコン、データセンタのストレージでは、コスト(価格)・容量が最も重要です。

三星電子、東芝メモリ、マイクロンといった巨大企業が、毎年数千億円もの研究開発資金を投資して、メモリの大容量化を競っています。

その一方、将来重要になるメモリの特性として、高い信頼性・データの長期保管があると思い、このプロジェクトではReRAM(抵抗変化型メモリ)をモチーフにデータの長期保管の研究を行っています。

デジタルデータの長期保存は、例えば赤ちゃんの時の写真を永続的に残すように、誰にとっても身近な話題です。

その一方、この朝日新聞の記事を読んで、私も目から鱗だったのは、データの長期保管は、(大袈裟に言えば)民主主義の根幹であること。

今でも、メモリの寿命が来たら、古いメモリから新しいメモリに定期的にデータを移し替え続ける(マイグレーション)ことで、事実上、永続的にデータを保存することが可能です。

しかし、データ量が大きくなるほど、マイグレーションにかかるコストは大きくなります。

例えば、フェイスブックがデータセンタで光ディスクを使って自動的にデータをマイグレーションするストレージを発表しています。下記のホームページでストレージの動画が見れますが、大量に格納された光ディスクを自動的にピックアップする装置は、もはや精密なロボットですね。

1万枚のBlu-ray使用の低コスト&省エネなデータセンターをFacebookが発表

データがこのまま増え続け、マイグレーションにかかるコストが高くなると、マイグレーションによってデータを永続的に保存できるのは、資金力のある特定のプレーヤー(企業や政府?)だけになるかもしれません。

その結果、特定のプレーヤーにとって都合の良いデータだけが残され、都合が悪いデータは消滅してしまうのではないか、という懸念が記事には書かれています。

日本国憲法で定められている「知る権利」を担保するためには、その前提として「誰でも安価にデータが安価に永続的に保存することができ、データに簡単にアクセス(検索)が可能な事」が必要なのでしょうね。

その意味では、私たちの長期保存メモリの研究は、デジタル時代の民主主義を成り立たせている根幹の部分を担うための、第一歩と言えるかもしれません(大袈裟ですが)。

記事を書いて下さった、朝日新聞の小堀記者には御礼申し上げます。却って私の方が勉強になりました。

2018-03-11

基礎を軽視する日本は生き残れるのか?

AI、ビッグデータ、IoT・・・とIT業界は活況を示しています。

その一方、これで良いのかな?、と疑問に感じることもあります。

今の日本は、ITの技術を使った応用に多くの関心が行ってしまい、それを実現するコア技術への関心が薄れているのではないか。

企業の方々から大学に求めることを伺うと、しっかりした基礎の素養に基づいた力を要請して欲しいと言われます。

数学、物理学、統計学といった学問はいつの時代も重要です。企業としても産業構造の変化は非常に激しく、いま儲かっている事業にだけ特化したような人材では困るのでしょう。少々の事業の変化にも追随できるような普遍的な力を持った、基礎が強い人材を育成して欲しい、という産業界の要求を感じます。

その一方、大型の国家プロジェクトに代表されるような、日本政府の研究予算の配分が、最近はともすると基礎軽視になっているのではないでしょうか。

国家プロジェクトも色々な種類があり、産業振興や社会インフラの整備を目的とするファンディングでは、国民の生活に直接的に役に立つことを目指す、というのは当然でしょう。なぜ税金を使って研究開発を行うか、説明責任があるわけです。

最近はもともと基礎研究を重視していた国家プロジェクトでも、技術自体の優劣はさておきとりあえず応用を目指す、というケースが目につくようになりました。

時には論文など書かなくても良い、実用化せよ、といわれることもあるようです。

このように財政状態が厳しい日本においては、研究も比較的目先の利益を求められがちなのは、仕方ないことなのかもしれません。

ただ本来は企業がやるような、サービスへの応用を、大学がやっているケースでは悪く言うと、大学は企業の下請けのようになってしまい、そもそも大学がなぜ必要なのか。

ひとつの理由としては、半導体をはじめとする基盤技術が世界の競争で苦しい状況にあるので、今更研究開発に投資しても無駄ではないか、ということでしょう。

ただ応用重視を推進して、例えばGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が作った技術をもとに、新しいサービスを展開しても、どれだけ持続可能なのか。

肝心な技術を海外勢に握られていたら、日本市場では言葉や商慣行の壁で日本企業が生き残れても、どれだけ世界で戦えるのか。

AIにしても、AIを実行するハードウエアも重要になってきており、グーグルやアップル、アマゾンのみならずテスラもAIを高速・低電力に実行する半導体・LSIの開発に乗り出しています。

一方、日本では半導体・LSIはもう日本がやる技術ではない、とさえ感じられます。

メディアも同じです。

AI、IoTのブームとともに、既存のIT技術を使ったサービスやアプリケーションについては関心を持っても、AI・IoTを実現するための基盤技術には、多くのメディアは目を向けなくなりつつあるのではないか。

AIにしろIoTにしろ、高度なアルゴリズムを実装する基盤の半導体やソフトが、最終的にはサービスの差別化をするのではないでしょうか。先に述べたGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)のみならず、日本でも自動車関連の企業がこぞって半導体のエンジニアを採用しているのは、基盤技術重視の例ではないでしょうか。

そんな時に、国家プロジェクトが比較的目先のサービス(応用)偏重で良いのでしょうか。

2018-01-19

【開始時刻変更】1/23(火)11時に竹内研 松井千尋さんの博士審査 公聴会を中央大学 後楽園キャンパスで行います「異種の不揮発性メモリで構成される半導体ストレージシステムに関する研究」

1/23は首都圏は雪で交通機関の乱れも予想されることから、公聴会の開始を1時間遅らせ、11時開始とさせて頂きます。

すっかりご無沙汰していました。

直前の連絡ですが、1/23(火)11時に竹内研 松井千尋さんの博士審査 公聴会を中央大学 後楽園キャンパスで行います。

論文名は「異種の不揮発性メモリで構成される半導体ストレージシステムに関する研究」

場所は中央大学後楽園キャンパス3号館3階3300教室です。

アクセスは以下をご参照ください。

 http://www.takeuchi-lab.org/access.html

3号館は最も背の高い建物です。

研究室で実施して来た、ストレージクラスメモリとフラッシュメモリで構成する高速ストレージの研究の総まとめでもあります。

公聴会は公開ですので興味のある方は、ぜひお越し下さい。

予約は必要ありませんが、参加される方は竹内(takeuchi[AT]takeuchi-lab.org)までご一報ください。

共同研究をさせて頂いている企業の方々等が参加して下さる予定です。

2017-10-30

電子デバイスのプレミア学会 IEDM 2017でフラッシュメモリの高信頼化に関して2件の発表を行います

12/2-6にサンフランシスコで開催される、IEDM 2017(いわゆる電子デバイス分野のプレミア学会)で2件の発表を行います。

1件は一般論文、もう1件は招待講演になります。

フラッシュメモリは2次元から3次元への移行が進んでいますが、この論文は3次元フラッシュメモリ特有の信頼性の問題(Lateral Charge Migration)を抑制する技術(Vth Nearing)になります。

東芝は最近ゴタゴタしていますが、少しでも東芝メモリの今後の事業にお役に立てると良いのですが。

ところで、回路やシステムが専門の竹内研からすると、IEDMはちょっと分野が違います。

分野が違うせいか、なかなかIEDMには論文が通らなかったのですが、2009年のIEDMで発表して以来、8年ぶりの発表になります。

この間、何度かIEDMに論文を投稿しては落ち続けていましたが、諦めずに論文を出し続ければ、いつかは通るものと改めて思いました。

学会発表に合わせてプレスリリースも行う予定です。

■ 19.2 Lateral Charge Migration Suppression of 3D-NAND Flash by Vth Nearing for Near Data Computing, K. Mizoguchi, S. Kotaki, Y. Deguchi and K. Takeuchi, Chuo University

(要旨)

Vth Nearing is proposed to suppress the lateral charge migration and to improve the reliability of 3D TLC NAND flash. By modulating data so that Vth of adjacent cells become close, data-retention errors decrease by 40%. Data-retention time increases by 2.8-times. The proposal is implemented in the SSD controller.

■ 28.4 Data-Aware NAND Flash Memory for Intelligent Computing with Deep Neural Network (Invited), K. Takeuchi, Chuo University

(要旨)

This paper presents data-aware NAND flash memories. By recognizing the data value, sophisticated data management such as storing important data in reliable memory cells or adaptively optimizing read voltage are realized. Consequently, intelligent computing such as image recognition with deep neural network, data compression and disaggregated hybrid storage are achieved.

2017-09-23

感謝

実は9/13に電子情報通信学会 ソサイエティ大会で、電子情報通信学会 エレクトロ二クスソサイエティ賞を頂きました。

まだ、今年の受賞者は学会のWebに掲載されていませんが。

受賞タイトルは「多値NAND型フラッシュメモリSSDシステムへの応用に関する先駆的研究」です。

一部、東芝の時に行った多値フラッシュメモリの回路設計も部分もあるけど、基本的にはここ10年間、大学で行ってきたフラッシュメモリのSSDシステムへの応用、誤り訂正システム(ECC)に関する成果を評価して頂きました。

大学での研究では旗を振っているだけで、実際に研究をしているのは学生や研究員の皆さんです。

大学で10年やって来て、このような成果に至ったのは、人に恵まれたためです。一緒に戦ってきてくれたみなさん、研究の場を与えて下さった東芝、東大、中央大学、研究を支援して下さっている秘書さんはじめ多くの方々に心から感謝します。

ECCの研究では、竹内研の初代学生であり、東大の総長賞を取りISSCC/IEDMで5度発表した田中丸周平君、中大に移ってからは、ISSCCのSilkroad Awardを受賞した徳冨司くん、小林惇朗君、出口慶明君、その他にも多くの優秀な学生のおかげで受賞となりました。

また、フラッシュメモリを開発することになったのは、大学の時に先輩のオマケで会社訪問した時に、当時東芝の舛岡富士雄先生と出会ったから。

舛岡先生との出会いが無ければ、今の自分もありませんでした。

そして、東芝に入社してついた上司の田中智晴さん(現在、マイクロンジャパン)。

まさに天才設計者と言える方で、自分では一生追いつくことができない、生涯の師匠と勝手に思っています。

もしフラッシュメモリに関してノーベル賞が出るとしたら、フラッシュメモリのコンセプトを発明した舛岡先生と、ビット毎ベリファイなどフラッシュメモリの動作方式、回路を発明した田中智晴さんが受賞されると良いのではないですかね。

自分は大した才能はありませんが、もしあえて自分に取り柄があるとしたら、こうした天才たちを見抜くことができる。そして、徹底的に天才たちについて行くことかな(たとえそれが学生であっても)。

東芝で指導頂いた先輩方や、一緒に研究をしてくれた学生たちの代表として、たまたま私が受賞になったわけですが、この賞は到底自分だけのものではないです。

いま古巣の東芝メモリが大変なことになっているように、浮き沈み、いろんなことがあった冒険ですが、一緒に戦ってきてくれたみなさんに、感謝の曲を!

D

最後に、受賞の対象となった研究は大学でやって来た研究の一部にすぎません。ストレージクラスメモリを使ったハイブリッド・ストレージシステムなど、まだまだ私たちが発展させなければいけない分野はたくさんあります。

これからも頑張りましょう!

また、東芝メモリはウエスタンデジタルからの訴訟など、厳しい状況が続くと思いますが、こんなことでへこたれる人達ではないと信じています。

今まで何度も逆境はあって、それを乗り越えてきたのだから。

頑張って下さい!

2017-09-13

アップル、iPhone Xの発売と東芝メモリへの出資の相似形

アップルからiPhone Xの発売が発表されました。前の機種との違いは、有機ELを使った全画面ディスプレイ、無線給電、顔認証のよるロック解除やモバイルSuica搭載など。

どうやら顔認証などのために機械学習専用のLSI(AIアクセラレータ)が搭載されたようなのが、興味深いです。Siriもローカル(iPhone)で音声認識するのですかね。iPhone Xの登場によって、端末がAIなどの高度な処理を行う、本格的なエッジコンピューティングの時代の幕開け、となるのかもしれません。

さて、アップルがiPhoneの商売では、フラッシュメモリを高く売ることで利益を上げているというブログを4年前に書きました。

iPhoneではアップルはフラッシュメモリを10倍高く売って儲けている

今回新発売になった、iPhone X、iPhone 8S、iPhone 8のフラッシュメモリは64ギガバイト、256ギガバイトと2種類のモデルがあります。

2つのモデルではフラッシュメモリ以外には(ほとんど)何も変えてないと思いますので、iPhoneの256ギガモデルと64ギガモデルの価格差は、(差分の)192ギガバイト・フラッシュメモリの価格になるわけです。

4年前のブログでは、iPhone5Sの価格から、一般では1千円程度の16ギガバイトのフラッシュメモリを10倍の価格、1万円程度で売っていると書きました。差分の9千円がそのままアップルの儲けになっていたわけです。

今回発売されたiPhone Xでも価格を調べてみました。

 iPhone X 64ギガバイトモデル:121824円(税込み)

 iPhone X 256ギガバイトモデル:140184円(税込み)

両者の容量の違い、192ギガバイト(=256-64)のフラッシュメモリを18360円(=140184-121824)でアップルを売っていることになります。

フラッシュメモリの容量の違いによるiPhoneの販売価格の違いは、iPhone X、8S、8のいずれの機種でも同じです。

つまり、どのiPhoneで売っても、大容量のモデルさえ売れれば、フラッシュメモリ分だけでもかなり儲けることができる。

一方、フラッシュメモリを搭載したSDカードを価格.comで調べると、128ギガバイトで約4500円。192ギガバイトに換算すると、6750円となりました。

つまり、アップルはおおよそ6750円のフラッシュメモリを2.7倍の18360

円で売っていることになります。

普通にフラッシュメモリを売るよりも11610円も高く売っているわけで、これは儲かりますね・・・

4年前のブログには「こんなにお手軽に儲けてしまうビジネスモデルが、いつまで続くんでしょうね」と書きましたが、今でも続いているというわけです。おそるべし、アップル。

さて、アップルがフラッシュメモリで儲けている、というのはiPodの時代からiPhoneやiPadまで長年続いているビジネスモデルですが、以上の計算にはフラッシュメモリの原価の違いは考慮されていません。

アップルにとってみれば、フラッシュメモリベンダからメモリを安く買うほど儲けが増えます。

アップルのフラッシュメモリの購入価格はわかりませんが、大量購買の見返りに安くフラッシュメモリを買っているとすると、アップルのフラッシュメモリによる利益は、上に書いた数字以上かもしれませんね。

アップルの強みとして、iPhoneのデザインや機能が取り沙汰されますが、アップルという企業が利益を高めるには、「いかに安くフラッシュメモリなどの部品を安く調達するか」がビジネス戦略上、極めて重要になります。

ところで今朝は、iPhone Xの発売という華やかな話題の一方、フラッシュメモリ事業を手掛ける東芝メモリについても、ニュースが入って来ました。

東芝“日米韓連合”中核の米投資ファンドと優先交渉で調整へ

相手がある交渉事なので、東芝メモリの売却先については2転、3転しており、まだこれからも買収先が変わるかもしれません。

現段階で有力な売却先の候補である“日米韓連合”にはアップルが入っており、アップルは東芝メモリに3350億円を出資する意向のようです(「日米韓連合が2・4兆円最終提案 巻き返しへ研究開発費も 東芝メモリ売却で」)。

また、やり手のウエスタンデジタル(WD)が東芝メモリの経営を握ることに、アップルが難色を示しているとも報道されています(「半導体売却、アップルがWDによる将来の経営権取得に懸念 最終協議に影響も」)。

過去にWD(あるいはWDが買収したサンディスク?)がアップルへのフラッシュメモリの供給を絞ったり、フラッシュメモリの値上げをしたことに、アップルが反発しているなどと伝えられます。

アップルはアップルでお人好しのはずもなく、フラッシュメモリを大量に購買することを盾に、フラッシュメモリベンダに対してメモリを買い叩いているでしょうから、どっちもどっちなんでしょうが。

東芝メモリを誰が最終的に買収するかはまだわかりませんが、ラッシュメモリを大量に安く確保することがアップルにとっていかに重要か、iPhone Xの値付けを見ても明らかですね。

一方の東芝メモリ。

東芝と東芝メモリの利益が必ずしも一致しないので、中で交渉を頑張っておられる方は大変でしょう。

外野から報道を見ると、もはや東芝の債務超過を何とかする、という目的で東芝メモリを売るというよりは、東芝メモリの将来のために、資金があって自力で経営できる環境に東芝メモリを離脱させる、という方向に向かっているようで良かったです。

交渉事は相手もあるし時間は掛かったのでしょうけど、よくぞここまで来たものですね。

2017-08-04

夏休みは大学のオープンキャンパスに行こう

大学は変わらないようなイメージがあるかもしれません。私も企業に居た時にはそう思っていました。でも大学に転職してわかったのは、驚くほど大学自体が変わっている事。

大学は建物や教員はストックと言えるでしょうが、学生はフローです。入ったら数年もすれば出て行ってしまう存在です。また、学生の志望分野も社会の状況に応じてすぐに変わります。

この移り気な学生を獲得し続けるには、大学だって変わらざるを得ないのです。

大学のホームページをご覧になればわかりますが、今や、船舶、原子力、土木、金属といった名前の学科はかなり減っているか、消滅してしまっています。もっとも看板(名前)を変えてしぶとく生き残っている場合もありますが。

このように社会状況を反映して大学も激しく変わるので、高校生が志望先を決めることは大変です。

そういう高校生にとって、夏休みに各大学で開催されるオープンキャンパスは、その大学だけでなく様々な分野を知る良い機会になるでしょう。

大学にとっても「黙ってもお客さんが来てくれる(高校生に志願してもらえる)」時代ではないので、オープンキャンパスや学園祭などで、大学を知ってもらうための広報活動を一生懸命やっているわけです。

また、オープンキャンパスに行かれた人は気付いたでしょうが、今や親子で行くことが非常に多いですね。

それは、特に理系学部では、先に書いたように社会状況を反映して学科の名前や組織が激しく変わっており、昔の知識だけでは一体、何が何だかわからない、という事情もあるでしょう。

どこの大学のオープンキャンパスに行くか、選ぶにはコツがあって、できるだけ多くの研究室が公開しているところに行くのが良いでしょう。

研究室を主宰する教員や学生から研究の第一線の状況をただで聞ける、貴重な機会でもあるのです。

私も実は時々他大学のオープンキャンパスの研究室公開を覗いて、「AIの研究はどうやって立ち上げているのですか?」と実際に研究をしている学生に聞いて偵察したりします。

またオープンキャンパスでは公開講義や模擬授業をしている事も多い。第一線の研究者からこれも「ただで」話を聞けるのは、貴重な機会ではないでしょうか。

最近の大学の理系学部で力を入れているのは、女子学生のリクルーティング。女性の社会進出、なんて言葉が昔はありましたが、今や死語で、結婚・出産後も女性が働くことが当たり前になりました。

社会の様々な機関で女性が働く様になりましたが、それでも圧倒的に理系・技術の世界では女性は少ないのはもったいない事です。

研究開発と言うと、油にまみれたり、力仕事のようなイメージがあったかもしれませんが、今やどの分野でもコンピュータを使って開発をします。研究開発をしている現場を見ても、オフィスにコンピュータとディスプレイが並んでいるだけ、ということも多い。

もはや、女性が働けない理由などないのです。

一方、技術開発の世界では、結果が数字で表しやすく、「良いものを作った人が勝ち」の実力勝負で、女性だからと言って変な偏見も少ないと思います。

また、顧客対応などの仕事に比べれば、時間はフレキシブルに使えるので、子育てなどと両立しやすい。

むしろ技術は女性に向いた仕事ではないでしょうかね。

そうは言っても、誰もやっていない世界に踏み込むのは勇気がいるでしょう。まずはオープンキャンパスに行ってみて、実際に研究・開発の現場を見て、そこにいる女性の話を聞いてみてはどうでしょうか。

特に最近は多くの大学の理系学部では、オープンキャンパスで女性向けの相談会や説明会を開いています。実際に理系で活躍している女性に会って相談することもできるのです。

8月の週末には多くの大学でオープンキャンパスが開かれます。例えば私が所属する中央大学 理工学部でも明日・明後日(8/5,6)に後楽園キャンパスでオープンキャンパスを開催します。

電気電子情報通信工学科の女子学生・教員が中心となって、女性向けにた説明や、相談を受ける「エレ女広報部with電電相談室」もあります。

ぜひ、理工系への進学を考えている女子高校生と親御さんは、お越しになって下さい。

電気というとは、電気工事?というイメージがあるかもしれませんが、いまの社会の至る所にエレクトロニクス、ITが入り込んでいますから、裾野が広く、つぶしが効く分野です。

また、オープンキャンパスでは100を超える研究室が最先端の研究を公開します。竹内研も1号館地下1階1034号室で研究紹介を行います(知的情報処理システム研究室)。

他にもオープンキャンパスをやっている大学は多いので、夏休みにはお近くの大学を訪問し、将来の進路を考えてみてはどうでしょうか。

2017-07-09

潮目が変わって来た日本の半導体

久しぶりの更新になります。ブログを更新していないので、最近どうしたのか?、と聞かれることが時々ありますが、元気にやってます。

いまAI向けLSIというフロンティアが開けつつあり、必死でAIという新しい分野を勉強しています。何才になっても、新しいことをやるのは楽しいですね。

世界の中で市場シェアを落とし続ける日本の半導体。1990年頃に50%もあった市場シェアが、今では10%ちょっと。

韓国・台湾と言ったアジア勢の市場シェアが増加している一方、アメリカやヨーロッパのシェアは横ばいですので、日本が一人負けしているわけです。

最先端半導体では日本の最後の砦ともいえる、東芝フラッシュメモリ事業が東芝メモリとして分社化され、売却されようとしています。

落ちるばかりで良い事なんて何にもない・・・と思える日本の半導体ですが、潮目がひょっとしたら変わってきたのではないか、と感じています。

6月に京都で開催された、半導体のプレミア学会、VLSIシンポジウムの参加者が過去最高を記録しました。

私自身はプログラム委員として、特定のテーマに関して専門家達を招いて丸一日、講演・議論して頂くショートコースの企画を担当しました。

今回のショートコースでは、機械学習向けLSI(いわゆるAIアクセラレータ)と自動運転などのConnected Carという2つの企画を行い、過去最高の参加者数でした。

参加者はなんと倍増で、当日は座席が足りるか心配になるほどでした。

参加費が数万円以上と決して安くない学会への参加者数がこれだけ増えたという事は、日本でも半導体への関心が戻ってきているのではないか。

また、学会では自動車関連メーカーやITベンダに転職した、旧知の元半導体技術者に会いました。

日本の半導体の関心が戻りつつあると言っても、以前のような半導体ではなく、日本が得意とする自動車やロボット・医療機器などIoT端末に使われる半導体、ということでしょうか。

つまり、半導体メーカーのエンジニアが半導体のユーザー企業・サービス企業に移り、システム側から半導体への関心が高まっているのではないか。

こういった半導体を巡る業界の変化は、日本だけではないでしょう。

最近話題の東芝メモリの買収に名乗りを上げる企業からもわかります。東芝メモリの買収を提案しているとされる、グーグル、アップル、アマゾンなど半導体のユーザーだった企業が、半導体を手掛けるようになっている。

学会の参加者が増えたのは、AIや自動運転車という象徴的なテーマがあることが大きいでしょうが、よりシステム側・サービスに近い企業が半導体に進出することで、再び日本でも半導体が注目される時代が来るのかもしれません。

AIでもソフト(アルゴリズム)・ハードの融合、全体最適化が重要ですが、最終的にビジネスで参入障壁を築いて利益を手に入れるのは、LSIのようなハードを持っている企業なのかもしれません。

だからグーグルやアマゾンもLSIの開発を手掛ける。

金融情報サービスを手掛けるブルームバーグが、なんだかんだ言っても端末というハードで顧客を囲い込み、儲けていることと似ているのかもしれません。

2017-05-04

ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に 最適なSSD を開発 〜 データの「価値」を判断する ことで、300 倍の長寿命化、26%の高速化に成功

CICCで発表したValue-Aware SSDに関してプレスリリースを行いました。

【概要】

中央大学 理工学部 教授 竹内 健のグループは、ディープラーニング(深層学習)を用いた画像認識に最適な記憶デバイス(SSD)を開発しました。開発したSSD は画像データの「価値」を判定し、重要なデータは高信頼なメモリセル、重要性が低いデータは信頼性が低いメモリセルに記憶するように制御します。また、ディープラーニングを用いた画像認識では、認識精度が保てれば計算の精度は低くても影響しないことに着目し、読み出しの高速化と高い画像認識を両立する、メモリのエラーを訂正する誤り訂正回路(ECC)を開発しました。これらの制御技術の開発により、SSD の寿命(データの保持時間)を300 倍長寿命化し、SSD を26%高速化することに成功しました。

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185631j:image

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185727j:image

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185725j:image

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185723j:image

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185721j:image

f:id:Takeuchi-Lab:20170504185719j:image

2017-03-17

東芝のフラッシュメモリ事業をアメリカ企業に買ってもらい、「日米連合」という幻想

東芝のフラッシュメモリ事業は4/1に分社化され、東芝メモリという会社になるようです。

そして原発事業の損失の穴埋めのために、東芝メモリは完全に売却されると言われています。メモリ事業は現在絶好調の上、データセンタ用途の市場の拡大も期待されるため、売却金額は1.5-2兆円にもなると言われています。

これだけの高収益事業、しかも日本が生み出した製品ですので、むざむざと外資系にくれてやるのはもったいない。

こういう時こそ、政府系の金融機関、政策投資銀行や産業革新機構の出番ではないか、と主張し続けてきました。

これは決して東芝を「救済」するわけではなく、ましてや東芝本体の「再建」になるわけでもありません。

もう随分前から(10年以上前から)東芝のメモリ部門の独立というのは何度も取りざたされており、本来はとっくの昔に分社化・独立してIPOをすべきだったのです。

今回の政府系の金融機関やファンドから出資を受けるというのも一時だけのことで、1-2年くらいかかるでしょうがIPOによってExitを目指すべきでしょう。IPOにより「政府系金融機関の投資へのリターン」として国民にも利益を還元する。

ところで、東芝メモリの買収先を巡る報道で気になるのは、政府高官(って誰でしょう?)の話として、アメリカ企業に買ってもらいたい、日米連合、などという報道もされています。

候補となるマイクロンやウエスタンデジタル(WD)はいくつもの企業を吸収・合併してのし上がって来た企業です。

WDの現CEOのスティーブ・ミリガンなど、WDの幹部をやっていたのに辞めてライバルのHGSTに移ってCEOになり、その後HGSTをWDが買収した時にのし上がってWDのCEOになったツワモノです。

アメリカの半導体企業のトップなどこういう人達ですから、東芝メモリが買収されたら「日米連合」などになるはずありません。

マイクロンなどはメモリの開発拠点がアメリカにありますので、日本からはエンジニアのキーパーソンだけをアメリカに呼び寄せて技術を吸収し、日本は単なる製造拠点になってしまうかもしれません。

マイクロンに買収されたエルピーダメモリはそんな状態ではないですかね。

買収される側に何らかの主導権が残る、と思うのは多くの場合は幻想です。

外資系企業が買収する場合、買収先の企業の上の方のマネージャーはクビを切り、自社からマネーシャーを送り込み、買収先を支配することが普通です。決して連携でも連合でもありません。

買収した方からしたら、支配することが当然なのです。買収先が大企業であるほど、買収先の自由を許していたら、組織を統括できませんから。

だからこそ、東芝のメモリは外資系企業、特に同業他社には買収されてはいけない、と思うのです。

それは買収先の国籍によりません。買収先が中国や台湾がダメで、アメリカなら良い、という事ではないのです。

ですから、政策投資銀行や産業革新機構が東芝メモリに出資するのならば、東芝メモリの全株式の51%以上(つまりマジョリティ)を取って欲しいのです。

翻って東芝の原子力事業を考えると、買収したウェスチングハウス(WH)にそうした支配・統制をできなかったからこそ、WHの暴走を招き、現在のような悲惨な結末になってしまったのでしょうかね。

2008 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2009 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2010 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2011 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2012 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2013 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2014 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2015 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2016 | 01 | 02 | 03 | 04 | 05 | 06 | 07 | 08 | 09 | 10 | 11 | 12 |
2017 | 01 | 02 | 03 | 05 | 07 | 08 | 09 | 10 |
2018 | 01 | 03 | 04 |