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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2013-06-19

特許の制度を変えても、日本のメーカーは復活しない。技術者の待遇の改善は、誰もやらないんですかね?

元社員からの巨額な特許訴訟をなくすため、特許の権利を会社に帰属させる法改正が行われるそうです。

アメリカでは、特許提案・出願時に、企業が発明者の従業員に対価を支払うので、そういう制度になるんでしょうかね。

でも、法改正で、日本企業は強くなるんですかね?

私は否定的です。

そもそも、なぜ、元社員が古巣の企業を訴えるような、不幸な関係になったのか。

それは、自らの不遇の不満、会社へのやるせなではないでしょうか。

一人で発明しても、事業化の時には、立ち回りがうまい人が、成果を持って行ってしまう、というのは、良くあること。

自分も、そういう体験に嫌気がさして、辞めた一人。

先日のブログにも書いたように、優秀なエンジニアから辞めていく現実は、なぜ、見向きもされないのか。

パイオニアをリスペクトするシリコンバレーと、リスペクトしない日本。頑張った人は残るシリコンバレー、頑張った人から辞めていく日本。

あまりにも、日本の技術者の待遇は悪すぎる。

画期的な発明をするような尖った人は、必ずしも、日本企業のような滅私奉公の中間管理職には、向いてない場合が多いと思う。

滅私奉公なんてやってたら、ブレークスルーのアイデアなんて浮かばないでしょう。

そういった、飛び抜けたエンジニアを処遇できる制度は日本企業には、なかなか、ない。

海外の企業のような、デュアルなキャリアパス、管理職とエキスパートの2つの制度がなぜ日本ではできないのか。

フェローの制度なんて、対象者はほんのごく一部。

「自分の会社はエンジニアを大切にしていますよ」というアピールのための、アリバイのようなものでしょう。

このような、技術者の待遇が変わらない限り、優秀な技術者から社外に流出することは、止まらないでしょう。

そして、優秀な学生ほど、伝統的な大企業、メーカーには入らない、というトレンドも変わらないでしょう。

結局、いくら法律をいじったところで、自業自得で、メーカー自体が競争力を失っていくんでしょうね。

2013-06-16

大学を卒業して20年たつとわかる、終身雇用なんて、幻想だった。

自分は大学院を卒業して20年たつのだけれども、同期の連中の身の振り方をみると、終身雇用で会社に勤めあげる人なんて、ほんの一部。

就職した時には、東大の工学部の同期たちは、自分も含めて、いわゆる大手企業、メーカーや金融機関、商社などに就職して行った。

その時は、特にメーカーは世界の中で競争力があったし、日本メーカーの間で転職はできないとも言われていたので、就職した会社に一生勤めるのは普通だ、という認識だったと思う。

つまり、ほとんどの人は、終身雇用のつもりで、就職をしていた。

それが、20年後の今では、最初に就職した会社に勤め続けている人は、同期の中でも1/3も居るかどうか。

就職した時と、その後の展開は、全然違ったものになりました。

まず、90年代、私たちが20代の時に、金融バブルがはじけ、盤石だと思われていた、大手の金融機関がバタバタと倒れて行った。

特に、東大生は長銀に就職した人が多かったので、長銀の倒産で、かなりの人が、会社を辞めて、外資系企業などに移って行った。

一方、90年代は、メーカーは金融機関ほどは経営が悪化しませんでした。

メーカーの技術者の友人たちで、会社の経営が悪化したというより、新しいチャンスを求めたり、自分のスキルアップのために、自ら転職していく人が増えたのが、30代。

このグループは大体、人数にすると、1/3くらいですかね。

新しいチャンスを求めて転職する人は、一度ではなく、何度か転職をしている人が多いような気がします。

自分もこのグループの一人。

もう一つ、残念ながら、30-40代で増えたのは、自分の意図とは関係なく、転職せざるを得ない人たち。

事業が不振のため、他の会社に売却されたり、別の企業になったり。

気づいたら、違う会社になっていた、というパターン。

そして、40代。

これから増えそうなのが、メーカーの事業の不振で、リストラで退職を余儀なくされるケース。

あと数年もしたら、就職した会社にずっといる人なんて、ほんのわずかになるんじゃないかと思う。

会社を変わる理由は人それぞれだけど、結局、終身雇用って、幻想だったんでしょうね。

一方、これだけ変化が激しいのに、それでも、「安定」や「終身雇用」を求め、「会社が何とかしてくれる」と思っている人もいる。

そういう学生に会うと、本当に、大丈夫なのか?と思ってします。

20年前から、すでに、終身雇用なんて幻想だったのだから、今では、もうあり得ないでしょう。

それに、早く気が付いた方がいい。

2013-06-09

スティーブ・ジョブズが生きていたら、ビッグデータのブームをどう思ったのだろうか?

アップルの広告を手掛けたケン・シーガルの「Think Simple」という本を読んでいる。

スティーブ・ジョブズと12年間も付き合って、iMacのThink differentのキャンペーンから最近のiPhoneiPadまで広告を手掛けた話。

最近読んだ本では、傑出して面白い。

ジョブズは徹底的に人を中心にして、考える。

決して、テクノロジーの話をしてはいけない、というのが面白い。

例えば、iPodは「5ギガバイトのHDDを搭載した、重さ185グラムの音楽プレーヤー」とは言わず、シンプルに「1000曲をポケットに」。

これは、大きな違いですよね。

この本から学ぶところは多いのですが、ひとつ、ビッグデータの真逆のようなことを言っているのが、面白い。

ジョブズは統計分析に関しては、「すがすがしいまでに頭が古かった。」

「スティーブは数字に隷属する姿勢を大企業的だと見ていた。アップルがどれほど大きくなっても、数字に夢中になることはなかった。集めたデータは熱心に見るが、最終的な決断では、頭と心をよりどころにした。」

「スティーブは、アップルはテクノロジーとリベラルアーツの交差点に立っている、と言った。それこそがスティーブの真髄だ。統計データをむやみに信じることや、数字によってアイデアの価値を判断することはなかった。彼にとって、アイデアがすべてだったし、すばらしいアイデアは必ずしも従来のやり方から見えてくるとは限らないのだ。」

「スティーブは事実と感情の違いを認識していた。ブランドを確立する際にもっとも重要な要素は、形がないものや、証明できないものだとわかっていた」

スティーブ・ジョブズが生きていたら、今の、ビッグデータのブームをどう思ったんでしょうね。

技術が発達しても、人にしかできない部分はあるはずだけど、コンピューターがどこまで人に追い付けるのか。

将棋やチェスのように、ルールが決まっていることだったら、コンピューターが人を打ち負かせても、形がないもの、見えないもの、証明できないもの、まだ存在しないものは、難しいでしょう。

これから、人とコンピューターの棲み分け、共存が大事になる。

人しかできないことは何だろうか、と考えるうえでヒントになる一冊です。

竹内が所属する、中央大学 電気電子情報通信工学科では常勤(任期なし)の教員を募集しています。7/26締切。電気電子情報通信工学分野に基礎を置き、システムインテグレーションによる新たな価値の創造に関心のある方、是非、応募をお願いします。

私が所属する、中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科では、2014年4月採用で、常勤(任期なし)の教員を募集しています。

期待されるのは、「電気電子情報通信工学分野に基礎を置き,システムインテグレーションによる新たな価値の創造に関心のある方」です。

興味のある方は、是非、ご応募をお願いします。

締切は、7/26。

募集要項は、こちらです。

公募に関して」も是非ご覧ください。

2013-06-08

入試で子供を鍛えることが話題になるけれど。時には、子供がやる気が出るまで待つことこそ、教育なのかもしれない。

センター入試が無くなり、勉強の到達度を試す試験が高2から複数回、受けられるようになるそうですね。

複数回の試験を受けることができるのは、もちろん、受験生にとって良いことでしょう。

たった一回の試験ならば、過度に緊張したり、不運にも試験日に病気になったり、実力を発揮できないことも。

ただ、一点、気になるのは、あまり早くから、受験の試験を受けさせ、長期間、受験のプレッシャーにさらすのは、本当に良いのかな。

というのも、今の自分もそうだけど、時間を掛けて勉強を続ければ、成長するわけでは、必ずしもない。

本人がその気にならないのに、無理やり勉強をさせても、時間の無駄になることもある。

逆に、やる気になったら、急に短期間で伸びる子もいますよね。

実際、中学受験あたりだと、特に男の子は、入試直前の、秋や冬から急にやる気を出して急成長し、志望校に入ることもあるようです。

その逆に、教員や親が細かく勉強しろ、と押し付けた結果、早くから勉強ばかりで、「伸びきったゴム」のようになってしまう子がいるのも事実です。

入試は必要悪というか、仕方のないことだけれども、入試が目的化してしまい、入学後は燃え尽きてしまっては、本末転倒。

実際に、入学したら、既に燃え尽きてしまっている子は、中学受験でも大学受験でも相当数いるでしょう。

結局、やる気がある子供を支援するのならば、早期の受験勉強も良いのでしょうが、そうでない場合は、本人がやる気を出すまで待つことも、時には必要なのでしょうね。

子供がやる気を出すまで待つことも、教える側の重要な仕事なのかもしれません。

教育は、放置しすぎても、ゆるすぎてもダメで、バランスが難しいところですが。

急にやる気を出して、伸びた子供もカバーできるような、入試制度になったら良いなと思っています。

明日、6/9に京都で開催されるSilicon Nanoelectronics Workshop (SNW)でSSDの論文発表を行います。

明日、6/9に京都で開催されるSilicon Nanoelectronics Workshop (SNW)でSSDの論文発表を行います。

修士一年の土井君の国際会議デビューです。がんばれ!

Masafumi Doi, Shuhei Tanakamaru and Ken Takeuchi, “An Optimum Asymmetric Coding Strategy to Improve Program-Disturb Error in 2X, 3X and 4Xnm NAND Flash Memories for Highly Reliable Enterprise Solid-State Drives (SSDs),” Silicon Nanoelectronics Workshop (SNW), June 2013.

2013-06-07

ちきりんさん著 「未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる」

ちきりんさんの「未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる」を献本いただき、ありがとうございました。

アマゾンを見ると、発売が6/12ということなので、試し刷りを送って頂いたようですね。

ありがとうございました。

これだけ変動が激しい時代には、資格なんてあてにならない。

グローバル化やITの発達で、日本から仕事が無くなったり、機械に仕事が奪われたり。

そういう時代には、よほど幸運でなければ、同じ会社で一生勤めあげるのは難しい。

本書のタイトルのように、2回、いや、3回、4回と仕事を変えることが必要でしょう。

さて、こういった内容は、まさに激動の電機業界にいる私たちにとっては、当たり前。

知り合いがリストラになったり、日々、ひしひしと実感しています。

実際、私だって2回転職しました。

社会人になってからは、企業でハードウエアの設計者→MBAに留学してビジネス→大学に転職し研究→ソフトウエアの研究に転換、と、必要に迫られて、仕事を変えてきました。

このように、本書には、あまり突飛なことは書かれていません。

本書の素晴らしいのは、こういった内容を、非常にわかりやすく表現されている点にあると思います。

ちきりんさんの本にはいつも感心してしまいますが、構成から文章まで、とても表現が上手ですね。

上に書いたような内容は、グローバルなビジネスの最前線で揉まれている人は、日々実感していると思いますが、自分で体験してない人には、なかなかわからないもの。

パナソニックやソニーが大赤字を出しているように、大企業だって、あてにならない時代です。

それなのに、就活では、歴史と伝統のある大企業にどうしても就職したい、という学生は、今でも相当数います。

特に、親御さんが、大企業への就職を望んでるので、大企業を志望するというケースも多いでしょう。

ちょっと、時代背景、社会の認識が大丈夫かな?と心配してしまうことも、しばしばです。

この本は、そういった、就活をする前の学生や、ご父兄にはとてもお勧めだと思いました。

京都で開催されるSymposium on VLSI Circuitsで、新メモリを使ったメモリシステムの講演と、3次元LSIのパネル討論を行います。

もう来週に迫ったVLSIシンポジウムで、ストレージクラスメモリを使ったメモリシステム、ハイブリッドSSDに関する講演と、3次元LSIのパネル討論を行います。

ともに、初日、6/11です。

プログラムはこちらです。

Ken Takeuchi, “Storage Class Memory and NAND Flash Memory Hybrid Solid-State Storage System for Big-Data Application,” IEEE Symp. on VLSI Circuits, Workshop, June 2013.

Ken Takeuchi, “3D Hybrid SSD with Storage Class Memory and NAND Flash Memory for Big-Data Application,” IEEE Symp. on VLSI Circuits, Joint Rump Session, June 2013.

2013-06-04

6/13にインテックス大阪で開催されるEmbedded Technology Westで講演を行います。「日本のエレクトロニクスが世界で勝ち残るために」

来週は関西で3件の講演を行います。まず、6/13にインテックス大阪で開催されるEmbedded Technology Westで講演を行います。

無料ですが、事前登録制のようです。

興味のある方は是非、お越し下さい。

ヒートアップセッション

15:00〜16:00  5号館1階 展示会場内 特設会場

日本のエレクトロニクスが世界で勝ち残るために

【講演概要】

苦境が続く日本のエレクトロニクス。アップル、グーグル、フェイスブックがハードを手掛ける時代では、ハードだけ、ソフトだけでは生き残ることが難しい。必要なのは、個人も企業も勇気を持って、分野を越境すること。日本ではハードに強みを持つ企業が多い。ハードの強みを武器に、ハード・ソフト・サービスの融合を行う。本セッションではビッグデータのクラウド情報処理システムを例に、今後の日本のエレクトロニクスの生き残りの条件について講演する。

2013-06-03

日経Tech-Onに、竹内研が開発した、ReRAMとフラッシュメモリのハイブリッドSSDの解説記事が連載されました。

昨年8月の日経エレクトロニクスに連載された、ReRAMとフラッシュメモリで構成するハイブリッドSSDの解説記事が、Tech-Onに掲載されました。

第1回 新型メモリを組み合わせる

第2回 ReRAM搭載のSSD 

第3回 ReRAM搭載SSD――アーキテクチャ  

第4回 ReRAM搭載SSD――評価結果  

ビッグデータがはやっていますが、エンタープライズ向けのストレージでは、こうした新しいメモリを組み合わせることが重要になるでしょう。

2013-06-02

新しい事業や技術に欠陥はある。それでも、始めてみなければ、進歩はない。批判する側よりも、批判されながらも、実行する側でありたい。

今回書くのは、自分のことというより、自分の周りで起こったことについて。

人生の選択というか、仕事を選ぶ選択で、新しいことを始める側になるか、新しいことを始める人を支援というか、批評する側になるか、というのは大きな分かれ道ですね。

前者の例は、会社を興したり、事業を起こしたりする人。

後者の例は、おおざっぱには、評論家、アナリスト、投資家、コンサルとかかな。

コンサルを起業する人とかもいるから、簡単に分けられるほど、単純じゃないですが。

新しい事業を始めたり、技術を開発すると、山ほど、批判を受けます。

でも、完璧なものができてから、スタートさせようとしたら、いつまでたっても始められない。

新しいことを始める人は、少々、不具合があっても、まず始める。

そして、走りながら修正していくしかないのでしょう。

批判というのは、進化させるためのヒントですから、ありがたいことではあります。

でも、妬みのような感情で批判したり、足を引っ張る人も必ず出てくる。

当事者になるとわからないけど、周りから見ていると、批判ばっかりしてないで、お前もやってみろよ、と感じたりもします。

そうやって、批判されている人、批判している人を見ていると、ひょっとしたら、批判している人も、自分でやりたかったのかもしれないな、と思いました。

新しいことを始めて、突っ走っている人がうらやましい。

そういった感情の裏返しが、批判になったりするのかも。

さて、自分のことを振り返ると、批判されても、自分は新しいことを始められる人間でいたい。

いつまでも。

批判だけする人間になったら、終わりだな、自分の場合は。

2013-05-31

(MONOistにインタビュー記事が掲載)「どんな会社に入るか」 ではなく、変化に応じて自分が変われるかが重要

理系ナビという理系の学生向けの就職情報誌に掲載された記事の転載です。

「どんな会社に入るか」 ではなく、変化に応じて自分が変われるかが重要――中央大学 竹内健教授

若い世代は大企業信仰は減ってきているものの、それでも、一部上場企業、大企業に勤めたい、とにかく安定した企業に入りたいと思う人もいる。

特に、親がそれを望むんでしょうね。

どんな企業だって、先が保障されてないのは、90年代の金融機関、今の電機メーカーを見ても明らか。

大学だって、つぶれる時代です。

それなのに、とにかく、「有名な大きな会社に務めたい」という発想は危険でしょうね。

もちろん、歴史のある大企業が長く続くこともある。

それは、ずっと同じようなことをやっているわけではなくて、むしろ、事業は時代に合わせて変えてきているんです。

東芝は電球の会社としてスタートし、パソコンやテレビで儲けた時代はありましたが、いまや、フラッシュメモリ原発などの発電や医療、社会インフラがメインです。

こうして、会社が事業を変えて生き残りを図るときに、あんまり表沙汰にならないけど、社内で配置換え、子会社に出向、場合によってはリストラされている人はたくさんいます。

だから、大企業でも、アグレッシブに事業を転換しているようなところは、安定志向の学生は取りたくないんですよね。

元気があって、長く続く企業ほど、何かしでかしてくれそうな、大企業に行きそうにない学生を取りたがるんじゃないかな。

2013-05-29

エンジニアtypeに松井博さんとの対談が掲載。/メーカー復活で浮き彫りになる「潰しの利かない人」は、これから何をすべきか?

エンジニアtypeに元アップルの松井博さんとの対談が掲載されました。

メーカー復活で浮き彫りになる「潰しの利かない人」は、これから何をすべきか?【対談:New Order-松井 博×竹内 健】

タイトルは過激ですが、私にとっては、スティーブ・ジョブズがアップルを立て直した時の話を伺えたのが興味深かったです。

会社を立て直すときは、まず規律から。

スティーブ・ジョブズはデザインやカリスマ性ばかりが注目されるけど、「会議室のホワートボードはちゃんと消せ」とか細かいことをガミガミ言っていたというのは、面白い。

ダメになる組織は、いったい自分の事業がいくら儲けているのか、損しているのか、コストや売り上げはどうなっているのか、わからなくなってしまう。

お金だけでなく、一事が万事、カオスのような状態になってしまうんですよね。

だから、何が悪くて組織が傾いているかさえ、わからなくない。

立て直しには、いろいろなことを、可視化するところからなんですよね。

これは、あらゆる組織について、言えると思う。

2013-05-28

パイオニアをリスペクトするシリコンバレーと、リスペクトしない日本。頑張った人は残るシリコンバレー、頑張った人から辞めていく日本。

IEEE IMW(International Memory Workshop)という、半導体の不揮発性メモリの学会に参加するため、アメリカのモントレーに来ています。

竹内研からは4件の発表をします。

モントレーはシリコンバレーから車で2時間ほどと近いため、シリコンバレーの多くの企業の人が参加し、技術的議論に加えて、業界内の情報交換なども活発に行われる。

自分にとってもう一つの楽しみは、東芝でフラッシュメモリを一緒に立ち上げた、先輩や仲間に会えること。

現役で東芝に残っている人はわずかで、ほとんどの人が、辞めました。

私は大学でも東芝と協力して研究をしているのですが、いまでも、東芝と関係があるのは、私くらいでしょうね。

大半の人は、競合関係の外国企業に移りました。

東芝をやめて5年も経つのに、アメリカ人から、「なんでお前は東芝を辞めたのか?」と、頻繁に聞かれます。

毎年説明しているので、もう、うんざりなのですが。

フラッシュメモリが東芝の主力事業として育っているのに、フラッシュメモリを初期から開発して、パイオニアと言える人たち、自分の先輩方が、ほとんど辞めているのが、アメリカ人には、理解できないらしい。

まあ、自分はパイオニアというにはおこがましく、初期の開発の最後の方に入ったのですが。

アメリカ人から、

「なんでお前たちは会社を辞めたんだ?」

と不思議がられるのって、とっても、変ですよね。

普通は、「日本人は、なぜ、会社を辞めないのか?」と聞かれる。

一般的には、アメリカの企業の人の方が、会社を頻繁に辞めるわけで。

アメリカ企業では、実績に基づいて昇進するから、成功した事業の立役者は、社内で昇進する。

ですから、成功した事業を立ち上げた人は、転職しない方が得なのです。

そんなアメリカ人からしたら、事業を立ち上げた人は、東芝に残った方が得なはずなのに、なぜ辞めるのか?、理解できないようです。

日本企業では、事業を成功させても、人事制度は年功序列だから、特別、昇進するわけじゃないですよね。

フラッシュメモリを立ち上げた人たちは、比較的年齢が若かったし、事業が成功しても、個人的にはほとんど、恩恵を感じませんでした。

むしろ、事業が成功した途端に、今まで邪魔をしていた人が、「自分こそ立役者だ」、と言い出す始末。

そんな、人間模様にうんざりした、というのも会社を辞めた理由の一つかな。

このあたりは、拙著、「世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記」に書きました。

このような人事制度は東芝だけの問題じゃなく、日本の社会全体の問題でしょう。

むしろ、東芝はエンジニアを自由に仕事をさせてくれる、日本の中では、良い企業の方。

半導体では、東芝は日本の数少ない、勝ち組ですから。

自分も育てて頂いたと、感謝しています。

でも、社外での評価と、社内での評価に大きなギャップがあるならば、会社を辞めるのは、当たり前ですよね。

結果として、頑張った人から辞めていくのが、日本企業。

一方、ダメな人は辞めざるを得ないのが、海外の企業。

どちらが生き残るかは、自明ですよね。

現在の日本の半導体産業やエレクトロニクス産業が惨敗しているのは、こういう理由もあるのでしょう。

海外に出ないと、パイオニアとリスペクトされない。

そんな社会でいいんですかね、日本は。

パイオニアをリスペクトする国にならないと、成長戦略も難しいだろうな。

逆に、日本に埋もれた有能な人材は、たくさんいるんじゃないですかね。

こうした人たちを活かせるようになることこそが、成長戦略でしょう。

2013-05-24

伊東豊雄さんが「建築とは誰のため?」と考え、被災地に作った「みんなの家」。電機産業の苦境も、技術は何のため?、が置き去りにされているから。技術者はもう一度、人と向き合うことが必要だと思う。

建築家の伊東豊雄さんが震災の被災地に建てている「みんなの家」の記事

 被災地につくった「みんなの家」  地方から生まれる「未来に向かう力

がWedgeにのっていて、自分のやっている研究もこれで良いのか?と考えさせられた。Wedgeの記事を一部引用すると、

みんなの家とは、

「木造平屋、思い出につながる切妻屋根。仕切りのない20畳の部屋。薪ストーブ。掘りごたつの部屋。飲み会だってできる。心が安らぎ、自然と話がはずむ10坪ほどの家」

だそうです。

なぜ、このような家が必要かというと、

仮設住宅を訪ねて何が必要かと聞くと、異口同音に縁側がほしいという言葉が返ってくる。人間には、とりわけすべてを失った被災地では、プライバシーよりも大事なものがあるんじゃないかと思いました。かつての公民館のように何でも包括し、誰でもが寄り合え、いろいろな話をし、立ち上がるエネルギーが生まれるような場所が必要なんです」

とのこと。

こうした経験をする中で、伊東さんは、

「建築はこれでいいのかという思いを抱いていた伊東は、被災地に足を運び続ける中、建築は一体誰のために造るのかという原点まで戻ってゼロから考え直さなければいけないと感じるようになっていった。」

さて、ここから本題ですが、ひるがえって考えると、自分の技術は一体誰のためになっているか?、ちゃんと答えられるのか。

エレクトロニクスの技術は人に役に立つための手段に過ぎないはずなのに、いつしか、技術を開発すること自体が目的化されていないか。

最近、冷蔵庫やテレビといった家電製品に不思議な機能を付けたものが発表されていますが、これは、技術と人の生活がかけ離れてしまっている例でしょう。

以前だったら、スマホのように持ち運びができるコンピューターが欲しい、テレビは薄く、軽くしたい、綺麗な画質にしたい、といった、明確な要求がありました。

でも、いまや、スマホもテレビもパソコンも、かなり満足できるレベルまで洗練されました。

これからは、バッテリーをもっと長くもたせたい、といった技術開発の項目はあるけど、「何のために技術を開発するか」は、そんなに明確じゃなくなりました。

これが、今のエレクトロニクス産業、半導体産業が苦境に陥っている原因でしょう。

もういちど、私たち技術者は、ものではなくて、人に真正面から向き合う必要があるのではないか。

リアルでドロドロした人の生活をよーーく考えて、これから人が必要としているのは何だろう?と考えないと。

人が必要としているのは、日本のような先進国と、途上国では異なるでしょう。

自分とは環境が違う世界の人が、何を必要としているのかを理解するのは簡単じゃない。

これは自分も全然できていないこと。

技術とは距離を置いて、人と向き合うこと、が今年の自分の目標。

電機産業の苦境を見ても、人と向き合わないで、やみくもに技術だけを開発しても、将来がないと思う。

人と向き合っていることとしては、建築やアートにヒントがあるんじゃないかと思っています。

2013-05-23

日経Tech-OnにMOTの記事を寄稿。「変化が激しい時代に、大学で何を学ぶべきか〜時代を経ても変わるスキルと、変わらないスキル」

日経Tech-On「エンジニアのためのMOT」に久しぶりに記事を書きました。

変化が激しい時代に、大学で何を学ぶべきか〜時代を経ても変わるスキルと、変わらないスキル

このコラムの趣旨は、エンジニアに向けて、MOT(技術経営)を紹介するものです。

電機業界が苦境に立っているのは、まさに経営の問題で、それこそ、日経のコラムに書くべきことなんでしょうけれど。

でも、Tech-Onの主要な読者が、電機産業の、しかも、かなり年代の方のよう。

まさに問題を作り出した人に、問題を書いても、反発されることが多いのが現実。

耳に痛いことは、読みたくないでしょうから。

むしろ、電機業界について、思い切ったことを書くのは、自分のこのブログの方がやりやすい。

幅広い年代の方、様々な分野の方にも読んでもらえますし。

日経のコラムはどうしようかと思っていたのですが、ここで方針を変えて、対象とする読者をエンジニアから、もっと広げることにしました。

今回は、大学に入ったばかりの新入生や、大学で何を学ぶか、大学選びをする高校生を対象に、何を大学で学ぶべきか、書きました。

もう、ダメになったものを、何とかしようとするのは、やめようかな。

ダメだとわかっていても、変わりたくない人を変えようとするのは、本当に疲れる。

それよりも、次の時代を若い世代と一緒につくっていきたいと思う。

もし、若い世代から、「あんたいらないよ」と思われなければ、ですけどね。

このコラムも、そういう前向きなことを書いていこうと思っています。

2013-05-21

ソニー、シャープ、ルネサス・・・経営者が良く変わるけど。経営者の言葉がイマイチ心に響かないのは、なぜだろうか。

相変わらず、電機産業は経営者がコロコロ変わりますね。

社内の派閥抗争がどうだとか、ゴシップネタがメディアでもしょっちゅう、取り上げられていて、現場の社員の方を考えると、やるせない思いがします。

でも、経営者が変わって、経営方針を聞いても、いまひとつ、心を打たない。

顧客の声を聞くとか、社員の力を発揮させるとか、その通りなんだけど、きれいごとを言っているようにしか感じない。

ああこれで会社は良くなるな、と思えない。

その中では、パナソニックの社長さんの言葉は、わりと迫力ありますね。

経営者といえども、自分の過去の経験に基づいて行動するわけで、いまひとつ、「この人は何をしてきた人だろう?」というのが見えないのだと思う。

社内で、小さくても、事業を立ち上げた人ならば、経験に裏打ちされた言葉で語ることができると思うのですが。

リスクを取らずに、そつなく社内で(特に本社で)出世してきた人の言葉には、迫力ないですよね。

個々の会社のキャリアパスは知りませんけど、どんな人を経営者として抜擢するか、でその会社の立ち位置がわかるんでしょうね。

2013-05-18

5/26からモントレーで開催されるInternational Memory Workshopで、竹内研はReRAM、SSDなど4件の発表を行います。

このところ学生もずいぶん増えて、研究成果もうなぎのぼり。

4月のIRPSでは4件の発表を行いましたが、次も4件です。

5/26からアメリカのモントレーで開催されるIMW(International Memory Workshop)ではSSDのシステム(1件)、ReRAMのデバイスと制御(2件)、PRAMの回路(1件)と、合計4件の論文を発表します。

論文がたくさん出るのは良いことなのだけど、多すぎて、推敲が手が回らなくなりつつある。

今年は4年生がパワフルで非常に頑張っていて、成果がドンドン出そうですが、これ以上、論文が増えたらどうしよう、と贅沢な悩み。

・Chao Sun, Kousuke Miyaji, Koh Johguchi, and Ken Takeuchi, “SCM Capacity and NAND Over-Provisioning Requirements for SCM/NAND Flash Hybrid Enterprise SSD,” IEEE International Memory Workshop, May 2013.

・Tomoko Ogura Iwasaki, Sheyang Ning and Ken Takeuchi, “Stability Conditioning to Enhance Read Stability 10x in 50nm AlxOy ReRAM,” IEEE International Memory Workshop, May 2013.

・Sheyang Ning, Tomoko Ogura Iwasaki and Ken Takeuchi, “Write Stress Reduction in 50nm AlxOy ReRAM Improves Endurance 1.4× and Write Time, Energy by 17%,” IEEE International Memory Workshop, May 2013.

・Koh Johguchi, Toru Egami, Kousuke Miyaji and Ken Takeuchi, “Write Voltage and Read Reference Current Generator for Multi-Level Ge2Sb2Te5-based Phase Change Memories with Temperature Characteristics Tracking,” IEEE International Memory Workshop, May 2013.

2013-05-11

一見、バカに見えることの中にこそ、チャンスがある。あなたの会社は、バカなことをやっていますか?

最近、忙しすぎてブログが書けなかったので、今日2本目のエントリ。

エンチャントムーンという手書きタブレットを開発した、UEIの清水亮さんのブログが面白い。

なぜ、ベンチャー企業だけが「新しいコンピュータ」をつくることができるのか

ソフトを手掛けるベンチャーが、なぜ、ハードを開発したか。

最近は、日本の携帯端末のハードは苦戦が続いていて、ハードは作りたくても、なかなか事業として行えない。

ざっくり要約すると、大企業でも新しいハードを作りたい人はたくさんいるが、社内で認めてもらうのは難しい。

タブレットというハードを開発するには、「情熱と資金、人脈、それとなにより大事なのは社長がバカだってこと。そういう条件が全部揃う必要がある」とのことです。

この、「バカ」がいいですねえ。

まあ、事業がうまくいかなければ、「やっぱりバカ」と言われるのでしょうが。

エンチャントムーンが事業としてどうなるか、私にはわかりませんが、「一見、バカに見える先に、チャンスがある」というのは真実だと思います。

例えば、「ハードは儲からない」といった、「常識」には、嘘があるのではないか、付け込む隙があるのではないか。

フラッシュメモリも、開発の当初は「バカ」と言われました。

書き換えにトンネル現象を採用したため、高い電界をトランジスタに印加する必要がある。

電圧も、通常のLSIの2-3Vよりもはるかに高い、20Vが必要となる。

トランジスタのサイズを縮小するには、電圧を低くする必要がある」というのが、教科書に書いてある「常識」です。

フラッシュメモリは微細化により大容量のメモリを目指していたのに、20Vという高い電圧を使うとは、「バカ」だと言われたものです。

実際に、私が東芝に入社し、新入社員としてフラッシュメモリの開発チームに参加したときには、他の製品を開発している先輩から、

「可哀そうに。君が配属されたチームはバカだよ。」

と言われました。

ところが、この「常識」には嘘がある。

半導体の専門的な話になりますが、フラッシュメモリは、ゲート電極とシリコン基板の間には、20Vという高電圧が印加される。

ところが、トランジスタのサイズを縮小するために最も重要な、ソースとドレインの間には、1Vよりも低い電圧しか使わない。

つまり、ソースとドレインの間の電圧だけに注目すると、他のLSIよりも、むしろ、低い電圧で動作しているのです。

高い電圧を必要としているので、一見、微細化ができなさそうに見えても、実際は、他のLSIよりも微細化に向いているのです。

その結果、現在のフラッシュメモリは20ナノメートル以下に縮小され、世界で最も、微細化が進んだLSIとなっています。

フラッシュメモリは一つの例に過ぎず、同じような、「常識を疑い」、「一見、バカなこと」をやって成功した企業はたくさんあるでしょう。

さて、あなたの会社は、バカなことをやっていますか?

そういえば、先に「フラッシュメモリはバカ」と言った先輩は、担当する事業が失敗して、いまでは、フラッシュメモリ関連の仕事をしているようです。

グーグルやアップルがサービスから、ソフト、ハードまで手掛けるようになり、「あなたの分野は、もういりません」、もありえる。

グーグルやアップルがサービスから、ソフト、ハードまで手掛けだし、様々なレイヤを融合して、問題を解決したり、製品を開発することが必要になっている。

その結果、良く聞くのは、

「ハードだけを良くして、意味があるの?」

「それ、ソフトで解決できるんじゃないの?」

といったこと。

例えば、半導体を開発するエンジニアなら、デバイスや回路を一生懸命に開発するわけです。

そして、例えば、LSIの性能を向上させたとします。

ところが、ひょっとしたら、違うレイヤ、例えばソフトを少し工夫すれば、同じような性能の向上を達成できるかもしれない。

あるいは、ソフトとハードを両方理解し、双方を最適化することで、性能を向上できるかもしれない。

これは、結構、大きな変化だと思うのです。

今までは、それぞれの分野が分かれていて、会社も組織も異なるので、ある意味、自分の分野に閉じこもっていても良かった。

エンジニアは、通常は、自分の分野の中で競争をし、その分野の他のエンジニアよりも、優れた技術を開発しようとします。

ところが、広い分野をカバーする会社が出てくると、そもそも、その分野を頑張ること自体が、無意味になることもある。

分野全体が否定されることさえ、ありうるのです。

この、異分野の融合というのは、もちろん、以前からある程度はありました。

例えば、LSIの分野では、プロセス(製造)、デバイス、回路、アーキテクチャといった分野から構成されています。

今起こっているのは、さらに、もっと大きな分野、レイヤの融合。

どうすれば良いのかは、自明でしょう。

ある分野に閉じこもり、狭い世界の中だけで人と接して、競争するだけでは不十分。

広い世界にでて行き、異なる世界を知る。

そして、自分の専門の位置づけがどうなっているのかを、見極める。

もし自分の分野の重要性が低くなっているのならば、異なる分野に打って出ることも必要でしょう。

2013-05-03

(ブログ更新)「半導体は重要、でも撤退」ってどういう意味か? 製造は海外にアウトソースでも、設計は残す。アップルも設計は自前でやる時代になのだから。

「半導体から撤退、でも大事」とはどういう意味でしょうか。

ロジックLSIの撤退のニュースが相次いでいます。

先週も、富士通から、マイコン事業の撤退の発表がありました。

その一方、半導体はこれからますます重要、とも言われています。

富士通は以下のように発表しています(Tech-On記事からの引用)。

「半導体は産業のコメと言われて久しいが、それは現在も変わっていない。ICT産業だけでなく、多くの産業にとって半導体は大切だ。ただし、富士通グループは半導体事業そのものとは少し距離を置く。我々はサーバー向けプロセサや携帯電話向けSoCの開発に深く関与する。」

富士通には限らないですが、日本のロジックLSIの今後のポイントは以下の2点でしょう。

・半導体のプロセスの開発や製造からは、基本的に撤退する。減価償却が終わった工場が稼働することはあるでしょうが、新規に投資することはないでしょう。

・弱い製品分野からは撤退する。

一方、何が残るかというと、自社のコアのサービスやシステムに直結する、半導体の回路設計。

いまや、アップルが半導体の設計ベンチャーを買収して、プロセッサーやメモリコントローラーを自社で設計する時代です。

アマゾンがTIのOMAP(CPU)の設計グループを買収するとも噂されています。

また、自動車産業も電気自動車になると半導体が重要になるので、日本でも、車関連のメーカーが半導体の設計者の雇用を増やしています。

一度は半導体を撤退した企業でも、社会インフラのために半導体の設計を強化しています。

サービスやシステムを実現するコアの技術、商品企画は半導体の設計に密接にかかわっていますから、製造は撤退しても、設計はむしろ強化する方向でしょう。

現在のリストラは、いろんな事情で混乱もあるでしょうが、将来の日本企業では、自社のサービスやシステムの強みを維持するために、半導体の設計部門を抱えているということになるのでしょうね。

もちろん、イメージセンサのソニーやフラッシュメモリの東芝のように、非常に競争力がある製品を持っている企業は、半導体の製造を続けることは可能でしょう。

アメリカでさえも、インテルはCPUを国内で製造しているのですから。

ただ、もう、ロジックLSIに関しては、これだけ負けてしまったら、プロセスの開発や製造に投資を続けることは、難しい。

2013-05-01

ビッグデータとシステムLSIの相似形。社会のいろんな場所にセンサを配置して、データを集めれば、何かが生まれるのかな?

ビッグデータで何となくおかしいなと思うのは、とりあえず、データを集めよう、ということ。

もっと言うと、とりあえずデータを集めるために、社会のいろんな場所に、センサーをばらまこう、というので良いのでしょうかね。

確かに、高速道路のトンネルの天井が崩落した事故は痛ましいし、古くなった橋や道路などの安全性も、心配です。

だからといって、「とりあえずセンサーをばらまこう」はちょっと違うんじゃないかな、と感じます。

下手をすると、単にハコモノを作っただけで終わりかねない。

そんな時に、「ここが変だよ! 日本のビッグデータ活用(前編)」という日経トレンディの記事を読んで、そうだよな、と思いました。

今の日本は、データをたくさん集めれば、そこから、何か価値が生み出されるのではないかという、とっても曖昧な期待があるのだと思う。

確かに、ビッグデータから何が生み出させるかは、解析などをやってみないとわからない。

ただ、あまりにも、「とりあえずデータを集める」方向に行ってしまうと、結局、センサのインフラだけ作っただけ、になりかねません。

先ほどの記事は、「マーケッターのインサイトから始めるべき」というもの。

つまり、データをどのように使うか、サービスやアプリケーション主導でやるべきではないか、ということです。

データをとりあえず集めるのではなく、やりたいビジネスを明確化してから、必要なデータを集める。

現在のビッグデータの状況から思い出すのが、日本のシステムLSIやマイコンなどのロジックLSI

10年前のロジックLSIの状況が、今のビッグデータにちょっと似てるかもしれない。

昨日、富士通がマイコン事業をスパンシオンに売却するという報道がありました。

富士通のシステムLSIも本体から切り出されるようですね。

このように、日本のロジックLSIは撤退ばかり。

私自身はロジックLSI事業にはかかわらず、横から見ていただけです。

日本のロジックLSIは、「様々な機能を1つの半導体のチップの集積すれば、付加価値がついて、儲かるのではないか」というように、ビジネスモデルが曖昧なまま事業を突き進んで、結局、撤退。

事業としては、顧客別にカスタマイズする少量多品種の事業になってしまったのです。

基本的には、半導体事業は、同じものを大量に作らないと儲からないのです。

「せんべい焼き」と同じビジネスモデルです。

ロジックLSIの少量多品種というのは、半導体のビジネスとしては、最悪の選択だったわけです。

その間、ロジックLSIをやっている人に、「どうやって儲けるのですか?」と聞いても、答えは、技術の話ばかり。

案の定、ビジネスとしては、失敗に終わりました。

新しい技術は、世に出してみないと、どう使われるかわからない場合もあります。

既にわかっているアプリケーションがなければ、技術を開発してはいけない、というのは言い過ぎでしょう。

要は、技術開発とアプリケーションの開拓には、適度なバランスが必要なのです。

ビッグデータとロジックLSIは単純に比較はできないけれど、ちょっと心配なのは、このバランスが崩れてないか。

ビジネスモデルやサービスが曖昧なまま、「センサーをたくさん設置して、データを大量にとれば何とかなるのではないか?」になってないでしょうか。

データを集めることよりも、データを使いこなすことに、もう少し注力した方が良いのではないでしょうかね。

2013-04-27

大学の新入生に伝えたいこと。専門技術は目的ではなく手段の一つと考えよう。必要な技術は変わっていくものだから。

世の中はゴールデンウイークに入ったそうですね。

でも大学は暦通りに講義を行うし、29日は祝日ですが、通常通り、講義を行います。

29日は新入生に対して、私ははじめて講義を行うのですが、いったい何を話そうかな、と思案中。

ひとつ、早い段階で伝えておいた方が良いと思うのは、大学で学んだり、企業で実践する技術は、いまや、目的ではなく、商品やサービスを実現するための、一つの手段になってしまったこと。

技術は手段であって目的ではない、というのは当たり前に感じるかも知れません。

でも、少し前までは、例えば電子回路の設計、材料の物性、ソフトウエアのプログラミング、といった専門技術は、一生とは言わないまでも、それなりに、「食べていけるスキル」でした。

また、子供のころに、学研の電子ブロックで回路設計の楽しさを覚えて、回路技術を極めたいから、電気工学、電子工学に進学する学生は、たくさんいます。

このように、ある技術が好きで、その分野を極めて「手に職」をつけようとするのは、もちろん、悪いことではありません。

ところが、いまや、それだけでは食べていけなくなってきているのです。

例えば、LSIの微細化が進んで急激に進化したため、従来ではハードウエアの半導体のチップ(ASIC)を設計しなければ実現できなくなった機能が、汎用のCPUを使って、ソフトウエアでも実現できるようになってきています。

例えば、携帯電話といった、製品を実現する際に、もし、ソフトウエアでも十分に性能が達成されるのであれば、回路設計までしなくてもいいのではないか。

また、汎用のCPUとカスタム品のASICの中間的な存在として、FPGAというLSIもあります。

FPGAはプログラムによって、機能を変えることができる、柔軟なLSIです。

このように、機能を実現するための選択肢は、大変広がりました。

大量に製造する商品に対してはASICを設計するが、少量であればFPGAで済ませてしまうなど、アプリケーションに応じて、必要な技術を選択することが大事になっているのです。

技術を深めたうえで、冷静に、必要な技術を選択しなければいけないわけです。

また、グローバル化によって、比較的簡単な技術の開発は、どんどん、中国、インド、ベトナムといった海外にアウトソースされています。

例えば、デジタル回路の設計は、今や、日本でやっても、ほとんどお金にならないでしょう。

日本でやっても経済的に成り立つ技術は、時代によっても、ずいぶん変わるのです。

もちろん、こういった変化は、私にとっても、他人事ではありません。

私の専門も物理工学からスタートして、企業では回路設計、今では、信号処理やソフトウエアに変わりました。

5年後、10年後に自分が何の技術を開発しているか、想像もつきません。

決して、こうした変化は予想できたわけではないですが、「いま必要な技術はなんだろうか?」と考えた結果、専門を変わらざるを得なかった、というのが正直なところです。

大学に入ったばかりの新入生にとっては、一つの技術を習得するだけでも大変でしょう。

でも、常に、他の技術の動向にも関心を持ち、世の中にはどんな新しい技術分野が生まれて来るのか、常に考えていてほしいと思います。

2013-04-23

これから台湾に行ってきます。新竹で開催されている、VLSI-DAT/TSAでSSDの講演を行います。

先週はアメリカのモントレー、今日はこれから台湾に行ってきます。

VLSI-DAT/TSAという学会のショートコースでSSDの講演を行います。

Ken Takeuchi, “Solid-State Drives (SSDs) with Flash Memories and Storage Class Memories,” IEEE International Symposium on VLSI Design, Automation and Test (VLSI-DAT) and IEEE International Symposium on VLSI Technology, Systems and Applications (VLSI-TSA), April 2013.

昨年の11月のNNVMWに引き続き、新竹で行われる学会に招待さました。

新竹は台湾の半導体産業の開発・製造の拠点で、TSMCなどの企業だけでなく、トップクラスの大学もある、アジアのシリコンバレーのようなもの。

これだけ新竹からの招待が続くのは、やっぱり、SSDやストレージ・クラス・メモリに高い関心があるんでしょうね。

台湾はメモリ産業は強くないけど、メモリを使いこなすためのコントローラーでは日本よりはるかに強い。

SSDにとって、スマホなどの携帯機器から、データセンターにアプリが広がる今がチャンスだと思っているんでしょうね。

私にとっても、新しい刺激を受けることになるでしょう。

半導体はかつては産業界のコメ 今やゴミ扱いの屈辱

「半導体はかつては産業界のコメ 今やゴミ扱いの屈辱」

「半導体工場は将来のゴミですよ。大手電機メーカー幹部はこう切り捨てた。半導体工場は、先端投資を継続しなければたちまち競争力がそがれてしまう。」

昨日のブログでも紹介した、東洋経済の特集「死んでたまるか! 日本の電機」、刺激的ですね。

半導体業界の人間としては耳に痛い限り。

でも、この屈辱をバネにしないといけない。

どうしても、半導体業界の人は、かつては輸出の稼ぎ頭で、日本に大きく貢献してきたというプライドがある。

プライドは悪いことではないけど、世間の風は極めて厳しいことを肝に銘じて、どん底から這い上がる覚悟が必要。

記事では、半導体業界内で今でもトップシェアの製品を持つ東芝、ソニーと、工場売却を急ぐシステムLSIベンダの明暗を何が分けたか、書かれています。

私のインタビューはともかく、この記事は、半導体業界の人なら必読でしょう。

東芝のフラッシュメモリやソニーのイメージセンサーのように、非常に強い製品がある一方、ルネサスや富士通のように大規模なリストラが。

記事にも書かれていますが、90年代のDRAMの失敗から学ばなかった企業は、やはり、また失敗したということでしょう。

ただ、半導体自体は、これからは、ますます重要になっている。

自動車も電子化が進み、ノウハウは半導体に集積されていく。

いわゆる、電気自動車のパソコン・携帯電話化ですね。

自動車産業だけでなく、アップルも半導体のエンジニアをたくさん雇用しているし、アマゾンもTIのCPU開発部隊を買収するという噂も流れています。

日本でも、半導体部門をスピンオフして、社会インフラに特化したはずの企業が、実は半導体の設計を精力的に行っています。

リストラが相次ぐ半導体専業メーカー、技術はあっても事業で失敗し、生き残れるかどうかわかりません。

でも、10年もたつと、自動車・インフラ・機械といった、確固としたアプリケーションやサービスを持つ企業の中で、半導体を設計していることになるんでしょうね。

そんな将来が感じられる良い記事でした。

2013-04-22

東洋経済「死んでたまるか! 日本の電機」にインタビュー「甦れニッポン! 私の電機再生策」が掲載。ハード技術だけでは差別化は難しい。技術マネージメントが必要。

今週発売の東洋経済の特集「死んでたまるか! 日本の電機」にインタビュー記事「甦れニッポン! 私の電機再生策」が掲載されました。

事前に記事はチェックしてないので、恐る恐る記事をみたところ、、あれー、こんなこと言ったっけ?、あちゃー、言い過ぎた?。

仕方ない。。。

言いたかったのは、半導体メーカーが奴隷根性で、セットメーカーやサービス事業者の下請けに甘んじていては、儲からないのは当たり前。

顧客と部品ベンダーの関係は、お互いをコモディティ化しようとする戦い。

顧客にとっては、いかにして部品を買い叩くか。

部品ベンダーにとっては、いかにして顧客が買わざるを得ない状況を作って、高く売りつけるか。

これは私なんぞが言うまでもなく、当たり前のことですね。

でも、今苦境に立っている、半導体メーカーはこの当たり前のことができていなかった。

顧客の言いなりになって、特注品ばかり作っていたら、儲からないのは当たり前です。

一方、今でも儲かっている日本の半導体メーカーは、顧客に対して、強い立場を維持できているのでしょう。

なんでこんな惨憺たる状況になってしまったかと考えると、技術力、現場力への過信かもしれませんね。

今でも、日本のエンジニアは優秀だし、現場の力は、間違いなく、強い。

ただ、技術力、現場の力だけではどうにも埋まらないくらい、ビジネスが下手だった。

それに、今でもハードウエアは技術革新の源泉だけど、ハードだけで差別化を続けるのは、とても苦しい。

ハードを使いこなすソフトの開発を怠ってきたつけが来たと言えるでしょう。

処方箋は簡単ではないですが、いまでも強みを持つ部品や事業はたくさんある。

そういった事業をもとに、新しい事業を少しずつ開拓していくしかない。

例えば、私が今やっているのは、フラッシュメモリという強いハードをもとに、メモリを使いこなす、データベースのソフトウエアでも差別化するとか。

一歩、一歩やっていくしかないですが、頑張りましょう。

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2013-04-21

男女を問わず、休職して社外で学ぶ機会を増やすべき。トヨタのライバルは今やグーグル。会社に引きこもって、勝ちきれるのか。

昨日の朝に書いたブログがすさまじいアクセス。

まじめに規則を守って仕事をすればするほど、ダメになっていく日本

やっぱり、みんな同じように感じてるんですね。

ところで、育休を3年に延ばすそうですね。

仕事を3年も休んだら使い物にならないので、こんな制度は意味ないとか、言われていますが、これはこれで良いと思います。

というのも、日本は育児に限らず、休職を充実させた方が良いと思うから。

アメリカでは、こんな制度はいらないと思う。

日本の「伝統ある」大手企業では、一度会社を辞めてしまったら、もう戻るのは厳しい。

終身雇用も年功序列も崩れてきているのに、一度やめたら、「裏切り者」的な扱い。

あの、やめた人に対する、ウエット感、ジメジメ感は、日本の伝統ある(古い)組織に独特じゃないですかね。

これは、働いている人にも、企業にとっても悪いことばかりではないでしょうか。

何らかの事情で会社をやめても、以前いた企業に愛着を感じている人は多いでしょう。

企業にとっても、外に出て貴重な経験を積んだ人材、外で様々な経験を積んで、古巣の良さも悪さも理解している人材が戻ってくるのは、良いことのはず。

もちろん、解決方法は、出入りがもっとフレキシブルな雇用の制度でしょう。

新卒一括採用じゃなくて、必要な時に、必要な人を雇用する。

でも、言うは易しで、そんなに簡単に実現はしないでしょう。

むしろ、対処療法ではありますが、育休に限らず、休職の制度を充実させるべきではないでしょうか。

これだけ技術の変化が激しいわけだから、ハードの技術者がソフトを身に付けたいと思って、大学に学位を取りに行く場合も海外では増えてます。

でも、日本では休職がなかなか認められないケースが多く、難しい。

「新しいスキルを学ぶ」という、個人にとっても企業にとっても前向きな行動が、会社を辞めざるを得ないためにできない、というケースをたくさん見てきました。

「新卒で一括で採用して、あとは、企業の中で頑張るのが、企業にとっても個人にとってもベスト」、という古い価値観から、いい加減に脱却すべきじゃないでしょうか。

自社に閉じこもった人材だけで、これだけ激しい技術の変化に追随できる、と言い切れる企業はもうないでしょう。

例えば、日本企業の中では競争力のある自動車産業でも、電気自動車や無人の自動運転といった新しい交通システムでは、自社のノウハウだけで勝ちきれるのですかね。

トヨタのライバルは、いまや、グーグルなのですから。

2013-04-20

(ブログ更新)まじめに規則を守って仕事をすればするほど、ダメになっていく日本

ミッドナイトフライトで日本に帰ってきました。モントレーで開催されたIRPS(Internaitonal Reliability Physics Symposium)で竹内研からは3件で発表しました。

学会中は自分の発表以外は、ホテルにこもって、仕事ばかり。

特に、西海岸の夜が日本の昼なので、連日、Skypeでミーティングをしたり、資料を作ったり。とうとう、徹夜になってしまった。

深夜便の中でも仕事して、朝の5時について、帰宅して、また仕事です。

大学の研究者の自分がそこまでしゃかりきに仕事をしなくてもいいのかもしれないけど、何とか、日本の電機やIT産業を復活させたい。

その思いだけで、企業や大学の間の調整をする毎日です。

その中で、どんな組織からも出てくるんですよね、ルールばかり気にする人が。

石橋を叩きに叩いて、最後は叩き割る。

いつも結論は、「やめましょう」になる人が。

私は今まで、大手電機メーカー、国立大学、私立大学、と3つの組織を移りました。

更に、共同の研究プロジェクトで、多くの企業や大学とかかわっています。

でも、大きな仕事をしようとすると、多くの時間が、意味があるとは思えない規則との折り合いをつける調整に使われる。

時々、あまりにもの調整コストの大きさに、絶望的になる。

多くの規則は、過去に何か問題があったために、作られる。

では、そういった過去の事例に学んで規則を積み上げると、何が起こるのか。

規則だらけで、解が無くなるんですよね。

あるいは、部門間の調整にとてつもなく時間がかかったり。

企業で半導体の設計をしていた時のことです。

歴史のある企業では、過去の失敗事例をもとに、様々なルールがある。

でも、ルールをすべて守ると、半導体のチップの面積が大きくなって、コストが増える。

あるいは、設計ミスが無いか、念には念を入れて検証ばかりしていると、設計期間が延びてしまって、市場への製品投入が遅れる。

一方、新興企業だった三星には、そんなルールがない。

結局、ルールにがんじがらめになった、日本の多くの半導体メーカーは敗退しました。

ルールがないので、三星は失敗もしますが、斬新なチャレンジもする。

ルールを守ることに汲々とするより、まず、やってみる。

そして、失敗して直した方が、失敗を恐れて停滞するより良いのではないか。

15年位前の話ですが、自分も、実際に、三星と共同でフラッシュメモリを開発して、彼らから多くを学びました。

これは、明文化したルールだけでなく、心理的な面もあります。

日本では、ちょっとしたルール違反を口うるさく言う人が多すぎる。

むしろ、いまの日本に必要なのは、失敗を叱らないこと。

チャレンジしないことこそ、恥ずべきことじゃないですか。

規則にがんじがらめの組織、規則の中身を考えもせず、規則ををひたすらまじめに守ろうとするカルチャー、こういったものを変えないと、日本の復活はないと思う。

それは、企業も、大学も、役所も同じ。

2013-04-14

夢は忘れたころに実現する。20年前に考えた使い捨てメモリが、やっと商品化。いま必要なのは、夢を見ることかもしれない。

今日、ツイッターを見ていたら、「ちぎって使う紙製USBメモリー」というGizmodoの記事を見つけました。

GIGS.2.GOという商品なのでしょうかね。

記事から引用すると、下の写真のように、フラッシュメモリを紙で実装していて、必要な時に、ちぎって使える。

f:id:Takeuchi-Lab:20130414121414j:image

大きさは、4個のメモリがついて、ちょうど、クレジットーカードの大きさ。

f:id:Takeuchi-Lab:20130326160251j:image

手帳や財布に入れておいて、人にデータをさっと渡す時なんかに便利ですね。

こうして、メモのように、中身のデータが何が入っているかも書ける。

f:id:Takeuchi-Lab:20130414121416j:image

包装のデザインを工夫すれば、おしゃれなプレゼントにもなるでしょうね。

データを記憶しているフラッシュメモリは書き換えが可能なので、紙製といっても、使い捨てではありません。

とはいえ、紙で包装しているから、何年も使うものではなくて、使い捨て感覚で気軽に使えるのが特徴でしょう。

実は、こういった製品のコンセプトは、フラッシュメモリの開発の最初のころ、20年前からありました。

当時は、デジカメも無くて、銀塩フィルムを使ったアナログカメラの時代。

写ルンです(って覚えてますか?)のような、使い捨てのカメラがはやっていました。

当時のフラッシュメモリは信頼性に問題があったこともあり、フラッシュメモリを搭載した、デジタルの使い捨てカメラができないか。

あるいは、気軽に持ち運びできる、使い捨てのメモリができないか、と考えたものでした。

使い捨てにするには、安い必要があり、20年前には、フラッシュメモリは高価すぎて、使い捨てメモリは実現しませんでした。

それが、微細化や多値記憶(1つのメモリセルに多くのビットを記憶する)により、この20年にフラッシュメモリの価格は劇的に(5〜6桁)下がりました。

つまり、価格が10万〜100万分の一に。

ようやく、今頃になって、使い捨てメモリが実現したわけです。

夢のような技術は、忘れたころに実感する。

当時は、「紙で実装したメモリ」なんて、とても実現するとは思わなかったので、特許は書かなかったと思う。

20年前に夢見たものが、当時は想像もつかないような技術の発展によって、実現する。

だから、いま大学の研究者として自分が必要なのは、常識では想像がつかないような、夢を見ることでしょうね。

夢を描かなければ、夢を実現する手段である、技術は発展しないから。

いまの日本は目の前の状況が厳しいから、どうしても、目先のことばかり、考えてしまう。

企業はそれでも仕方ないとしても、せめて学生や大学の教員くらいは、大きな夢を描きたいですね。

2013-04-09

日経Tech-Onにコラムが掲載「技術を極めるだけでは生き残れない 専門性と多様な経験の組み合わせが必要に」。アメリカは10年前から、異分野の融合を一生懸命やっていた。日本もこの流れからは逃げられない。

日経Tech-Onに寄稿しました。

技術を極めるだけでは生き残れない 専門性と多様な経験の組み合わせが必要に

10年前にスタンフォード大学MBAを取り行った時のこと。

工学部とビジネススクールの学生が組んでビジネスプランを作ったり、デザインを重視する学科ができたり。

専門技術を極めればよい、という日本の大学とは随分違うなと思ったものでした。

当時は、スタンフォードに限らず、大学でも、企業でも、異分野の融合、技術とビジネスの融合、さらにデザインの融合を盛んにやっていたのでしょう。

言い方を変えれば、日本の製造業の多くは、ハードウエアに集中して、よくぞここまでもった、と言えるかもしれません。

でも、もう生き残るには、ハードウエアの技術だけでは厳しい。

日本メーカーでも、ハードウエアとサービスを組み合わせ、強みを発揮している企業はあります。

よく出される例として、コマツは自社の建機をリアルタイムにモニタして、保守などのサービスをやっていますね。

売り切りではなく、保守費でももうけるビジネスモデルです。

日本人だから、異分野の融合ができない、ということはないでしょう。

今まで、ハードウエアがあまりにも強かったため、他との融合が必要なかっただけ。

そろそろ、日本で不調のメーカーも、大学も、変わらなくては。

今週と来週、竹内研はIRPS(モントレー)とICEP(大阪)で4件の発表を行います。

今週、来週、IRPSとICEPで合計、4件の論文を発表します。

IRPS(IEEE International Reliability Physics Symposium)は半導体の信頼性の分野では最も重要なもの。

今年は、4/14-18にアメリカのモントレーで開催されます。

竹内研からは、SSDSRAMPRAMの信頼性に関して、3件の発表を行います。

・Shuhei Tanakamaru, Masafumi Doi and Ken Takeuchi, “Error-Prediction Analyses in 1X, 2X and 3Xnm NAND Flash Memories for System-Level Reliability Improvement of Solid-State Drives (SSDs),” IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS), April 2013.

・Kousuke Miyaji, Daisuke Kobayashi, Shinji Miyano and Ken Takeuchiand, “Analysis on Static Noise Margin Improvement in 40nm 6T-SRAM with Post-Process Local Electron Injected Asymmetric Pass Gate Transistor,” IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS), April 2013.

・Koh Johguchi, Toru Egami and Ken Takeuchi, “Highly Reliable, Low-Power Super-Lattice Phase-Change Memory without Melting and Write-Pulse Down Slope,” IEEE International Reliability Physics Symposium (IRPS),April 2013.

また、今週、大阪で開催される、半導体の実装の学会ICEP(International Conference on Electronics Packaging)でも、SSDの3次元積層に関して、発表を行います。

・Teruyoshi Hatanaka, Koh Johguchi and Ken Takeuchi, “Investigation of Program-Voltage Generator Integration for ReRAM and NAND Flash Memory Hybrid Three-Dimensional Solid-State Drive,” International Conference on Electronics Packaging, April 2013.

2013-04-07

大学の新入生はまず勉強すること。「大学は勉強しなくても大丈夫」なんてオジサンは無視。一度、気を抜いたら、取り戻せなくなるよ。

先週、入学式がありました。新入生は、まだ、緊張した面持ちでした。

せっかく勉強してきて、大学に入学したのだから、気が抜けてしまうのはもったいない。

積み上げるのは長い時間と地道な努力が必要だけど、失うのは一瞬です。

気が抜けて、勉強することをやめたら、緊張感を取り戻すのは簡単ではない。

それに、大学の理系の教育は積み上げだから、最初サボっていて、途中から挽回しようとしても、難しい。

だから、新入生は、今までの気持ちを忘れずに、緊張感を持って臨んでほしい。

以前は、

「大学なんて勉強しなくて大丈夫」

「企業に就職してから、勉強を始めればよい」

なんて言われていた頃もありました。

今でも、そういう人もいます。

でも、企業にいる人はわかると思いますが、最先端の技術は、どんどん高度化している。

大学で学ぶ一つの分野の専門知識だけでは足りず、就職してからも、新しい分野を常に学ぶ必要がある。

それに、簡単な作業は、中国やインドのエンジニアにアウトソースされてしまう。

日本のエンジニアは、中国やインドのエンジニアと同じくらい安い給料で働くか、より高度な技術を身に付けるしかないのです。

また、いまの学生のみなさんは、将来、海外の企業で働いたり、海外の大学に留学することもあるでしょう。

海外では、企業や大学に入れるかを判断する際に、大学での成績は非常に重視されます。

面接で調子のいいことを言っていても、成績が悪ければ、口だけのやつだと、判断されます。

とはいえ、時々、大学にはほとんど居ないで、在学中に会社を興すような人もいます。

アップルのスティーブ・ジョブズマイクロソフトビル・ゲイツ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも、大学を中退しています。

確かに、ダントツに優秀な人は、大学の講義など受けなくても、自分で技術を習得してしまうのかもしれません。

ただ、それは、例外中の例外。

普通の学生が、彼らの真似をしたら、失敗します。

ということで、勉強したことは、決して損にならないから、継続的に勉強はしよう。

やる気があるなら、複数の専門分野を習得するくらいの気持ちで頑張ってください。

そういえば、同時に複数の学位を取得する、ダブル ディグリーって、日本ではあんまり聞かないですね。

例えば、法学と工学とかの学位を同時に取ったら、最強だと思いますけどね。

2013-04-06

(献本御礼)「まちづくり:デッドライン〜生きる場所を守り抜くための教科書」木下斉、広瀬郁著、の感想を書きました。

ツイッターでフォローしている木下斉さんに新著「まちづくり:デッドライン〜生きる場所を守り抜くための教科書」をいただきました。

ありがとうございます!

この本はいわば、まちづくりの経営指南書で、シャッター通り化するまちと、電機産業を何となくオーバーラップさせながら読みました。

まちづくりと経営はどうしてつながるのか?と思う人もいるかもしれませんが、MBAで習うようなマネージメント手法は、人がかかわる組織ならば、どこにでも使える普遍的なもの。

実際に、MBAでは非営利組織の運営に関する講義もあります。

この本では、著者がご自身の経験をもとに、なぜ、まちが崩壊したのか、どうやって再建するかを経営のフレームワークを用いながら、わかりやすく説明しています。

この本を読むと、まちが廃れるのと、企業がダメになっていく時と、酷似していると感じました。

まあ、人が失敗するときは、同じように失敗するんでしょう。

処方箋は、巨額な投資をしてハコモノを作ったり、大きな制度の改革というよりは、埋もれている価値を見つけて、小さな成功例を作ることからなんでしょうね。

路地裏の小さくて古いお店に隠れた価値がある、という話は、企業の中で注目されていない研究所の技術にも価値がある、というのにも似ているかな。

まちも企業の再建も、当事者がどれだけ再建案を信じられるか、やる気になれるか、がカギでしょうから、小さな成功例を作って、少しずつでも伝搬させる方が、結局は近道なんでしょうね。

最近、私にもいろいろな方面から、「日本の電機メーカーはどうすれば救えますか?」と聞かれます。

残念ながら、あっと驚くような、再建方法など思いつきません。

自分ができるのは、自分が得意とする分野で、将来性のある事業の提案くらい。

規模が小さすぎて、とても、短期的に大企業を蘇生させるようなものではないけれど、まずは、小さく始めて、成功例を積んでいく。

まちも、企業も、再建には、本著に書かれているような、具体的かつ、地道な取り組みが必要なんでしょう。

2013-04-04

単に技術が好きなだけでは、食べていくことが難しい時代になったのか

電機メーカーが苦しくなる中、企業も大学も知恵を出せ、と迫られているのですが。

・日本企業はハードは強いけれど、ソフトは弱い。

・ハードを売るための標準化など、売るための仕組みを作ることが弱い。

・ハードを売るための環境やコラボレーションが下手。

など、言われますね。

何か仕様が決まったものを作るのは上手だけども、何を作ったらいいかを考えるのは苦手。

また、デザインなど、新しいライフスタイルを提案するのもの下手。

なぜそうなってしまったのか。

ある技術者の言葉で、「自分は技術好きでやってきたので、そういうことを考えろと言われても苦手なんだよな」

この言葉は、今の日本のメーカーの苦しさを象徴しているような気がします。

いまや、コンピューターにしろ、テレビにしろ、エレクトロニクスの製品のスペックは十分に高い。

これ以上、スペックを上げても、対価を払ってもらえない。

だから、単にスペックを上げる技術の開発をするだけでは、ダメになってきている。

むしろ、新しい製品のコンセプト、ユーザーの新しい経験、いわゆる、ユーザーエクスペリエンスを提案する必要がある。

これは、技術ばかりを考えている人には難しい。

人や社会と接し、いろいろな経験をしていないと、人がどんな経験に価値を感じるかなんて、わからないでしょう。

結局、技術だけやっている人には、これから、技術を提案することも難しくなっている。

技術の専門的な知識に加えて、若いころから、社会の様々な出来事に興味を持って、本を読んだり、芸術に触れたり、総合力が問われる時代になったのだなと思います。

今までは技術に没頭することが強みでしたが、今ではそれが弱みに。

実験室だけに籠ってないで、外に飛び出すことが必要になっているのです。

2013-04-02

半導体は今後も重要でも、救うべきは、半導体であって、半導体メーカーではない。半導体メーカーが潰れそうなのに、自動車メーカーが半導体設計者を雇用する矛盾。

半導体は「産業界のコメ」と言われ、基幹産業と言われていました。

それが、東芝のフラッシュメモリやソニーのイメージセンサーなど、一部を除いては、非常に苦しい状況。

特に、どこの企業でも、システムLSI事業が苦しい。

システムLSIに関しては、「日本の電機メーカーの敗戦。でも、東芝のように勝ち組の企業もある。90年代のDRAMの敗戦から学んだかどうかが、明暗を分けたのではないか」という記事をブログに書きました。

もう潰れそうな状況で苦しむルネサスが手掛けるマイコンにしても、自動車や精密機械など、日本が強みを持つ様々な産業で不可欠な製品です。

ただ、重要だからと言って、国がお金を出して、何が何でも支援するべきだとは、半導体産業にいる私も思いません。

高い信頼性を求められる自動車向けのマイコンの世界市場で圧倒的な市場シェアを持ちながら、赤字に苦しむルネサス。

今のままの経営をやっていては、復活できるとは思えません。

結局、救うべきなのは、半導体であって、半導体メーカーではないのでは。

いま、半導体メーカーでは、リストラが相次いでいますが、自動車関連のメーカーが半導体の回路設計者を大量に雇用していると言われています。

また、自動車メーカー以外にも、半導体の設計者の雇用を増やしている企業の話もよく聞きます。

半導体から撤退した電機メーカーで、インフラなどのビジネスをやるためにも、コアとなる半導体製品で差別化する必要があったり、他社から購入すると非常に高くなってしまうため、自社で半導体を設計したいという話も良く聞きます。

おそらく、こういった企業では、半導体を手掛けるといっても、巨額の投資が必要とする半導体の工場を作ることまでせず、自社で行うのは設計に留めて、製造は台湾などのファンドリ企業に委託することになるでしょう。

つまり、現在の半導体メーカーでは人員や工場を抱えてしまったり、様々なしがらみでできないような、最適なビジネスモデルが、新しく半導体を手掛ける企業にはできるのです。

半導体メーカーが苦境に陥り、リストラを繰り返す一方、しっかりしたアプリケーションやサービスを持つ企業が、半導体のエンジニアを雇用する。

一見、矛盾するように見えて、こうして、産業がうまく転換していくように感じます。

そう考えると、半導体が重要だからと言って、半導体メーカーの救済に政府が乗り出すのは、ひょっとしたら、日本の半導体の復活のためには、逆効果なのかもしれません。

救うべきなのは、半導体であって、半導体メーカーではない。

2013-03-31

大学で学生に本当に教えたいこと。なぜ、竹内研の卒業生が半導体や家電メーカーに就職しないのか。

今年度も今日で終わりですね。今年は、5年前に東大で研究室を立ち上げた時に入学してきた畑中君が、無事博士を取って卒業。

そして、3年半にわたって研究室の中心となって活躍してきた、助教の宮地君がパーマネントの職を得て独立します。

学生だけでなく、研究員にとっても、大学の研究室は通過点。

ポスドク問題と言われるように、今や大学でパーマネントの職に就くのは非常に厳しい。

竹内研での活躍を評価されて、激戦を勝ち抜いたのは、本当にうれしいです。

これからは自分の研究室を立ち上げることになるのですが、健闘を祈ります。

さて、半導体メーカーが苦境に陥り、リストラが相次いでいる中で、よく「学生の就職はどうしているのですか?」と聞かれます。

今まで半導体業界の凋落と学生の就職を結びつけて考えたことが、実はありません。

今や、学生には「この会社、業界に就職しろ」と教員が指導する時代ではないです。

完全に学生の意思で仕事を選んだ結果、竹内研の卒業生で、半導体業界に進んだ人は、ゼロ。

半導体だけでなく、家電も含めたいわゆる「電機」は、随分前から学生に見放されているんですよね。

私自身は半導体業界の出身ですが、竹内研の研究は、もはや、ミドルウエアや信号処理などのソフトウエアが中心。

ハードウエアは日本の強みでもあり、技術の革新の種ではあるけど、ハードウエアだけで勝ち残るのは難しい。

むしろ、ハードを使いこなすソフトや、デバイスを使ったサービスの方がよほど重要である、と言い続けているから、いわゆる製造業には学生がいかないんでしょうね。

むしろ、ITを使ったサービスの企業に進む卒業生が多い。

また、これだけ技術の変化が激しい時代には、大学で学んだ知識で一生食べていくことは不可能。

大学を卒業をしてからも、自分で学び続けなければいけないのです。

大学で学ぶ時間より、仕事についてからの人生の方がよほど長いですからね。

ですから、大学で一番教えたいことは、学び方、学ぶ姿勢です。

現在の私も、ど素人ながら、データベースなど新しい分野を勉強し、研究に取り組んでいます。

また、研究職に限らず、あらゆる仕事を探すうえで大事なのは、自分が学ぶチャンスがあるかどうか。

より具体的には、若手に権限がある、若い組織の方を選んだほうが良い。

職場が高齢化していて、入社して何年も(下手をすると10年も)下働きが続くような職場より、早い時期から権限を持たせてくれる職場の方が、学ぶことが多いのは間違いない。

この、職場が高齢化していない、という条件だけでも、半導体や家電はダメでしょう。

ひるがえって、20年間に私が就職した時に、フラッシュメモリの研究所に飛び込んだのは、何と言っても、そこが若い職場だったから。

ここだったら、チャンス多くて、自分が成長できると思いました。

いま、自分が就職するなら、まったく別の世界に進んだろうなと思います。

日々、こういうことを言っているのも、学生への就活に影響しているのかもしれません。

卒業生たちの就職を見ると、実は私なんかよりも、時代の変化を察知して、賢く仕事を選んでいると思います。

これからも時代の変化を察知しながら、常に学び続けながら、しなやかに生きていってくれると思います。

むしろ、心配すべきなのは、学生よりも、自分の方かもしれませんね。

年を取るということは、変化をどうしても嫌うようになるから。

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