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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2016-05-29

IoTで直面する人材難

電機メーカーは携帯電話、パソコン、テレビ、液晶ディスプレイ、半導体・・・などからの撤退が相次ぎ、事業再編、リストラも一段落してこれからいかにして成長していくか、前向きに変わろうとしています。

事業が競争力がなくなり、人を減らさなければいけないのは、ご本人だけでなく、残った人にとっても大変つらい経験だったのではないかと思います。

その一方、リストラをしている最中から良く聞かれたのは、人が居ないんですよね・・・という人材難の問題。

つまり、人余りと人材難が同時に起こっている。

ある決まった分野、特にハードウェエア分野のエンジニアならばあまるほど居る。居すぎるからリストラをせざるを得なかったわけです。

ところが、これから事業を変えていかなければいけない時、例えばハードの部品の売り切りビジネスから、ハードに加えてソフトをつけ、ソリューションとしてシステム全体を提供する。更に保守で大きなマージンを稼ぐような、サービスビジネスへの変換が求められているのです。

そんな事業変革の時に、様々な分野を統合し、リーダーシップを取れる人材が居ない、という嘆きを人事部や経営層の方から聞くのです。

もっとも、これは自業自得でもあります。

エンジニアは特定分野の専門家として、ある分野を集中してやり続けろ、という人事制度を続けてきたつけが出ているわけですから。

人材の流動性が少ないこともあり、今までは同じことをし続けた人が高い人事評価を受け、様々な分野を経験しようとする人は、ともすると「変人」、「落ち着きがない」とか「我慢が足りない」などと、どちらかと言うと低く評価されがちだったのではないか。

それがいまさら、幅広い分野をカバーできて、変化に対応できる人材が居ない、と頭を抱えているのです。

特に、IoT(Internet of Things)と言われるように、これから社会の様々なサービス・分野(医療・エネルギー・交通・農業・セキュリティ等々)のIT化が進むと考えれています。

今は「IoTをやれば儲かる!」というやや加熱した雰囲気(バブル?)かもしれませんが、本当かな?と私などは思ってしまいます。

例えばかつての、携帯電話やパソコン、タブレットなど、ある程度使い方がわかっていて、大量に売れる製品では、使われるハードの仕様も予想可能なものでした。

業界で仕様をある程度は標準化し、あとはいかに高性能・低電力・低コストに作るか。

つまり、「何を作るか」については規格化され、そう悩む必要はなかったと思います。

一方、IoTは分野によって千差万別です。

そもそも、顧客に何を提供すればよいのか、誰も・顧客自身も多くの場合は知らないのですから。

例えば、野菜工場とゲノム解析と自動運転では、センサやデータ解析に求められる要求は全く同じとはいきません。

つまりIoTでは、内容が千差万別で、市場規模も(スマホやパソコンと比べれば)比較的地位小さい市場がたくさんある、という状況ではないかと思います。

悪く言うと、小さくてチマチマしていて面倒くさい市場が多種多様に存在する。

組み込み機器の市場と似ているかもしれません。

これは、スマホやパソコンのような、巨大な単一市場がある場合とは、状況が全く異なります。

すなわち、IoTのそれぞれの市場に向けた個別の最適化、要素技術のすり合わせが求められる。

そうなると、ひとつの分野の専門家では厳しい。むしろ、顧客のビジネスの状況を理解したうえで、センサからネットワーク、データ処理まで全体を最適化したソリューションを提案するような人材が必要になってきます。

これは、今までのような「専門家を育成する」という人事制度では難しく、先に述べたような、「人材難」という嘆きにつながるのです。

もっとも、このような困難に直面しているのはどこの国の企業も同じです。

インダストリアル・インターネットを提唱するGEは、「ソフトウァエ企業に転換するんだ」という掛け声の下、社員に対して求められている資質が変わったのだと、意識改革を進めているとも言われています。

大学などの教育も、今までの単一の専門分野を教える教育から、変わらなければいけないのかもしれません。

元々、様々な分野のすり合わせというのは、日本企業が得意とするものでした。

ただ技術をすり合わせて、素晴らしいハードの製品を作るという段階までならば日本は得意なのですが、ビジネスとして裾野を広げるよう、戦略を組み立て普及させる、という意味では不十分だったのではないかと思います。

IoTは企業にとっても個人にとっても、チャンスであるのと同時にピンチでしょう。

今まで「変人」扱いされていたかもしれない、多くの分野に興味を持って全体を統合しようとする人、いわゆる総合者タイプの人材には、チャンスなのでしょうね。

2016-05-25

日経テクノロジーOnlineに掲載「場所を変えるか分野を変えるという選択 次のステップへの準備は就職した時から始まっている」

久しぶりになってしまいましたが、エンジニアのためのMOTに記事を書きました。

場所を変えるか分野を変えるという選択 次のステップへの準備は就職した時から始まっている

電機メーカーの事業再編、リストラも一巡して、私の知り合いもずいぶん転職しました。

転進は人それぞれの事情があるので一般化はできないでしょうが、日本から海外に産業が移ってしまった場合には、海外に行って頑張るのがひとつのパターン。

もうひとつは、前職のスキルを活かしつつ、ちょっと違う分野に移ること。

ただそのためには、事前に違う分野を勉強しいたり、何よりも違う分野の人とのネットワークが必要です。

40代の転職では「即戦力」が求められますから、「新しい分野に転職したら勉強して頑張ります」というわけにはいかないのです。

すでに旧職のスキルを活かして新しい職場で活躍できる、貢献できることを説得できなければいけない。そのためには、やっぱり知り合いがいることが近道ですよね。

若い人にとってはまだ早期退職など先の話と思うかもしれませんが、実は就職した瞬間から次のステップへの準備は始まっているのです。

2016-05-21

グーグルがAI向けの半導体を開発した意味

グーグルがディープラーニングを高速に実行するための、専用LSI(ASIC)を開発し、すでに囲碁AIの「AlphaGo(アルファ碁)」などにも使われていると発表しました。

米Googleが深層学習専用プロセッサ「TPU」公表、「性能はGPUの10倍」と主張

かねてからグーグルは半導体のベンチャー企業を買収したり、私の専門分野でいうとストレージコントローラーを自ら設計しているという噂がありましたので、ディープラーニング専用の半導体を開発してもそう意外なことではありません。

iPhoneiPadに搭載されているCPUはアップルが開発していますし、ITのサービスを手掛ける巨大企業が、サービスの差別化のためにも半導体まで手を出すというトレンドは、これからも続くのでしょう。

半導体の最先端技術の製造は、数千億円もの初期投資が必要で、参入障壁が非常に高い分野です。

一方、半導体の設計については億円単位のフォトマスク代はかかるものの、設計自体はエンジニアさえ集められればできますし、製造はファンドリに委託することができます。

従って、アップルやグーグルが手掛けている半導体の設計は、グーグルやアップルほどの巨大企業であれば、参入が(製造に比べれば)比較的容易な分野ではないかと思います。

こうしてアップルやグーグルのようなITサービスを手掛ける企業が半導体という部品まで手掛けるようになると、これはまるで一昔前の日本の総合電機メーカーのようです。

例えば、ソニーはプレイステーションのゲーム機やソフトだけでなく、ゲーム機に搭載される半導体のチップも自ら(IBM東芝と連携しながら)設計・製造していました。

日本の電機メーカーが凋落して行った時に、自社で半導体という部品から消費者向けの最終製品やサービスまで手掛ける垂直統合は悪で、得意な分野だけに事業を「選択と集中」する水平分業が善、と言われました。

それが、勝ち組の米国企業の方が垂直統合に向かっているとは、皮肉なものです。

結局のところ、垂直統合と水平分業のどちらが良いというよりも、その運用で良くも悪くもなるのでしょう。

こうした垂直統合モデルは、部品からサービスまで、全ての分野で競争力がある時(現在のグーグル)には、相互が連携して大変有効です。

しかし、統合している一部の分野が競争力がなくなり、全体の足を引っ張りだすと、難しい問題に直面します。

例えば、もしインテルnVidiaといった外部のCPUメーカーが、グーグルのAIチップ以上の性能の半導体製品を出してきた時に、グーグルはどうするのか。

グーグルにとってはAIを使ったサービスこそが最も重要でしょうから、場合によっては自社の半導体開発部隊を冷遇してでも、外部の半導体を採用できるのか。

でも、そんなことをされたら、グーグルの中の半導体開発者はやってられません。

また、グーグルのAIチップは外販はしないようです。

グーグルの中でこの半導体を開発している人たちは、外販ができない状態、つまり売り上げが立たない状態で、社内でどのように評価されるのか。

半導体の事業のことだけを考えたら、外部のITサービスベンダ、グーグルのライバルにさえもチップを販売した方がよいのです。

以上述べたことは、かつて垂直統合モデルで事業を展開した、日本の総合電機メーカーが苦しんだことです。

果たしてグーグルやアップルが、どのように垂直統合モデルをマネジメントしていくか、新たな挑戦なのだと思います。

2016-05-17

IoT のリアルタイム処理に向けた高速フラッシュストレージ〜アプリケーションや書き換え回数に応じた動的な誤り訂正の最適化で 3 倍高速化に成功〜

パリで開催中のIEEE IMW(International Memory Workshop)での論文発表にあわせてプレスリリースを行いました。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業であるエネルギー・環境新技術先導プログラム「IoT時代のCPSに必要な極低消費電力データセントリック・コンピューティング技術」の成果になります。

改めて研究をご支援頂いているNEDOに御礼申し上げます。

【概 要】

中央大学 理工学部 教授 竹内 健のグループは、IoT のリアルタイムデータ処理に向けた、高速フラッシュストレージ技術を開発しました。アプリケーションに応じて動的に誤り訂正回路を最適化することで、フラッシュストレージの弱点であった、データの長期間保持能力と高速データ処理性能のトレードオフを解決し、記憶したデータを失わずに長期間保持できる高い信頼性と、最大で 3 倍のデータ処理スピートを達成しました。本グループは、本成果を今後さらに発展させることで、データ・セントリック時代のコンピュータ、ストレージを世界に先駆けて開発し、今後発展が期待される IoT の様々なサービスに貢献していきます。

本研究成果は 、2016年5月1 5日から18日にフ ラ ン スで開催 されている「IEEE International Memory Workshop」で発表されました。

論文名:Application Optimized Adaptive ECC with Advanced LDPCs to Resolve Trade-off among Reliability, Performance, and Cost of Solid-State Drives

【研究内容】

1.背景

モノのインターネット (Internet of Things: IoT)注 1では数兆個ものセンサ(トリリオンセンサー)により、多種多様なデータが収集され、データセンタで処理されるようになります。こうして集められたデータをクラウドデータセンタで瞬時に処理し、処理した結果を即座に機器を制御するアクチュエータ等にフィードバックすることで、セキュリティ、製造、医療、災害予測、自動運転、電力網、交通網など実世界の処理を低電力かつ高速、高効率に行えるようになります。

IoT の応用としては、安全・安心分野、製造業・インダストリ 4.0、インターネットサービス、最適医療・予防医療サービス、ピンポイント気象・災害予報、交通サービスなどが考えられます。このようなリアルタイム性の高い IoT のサービスを実現する上では、データを蓄えるストレージ(記憶装置)の高速処理化が必須になっています。

こうした高速化の要求を受け、ストレージの記憶媒体は従来の HDD から高速なフラッシュメモリを使ったソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に移行してきています。ところが、フラッシュメモリは書き換えを繰り返すにつれて、メモリセルの信頼性が劣化し、メモリの不良率が高まるという問題がありました。

メモリのエラーは誤り訂正回路(ECC)によって訂正されるので救済が可能ですが、多数の不良を救済できる強力な ECC を採用すると、逆に ECC を処理(デコード)するための時間が長くなり、最終的にはストレージの性能(処理速度)が劣化してしまう、という問題がありました。

2.研究内容と成果

今回の研究では、アプリケーションや書き換え回数に応じて動的に ECC を最適化することで、フラッシュストレージの弱点であった、データの長期間保持能力と高速データ処理性能のトレードオフを解決しました。提案するストレージ・SSD ではアプリケーションや書き換え回数に応じて動的にECC を最適化する AOA-ECC(Application Optimized Adaptive ECC)を SSD コントローラーに搭載しています。

この AOA-ECC に ECC デコードを短時間で行う Quick-LDPC を採用することで、ストレージへの読み出しが頻繁に行われるが書き換え回数は比較的少ないアプリケーションでは、データ処理スピードを2〜3倍高速化することに成功しました。また、書き込みが頻繁に行われるアプリケーションでは、ECC の処理時間がシステム性能へ与える影響は小さいが、書き換えによってメモリの不良が多数発生することから、強力な誤り訂正能力を有する EP-LDPC w/o Upper/Lower cellsを採用しました。その結果、従来の強力な ECC(Soft Decoding LDPC)を採用した SSD と同等の記憶したデータを失わずに長期間保持できる高い信頼性と、従来システムの 1.5 倍も高速にデータを処理できる性能を両立しました。

3.今後の展開

IoT の時代には、ビッグデータを処理するコンピュータも従来の CPU を中心としたプロセッシング・セントリック型から、メモリやストレージを中心としたデータ・セントリック型へ移行します。米国企業を中心に開発が進んだ CPU に対し、日本で発明された半導体メモリはフラッシュメモリの開発も世界を牽引している。本研究グループでは、今般の研究成果を今後さらに発展させることで、データ・セントリック時代のコンピュータを世界に先駆けて開発し、今後発展が期待される IoT の様々なサービスに貢献していきます。

2016-05-11

IoTで儲けるという幻想

最近、IoT(Internet of Things)、AIが大流行ですね。

IoTは「モノのインターネット」と呼ばれるように、社会の至るとこに設置されたセンサが膨大なデータを収集し、インターネットを通じてデータをデータセンタに送る。

データセンタではAIなどを使ってデータを解析し、解析結果を再び現実世界にフィードバック(アクチュエート)することで、インフラ・サービス・製造までも効率化するのが狙いです。

スマホの成長が鈍化している現在では、IoTはエレクトロニクス、通信、ITなどの産業にとっては期待の星、と言えるかもしれません。

ただ、猫も杓子も「わが社はIoTで儲けます」というのは、違和感を感じます。

特に日本の電機メーカーの多くは半導体から撤退を余儀なくされたため、センサを作るというハードビジネスに賭けようとしているようにも感じます。

センサは重要な部品・技術ですが、センサだけ、部品の売り切り商売で大きな収益をあげることは、おそらく難しいのではないでしょうか。

IoTでのビジネスモデルは、センサのようなデバイス自体で儲けるよりも、普及を促進するためにセンサは極めて安く売る。

そして、センサが集めたデータの解析し、現実世界へ「こうした方が良いですよ」とフィードバック(推奨)するようなサービス、コンサルティング事業で儲けるビジネスモデルではないでしょうか。

すでに車載のレーダーでは世界トップの4割もの市場シェアを持つコンチネンタルはハードの部品販売だけではこれからは厳しいと判断。ソフトのエンジニアを大量に採用し、システムインテグレーターへと脱皮しようとしています。

インダストリアル・インターネットを提唱するGEがソフトウェアを強化し、製造業からサービス業へ転換しようとしているのも同じような文脈でしょう。

さて一方、日本はどうでしょうか。

メーカーの中には、「トリリオンセンサー(一兆個以上のセンサ)」の市場ができれば、部品売りでこれだけ儲かる、と仰る方が少なからずいます。

この風景、どこかで見たことがあると過去を振り返ると、10年位前に、SoC(システムLSI)が流行になった時も似ていました。

アナログ、デジタル、センサ、メモリなど多くの機能を一つのLSIに実装すればきっと儲かるだろう。しっかりしたビジネスモデルを打ち立てることなく、何となくの期待感で、日本の大手電機メーカーの多くが突き進んだように見えました。

結局のところ、SoCは部品単体のビジネスでは、大きなマージンを得ることができませんでした。

ハード屋、部品屋の発想から抜け出せず、日本企業のシステムLSIからの撤退が相次ぎ、今でも残っている企業はわずかです。

今のIoTは儲かる、という風潮は、かつて日本の電機メーカーがSoCで辿った道と似ているように感じます。。

政府もIoT・AIに注力するとのことですが、技術開発だけでなく、ビジネスモデルもしっかり考えている事業者を応援して欲しいものです。

2016-05-08

社長が交代しても東芝の明日が見えない

東芝が6月に社長を交代すると発表しました。

室町社長が特別顧問という不思議なポスト(何が特別なんだろうか?)に退き、新社長に医療畑の綱川さん、新会長に原発畑の志賀さんがなられるようです。

まず室町さんは何をやってもやらなくても叩かれるつらい立場でお気の毒でした。社長とはいえ、土下座要員ですからね。

新社長・新会長はご本人の力量で選ばれたのかもしれませんが、ご本人を存じ上げない立場、傍から見ると、あまり不正会計に関係なさそうな医療関係の方を社長にした無難な選択だったようにも見れます。

まあ、社長が記者会見をするたびに、過去の不正会計への関与をメディアから問い詰められたらやってられないでしょうから。

でも、ご自身が社長をされていた「東芝メディカル」を予想以上に高値で売却した「功績」で昇進などとも報道されていますが、これは「功績」なんでしょうかね。

自分がやっていた事業が消滅することほど、悲しいことは無いでしょうから。

驚いたのは、新会長にウェスティングハウスの会計問題、いわゆるのれん代の減損処理で取りざたされている方がなったこと。

ひょっとしたら、会長は業績説明などの記者会見には出ないから(?)、メディアから叩かれることもないだろう、ということでしょうかね。

穿った見方をすると、「風よけ」に医療の方が社長になったように見えなくもありません。

さて、そんな中、一本足打法などと言われながらも、東芝を支え続ける半導体関係者はトップ2に入りませんでした。

この人事からは、半導体は儲からなくなったらリストラされるような微妙な立場だけど、原発は何が何でも続ける、というメッセージを感じましたね。

相変わらずの半導体軽視というか、傍流扱いだなと。

残念だったのは、この布陣や今までの説明から東芝の明日が見えないこと。

どうやって儲けていくか、差別化していくか、の説明が相変わらずない。

自分がやっていたメディカルを売却してしまった新社長さんには、将来を説得力を持って語れるネタがないとすると、何とも皮肉なものです。

また、原発事業はよく報道されているように(例えば日経ビジネス:東芝、ついに原発減損。それでも続く嘘と先送り)、2029年までに原発を64基、新規受注するというバラ色の計画をもとになっているようです。

今まで日本に作られた全ての原発が54基にもかかわらず・・・

また、半導体はどうやって3次元メモリで先行する三星やマイクロンに追いつき、勝ち残るのか。

ずいぶん前から開発している、DRAMのように高速でフラッシュメモリに近いほど大容量で不揮発(電源を切ってもデータを保持できる)な新メモリはどうなったのか?

多少先の話でも良いから、「東芝は復活するな」と思わせるストーリーが欲しいものです。

今でも優秀な技術者は残ってますし、技術力は非常に高く、きっと新事業のネタは社内に眠っているでしょうから。

このように東芝に厳しいことを言うのも、OBの一人として東芝には復活して欲しいですし、教え子たちがかなりの人数、入社しているので、(卒業生に限りませんが)優秀な人材をうまく使いこなして欲しい、という思いから。

ところで、そんな東芝でも、「良い方向に変わった」と思える、きざしのようなものが見えました。

来週、パリで開催されるIEEE IMW(International Memory Workshop)では、3月に私の研究室を卒業して4月に東芝に入社した卒業生が発表します。

国際会議では論文を投稿してから発表までに半年くらい時間がかかりますので、このように論文投稿時は大学に在籍していても、発表時は就職していた、ということが良く起こるのです。

ほとんどの日本企業では、新卒の研修の時期は「旅費は大学の研究室が負担」と言っても、学会参加を認めてもらえません。

東芝もかつて、卒業生の国際会議への参加をお願いしても却下されたことがあります。

それがダメもとでお願いしたら「是非、行かせて欲しい」ということになりました。

新入社員が全員受ける研修と、国際会議で世界トップクラスのエンジニアに対して英語で論文を発表することのどちらが教育効果が高いかは、自明だと思います。

そもそも、企業の社員だって、どれだけの人がそのような経験ができるのか。

それが無料で新人ができるのでしたら、断る理由なんてないと思いますけどね。

ちなみに、学生が海外の企業に就職した場合は、たいてい参加OKです。

その一方、日本企業はたいてい参加NGというのは、日本企業の不合理さを象徴しているな、とかねてから感じていました。

ですから今回、東芝が突然、OKを出してきたのは、正直なところ驚きました。

経費節減のために社員に出張旅費を出せないとか、色々な理由があるのかもしれませんが、この調子で直すべきことを前例にとらわれずに、どんどん変えていって下さい。

以上で書いた事例は、経営改革、組織改革などにもならない、ちっぽけな変化でしょう。

ただ、組織というものは、こういう小さな変化を積み重ねて、大きな変革につながるものではないかと思います。

経営危機という災いが転じて福となることを祈っています。

2016-05-07

就活もいよいよ正念場、面接ですね。でも、本当にヤバイのは、面接官のオジサン世代ではないかな。

いよいよ就活も本格化。各社ごとに微妙に違うエントリーシートを書いて、ジョブマッチング、度重なる面接やプレゼン・・・今どきの就活は本当に大変です。

自分を振り返ると、私が東芝に入社したのは1993年ですから経済バブルが崩壊したころ。長銀や山一證券など大手の金融機関が潰れだしていたと思いますが、電機メーカーは磐石・・・と少なくとも自分には思えた時代でした。

電機メーカーへの就職は引く手あまたで、今の学生のような厳しいセレクションを経て入社したとはとても言えません。

いつの時代も若者は叩かれるものですが、今の就活は間違いなく自分の頃より遥かに大変です。

そんな厳しい就活の良い面をあえて見出すと、就活を経て学生は鍛えられ、確かに成長していく。

就活する学生は、面接で落ちてしまったら自信を失ってしまうこともあるでしょう。でも、人が人を選ぶわけで、偶然や相性も大きいから、過度に気にする必要はありません。

それに「選んでいる人」こそ、大丈夫か?、と私は思ってしまいます。

就活で何だかなあ・・・と思うのは、学生を審査する企業のオジサンは、学生に何か言えるのかな、ということ。

ちょうど管理職として採用を決めているのは、私の世代の前後の人たち。

自分は楽して入社して、同じ会社に留まっていて、学生に偉そうなことを言える分際なのか・・・私はとてもそんなこと言えないと思います。

むしろ、(社会状況が全く違うので仕方ないのでしょうが)学生たちは良く頑張っている、と感心してしまいます。

自分がもし企業の管理職をやっていたら、凄い自己嫌悪になるだろうと思います。

楽して入社できた自分たちが、就活で頑張っている若者を落とさざるを得ない。ここにも世代間の格差がある。

同じように感じている企業の方も多いのでしょう。仕事でご一緒する企業の管理職の方には、「もし今自分が学生だったら、この会社に入ていませんよ」と言われる方も多いのです。

学生は就活はつらいかもしれませんが、こういう状況でむしろヤバイのは学生よりも、私のようなオジサン世代ではないか。

私自身も全く他人事ではない。

自分のことを客観的に見れている人はまだ良いのでしょうが、新卒で入社してから同じ会社一筋のオジサンには、結構、偏ってる方も多い。

それで定年まで勤め上げることができれば幸運でしょうが、突然事業が傾いてリストラされることも珍しくない。

中高年の転職は厳しいです。

仕事探しに関しては、より厳しい環境で鍛えられている上に、「若い」という売りがある下の世代と競争しなければいけないのですから。

更に、実は大企業にずっと居続けたオジサンこそ、リストラされた時にまともな履歴書を書けない方が多いのです。

昔はそれでも入社できたし、同じ会社に居ると自己アピールのトレーニングの機会もさほど無いでしょう。

あれだけ採用のときに学生のエントリーシートを見ていながら、なぜ自分の履歴書が書けないのか。

やはり当事者として差し迫った立場にならないと難しいのでしょうね。

結局のところ、労働市場の相対的な関係では競争力が低いオジサンが、競争力が高い学生の採用を決めるという現状は、年功序列という歪んだ労働市場が作り出した悲劇であり、喜劇。

ですから就活で落とされた学生は過度に悲観しないで欲しい。

採用する方だって人間だし、しかも自分の世代の様に、バブルの時代に楽して入社できて、その後日本をダメにしていった人達だから。

若者をけなす前に、本当は自分たちこそが反省しなければいけません。そんな人達に学生は評価されている、という現実がああります。

そして、実は若者の方が、大企業の管理職のオジサンよりも労働市場で競争力あります。

本当にヤバイのは、自分の様に楽して入社できたオジサンと、そんな人が管理職をやってる企業の方でしょう。

2016-04-17

竹内研はIEEEの4つの国際会議、IRPS(4月、ロサンゼルス近郊)、ICEP(4月、札幌)、IMW(5月、パリ)、VLSIシンポジウム(6月、ホノルル)で8件の発表を行います。

竹内研は4−6月に開催される、IEEEの4つの国際会議、IRPS(4月、ロサンゼルス近郊)、ICEP(4月、札幌)、IMW(5月、パリ)、VLSIシンポジウム(6月、ホノルル)で8件の発表を行います。

日本の半導体、エレクトロニクスは産業界が厳しい状況ですが、技術そのものの重要性が下がったわけではありません。

アップルが横浜に研究所を作るのも、日本の電機メーカーのエンジニアの獲得を狙っているからでしょう。

日本は元気であることをアピールしてきたいと思っています。

また、東大から中央大学に移って4年になります。東大を辞めたら成果は出なくなるのではないか、などと随分言われたものですが、逆に成果は増えました。

研究室に在籍する学生の数が全然違い、東大の時の1学年2名から8−10人になりました。

学生の皆さんが頑張って、これだけの成果を出すことができました。

8件の発表のうち、6件が卒論の成果です。

学部生でも卒論を頑張れば、世界トップレベルの国際会議で発表できることを、学生たちが証明してくれました。

いま成果のボトルネックになっているのは、実は英語です。

どんなに素晴らしい研究成果が出ても、英語で説得力のある文章を書いて論文を作成しなければ認められません。これは企業に入ってからも同様です。

この分野では日本語で論文を書くことはほぼありません。

ぜひ、このブログを見た学生さんは理系でも英語の勉強をしましょう。

■ IEEE International Reliability Physics Symposium(IRPS)

・Yoshiaki Deguchi, Tsukasa Tokutomi and Ken Takeuchi, “System-Level Error Correction by Read-Disturb Error Model of 1Xnm TLC NAND Flash Memory for Read-Intensive Enterprise Solid-State Drives (SSDs)”

・Tomonori Takahashi, Senju Yamazaki and Ken Takeuchi, “Data-Retention Time Prediction of Long-term Archive SSD with Flexible-nLC NAND Flash”

・Yoshio Nakamura, Tomoko Iwasaki and Ken Takeuchi, “Machine Learning-Based Proactive Data Retention Error Screening in 1Xnm TLC NAND Flash”

■ International Conference on Electronics Packaging(ICEP)

・Yusuke Sugiyama, Tomoaki Yamada, Chihiro Matsui, Takahiro Onagi and Ken Takeuchi, “Application Dependency of 3-D Integrated Hybrid Solid-State Drive System with Through-Silicon Via Technology”

■ IEEE International Memory Workshop(IMW)

・Hiroki Yamazawa, Kazuki Maeda, Tomoko Ogura Iwasaki and Ken Takeuchi, “Privacy-Protection SSD with Precision ECC and Crush Techniques for 15.5× Improved Data-Lifetime Control”

・Tsukasa Tokutomi and Ken Takeuchi, “17x Reliability Enhanced LDPC Code with Burst-Error Masking and High-Precision LLR for Highly Reliable Solid-State-Drives with TLC NAND Flash Memory”

・Yusuke Yamaga, Chihiro Matsui, Shogo Hachiya and Ken Takeuchi, “Application Optimized Adaptive ECC with Advanced LDPCs to Resolve Trade-off among Reliability, Performance, and Cost of Solid-State Drives”

■ IEEE Symposium on VLSI Technologies

・Atsuro Kobayashi, Tsukasa Tokutomi and Ken Takeuchi, “Versatile TLC NAND Flash Memory Control to Reduce Read Disturb Errors by 85% and Extend Read Cycles by 6.7-times of Read-Hot and Cold Data for Cloud Data Centers”

2016-04-07

誰にも等しく桜が咲く

東京では桜が満開ですね。本学でも日曜日に入学式が行われ、私は卒業式に引き続き学科の入学式の司会を務めました。

最近の大学はマメなもので(と教員の私が言うのも変ですが)、入学式後にご父兄にカリキュラムの説明を行ったり、キャンパスの見学会をやったり。

まあまあ満足して頂けたようで一安心です。

桜は綺麗だけれども、誰もが明るい気持ちで4月を迎えているわけではないでしょう。

受験では志望校に落ちて仕方なく入学式を迎えた人も居れば、浪人になってしまった人も居る。

誰にも等しく桜が咲くのは残酷なことかもしれません。

私自身も受験は失敗ばかりで大学受験では浪人も経験しました。

その時はとてもつらかったのですが、今思い出すのはそうやって失敗した時のことや、何とか這い上がって行った時のこと。

順調な時、楽しかった時のことは、案外覚えていません。

浪人などつらかった時は、普通の時の2倍、3倍と時間が長く感じました。

現役で東大の入試に落ちて、合否の結果を見に行った駒場キャンパスの掲示板、胴上げされる合格者、トボトボと駒場東大駅から自宅に戻る間の風景は、今でも良く覚えています。

浪人後に東大に入った後の人生では、周囲には失敗などしたことないような人も居ました。

そういう人の中には、課題には正解があるし、正しいことをやっていれば良い、と思いがちな人も。

大学まではそれで良いかもしれませんが、社会に出ると「正しいこと」が必ずしも一つだけではないし、人によって「正しいこと」が変わってくる。

例えば赤字を垂れ流す不採算事業があったとしても、そうした事業から撤退し、場合によってはリストラすることがその企業にとって「正しい」ことかもしれません。

しかしリストラされる当事者やその家族にとっては、自分がクビになるわけですから「正しくないこと」に逆転する。

リストラにしても、人によって正解は変わるでしょう。

定年まであと数年の人にとっては「不採算事業にしがみつく」のが正解かもしれませんが、この先何十年も頑張らなければいけない若手社員にとっては「不採算事業をさっさとリストラして、成長事業に一刻も早く移る」のが正解かもしれません。

このように社会に出ると、誰にとっても「正しい」と思える正解などそもそも無い問題を解かなければならなし、人は一見「理不尽」な行動もします。

上司に嫌われたらどうにもなりませんし、運に見放されたとしか思えないような時もあります。

必ずしも努力は報われないし、どうしようもない時には「まあこういう時もあるさ」とやり過ごすことも必要なのかもしれません。

受験でもいくら模擬試験で良い点を取っていたとしても、入試の本番で失敗することもある。

私も受験の失敗を通じて人生のある一面を学んだ気がします。

また、スタンフォード大学のMBAに留学した時には、強烈な劣等感を味わいました。

何しろ英語力が同級生の中でもダントツでビリでしたので、とにかく授業で何を言っているかわからない。

内容がわからないから発言もできない。発言できなければ評価が下がり、単位も落とす。

人生で初めて、落ちこぼれて卒業できない恐怖を味わいました。

大学教員となった今となっては、本当のどん底、劣等生の経験をしたというのも、いろいろな学生の気持ちが(多少は)わかるようになる、という意味で良かったのかもしれません。

もちろんその時は、一刻も早くこんな環境から逃げ出したい、という思いばかりでしたが。

不本意な状況で4月を迎えた人は、桜を見て落ち込んだりもするでしょう。

でもそのつらい経験こそが実はかけがえのないものだった、と思える日も来るのでしょう。時間のずれはあってもいつかは誰にも等しく桜は咲く。

そう思えるようになったのは、随分後のことですがね。

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2016-03-27

卒業・就職おめでとうございます。ところで、学ぶ習慣はついていますか?

先週、中央大学でも卒業式が行われました。私は学科の卒業式・修了式の司会を担当。

学位の授与式では卒業生の名前を読み上げたのですが、これが難しい。

名前を間違えたり読み飛ばしてはいけませんので、かなり緊張しました。

緊張していたせいか、日頃の運動不足か、どうしてかわかりませんが、名前を読み上げている途中で足がつって(人知れず)悶絶。

それはさておき、卒業して行く学生たちはすぐに就職、入社ですね。

今の学生は「大企業に入れば安泰」と思っている人は少ないでしょう。

緊張感を持っているという点では、私が学生の頃よりもはるかにしっかりしていると思います。

働かなければいけない期間よりも、事業の寿命、会社の寿命が短くなってしまった今では、サバイブするためには環境の変化に合わせて学び続けるしかありません。

環境が変わる前に、自分が変わり続けること。

問題は学ぶ習慣を持続できるか。

学生の時はお金を払っているのですから、学ぶことができるのは当たり前でした。

一方、就職するとお金を貰う訳ですから、学んだ知識をもとに貢献することが求められます。

インプットではなく、アウトプットが求められるのです。

OJT:オンザジョブトレーニングなどと言うと聞こえは良いですが、要は勉強なんてしてないで働け、ということでしょう。

私が就職した時は、担当したフラッシュメモリの開発が存亡の危機だったこともあり、研究所であっても、論文を読んでいたら「遊んでいる」と見なされる風潮もありました。

勉強は自宅でしろ、会社に居る間は事業に貢献しろということです。

ではアウトプットするための勉強はどこでするかというと、やりくりしてプライベートの時間を使ってやらざるを得ません。

お金を貰う、働くというのはそういう事なのでしょうね。

企業の中では「勉強しろ」などと言われない反面、目先の作業をしていると、勉強しなくても何となく過ごせてしまう面もあります。

これはとても危険なことです。

今まで得た知識でできる仕事を続けて定年まで過ごせるとしたら、かなり幸運です。

たいていは「目先の仕事をしろ」と言われ続け、本当にそれだけしかしてなかったら、事業が傾いた時に「お前はそれだけしかできないのか」と言われる始末。下手するとリストラにあうわけです。

小学校、中学、高校、大学、大学院と学ぶ知識は高度になって行きますが、一番大切なのは、学び方を身に着けること、学ぶ習慣をつけることではないかと思います。

卒業して就職すると、もう「勉強しろ」と言ってくれる人も、勉強する内容を指示してくれる人も居ません。

自分で動機付けし、全て自分でやらなければいけないのです。

学生の時にどのように過ごしてきたか、学ぶ習慣がついているか、いよいよ、真価が問われます。

一人で学んでいる過程でもし壁にぶち当たったら、大学の教員などにもう一度相談すると良いと思います。

卒業して行ったみなさんが社会で活躍し続けられるよう、サポートを続けるのも大学、教育機関の重要な役目ですので。

10年後、生き残る理系の条件

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