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竹内研究室の日記 RSSフィード Twitter

2016-07-20

なぜ理系に進む女性は少ないのか?

最近、理系の大学に進学した女性を「リケジョ」と呼ぶようになったようですが、わざわざそんな言葉が生まれたのは、女性が少ないから。

更に理系の中でも女性が集中している学科とほとんど居ない学科に極端に別れがちです。

理系でも女性が比較的多いのは生命、化学、建築などでしょうか。食品、化粧品、洋服の素材、デザインなど女性に好まれやすい仕事につながる学科には比較的女子学生が多くいるようです。

一方、女子学生が極端に少ないのは、私が所属する電気・電子・情報や機械。電気や機械は人数も多いですし、卒業後の産業界の裾野も広い。

電気というと「電機メーカー」と思われるかもしれませんが、自動車、IT、通信、電力・・・電気を必要とする産業は実に多いのです。

産業規模が大きく、就職が良いにもかかわらず、女子学生が極端に少ない。

こうした理系の卒業後の職場では、成果が数字で表しやすいため、比較的実力主義です。

技術者は顧客対応などの仕事に比べて個人で勤務時間を調整しやすい仕事でしょうから、育児をしながらも働きやすいでしょう。

採用数が多く、女性にとって働きやすい職場だとは思いますが、そもそも志望してもらえないというのは、もったいないことです。

電気だけでなく機械などでも似たような状況でしょう。

そこで、身近の知り合いや学生に、なぜ理系(特に電気)に進学する女性が少ないのか、聞いてみました。

・高校生の段階では将来の仕事が想像しにくい

・高校で学ぶ物理が抽象的で、何の仕事をするのかわからない

・電気に進学すると、電気工事や街の電気屋で仕事をすると思っていた

・男の仕事だというイメージがある

・電気など女性が行くところではないと親に言われた

・高校では理系女子が少なく、その中でも物理選択の女性はもっと少ない

・女性が少ないので行きづらい

・身近に電気を専攻している女性、仕事している女性がいない

・物理や電気は抽象的で黙って考えることが多い、おしゃべり好きな女子学生には敬遠される

まとめると、「勉強する内容や将来の仕事に興味が持てない」「ロールモデルがいない」「イメージが悪い」というところでしょうか。

いくら仕事として得だからと言って、損得勘定だけで仕事を選ぶわけではないでしょうから、仕方ないと思うところも多いです。

その一方、電気、エレクトロニクス、ITという分野は劇的に変わってきているという状況もあります。

IoT=Internet of Thingsと言われるように、社会のあらゆるモノ、医療、農業、電力インフラ、建物、交通・・・などにセンサが配置され、センサで収集したデータを解析して実際の社会にフィードバックする。

電気や情報は「手段」になり、私たちが生きるリアルな社会の理解や経験なしには、IoTのビジネスを行うことは難しい。

技術だけでなく、技術の使い方やデザインが大切になっているのです。

こうした社会の変化によって、女性が活躍する分野が広がっていくのではないかと思います。

企業にとっても、人口の約半数を占める女性の視点なしには、立ち行かなくなる。

最近は女性エンジニアが立ち上げた美容家電が話題になるようになりました。

また、ITを駆使したスマートホームの技術開発では、女性エンジニアたちが提案するアイデアが次々に実用化されつつあるとも聞いています。

実際にどのような家を作るかを考える上で、男性エンジニアだけの発想では限界があるのです。

こうして産業が変わり、電気を始めとする理系が変わりつつあるのは、女性にとってはチャンスではないでしょうか。

ただ、そういった事情を将来の進路を決める高校生が知ることは簡単ではありません。

産業も社会もこれだけ劇的に変わっている時代ですから、(女子学生に限らず)高校生は大学のオープンキャンパスや学園祭に行き、最新の動向を(無料で)知ることが、進路を決める上では参考になるのではないでしょうか。

夏休みには様々な大学でオープンキャンパスが開かれます。高校生にとっては、どこの大学に進学するかは大事でしょうが、それと同じくらい、どの分野に進学するかも大切です。

例えば私の所属する中央大学の理工学部では、8/6,7に後楽園キャンパスでオープンキャンパスを開催します。

オープンキャンパスでは、特に理系に興味のある女子学生を対象に、

「エレ女広報部with電電相談室(対象は電気電子情報通信工学科、場所は5号館1階5136教室)」

「理工系女子のチカラ(対象は理工学部全体、場所は5号館1階5134教室)」

というイベントを開催します。

先に女性に不人気な理由として、ロールモデルが居ないので進学しずらい、というのがありましたが、こうした企画(ブース)に行って、実際に女子学生やOGと話して実情を聞くのも良いかもしれません。

女性向けの理系の企画は中央大学だけに限りません。先週末に開催された、電気通信大学のオープンキャンパスでは、「電気通信大学で自分を磨く女子学生たち」というとても気合の入った資料を配布していて感心しました。先輩やOGがどう考えて進学し、大学で何を経験し、どのような仕事を選んだか、生の声を聞くことはとても大切だと思います。

女性が少しずつでも電気や機械といった分野に進むことで女性が活躍する場が広まり、同時にIoTの時代の日本の産業力が向上するWin-Winの関係になれば良いと思います。

実は中央大学の電気電子情報通信工学科では女子学生の入学者数が今年、激増しました。と言っても、やっと1割程度ですが。この傾向がこの先も続くと良いのですが。

2016-07-18

理系に進む高校生も国語の勉強や作文は積極的に取り組んで欲しい

日本の大学入試改革では米国の大学を真似て?「思考力・判断力・表現力」を重視するようになる、と言われています。

ボランティア活動や面接重視などと言われていますが、日本の大学の入試(東大の学部、大学院)と米国の大学院の入試(スタンフォード大学等のMBA)を経験した身からすると、米国の大学(院)の入試で求められるエッセイ(作文)が日本の大学(院)入試と比較して、大きな違いだと感じました。

アメリカの大学の学部の入試は経験していないので良く知りませんが、MBA(大学院経営学修士)の入試では、学部の成績(GPA)や数学・国語(英語)の試験であるGMATで足切りをした上で、エッセイ(作文)が重視されます。

自分の弱点は何か、今までで自分が成し遂げた一番重要な成果は何か、なぜ本学を志望するのか、などが一般的なエッセイの課題です。

スタンフォードのMBAでは名物となっている課題として、

「What matters most to you, and why?(あなたにとって最も重要なことは何か?、そしてなぜか?)」

がありました。

この課題などは、志望者の価値観・それまでの生き様を問いているわけで、自由度が高い分、余計に答える難しい。

最初は何を書いて良いかわからず、呆然としたものです。

英文でエッセイを書くためには、英語の文法の力、英語の作文の仕方(構成)などで高いレベルが求められることは当然ですが、理系に進んで文章を書くことが苦手だった自分の場合は、そもそも文章を書くこと、作文自体に大変苦労しました。

留学する前に英文で技術の論文は書いていましたが、ファクト(事実関係)を論理的に順序立てて書く技術の論文と違い、フリースタイルの作文を書くことは子供のころから苦手にしていました。

課題を前に「書けない・・・」と悶絶したわけです。そして、そもそも英文を書く以前に、自分は日本語でも作文を書けないことに気づきました。

そして、まずは日本語で作文を書くことから始めました。

小学生くらいから積極的に作文をやっていれば良かった、と後悔しました。

理系に進学すると、受験科目にない場合にはどうしても国語や作文は避けるようになりがちです。

私の場合は東大の入試で国語があったので、受験勉強で国語は学んでいましたが、それではエッセイを書く上で全く不十分でした。

この米国の大学院入試では、膨大な量のエッセイを書くことになりました。10校以上を受験したので、おそらく書いた作文の量は下書きも含めると、数百ページになったと思います。

作文が苦手だった私が米国の大学院入試で仕方なく英文で作文をするうちに、不思議なことに日本語でも文章が書けるようになりました。

その結果、こうしてブログを書いたり、日経テクノロジーOnlineに連載「エンジニアが知っておきたいMOT」を持たせてもらったり、本(10年後、生き残る理系の条件世界で勝負する仕事術)さえも出したり。

昔の自分から考えると想像できない大変身です。おそらく、大学院入試のエッセイで膨大な文章を書かなければ、日本語でも文章を書けるようにはならなかったと思います。

理系の大学や大学院を卒業して、企業の技術開発の現場で仕事をすると、最初は技術だけできればある程度は何とかなります。

しかし、研究チームをマネジメントしたり計画を立案したり、開発資金を確保するためには、国語や作文の能力が求められるようになるのです。

大学教員はちょっと特殊な立場かもしれませんが、研究費を獲得するためには、100ページを超えるような提案書を書く必要があります。

先日応募した国家プロジェクトの公募では、提案書の制限が「厚さ1センチメートル以下」となっていて、少々驚きました。

ページ数の制限ではく、厚さの制限とは・・・

それだけの分量の文章を書くことが求められているのです。

私の場合はMBA留学の入試とMBAコースで作文を鍛えられたのが、今になって研究費の獲得などでも役に立っているのです。

よくコミュニケーション能力というと、プレゼンテーションが重視がされがちですが、それに負けず劣らず文章を書くことも重要です。

日本の大学入試がどのように変わるかはわかりませんが、入試とは関係なく、理系に進む高校生のみなさんは、「受験科目にないから国語は捨てよう」と思わずに、国語や作文には積極的に取り組んでもらいたいものです。

学校の授業は苦手という人でしたら、SNS、ブログやツイッターなどに文章を書くことでも良いと思います。

媒体は何でもよいので、文章を書き続けることが、コミュ力向上には大切ではないかと。

2016-07-14

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

東芝の会計事件に関して、スクープを連発した日経ビジネスから出版される「東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇」を、発売に先立って献本いただきました。

まだ最初の方を読んだだけですが、なかなか読み進めることができません。

というのも、この本の大半が内部告発の生々しい証言を引用し、いかにして不正が行われたかについて書かれており、一つ一つの文章がとても重いのです。

読んでいると、それぞれの人がどういう思いで内部告発したか、と考えてしまい、簡単に読み進めることができません。深く考えてしまいます。

おそらくリスクがとても大きい中、東芝が立ち直ってほしいという思いもあって、告発したのでしょう。

この本は直接的には、8名の日経ビジネスの取材陣が執筆していますが、800人以上もの内部告発者の思い、人生を集大成した本になっています。

これ以上生々しく不正を暴いた本はそう無いのではないかと思います。

その一方、私の知り合いの東芝のOBの中には、

「そんな本は読みたくない。みんなやっているようなことだろうに、何が悪いのかもわからない。知らんぷりすればよい。」

と言う人も居ます。

そういった態度こそが、あれほどまでの巨額な会計不正を生み出したのでしょう。

自らのリスクを顧みず内部告発する人も居れば、不正をいまだに悪い事とも思わない人も居る。

それが現実なのでしょう。

だからこそ、この本の1ページ、1ページは、日本社会の矛盾やその中で苦悩する人々の生きざまが垣間見れて、深いのです。

山崎豊子さんの著書、例えば「沈まぬ太陽」に通じるものがあるな、と思いました。

2016-07-12

IoTはおじさんだけの発想では対応できない

今日は研究の打ち合わせを兼ねてパナソニックさんのお台場にあるショウルーム、Wonder Life-BOXに行ってきました。

ここは「パナソニックが考える、「2020年〜2030年のより良いくらし」をひと足先にご体感いただく施設」というだけあって、まだ実用化していない研究開発段階の製品や技術を見ることができる、大変貴重な場所でした。

一般公開もしていますので、ぜひ行ってみてください。

パナソニックさんですから、展示は家や生活に関係したものが中心です。例えば未来の家での暮らしを再現した展示では、説明員のおねえさんから、「ミリ波のレーダーを使って、睡眠中の心拍数など体調を布団越しにモニタできます」と教えてもらい、びっくりしました。

IoT=Internet of Thingsという言葉のように、これからは社会の至る所にあるものやサービスがIT化していきます。

応用分野は医療、家電、交通・運輸、農業、気象、電力、社会インフラ等々。

今までITとは別だと思われた分野でもセンサによってデータが収集、解析され、実世界にフィードバック(アクチュエーション)される。

そうすると、決定的に問題になるのは、ITやエレクトロニクスの技術者では、技術をどのように使ってサービスに繋げれば良いのかわからない、何を開発すべきかもわかりにくくなるのです。

例えばパソコンを開発していた時には、高速化、低電力化(バッテリーの長寿命化)、軽量化といった技術目標の方向性を見極めるのは、それほど難しくありませんでした。

あるいは液晶テレビを大画面化、低コスト化するとか、イメージセンサを高画素化する、メモリを大容量化するというのも、わかりやすい目標ですね。

こうした目標設定が簡単だった時代では、おじさん、と言うと語弊があるかもしれませんが、男性の同じような経験を積んだエンジニア中心の開発でもさほど問題にならなかったのかもしれません。

ところが、IoTでは先ほど述べたように、技術開発の目標を設定する時にも多様な経験が必要ですし、開発チームのメンバのバックグランドも多様性が必要になります。

端的に言って、現在の大手メーカーのように、理工系の大学院・大学を出た男性ばかりが集まり、新卒入社から何十年も同じような職場に居る男性のエンジニア集団だけでは、対応できなくなっているのではないでしょうか。

パナソニックのショウルームでは、実用化前の最先端の技術を展示して、どれが実際に消費者に受け入れられるのか、調査のためにも展示を使っているようで、これはなかなか良いアプローチだと思いました。

開発陣だけでは将来のニーズがわからないのならば、ショウルームで直接消費者の声を聞けば良い、ということです。

また最近、電機メーカーに限らず、色々な業界で、女性社員が提案した商品やサービスが当たった、と聞くようになりました。

特に女性向けのサービスでは、おじさん中心の経営陣には理解されず、女性の消費者に後押しされることで、ようやく社内で認められるようになった、というわけです。

もはやIoTのサービスなどは、単線路線のキャリアを進んだ、同じようなバックグランドのおじさんたちに優位性などないのでしょう。

私も十分におじさんの一人ですが、学生と比べても、IoTの将来を見通すという面では、自分が優れていると考えてはいけないのでしょう。

かつて仕事で成功した方で、昔話を自慢する方がいますが、過去の成功体験がもたらすプラス面もあるでしょうが、柔軟な発想をするための足枷になるマイナス面の方が大きいのかもしれません。

自分も過去の成功体験にすがるのではなく、過去は振り返らず、常に未来を考え続けるおじさんでありたいと思います。

2016-07-09

NEDO「 IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」に採択。高速メモリのハードを活かすソフトを開発し、高速ストレージの実現を目指します。

昨日NEDOから公表されましたが、NEDO「 IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」に採択して頂き、高速ストレージを開発します。

IoT推進のための横断技術開発プロジェクトに着手

中央大学東工大、富士通、NECというチームで、テーマ名は「高速ストレージクラスメモリを用いた極低消費電力ヘテロジニアス分散ストレージサーバーシステムの研究開発」。

この研究ではメモリデバイスを開発するわけではなく、ミドルウェアやメモリコントローラなど、高速なメモリに最適化したソフトウェア、ストレージシステムを開発します。

日本ではメモリのようなハードや材料の開発は盛んですが、革新的なハードを活かすためのソフト、特にミドルウェアの開発は後手にまわり、最終的にシステム化で負けてしまいがちでした。

今回のプロジェクトでは高速メモリというハードを活かすためのミドルウェアの開発を正面から行うことになります。

私自身はハード出身ですが、ソフトの専門家の方々がチームに結集して下さり、ハード・ソフトの垂直連携チームが実現しました。

貴重な機会を活かして日本の産業に貢献できるよう、頑張ります。

2016-06-21

就職先に悩んだら、仕事の内容よりも、一緒に仕事をする人・チームで進路を決めたら良い

大学院を卒業して20年も経つと同世代の進路は本当にそれぞれです。

自ら転職したり、リストラで不本意ながら辞めざるを得なかったり。同じ会社に居続けている方が少数かな。

私の場合も転職を計画していたわけではなく、偶然の成り行きで会社を辞めて大学に転職しました。

転職のときは、大企業の中間管理職を何十年も続けるのはしんどい・つまらないな、と思うと同時に、大きな組織を調整する仕事は自分には向かないという割り切りもありました。

率直にいうと、「この人は将来偉くなって幹部になるだろうな」というエースと比べると、自分はあそこまで我慢強くないから、きっと大組織に居続けるのは無理だろうというあきらめ。

10年以上勤めた会社にはそれなりに愛着もありましたし、OBとなった今でもあります。だから、辞めたと言えども、古巣は頑張って欲しい。

自分が居なくても、このエースの人たちが会社に残れば大丈夫だろう、と思って会社を辞めました。

ところが、大学に移ってから10年近く経ちますが、会社を背負って立つと(私が勝手に)みなしていたエースたちが軒並み辞めていくのです。

これにはショックを受けています。このままでは、会社もやばい。

優秀でバランス感覚やリーダーシップもあり20年以上も会社で頑張り続けたエースが突然辞める。

ご存知の通りこの「会社」というのは東芝で、不適切会計とそれに伴うリストラも転職に影響しているのでしょうが、エースと思われる人が辞めてしまうのは会計騒動の前からです。

会社を辞める事情は人それぞれでしょうが、多くの場合は、不本意な形で辞められている。

他人の人生をとやかく言う資格はないですが、一寸先は闇で、人生わからないものだと痛感します。

日々をしっかり生きるしかない。

結局のところ、社会に出てから20年もたつと、新卒の時に予想したのとは全然違う仕事をしてる人も多い。

では、就職するときに仕事はどうやって選べば良いのか。

残念ながら、どの産業、会社が大丈夫かはわかりません。

例えば今はAI技術者がもてはやされていますが、このブームもいつまで続くことか。

仕事選びとしては、好きなことをやるというのが第一でしょう。

どんな仕事もきついこと、理不尽な目にあうわけですから、好きでないと続かない。損得勘定で仕事を選ぶと、不遇のときに耐えられない。

もしどうしてもやりたいという仕事がなく、進路を迷ってしまうならば、仕事をする相手を重視して進路を決めることが良い。

仕事の中身など実際にやってみないとわかりませんが、一緒に働く人がどんな人かは面接などを通じて察することはできます。

実際のところ、優秀なチームに入った人は、そのチームの中で育てられたり、転職後も当時の人のネットワークを通じて仕事が広がったり。

私も会社を辞めて10年たっても、昔の人的ネットワークやOBのコミュニティに今でも助けられています。

東芝は会計問題で社会に大迷惑を掛けてしまった企業ではありますが、フラッシュメモリの立ち上げを通じて育てていただいたこと、人とのつながりは自分にとってかけがえのない財産です。

東芝時代の10年あまりはフラッシュメモリの立ち上げで、坂の上の雲に向かって駆け上がるという経験ができました。

大学に移って、この10年間は電機産業の崩壊で、下りエスカレーターを必死で駆け上がるような日々でした。

そして古巣の東芝の崩壊。

自分でできることと、自分ではどうしようもないこと、でたくさんの失敗とちょっとした成功を経験できたのは、悪くなかったと思っています。

それもフラッシュメモリの発明者の舛岡先生に就活の時に出会い、舛岡先生が率いるフラッシュメモリチームでどうしても働きたい!と思い、飛び込んだおかげです。

学生の時にフラッシュメモリは全く理解していませんでしたが、「この人たちと働きたい!」という思いから東芝に入社したのは間違いではありませんでした。

私自身もこれからも人との出会いを大切にして、次の10年を創って行きたいと思います。

それに人との出会いがあるから、人生は楽しいですしね。

2016-06-16

ハードとソフトの融合はジョブズの言う「Connecting dots(点と点をつなげること)」

VLSIシンポジウムで論文を発表するためにハワイに来ています。

今回は「データの属性を自ら判断する賢いメモリ」を発表します。

TLCフラッシュメモリーをデータセンターに 中央大学がデータの属性を自ら判別する“賢い”メモリーを開発

企業から大学に移ってから9年近くたちますが、今までやってきたことは、この発表のように、ハードに最適なソフトを作ること。

大学に移った当初はかつての専門であるハードだけをやっていては、企業に負けるだろうと思いました。かつての企業に居た時の自分に負ける、と言っても良いでしょう。

大学というリソースが貧弱な環境(企業に比べて)では、新しい価値を作るには分野を越境するしかない、と思いソフトを手がけるようになりました。

ただ、ソフトのど真ん中の研究をしてしまったらソフトの専門家に勝てるわけもない。あくまでもハードの特徴を活かすソフトの研究です。

そういった、サバイバルのために始めた分野の融合、境界分野の研究ですが、これが今後の技術の潮流になっていくのかな、とも最近は感じています。

先ごろグーグルがディープラーニングを高速に実行するハードウェア(LSIのカスタムチップ)であるTPUを発表しました。

これからはTPUのように、AIなどを使った高度な制御、ソフトとハードウェアが融合していくのでしょう。

学会では今日、グーグルからAIアクセラレータに関する講演「Enabling Future Progress in Machine-Learning」を聞きました。

まだTPU自体は話してくれませんでしたが、これからは

機械学習、ニューロサイエンス、ハードウエアの知見・コミュニティの融合(Connecting dotsと表現)が必要だ」

とグーグルの講演者は言っていました。

Connecting dotsというのはSteve Jobsスタンフォード大学の卒業式の時に語った有名なフレーズです。

それぞれ独立して見える点(たとえば技術分野)と点を結びつける線をひくことで価値が生まれる。

ジョブズの場合は、大学中退後に大学にもぐりこんで受講したCalligraphyがマックの美しいフォントに結びつきました。

ちなみにグーグルの講演者(Olivier Temamさん)自身が大学と企業を越境していて、なかなか魅力的な方でした。

私がやっているソフトとハードの融合も、今から振り返るとConnecting dotsでした。

それぞれ独立して発展してきた複数の分野を理解し、融合するのは決して簡単なことではありません。

しかし、難しいからこそ誰もやっていないし、チャンスが大きい領域である可能性が高い。

果たして分野の融合、境界領域が、前人未踏の豊かな土地なのか、それとも不毛な土地なのかは、やってみないとわかりません。

ただ、トランジスタの微細化・ムーアの法則が減速している今では、個々の技術を極めていくというタイプの技術開発だけでは限界を迎えつつあります。

むしろ今までバラバラだった分野・技術を繋げて行くことから、大きな価値が生まれるのかもしれませんね。

2016-06-15

プレスリリースを行いました。「データセンタ向け、データの属性を判断して読み出し方式をデータに応じて最適化するスマートなメモリ」

VLSIシンポジウムで発表する論文「Versatile TLC NAND Flash Memory Control to Reduce Read Disturb Errors by 85% and Extend Read Cycles by 6.7-times of Read-Hot and Cold Data for Cloud Data Centers」のプレスリリースを行いました。

メモリに記憶されるデータの特徴を判別して TLC フラッシュメモリの読み出し方法を最適化〜読み出し可能回数が 6.7 倍に増加〜クラウドデータセンタ記憶媒体への展開に期待

また、早速、日経オンラインテクノロジが記事を掲載して下さいました。

TLCフラッシュメモリーをデータセンターに 中央大学がデータの属性を自ら判別する“賢い”メモリーを開発

ムーアの法則の終焉と言われているように、トランジスタの微細化が減速してきており、小さくする(ことで大容量化・低コスト化・高速化)というシンプルなルールに則って開発をすればよい時代は終わりつつあります。

その結果、もっと賢い制御をソフトで実装し、ハードとソフトを融合することで新しい価値を生み出すことが重要になると思います。

最近のIoTに向けたAI・機械学習のブームも、そういった文脈になるのではないかと。

今回発表した技術も、ソフト・ハードの融合技術です。

論文の名前も「Memory Control for Data Center」で、データセンタ向けのメモリを制御する技術が、VLSI Technologyというデバイスの学会に採択して頂けたことからも、学会自体もシステムを志向してきているという背景があると思います。

そういえば、半導体のロードマップ委員会ITRSが終息し、半導体を使ったシステムのロードマップ委員会IRDSとして生まれ変わるという報道もありました。

国際半導体技術ロードマップが終了 - IEEEが新たに半導体・コンピュータロードマップを発足

こうした「もの」から、「もの」を使ったシステムへ、という世界的な動きの中で、何とか日本の産業に貢献していきたいと思っています。

2016-06-11

若さとは将来に期待すること、自分がまだ成長できる、何かをなす事ができると信じられること

40代で電機業界にいると、同世代や上の世代の人の現状は悲喜こもごもです。自らの意思で会社を辞めた人も多いし、リストラや早期退職で会社を辞めざるをえなくなった人も多い。

好奇心を失わずに、新しいことに挑戦し続けている人もいれば、昔身に付けたスキルで逃げようと守りに入っている人も。

大学(院)を卒業して入社した時は似たような感じだったのが、驚くほど差ができてしまう。

残酷なことに、両者の差は年々広がるばかりです。

以前のように終身雇用が守られていた時には、両者は待遇という面ではさして違わなかったと思います。

ところが、自分の力で第2、第3の人生を切り開かなければ行けない今では、差は歴然とします。

この差はなぜ生まれたのだろうか?と考えてしまいます。

よく好奇心が若さと言いますが、技術者の場合は、将来に期待すること、自分がまだ成長できる、何かをなす事ができると信じられること、と言い換えられるかもしれません。

自らやりたいことがある、と言っても良いでしょう。

研究や開発はリスクがあるのが当然です。

ひょっとしたら失敗するかもしれないし、難しいからこそ今まで誰も成功していないわけです。

そんな時に、将来の社会をこうやって変えていきたい、それに少しでも自分も貢献したい、どうしてもやり切りたい、という思い・志がなければ、リスクの高い研究などできません。

研究や開発には挫折がつきものですが、守りに入っている人はちょっとした失敗でも、「どうせできないや」と腰砕けになって諦めてしまうのです。

大学の研究室の主体は学生です。学生は否が応でも自分で未来を作っていかなければいけない立場。また、守るべきものもありません。

ですから、若い世代の人たちは、自然と前向きになれるのだと思います。

一方、中高年になると、自分で余程の覚悟がないと、前向きになることは難しいのかもしれません。

これ以上新しいことを学ばなくとも、過去身に付けたスキルで逃げ切れるのではないか、という誘惑に負けてしまう人も多い。

30代までは輝いていたのに、時間が止まったように何も新しいことをしようとせず、40代からいわば「過去の人」になってしまった人もいます。

その人が輝いていた時代を知っているだけに、「過去の人」になってしまった姿を見るのはつらいものがあります。

大学だけでなく企業でも良く見られることでしょうが、守りに入って逃げ切ろうとする中高年を、知識は未熟な若い世代がいとも簡単に追い越していく。

人生は思ったよりも長いし、競争環境は急激に変わります。

いかに過去成功した経験があったとしても、逃げ切りなんて、簡単にはできないのだなと実感しています。

攻撃は最大の防御、ではないですが、自分の身を守るためには何歳になっても自分を変え、挑戦し続けるしかない。

成長すること、自分を期待することを諦めたり、「これまでの知識の貯金で食いつなごう」などと思った瞬間に、自分のコモディティ化が始まるのでしょう。

結局のところ、逃げ切りなど考えもしない人が実際には逃げ切ることができ、逃げ切ろうとした人には居場所がなくなる、という皮肉な結末になりがちです。

難しいことを考えなくても、これは当たり前ですよね。

いかにしてサボるか・楽してお金を貰おうとする人、言われたことしかやらない人よりも、前向きに自ら困難な仕事に挑戦する人の方が、一緒に仕事をしていて楽しいですから。

ベテランの方が転職をする時は、アピールする材料として過去の実績を語るのが一般的でしょうが、技術・知識の陳腐化が早い時代には、過去の実績だけでは、これから仕事ができるかどうかわかりません。

むしろ、自分の過去を語るのか、これから自分が作りたい未来を語るのかで、その人の技術者・研究者としての本質を見ることができるのではないでしょうか。

過去の栄光にすがるのか、未来を自ら作ろうとする意思があるのか。

過去しか語らない人は、その実績がいかに素晴らしくとも、技術者・研究者としてはもはや使い物にならない、賞味期限が切れている、という厳しい現実があります。

逆に、ファイティングポーズを取り続ける人には、何歳になってもチャンスがあるのだと思います。

2016-06-07

理系の技術者が10年前にビジネススクールにMBAを取りに行った意味

スタンフォード大学のビジネススクールに行きMBAを取ったのが2003年ですから、10年以上がたちました。

当時はなぜ技術者がMBAに行く必要があるのか?と言われたものでした。

そして、経営コンサルや投資銀行など、いわゆるMBAが進む仕事に変わるのであれば(キャリアチェンジするのであれば)MBAに行く意味があるが、技術者を続けるのであれば、MBAは意味ないと盛んに言われました。

当時私は電機メーカーに在籍していましたので、自分が作った技術をビジネスとして成功させるには、技術バカではだめで、マーケティングはもちろんのこと、商品企画から売るための仕組み作り、パートナーシップなど、いわゆるビジネスディベロプメントができる必要があると思っていました。

とはいえ、まだ電機メーカーの中での技術者の仕事は縦割りで、細分化された組織の中で、ある特定分野のプロの技術者を目指すというのが一般的だったと思います。

私の場合は大学に移ったので、MBAが非常に役に立ちました。大学の教員は給料を大学から頂ける点では恵まれていますが、研究にかかわるリソース(人・モノ・金)は自分で集めマネジメントしなければいけません。

日々資金繰りに走り回る、と言っても過言ではありません。中小企業の経営者に似ている面もあるかもしれませんね。

また自分が元々の専門とする半導体業界が日本ではひどい状態ですので、現在の大学のポストにつけたのも、単に集積回路の専門家というだけでなく、技術経営・MOTも教えることもできる、という面もあったと思います。

実際、現在の大学に移ってから、工学デザインという、理系の学生に商品企画・MOTを教える授業を始めたくらいですから、MBAで学んだことを学生に伝えることは大学からも期待されていると感じています。

企業から大学に移ったという、やや特殊なキャリアを歩んだ私にとっては、MBAは大変役に立ちました。技術とともに命綱だった、と言えるかもしれません。

一方、企業におられる技術者にとってはどうでしょうか。

最近、IoT(Internet of Things)と言われるように、従来はITが使われていない社会の様々な分野(医療、交通、セキュリティ、農業等々)にIT技術が使われるようになってきています。

そうなると、ITの技術者が接する相手は、ITの専門家では必ずしもありません。むしろ、IT、技術はさほど知らない人を相手に仕事をしなければいけない。

また、IoTでは一社で全ての技術分野をまかなう事も困難です。対象とするアプリケーションが先ほど述べたように広範な上、技術的にも多様なセンサ、AIを使ったデータ処理やネットワークなど広い範囲をカバーしなければいけません。

技術面だけ考えても一社だけでは解決方法を提示できないのです。必然的に異業種と連携することが必要となります。

その時に技術者も、ある特殊な分野だけわかります、では不十分なのです。

技術は分野が異なると使う用語も違うしコミュニケーションさえ難しい。

そこを何とか(完全には理解できなくとも)勘所を理解して、連携をして仕事を進めていくことが必要になる。

もはやある専門分野を深掘りする、単線路線だけを歩んで来たエンジニアには厳しい時代になったと感じています。

実際、大手のメーカーで部長、課長といった管理職をやられた方でも、ある分野だけ、内向きな仕事しかしていない方が実際には多い。

IoTといった異業種の連携が必要な時には全然役に立たない、というケースを目にします。

大学でも同様です。研究資金は国家プロジェクトや企業との共同研究から確保する必要があります。

最近のIoTなどの国家プロジェクトでは、大学が持つコアの技術を開発するだけでなく、その技術を実際の社会で使えるようにする周辺技術を開発してくれるパートナーを集め、最終的に技術を使うサービス事業者と連携することが求められます。

異業種の企業間の連携が必要だからこそ、利害関係が中立的な大学教員には、企業間のWin-Winの連携の仕組みを構築、運営することが求められるのです。

具体的には、自分の持つコア技術を差別化技術として、様々な業種の企業に声がけをして研究チームを作り、IPなど権利関係・契約もクリアできるように調整することが、大学教員に求められていると強く感じます。

私の専門分野とは違うので異分野のことや契約は知りません、では生き残れません。

振り返ると10年前にIoTの出現を予想できたわけではありませんが、MBAで学んだことこそが技術者にとって重要になりました。

この先10年、20年後を予測することはできませんが、技術者・研究者に専門知識だけでなく、より幅広いマネジメント能力(いわゆるGeneral Management)が求められるようになることは変わらないでしょう。

もっとも、良いこともあります。IoTのプロジェクトを始めてから、今まで全く縁のない業界の方々とのお付き合いが始まりました。

いろいろな分野の方にお会いしてお話できること自体がとても貴重な楽しい経験だと感じています。

こちらはJALの羽田の整備工場で航空機のセンサを実際に見せて頂いた時の写真。

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この整備工場はJALの男性社員、岡本さんがキレッキレの踊りを披露して話題になった場所でした。JALさん、ありがとうございました。

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