2009-01-08
オルハン・パムク 「父のトランク」・・・「普遍語」と「現地語」のはざまで
和書 | |
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「父のトランク」はこのブログの最初の記事でとりあげた「雪」 snow の著者オルハンパムクOrhan Pamuk のノーベル文学賞受賞講演の記録です。
snow についての過去記事はこちらです。
http://d.hatena.ne.jp/Ten-08/20080524/1211633541
この講演は大変心打たれるもので、パムクの作品と共にぜひ多くの人に読んでいただきたく思います。講演は英語ではなくトルコ語で行われています。この本にはそのことについてのインタビューも併催されています。
このコメントが大変興味深いので以下に引用します。
・・・自国語で講演しなかった作家もありました。どうしてトルコ語でするのですか
パムク :わたしにとってそれが自然と思われたから。なぜなら世界中が見ているし、わたしはいつもトルコ語で書いているのですから。トルコ語は私が朝から晩まで使用しているもので、旅行中であれ、飛行機の中であれ、トルコ語は自分の色で、自分の全てです。このことから始めましょう。英語で話したら、もしかしたらそこに居る百人のスゥエーデン人と外国人が関心を持つかもしれない。しかし、トルコ語も、一連の出来事の、そして私自身の一部であるし、自然なのはそのことです。でも、授賞式の後でディナーがあるそうで、そこで受賞者はエスプリに富んだスピーチをしなければならないのだそうです。それも英語で。だからそれは英語でします。
先日とりあげた「日本語が亡びるとき」を読んだ後、このインタビューを思い出して引っ張り出してきたのです。パムクにとってトルコ語は「母国語」であり、また世界的に見れば「現地語」であるでしょう。パムクがそこで「トルコ語」にこだわる気持ちは「トルコ語は自分の色で、自分の全てです」という心に響く言葉に集約されていると思います。しかし、なおかつ、受賞後のスピーチは「英語」という「普遍語」なのです。
日本でノーベル文学賞を受賞した川端康成は「美しい日本の私」を日本語で、大江健三郎は「あいまいな日本の私」を英語で講演しています。【川端康成の本は今探しても出てこないので、もし間違いがあればどなたか訂正をお願いします。日本語の講演だったと思うのですが)
余計なことかもしれませんが、村上春樹がノーベル賞を受賞したら、彼は英語で講演するような気がします。
大江健三郎の講演は手元に岩波新書があり、そのあとがきで英語で行ったノーベル賞受賞講演が「世界に共有される言後で話し、かつ聴き取られているという思いが、すくなくとも話しての内面において深かったこと、これはプラスの一面」と述べています。
日本人として大江健三郎さんの「深い思い」もわからないではないですが、やはりここでは「トルコ語」を選択したパムクの切実さに、私はより心惹かれます。逆にそれほど日本人には切実さはないということで、それも憂うべきことではなく、むしろありがたいことかもしれないのです。
「ノーベル文学賞」については私は先日ご紹介した「新潮」の中の蓮見重彦さんの見解に賛成ではありますし、「しかるべき重要な文学作品の翻訳がまぎれもなくその国の言葉で読めることのほうが、グローバリゼーションを論じることなどより遥かに重要なのだ」という1節にも共感します。
一方そこで蓮見さんが批判されている「内田樹の研究室」に「日本語のリテラシー」についておもしろい記事があるのでご紹介しておきます。いつもながら、内田樹さんの指摘には眼からうろこが落ちる思いでいます。
http://blog.tatsuru.com/2009/01/05_1110.php
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パムクさんの講演録が出版されているのですね。
私にはコメントを差し挟む知恵がございませんが、母国語と普遍語、考えさせられるテーマです。
点子さんの記念すべき初エントリーが Snow だったのですね〜。感激しました。
私も、いつか読んでみようと思っている本です。(そんなのがいっぱい)
トルコの内政も分からないのに、読みこなせるのかと躊躇していますが、
それほど英文自体は難しくないと聞いて安心しました。
Snow ぜひ読んでくださいね。英文はもちろんトルコの状況も含めてわかりにくいところもあるのはあるのですが、とにかく作品の力に引っ張られて最後まで読めてしまいました。Nemoさんなら絶対大丈夫ですよ。また読まれたら感想聞かせてくださいね!
貴ブログでとりあげていただきありがとうございます! 私も浅い読み方なので全く自信がないのですが、ともかくこのような作品が少しでも多くの人に読まれることを願って書いたのです。コニコさんのブログはまたゆっくりコメントさせていただきますね!!