憲法と社会

2018-07-09

災害は緊急事態ではないのか  (第183回)



 前々回の続きで、今年3月に自民党が取りまとめたという憲法改正案に関する報道のうち、どうしてもどうしても新設したいらしい緊急事態条項を転記します。「第73条の2」になっているのもご注目。直前の第73条は内閣事務に関する規定であり、緊急事態は、内閣が取り仕切るおつもりらしい。

 【緊急事態条項

 第73条の2

 (第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。

 (第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会承認を求めなければならない。



 第2項の最後の箇所が、秀逸である。「国会承認を求めなければならない」となっており、承認されなくても構わないのだ。国会は国民の代表たる国会議員からなり、国唯一の立法機関です。これだけ根底から議会制民主主義を軽んじるとは大したものだ。

 第1項は、2012年の改正草案と比べて、多少まろやかな文章表現になっているのだが、この先は文面の話ではなくて、運用のことを考える。第1項のとおり政府が機能するためには、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるとき」、内閣国会よりも素早く動かなくてはならない。その能力と意思がないのであれば、意味がない条項です。そして、無い。


 今月(2018年7月)の上旬、西日本を中心に、日本は激しい豪雨に見舞われた。まだ行方不明の方々や、避難中の人たちがいて、一刻も早く安全が確保されるようお祈りします。また、すでに何十名もが亡くなったとの報道があり、心よりお悔やみ申し上げます。

 最初に台風が来た。次に梅雨前線が接近してきた。気象庁のサイトを見ると、7月5日の午後2時には、「記録的な大雨」の警告と、「厳重な警戒」と呼びかける報道発表が出ている。リンク切れになるかもしれないので、プリント・スクリーンも貼ります。 http://www.jma.go.jp/jma/press/1807/05b/kaisetsu2018070514.pdf

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 このプレスリリース記者会見は、確か夜のニュースで観た。気象庁の広報課長さんのような肩書の方が、観測史上、例のない降水量になる可能性があるといった趣旨のことを述べてみえた覚えがある。総理大臣法務大臣が、衆議院の宿舎かどこかで大宴会をお楽しみになり、その和やかな様子をSNSに写真までアップして伝えてくれたのが、この日の夜。

 翌7月6日に、オウム真理教の集団処刑があり、それとは別に、西日本各地に「大雨特別警戒」という聞いたことのない警告が出て、避難指示も出始めた。明けて7月7日の朝には、すでに死者・行方不明者の報道が出ていたのを覚えている。生まれ故郷の静岡では、私が中学生のときに「七夕豪雨」があって、大勢の被害者が出たので、またこの日かと思った。


 関係閣僚会議が開催されたのが、この7日。豪雨非常災害対策本部会議(第1回)が開催されたのは、官邸のサイトなどによると、7月8日になってからだ。災害対策本部会議は、「災害対策基本法」ほか法令に規定された公式の会議らしいが、会議名はともかく、同法の目的条文には、当たり前だが「災害予防」、「防災」という用語が頻出する。

 今回、気象庁の警告は、上記の通り7月5日には私の耳にさえ届いている。そのあと、政府の首脳が全力で防災に努めたという情報は、私の耳にまだ届いていない。地方に任せっ放しになっていたのではないのか。たまには飲み会もいいが、時と場合による。私が気象庁の関係者なら、救えた命があったはずだと嚇怒したと思う。


 7月5日の気象情報は、防ぐべき緊急事態(大地震その他の異常かつ大規模な災害)以外の何物でもない。そして、国会は会期延長して通常の法案審議中であり、主要閣僚永田町霞が関にそろっていたはずだ。さらに、これを書いている7月9日の朝、NHKの朝7時のニュースで、首相が7月11日から「ベルギーほか」に外遊すると報じている。目的がワールドカップの話題ではなければ良いが、あいにくもっと物騒です。

 ベルギーの名だけ出すのもどうかと思うが、7月14日はフランスに滞在のご予定で、この日は同国の革命記念日軍事パレードがあり、首相は仏大統領に招待されている。そればかりか、「日本の部隊」(自衛隊員6名)も軍事パレードで行進する。これが7月6日の在京フランス大使館のサイトに出た。これも、いずれ消えるだろうから、スクリーン・ショットで残します。 https://jp.ambafrance.org/article13301

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 該当部分だけ貼り付けておきます。下の方まで読んでいただいた方が良い。軍事も含む二国間協定を締結する計画らしい。仲間が増えて頼もしい限りだが、フランスアメリカイギリスとともに、シリア空爆をこの4月にやらかしたばかりだ。いつの日か、集団的自衛権を確保してしまったことを後悔する日が来ないことを切に願う。

 現時点で、救助・捜索活動はまだ続いている。大雨は取りあえず去ったようだが、今朝の天気予報によれば、7月10日ごろに台風沖縄に接近しそうだと言っていた。この政府が何を優先するか、そのうち分かります。



(おわり)



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今年初めて見た蝉は、雨に打たれたのか草の上
2018年7月7日撮影)
































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カバラカバラ 2018/07/11 10:23 今回の具体的事例をあげて緊急事態条項の不要性が分かる文章とても参考になりました。

TeramotoMTeramotoM 2018/07/11 14:40 カバラ様。コメントありがとう存じます。少し腹立ちを覚えながら書いたので、荒っぽい文章で恐縮です。お読みいただき、ありがとうございます。

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