おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ともだち仮説2 「ともだちは誰と誰かについて」     (20世紀少年 第90回)

 このブログの第88回において、一人目のともだちはフクベエ、二人目はカツマタ君という仮説を立てたのであるが、正確には、前回において、ともだちは当初から「二人一役」だったと想定した以上は、「二人とは、誰と誰か」という問いにすべきであろう。

 もっとも、漫画を読んでいるときは、まさか二人(あるいは、それ以上)いるなどとは考えもせず、第12巻でその正体がフクベエと知らされ、知らされた途端に死んで、蘇ったのかと思っていたら、どうやら別人らしいぞという展開になっているため、便宜的に「一人目」、「二人目」と書いても誤解はないでしょう。


 ともだちの「一人目」はフクベエであると判断するに値する根拠はたくさんある。ここでいうフクベエとは、ケンヂたちと同級生だった(おそらく4年生から6年生まで、そろって3組だった)服部少年のことである。

 4年生のときに文集で、夢は大阪万博に行くことだと書き、5年生の1学期に同級生のサダキヨから、「はっとりくん」とか「ふくべえ」とか呼ばれて馴れ馴れしいと怒り、首つり坂の事件のときは、ケンヂが「フクベエも誘おう」と提案していて、実際に誘いに来ている。

 この少年は、若き日の万丈目の目前でスプーンを曲げて見せ、12歳のときに万丈目と組んで、スプーン曲げ少年としてテレビ出演を果たそうとするが、インチキと判断されて番組が打ち切りとなった。1980年、「ハットリ」は万丈目のオフィスを訪れ、興業としてのサークル活動を提案し、両者は組んでその企画を実行に移した。


 第20巻でキリコは、マルオとケロヨンからの質問に答えて、彼女の夫がフクベエであること(当然ながら、前提として、キリコもマルオも知っているフクベエのことだ)、カンナが彼との間の娘であること、フクベエがサークル活動の当初からの”ともだち”であったこと、2003年に再会した”ともだち”は、声も姿もフクベエに似ているが、全くの別人であると断言している。

 カンナは、2014年に”ともだち”と一対一で会うことになるが、抱きつかれた瞬間に、彼女ならではの鋭さ(あるいは特殊能力か)により、その男が自分の実父ではないと直感している。そして、キリコの予感どおり、二人目の”ともだち”は、あっさりとカンナに「絶交」を宣言する。


 一人目の”ともだち”の特徴の一つは、服部少年時代からの、変わらぬ万博への執着であった。二人目は、フクベエのこだわりと、自分のこだわりは違うと明言している。このとき具体的には、万博施設が話題になっている。二人目は、そこにウィルスを投下しようとしていたのだ。

 これだけの材料があれば、一人目のともだちがフクベエであることを覆すような証拠も発想も出てきそうにない。問題は、二人目がカツマタ君かどうかであるが、まだ第3巻の段階では、判断材料がほとんど全く出てきていないので、ここでは論じない(正直にいうと、何も分からないので書きようがない)。


 次回は、一人目がフクベエであったとしても、第88回で疑念を呈したとおり、クラス会に出てきた「フクベエ」は、一人目の”ともだち”の「フクベエ」と、本当に同一人物なのかという点について考えたい。

 何せ、すでに私は、そっくり同じ顔かたちの、たぶん同年代の男が二人いたことを知っているので、この二人の関係を極めたいという願望を捨てられないのです。


(この稿おわり)


鳴いている最中のミンミンゼミ。九段坂にて。(2011年8月16日)