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おじさんの雑記帳    「20世紀少年」の感想文

2015-05-08

東京行きの物語  (第933回)

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 前回の続き。後半の21世紀ケンヂは口数の少ない偏屈なおっさんとなって再登場する。その彼が北海道から東京への旅の途中で、珍しく過去を語るシーンが三回ほどある。相手の一人は、諸星さんの仇で、関東軍の総統に落ちぶれている長髪男であった。第19集。訊いても名乗らない相手に向かって、主人公はケンヂだと名乗ったあとで問わず語りに昔話を始める。

 世紀が入れ替わった夜の新宿で、火の海の中、彼は記憶をなくし遠藤健児だったことも忘れて、記憶の無いまま日本中を彷徨った。そして、「一度は東京に行ったこともある」のだが、「東京にいると怖い思い出が戻ってきそうで、また逃げた」。ここまでが、この場の回顧談の前半である。


 東京に戻ったのが何時か、当人は語っていないが悪魔系の目撃者がいる。エロイムの初代ギタリスト、ダミアン吉田氏であった。彼は2014年にコイズミが初登場したときには在籍中であったが、その後コイズミが、ともだちランドの研修を修了しながらも、成績不良が高須の知るところとなり、連れ戻される悪夢を観た頃にはバンドをクビになっていた。

 解雇事由は「ひっそり演る」べき悪魔系バンドにおいて、突如ダミアンが「ギャンギャン」弾くようになり、「上手いっちゃ上手い」とプレイの評価は上がったものの、肝心のバンドから浮いてしまったらしい。このプレイ・スタイルが大変化した元凶が、西日暮里の十字路で出会った悪魔くんであった。その男から何か得体のしれないものが伝染したのである。


 ケンヂは久しぶりに再会したオッチョとの会話の中で、「ロックやってると27歳で死ぬ」説を、教えてくれた本人に向かって解説した。ジャニス・ジョプリンブライアン・ジョーンズジム・モリスンジミ・ヘンドリクスの4名の没年がその根拠であるが、一人、忘れている。

 もっとも、ロックのジャンルに含めていいかどうかは別としてだが、ロバート・ジョンソンも27歳で死んだ。別の場所でケンヂ本人がそう言っているのだ。クロス・ロードは悪魔とギタリストが出会いやすい場所らしい。それはともかく、この悪魔くんがケンヂであることに疑いはなく(春さんとマルオが録音の音楽性から、そういう結論を出している)、彼は2014年、まだ壁が東京を取り巻く前に東京さ行って、すぐ逃げたらしい。


 なぜ、逃げたのか。「怖い思い出が戻ってきそうで」という嫌な予感がしたとのことだ。仮に行く前から悪い予感があったら、必要もないのに危ない東京へは行かないだろう。うかうか出かけたところ何かを見たか。この時点において都内で大きく変化した場所といえば、世紀末に大爆発があったのち再開発され、その後は歌舞伎町が中タイ両国のマフィアの巣窟となった新宿近辺だ。西日暮里から新宿まで、山手線で20分ぐらいです。

 この新世紀・新宿を実見したなら「怖い思い出が戻ってきそう」では済まないような気もする。一方で、このシーンの少し前、蝶野刑事と二人で旅は道ずれを始めたころにもケンヂは、一度、東京にいったが「すぐに逃げた。ぞっとしてな...」と川魚の塩焼きをいただきながら語っている。

 そのあと「北海道の山の中で三日三晩」と言いかけたところで話が逸れ、マス大山の話題になり、話についていけない元刑事がカンナの名を出したところで、いきなり東京に決着を付けにいくと立ち上がった。決着の相手は、いくらなんでもこれは比喩だと思うが、ジャリ穴のライ魚ということになっている。


 長髪との会話の後半に戻る。ケンヂは2015年の万博開幕のニュースに触れた。続いて、ウィルスがバラ撒かれて世界中が死滅した件。これを知って記憶が戻り、逃げきれなくなったという。そして三日三晩、山の中を転げまわって泣き、幸い行き倒れ寸前にコンチのラジオ局で水分補給して立ち直った。

 (1)2014年の東京行きと、(2)2015年のニュースの件は、時差があるだけでなく、彼の反応が劇的に異なる。東京に行ったときは記憶が戻らないままながら、その潜在意識のどこかに”ともだち”が英雄となった世の中の不穏な雰囲気が伝わってきたのかもしれない。そして翌年、万博開幕のニュースを聞いたということは、同年1月に”ともだち”が暗殺されたことも、3月の開幕式典で「復活」したのも知っているはずだ。


 そこへ来てウィルスの報道である。「よげんの書」によれば、たぶん2000年12月31日に九人の戦士が戦って、悪の組織は滅びるはずだったのが、逆に事態は悪化した。この凶報が、どうやら彼の解離性障害のような症状を治したらしい。期せずして招いた命がけのショック療法であった。

 衝撃はウィルスだけではなかろう。幾ら何でも死んだ人間が生き返るなどということをロック・ミュージシャンが考えるとは思えん。その顔を見たという自分自身が信じられないとオッチョも語っていたくらいである。敵も味方も大変がそう思ったように、本当は死んでいなかったか、誰かがすり替わったかのいずれかであろう。「信じたいものがほしい」連中以外の人は、常識的にそう考えるはずだ。


 おそらく相手の正体にケンヂが気付いたのは、第21集、蝶野刑事が東京の手前に立ちはだかる壁の前でケンヂに万博の話をしたときだろうと思う。最初のうちケンヂは、やれ新曲だ、やれパクリだと、相変わらず暢気にギターを弾いていた。さらに大阪万博の思い出話で一人、盛り上がっている。

 太陽の塔の中に核ミサイルでも仕舞ってあるんじゃないかと思ったというケンヂの思い出話に触発されて、蝶野刑事が意を決して伝えた「おぞましいもの」とは、塔の内部で遊びまわる子供たちの人形と走馬灯であった。反響していた笑い声に混じって聞こえて来たのは、「ケーンージくん。あーそびーまーしょ。」という20世紀少年ならではの遊びの誘い口上である。

 これを聞いたケンヂは、サングラスのせいで良く見えないが、たぶん顔色を変えている。「呼ばれちゃしょがねーな」という理由で、今なお開催中という東京万博に行くと宣言した。さて、この「あそびましょー」である。初出は古く”ともだち”コンサートで受難した日に、「ケンヂくん。遊ぼうよ。」と声をかけてくる忍者ハットリ君のお面の少年を、突如、思い出している。


 そのあと、オッチョと二人、カスミガセキの地下の駅で聞いた。血の大みそかの夜、巨大ロボットディスプレイでも聞いた。後の話になるが、”ともだち”が「20世紀少年」を流しながら地球を終わりにしますという報道をしたときも、このセリフを最後に吐いている。放送室、屋上、楽曲「20世紀少年」、俺達の旗、バッヂ、太陽の塔の大量破壊兵器。彼とケンヂとの接点は多い。フクベエのそれより多いかもしれない。

 そして少なくとも小学校時代のフクベエは、間違っても「あそびましょー」などと遠くから声をかけるような可愛げのあるキャラクターではない。サダキヨには、そんなことができる勇気はない。だから屋上で宇宙人と交信するか、フクベエにすがるかしかなかったのだ。そして、もう一人のナショナル・キッドがいたこと、それがもう一人の”ともだち”となったことを、ケンヂは知っているはずだ。


 そうでなければ、上巻でヴァーチャル・アトラクションに調査研究のため入ったとき、いじめられているナショナル・キッドを見てすぐに、おまえはサダキヨなのか、それとも、もう一方の”ともだち”なのかという質問が出るはずがない。万丈目はサダキヨの他にも、フクベエにはお面をかぶっている取り巻きがいたとしか語っていない。

 ケンヂは取り巻きの件を万丈目に質問した時点で、すりかわった方も幼馴染であることを前提にしているし、おそらく、その子から何度も「あそびましょー」と声をかけられたことを思い出しているに違いないと思う。我ながらかなり想像を膨らませているが、少なくとも、そう考えても矛盾する点はないと思う。ただし、カツマタ君の名まで思い出したかどうかは別問題として残ったままだ。




(この稿おわり)





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せっかく撮影したのでツツジとテッセンの別の写真を (2015年4月撮影)








 今日から赤い爪 あなたに見せない
 透き通る桜貝 あなたの好きな色
 一日に二本だけ 煙草を吸わせて
 コーヒーの昼下がり あなたを待つ夜更け


             「東京物語」  森進一





















































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