テックス・マシーン 恥部を剥ぐ

2010-12-28

Tex-Machine2010-12-28

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★ ELTON JOHN & LEON RUSSELL / The Union


やられた!!


エルトン・ジョン”と“リオン・ラッセルが”組んだアルバムなんて、出るという話が広まった頃から僕は絶対に買わないと決めていました。元々、エルトン・ジョンはそれほど好きじゃないし、今のリオンに昔の力があるとは思えないし。2人のピアノマンベタな共演アルバムなんて、商売っ気がギラついていて全然興味はありませんでした。しかも、プロデュースは“Tボーン・バーネット”って…今年何枚目だよ!?。音楽的にどうこうというより、非常にアメリカンエンターテインメントのエゲツない部分が出ている色物的な作品としか思えませんでした(エルトンは英国人だけど)。しかし、発売後の評判は異様に高く音楽通の間でも好評との事。丁度、アマゾン中古盤が安く出ていたので、ちょいと聴いてみるかという程度で買ってみました。そしたら、おめー!何じゃこりゃ!?すげー傑作でないの!?参ったわこりゃ…


僕が買ったのは、DVD付きのヴァージョンでCDも16曲収録と、通常盤よりも2曲多くなっています。たっぷりと71分間という時間はかなりお腹いっぱいのヴォリュームではありますが、非常に音楽的にレベルの高い内容で、非常にスケールの大きい大作に仕上がっています。当初懸念していた、エルトンと組む事で甘いポップス/豪華だけど内容は薄味になるという事は全くありませんでした。実は、エルトンは1970年代初期のリオンを非常に尊敬していたそうで、今回はリオンを立てるというか、リオンの音楽性を軸にしたサウンド作りがなされています。“エリック・クラプトン”が“J.J.ケイ”と組んで作った『ザ・ロード・トゥ・エスコンディード』と非常に似たポジションアルバムですね。リオン作の1曲目「If It Wasn't For Bad」は、正にあの時代を彷彿とさせるスワンプ・ロックで、重厚なサウンドが完璧に曲を引き立てた名トラックです。エルトンのヴォーカルもこういった曲にも意外とマッチしており満足満足。これでいきなり不安な気持ちは鷲づかみにされました。“マーク・リボー”の弾くギターソロは見事!エルトン側が用意した「Hey Ahab」は、リオンを意識した様なスワンプ・ナンバーで、エルトンが唄う横で常に鳴っているリオンの独特なピアノもぴったり!同じくエルトンの「Gone To Shiloh」も、70年代のリオンの作風を真似て作った様な重いマイナー調の曲。2人のデュエットにゾクゾクしていたら、途中に聴いたことのあるハイトーン・ヴォイスが。名前を見るまでもありません…“ニール・ヤング”だ!!これにはぶったまげましたねえ。ちょっと飛び入りしに来たって感じですが、もの凄いインパクトでした。


Hearts Have Turned To Stone」はリオン作の70年代のL.A.スワンプを再現した様な曲で、女コーラスからホーン隊まで正にその当時の雰囲気。“ドイル・ブラムホール”のギターが非常にツボを得たプレイでさすが。エルトンとの共作の「A Dream Come True」もそうですが、リオンはこの企画の意図をしっかりと理解している様で、かつてのスワンプ期が好きなエルトンに「こういう曲が欲しいんだろ?」とほくそ笑んでいる様子が目に浮かびます。エルトンも憧れのリオンが作ったこの曲では非常に嬉しそうに唄っていますね。しかし、これが今のリオンの自然体なのか?と云えば、やはりそうではないだろうし「昔の名前で出ています/過去の焼き直ししか出来なくなった」と、これらの曲を聴いて思う人もいるでしょう。しかし、エルトンの相方であるバーニー・トーピン”とリオンが共作した、この企画ならではの産物「I Should Have Sent Roses」を聴くと、リオンが得意なマイナー調のメロディーが70年代を感じさせながらも、さらに現代的な風味を取り入れる事に成功しており、才能は衰えるどころかソング・ライターとして十分に健在である事が判ります。


Tボーン/エルトン/バーニーの共作「Jimmie Rodger's Dream」はカントリー・ソングで、ヴォーカルはエルトンがメイン。リオン/エルトン/Tボーン/マイティ・ハンニバル共作の「There's No Tomorrow」は、これでもかというほどに分厚いサウンドのバラードで、今作を象徴する1曲でもあります。ペダルスティールソロは“ロバート・ランドルフ”で、いつもの様に暴れまくっています。しかし、ハンニバルはどうして…どうやってここに名を連ねているんだろう?「Monkey Suit」は、エルトンがリオンの作風を真似て作ったスワンプ風ロック。バックで激しくシャウトするリオンが嬉しい。「Hey Ahab」「The Best Part Of The Day」「When Love Is Dying」「My Kind Of Hell」「Mandalay Again」「Never Too Old (To Hold Somebody)」はエルトン側が用意したもの。「Hey Ahab」では思いっきりリオン節なピアノプレイが最高!エルトンの色がくっきりの「The Best〜」「When Love〜」のメロをリオンが唄うなんて、本当に夢の様なひと時。特に「Mandalay Again」なんてもう、楽曲には気品があふれてサウンドはゴージャスで、それだけで文句無しの名曲なのに、唄い出しがリオンと云うこの上ないサービスっぷりで「ホントここまでしてもらっちゃって良いのかしら?」てなもんです。しかし、ラストのリオン作「In The Hands Of Angels」は、何故かエルトン抜きでの演奏。ここまで全部一緒にやってきたのに、何で最後だけひとりでやっちゃうかな〜?最後最後にミソが付いてしまいましたね。


まあ、それはいいとして、全体を覆うサウンドは予想以上にゴージャスで大人のムードが満点でした。もっと、アメリカンルーツ音楽や昔のリオンのスワンプの再現を強く出してくるか、又はお上品なポップな方向で来るか、と思っていましたが、リオンの無骨さとエルトンの英国ロック風味が非常にバランス良く並べられていました。Tボーンはそれぞれの楽曲に見合った、嫌味の無いゴージャスさで上手く演出していて、飽くまでロックアルバムだと云う認識最後まで聴き手に持たせてくれています。バックの演奏では、“ブッカー・T・ジョーンズ”がかなりの曲でオルガンを弾いていますが、非常に控えめな裏方に徹しています。しかし、このアルバムで非常に大きな貢献をしているのが、ドラムの“ジム・ケルトナー”です。曲を書いたりヴォーカルを執ったりはしていませんが、今作ではエルトンとリオンと名前を並べても良い程の仕事をしています。これは飽くまで僕の仮説ですが、近年の彼はドラムの可能性を最大限に引き出すドラミングをしている気がします。ベテランドラマーには、ドラム以外のパーカッションに手を広げて打楽器世界を追及する人が多いですが、ケルトナーは普通ドラム・キット1台で、どれだけの表現が出来るかを徹底的に探っています。そんな彼のプレイが今作のサウンド・メイキングイメージと合致し、エルトンとリオンのピアノ並みの存在感を放っている程になっていると感じます。本当にここ最近ケルトナーの仕事は素晴らしいものばかりですが、今作はその最高峰でしょう。


と、非常に長くなりましたが、良い意味で大きく期待を裏切ってくれたこの奇跡の「ユニオン」。大傑作です!!

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