私の特に変わった友人について

 私が菖蒲雛と出会ったのは2008年4月、中学二年生時だ。多分、新一年生の美術部の借り入部の時が一番最初だったんだと思う。その時はまだを意識しておらず出会った覚えもない。でも会っていることは確かだった。
 私とスゥちゃんの関係はいわゆる先輩と後輩の関係だった。私が先輩、スゥちゃんが後輩。
 私は美術部内でただ一人孤立して黙々と作品を作ったり清掃に精を出していた。同級生の輪の中に入ることもできず、先輩方と話すこともできなかった。携帯ゲームにどっぷりはまっていたためにコミュニケーションが非常に不得意だったからだ。そんなこんなでだらだらと活動していたらいつの間にか二年生になっていた。
 だからこそ、新一年生の部員の中でただ一人教室の端で絵を描いていた彼女をほおっておけなかったのかもしれない。それとも後に文章でも絵でも執着することになる長い黒髪に魅せられたのか。とにかく私はありきたりな言葉で菖蒲雛に声をかけたのだ。
 「絵、上手だね。」
 彼女はひどく驚いた様子で「あっありがとうございます!」とワタワタしながら答えた。
 そのあとしばらく自己紹介やら雑談やらをした。確か、スゥちゃんというあだ名もここで覚えたはずだ。演劇部と美術部を兼部しているということも聞いた。初め、緊張していたスゥちゃんは自分か話題を振ることはなかった。口数も少なく、よく言えばおしとやか。悪く言えば内気と言った感じだ。そのために私は彼女が常に聴き手にまわるタイプだと思い込んだ。しかし、何度か部活で話すうちに、私の言葉に対するスゥちゃんの突っ込みや感想が多くなっていった。
 スゥちゃんは私に対して常に敬語を使っていた。建前の上で、だが。でも、小鳥のさえずりのようなソプラノの声で敬語を使われるのは決して悪い気分ではなかった。むしろ、スゥちゃんの話をもっと聴いていたいという気分になる。
 だから私が彼女と部活の度に家まで一緒に帰るようになるまでそんなに時間はかからなかった。