とらとらでひとりいぐも

TigerBalm's diary   ぼぉっと生きてる第2種兼業主婦の独り言

#54 今年イチ、かも

みかづき

みかづき

 分厚い、長い、”戦後私塾クロニクル”。予備知識なく読み始めたので、この話はどこへ行くんだ…?と最初は先の長さに戸惑ったけど、だんだんと大河ドラマ(どっちかというと朝ドラかな)見ているように引き込まれていきました。千明、その娘たちみんな性格がキツくてちょっと引くし、吾郎さんもモテるキャラらしいけどあんまり男の魅力はわからん…のに、全体としてとても惹かれるお話でした。

 繰り返される教育改革、文部省と塾との闘い、私が生まれる少し前から現代に続くお話で、フィクションだけど四谷大塚とかナガセとか実名も出てきたりして、時代の流れが伝わってくる。ほんと
(以下引用)「ごく一部の子どもたちが人目を忍んで通塾していた四十六年前と、塾へ通わない子どもの方が少数派となった今と、その教育環境の劇的変化」(ここまで)
があったんだ〜、と伝わってくる。

 
 読んでて、自分が小6で親に急に「受験するか?」と言われて、塾行ったのを思い出した。結構な詰め込み、今ではありえないビンタとか黒板消しで叩くとかアリだったw 成績は毎度貼り出される(模造紙にマジックで手書きである)。周りはほとんど小4.小5から通っててそれに粛々と従っており、「なんじゃここ('o')」…と、異次元に放り込まれたような気がした。けど、授業は面白かった。脱線も多かった(そのせいで昼休憩が15分くらいだったり、夜も2時間延長とか平気、たぶん今ならクレーム)、ひたすら反体制的思想を語る先生とか、命日にジョンレノン愛のあまりお通夜みたいになっちゃう先生とか。。。まぁうちらが素直でウブだったんだろうが、皆すごくオトナに見えて、話上手いし、怖い先生ほど面白いし可愛がってくれたので嫌ではなかった。その後大学受験の直前まで殆ど塾に足が向かなかったのは、あれが楽しすぎたのか、それとももう塾はおなかいっぱいめんどくさいと思ったのか、自分でもようわからん。もう少し真面目に勉強すればよかったなぁ(無理)。
 その当時、塾通いしてる子はクラスに数人、もいなかったような。。中学受験するか*1、学校についていけなくて補習塾かのどちらかで、今みたいに、公立のいい高校行く、ため中学で内申取る、ために小学生から塾通い、というのはなかったような。私が通ってた塾は、経営的には紆余曲折を経たようだが今も大手。同じ頃小さな個人塾みたいだったところも、あれよあれよとでかくなって、いつの間にか「今年も○○高校に何人合格!地域一番!」みたいなことになっている。銀行みたいにどんどん大手に集約され、小学生向けとか大学受験とかそういう垣根もなくなって、○○グループ、みたいになってるね。
 学校で突然「ゆとりの時間」みたいなのが出来たのも記憶にあるよ。なんか色々懐かしいけど、教育ってほんと時代時代で違うのねと改めて。


 延々と教育論が続くようで、家族の物語でもあり、特に後半はあたたかい部分も多くほろっとさせられます。

 「自分の頭で考えることの大切さ」が描かれるけど、今子供を塾にやって思うのは、その逆にどんどん自分で考えられない子になってる危機感。高い授業料で(ライブですらないw)与えられる勉強ばかりしてわざわざバカを作ってるわと思いつつ、結局受験期になれば塾頼みにならざるを得ないのが哀しい(T∇T) ほんまに賢い子は塾要らんのにぃ。林センセが「お金をかけるのは受験期ではなく10歳まで」とTVで言ってたそうだけど、そうかもー、もう遅い(T∇T)

 まぁ皆が塾に行くようになって、自分の頭で考える学力どうこうより、わかりやすく結果が求められる時代。虎子の中受のときに塾の先生が「今の子どもは幼く理解力が乏しいので、公式の理屈から教えてたら間に合わなくなってしまった」というような話をしてました。ええ〜そこを教えてくれるのが塾じゃないの!?と思ったけど、いまいち出来の良くない子にそれをやっても間に合わないので、何年か前からとにかく解き方、パターンを教えるように変えたんだとか…がっかりだよ。それもこれもおたくら子どもの出来が悪いからと言われてしまえばそうだけど。。。やはり本を読まなくなり、便利なものがあふれ、国語力想像力が落ちてるせいでしょうか。だーかーら10歳までに…って、もう遅いねや(さんま風)。賢いビルゲイツさんは子どもにipad与えない訳です。
 
  「みかづき」ってタイトルの種明かし?も良かった(読みながら疑問だったけど、その分心に沁みます)。働き続け、駆け続けた千明さん吾郎さんにお疲れ様。血の繋がりだけでない、大島家の魂の引き継がれていく様がかっこよかった。

森絵都さん、随分前に風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)を読んだきりでしたが、他の作品も読んでみたくなりました。



 本の中でとりたてて強調されてるわけじゃない箇所だけど、ここがとても好き。

 教育は、子どもをコントロールするためにあるんじゃない。
 不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ――。

 ほんとそう思う。教育って身を守るためにある筈なのに、自分を害したり、他人を害したり、どうしてって思うことが多いから。
 


 

*1:中学受験と言っても、週イチ日曜だけだったので、今と比べりゃ軽いよね。まだ週休2日じゃなかったしね。

#52.53 10分でさーっと読める

時間の隙間埋め。

池上さんの番組を本に起こしたもの(たぶん)。
みかづきにも出てきた子供の貧困問題とか(かといって私立高校無償化って、それはどうかなぁとも思うんだけど)。
世界上位8人と下位36億人の富が釣り合ってしまうというニュースが出たときは驚いたもんね…。タイトルうまいけど内容はそうでもない。それより、高卒女子1期生としてどう働かれていたのかってことの方が面白そう。公務員は(女性にとって)働きやすいとはいえ、転勤が多いのは大変でしょうね。。。*1

 
 

*1:たまたまだけど、上の本にもこの本のあとがきにもパナマ文書のことがちらり。そしてつい最近海外女性ジャーナリストの暗殺事件、車に爆弾って。。。正男の暗殺のときもそうだったけど、映画飛び越えて現実が怖い