1982 TSR9061 S4 ツォーカントの“失われた大洞窟”The Lost Caverns of Tsojcanth


導入

 約1世紀ほど前、大魔道師イグウィルヴは悪の軍勢を繰り出し、征服地に居を構えた。 彼女はペレンランドに侵攻すると10年で辺境地域を攻略し、飽くことを知らない欲望のまま略奪を繰り返して巨万の富を築いた。伝説によると、大魔道師が強力な魔力を得たのはツォーカントの“失われた大洞窟”を発見したためで、この上ない力を得るための秘中の秘を手中にしたとされる。イグウィルヴがこの“大洞窟”から彼女の領国を支配したことは確かだ。そこで彼女はさらに魔力を増幅しようと、秘術実験や儀式に傾倒した。


 これらの実験が彼女の失脚をもたらした。彼女が捕らえ使役していたデーモンのグラツズトが事故により解放されてしまったのだ。恐るべき戦いが始まった。最終的にデーモンはアビスに撤退したが、深手を受けたイグウィルヴからは勢力も権勢も永遠に失われた。彼女の勢力は失われ、イグウィルヴの領国は引き裂かれた。彼女の従者や奴隷は財宝を略奪したが、敵軍の包囲を受けて四散した。しかしながら、大魔道師は最後の力を使い、“大洞窟”の隠し場所に彼女の財宝を移した。伝説によると、この財宝には偉大な力の込められた大冊が数冊、そしてダーウーズ・ワンドラス・ランソーンと呼ばれる有名なランプが含まれていると言う。


 誰も他に何が隠されているかを知らない。なぜならまだ誰もイグウィルヴの秘蔵物を発見していないからだ。そしてイグウィルヴの生死を知る者は誰ひとりとしていなかった。最近まで、ツォーカントの“失われた大洞窟”に残る彼女の財宝は、幼子を楽しませるための寝物語と思われてきた。数年の間に、壁掛け、敷物、彫像、希少な美術品が取り戻され、また貴金属の収納箱、貨幣の詰まった袋、宝石や宝飾品でいっぱいの宝箱等も取り戻された。彼女の財宝はすべて略奪され、もはや一片の魔法も財宝も残っていないと思われた。しかしながら最近の調査によると、魔法のランソーンは確かに存在し、イグウィルヴはそれを所有していたという。イグウィルヴの棲処はヴェルヴァーダィヴァ河の峡谷沿い、シュヴァルツェンブルインとハイフォークの間の山中に位置することははっきりしていた。“大洞窟”の場所を捜索するため、アイウーズ領、ペレンランド、ケトはヤティル山脈に遠征隊を繰り出したが、生還した者は少なく、実りはなかった。