「ストリートファイターII」春麗(チュン・リー、Chun-Li)

 萌えの代表的キャラクタを取り上げるこのシリーズ。今回は春麗

 なお、今まで取り上げたキャラのラインナップは萌えキャラ一覧を見てほしい。

ストリートファイターII1991(以後ストII)は、対戦格闘ゲームという一大ジャンルを築いた名作中の名作であることは、説明することも恥ずかしいくらいだが、一応基本的な解説をする。
 登場は、スーパーファミコンが登場して家庭用ゲーム機の性能が上がり、またRPGなどの家庭用ならではのゲームの人気もあり、ゲームセンターの斜陽化が進行していた時期に当たる。
 ストIIは「見知らぬ人との対戦」という家庭用では得られないフィーチャーを搭載し、対戦格闘ゲームはゲームセンター復活の立役者となりった。人気があり過ぎた故に以後は同ジャンルに属するゲームが乱造され、ゲーセン=対戦格闘ゲームというほどの状態となり、内容も複雑化しマニア向けとなった。ひいてはゲーセンの衰退を招いたという恐ろしいほどの影響力のあった化け物タイトルである。
 6ボタンのバリエーション豊かな通常技。コマンド入力必殺技。キャンセルをからめた連続技。個性豊かなプレイヤーキャラクタ全てが主人公扱い。などなどなど、革命的な要素を挙げるだけでも大変な紙幅を要する。
 そんな大ヒットゲームの「主人公の一人」である格闘中国娘、春麗が今回取り上げるキャラである。

外見要素

 春麗の魅力の80%は、チャイナ服をベースにしたコスチュームと言っても過言ではない。
 キャラデザインの安田朗(あきまん)に神が降りたとしか思えない。
 後に安田朗は、ターンエーガンダムのキャラデザインなども行い、その実力を世間に遺憾なく知らしめることになるのではあるが、それにしてもである。
 春麗のコスチュームは神がかっている。

 以下細部を取り出して解説するが、その部分部分を取り出しても十分に春麗をイメージさせる特徴となっていることに注目してもらいたい。

髪型

 お団子頭(シニヨン)は日本でも人気の雑技団など見ることができ、旗袍(チーパオ)(チャイナ服)とともに中国娘を示す記号となっている。
 お団子は子供向け、チャイナ服は大人向けのもので、その両方は正に「その中間」という萌えのど真ん中の組み合わせといえる。
 春麗の場合は、これを布で包んでいるのが大きな特徴。ドアノブカバーを見るたびに彼女を思い出してしまうほど春麗を象徴するものとなっている。

 髪を二カ所でひっつめているので、おでこや、うなじ、真ん中分けの頭頂部などの人気のある要素も発生する。
 前髪が片方だけ垂らされているので、角度によってかなり異なる印象を与える。

提灯袖(パフスリーブ)

 肩を覆う袖は、お姫様やメイドなどでも定番のパフスリーブである。非常に可愛い。
 チャイナ服といえばノースリーブが多く人気もあるのに、あえて袖をつけたのが上手い。
 ポーズを描く時に非常に難しい肩関節を、テキトーにごまかすことができる便利デザインでもある。
 また、花びら状の袖口が黄色の線で縁取られていて、フリルっぽい印象を与えている。

コルセット

 腰の帯はコルセットに近いデザインで、アンナミラーズの制服と同様に胸を強調する効果がある。
 これは、その後の美少女キャラの制服・スーツデザインに大きな影響を与えている。
 ちなみに、黄色のラインも胸を意識させるものだ。

腕輪

 トゲ付き腕輪もまた春麗の象徴となるアイテムであり、「ポケットファイター」での勝利アイコンともなっているし、「ヴァンパイアハンターレイレイの暗器のひとつとしても登場している。
 これは「己の拳の軽さ」に苦悩したであろう過去とそれを克服した現在を想像させる。つまりこの腕輪は春麗の象徴であると同時に「カッコいい女性の象徴」でもあるのだ。
 デザイン的には、衣装デザインとしても柔らかいものと硬いものの対比として面白く、綾波レイのプラグスーツの手首にも見られるグリッド効果もある定番のデザインとも言えるのだが、それ以上にゲーム的に「ここから先が当たると痛いよ」というサインの役割もしている。
 カプコン格闘ゲームのキャラは愚直と言っても良い位に、拳と足に区切りとなる意匠が盛り込まれている。単なる飾りではなく「ゲームを面白くするためのビジュアル」としても極めて優れている。
 あるいは、「奇麗な薔薇にはトゲがある」のそのまんま表現。バルログも嫉妬するわけです。

参考:グリッド効果について - 鳶嶋工房ゲームザッキ

前垂れ

 チャイナ服は、タイトスカートにスリットが入っているという作りだが、春麗の衣装はスリットの範疇を越え、褌のような前垂れ布と、燕尾服状の後ろ布に完全に別れている。
 前垂れは、魔法使いやエルフなどファンタジーのキャラクタに多く見られる意匠だが、それを中国娘に取り込むという発想が凄い。
 時期的に考えると「科学戦隊ダイナマン1983王女キメラなど特撮ヒーローものの女幹部、「ふしぎの海のナディア1990ナディアが産業革命期にこの腰布を纏っていて、ファンタジーから現代へのクッションとなったのではないかと思う。
 後に述べるが、このひらひらした布の魅力というのは、非常に強いものがある。

ひらひら

 春麗のコスチュームには、お団子のリボン、前髪、チャイナ服の前(後)垂れといった、ひらひらするものが幾つも盛り込まれている。
 これらのものが広がったり流れたりすることで、キャラの動きがはっきりして分かりやすくなり、ダイナミックに見え、その素早さが強調される。
 ひらひらして可愛いからだけのビジュアルではなく、アニメーションとしての見栄え、ゲームのルールと直結する記号としてのデザインがなされているわけだ。

 もちろん、他のメーカーでも不知火舞のシッポ(みたいなやつ)とか、工夫が見られるが、カプコンの場合はかなり徹底していて、リュウのハチマキのようにひらひらしたものか、むき出しの筋肉によって、動きを分かりやすくする工夫が随所に見られる。

美脚

 スピードスケート選手並みの極太の太ももを持っていて腰まわりも大きく、女性的シルエットを強調する。
 そこに茶系のストッキングをはいているとか、ちょっと凄いセンスだ。
 確か最初は生足だったが、あまりにエロいのでストッキングをはかせたと聞く。…すいません余計エロいです。

 女性格闘家が男性と渡り合うための回答として、「徹底的に足を強化する」という手段に出たのがこの太ももに現れている。
 そのなりふり構わぬ体育会系女子の魅力が、太ももに凝縮されているといえよう。可愛い服やプロボーションに憧れていても、それは常に「二の次」なのである。

 足技を中心に使うため、ハイレグのレオタード(と思われる)の股間が全開になることが多く、全国、いやさ全世界の青少年を刺激した。
 しかしこれは「キャッツ♥アイ」のようなレオタードと異なり、ハイレグに前垂れを加えることでチラリズムを創出していることが重要だ。本来隠れているものが見えるから良いのだ。キャミイではモロすぎる。
 家庭用に移植されたストIIで必死にポーズをかけ、エロいポーズを探すという「新たな遊び」を作り出す威力があった、といえばご納得いただけるか…呆れられるか。

 春麗は開脚などは余裕でこなすほど体が柔らかく、少々無理なポーズもとれるため、イラストでは顔胸股間を全て一画面に奇麗に納めた所謂「コテポーズ」で描かれることが多い。
 内股で楚々と立つという従来の美少女キャラのポーズに、大きく発想の転換をもたらした超重要キャラといえる。

 ただし、ダメージを受けて倒れた時だけは、なんか女の子っぽいポーズをとる、と小林真文も4コマ漫画で指摘しているが、凛々しい闘士と時折見せる女の子っぽさのギャップが、春麗の魅力であることは言うをまたない。

リングシューズ

 カンフー美女といえば中国靴というイメージしかなく、女子プロレスラーのようなリングシューズを履いた春麗に対しては「その発想はなかった」としか言えないぐらいの奇抜な選択だが、トータルで見るとこの上なくバランスがいい。
 ジャングルプーツ的な底の厚い靴は、踏まれるとかなり痛そうで、後述の勝利台詞と相まって、ハイヒール以上の女王様アイテムとして春麗の象徴アイテムのひとつとなっている。
 勿論、腕輪と同様に「危険部位」を示すものともなっている。

 なお「ストリートファイターZERO」シリーズでは、ジャージのようにぴったりとした、というか殆どボディペインティングのようなズボンを着いて、これはこれで悪くないのだが、上記のコスチュームほどのインパクトも人気もない。

内面属性

 格闘ゲームのキャラは、確固とした性格や物語を持たず、その容姿や言動から類推するしかない。
 これは「自分が好きなチュンリーが本当のチュンリー」という妄想を許容する。

格闘家

 ラムが空を飛ぶことで、オタクの絵描きに「様々な角度から描く」というスキルの底上げを行ったキャラならば、春麗は「様々なポーズで描く」というスキルの向上を促したキャラといえる。
 格闘家である春麗を突っ立ったままで描くのは、著しくその魅力を削ぐ行為と言え、春麗を魅力的に描こうとするなら、難しいポーズにチャレンジせざるを得ない。
 また、格闘家であるので筋肉をしっかり描かないとらしくない。これも絵描きの実力の底上げに貢献した。
 勿論、筋肉娘好きにもアピールしたろうが、肩や腹筋などの気持ち悪いと思われかねない部分は完全に隠れていたので、普通の美少女キャラとして受け入れられた面が強いかと思われる。

 自らボクシングをすることを諦め弟にその意思を託した「リングにかけろ」高嶺菊の時代から、自身が戦いの場へ赴く時代への転換となった女性であり、フェミニズム文脈で語られることも多い。
 その後、男性とも闘う女性はフィクションの中では当たり前の存在となり「YAWARA!」や「史上最強の弟子 ケンイチ」「格闘美神 武龍」「一騎当千」「すもももももも」などの中に、その姿を見ることができる。

中国娘

 中国娘については、べつに回を設けて語っても良いくらいの要素だが、ここで軽く主要キャラをまとめておく。

 アグネス・チャン(香港出身)やリンリン・ランラン(香港出身の白人双子)を筆頭に、ハロプロのジュンジュン、リンリンまで続くアイドルの1ジャンルとなっている。
幽幻道士(キョンシー)」テンテン(Shadow Liu)なども、「ハリー・ポッターハーマイオニーのように人気があった。
 TVドラマ「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」「魔法少女ちゅうかないぱねま!」も忘れてはならない中国娘だろう。
 人気女性アイドル→中国娘の流れから登場したのが「マクロスリン・ミンメイ。「マクロスFランカ・リーは中国人ではないが、中国娘イメージを強く持つ。

 主役ではなくても、「Dr.スランプ」摘鶴燐(超能力少女)、摘詰角田野廷遊豪(格闘奥様)、「うる星やつら」しゅがあ(スケバン3人組)→「らんま1/2」シャンプー、「ジャイアント ロボ THE ANIMATION」銀麗と、人気は常に高い。

 格闘ゲームバーチャファイターパイ・チェン、「ヴァンパイアハンターレイレイ、「鉄拳」凌暁雨(リン・シャオユウ)、「真・三国無双孫尚香貂蝉、「スターグラディエイター」ジューン、そして「サクラ大戦」李紅蘭、さらにはパチスロ「龍娘」ムイムイ、「燃えよ!功夫淑女」チーパオとゲームの中でも人気がある。
 特に麻雀では、中国娘でなくてもチャイナ服が定番だ。

 直接の祖先は同じカプコンストライダー飛竜」に登場する中ボス、東風(トンプー)三姉妹であり、典型的中国娘の容姿をしている。

 外国人の異邦人性と、同じ東洋人である親しみやすさ、日本文化の起源であるという尊敬の念と、経済発展の遅れた田舎というイメージ、そのアンビバレンツな要素が渾然一体となったのが、中国娘(中華娘)の魅力だ。

高飛車

「ふっ すべての おとこたちは わたしの まえに ひざまづくのよ」の勝利台詞が決定的にしたのが、高飛車女王様気質の彼女の性格である。
 彼女が足技を中心とした格闘スタイルを取っているのも、ファンのMっ気を刺激する。あるいはプレイヤーキャラクタとして使ってSっ気を満足させる。

意外と少女趣味

「すきなもの:クレープ、フルーツるい」…かわいいじゃん。グレープフルーツも好きだと思うが、グレープフルーツだけが好きなわけじゃないので注意。
 これはもうエドモンド本田「すきなもの:ティラミス」と双璧をなす可愛さ。

 ブルース・リーのファンという、ちょっとミーハーなところもある。

 厳しい格闘家であるのも春麗の一面であるが、勝利ポーズでは「ゴメンネ」と片手で謝る姿や、「きゃはははは」とはしゃぐ姿も見られ、エンディングでは「普通の女の子」への憧れも持っていることが明らかになる。
 ちなみに、この「普通の女の子」というフレーズは、キャンディーズの引退の際の台詞の引用であリ、「乙女チックど真ん中」のフレーズでもある。

関係属性

職業:婦警

 まったくそうは見えないが、春麗はインターポールの麻薬捜査官、つまり刑事である。
 辛うじて青い服が警察イメージを持っていて、これは「時にはパンチ!時にはキック!タイホしちゃうぞ!」でお馴染み「出動!ミニスカポリス」にイメージが繋がっている。
 ちなみに上記のセリフは「逮捕しちゃうぞ」から持ってきていることは容易に想像がつく。
 なお、春麗は国際射撃大会に入賞するほどの腕の持ち主でもある。

 シャドルーは父の敵であり、捜査官として追っている事件の裏に存在する組織でもある。このように最終ボスであるベガとの因縁も深く、「ストリートファイターII」ではリュウなんかよりずっと主人公らしい存在だ。
 なんせ、「きらいなもの : ベガ」である。
 ストーリー的には春麗とガイルがいれば、他はオマケと言っても過言ではない。
 ただし、どー考えても父の敵とか仕事とかと関係なく、闘うことに魅入られたストリートファイターとしての側面の方が強い人物でもある。

 中国娘とともに婦警という要素も、別回で語る価値のあるものだ。これに加え格闘家と言う強い個性を持っている。人気要素が多く含まれるキャラはどっち付かずになってしまうこともままあるが、春麗の場合「中国娘+婦警+格闘家」というグリッドを、完全に掌握したと言っても過言ではない。もう他のキャラが入り込もうと思っても春麗の真似にしかならないほどの強固な個性となった。
 このうちの二つ「中国娘+格闘家」「婦警+格闘家」「中国娘+婦警」であったとしても春麗を意識せざるを得ないほどの存在感がある。

 このように、格闘家(スポーツウーマン)で警察官、そのうえ中国(田舎)娘イメージも加えた「健全中の健全」キャラであるが故に、エロ妄想も激しく刺激され、エロ同人誌はラム以上に大量に作られた。

その他

プレイヤーキャラク

 プレイヤーキャラクタであることは、春麗の魅力の80%は占める。
 …は、計算が合わない?春麗の魅力が100%に収まるわけがないだろう!、というのがその回答だといえば納得してもらえるかと思う。

 闘う中国格闘女性としては、「イー・アル・カンフー」スターやファン、前述の東風などが既に存在していた。
 プレイヤーキャラクタとしても、SNKの「サイコソルジャー」や「アテナ」、ジャレコシティコネクション」「モモコ120%」「プラスアルファ」、ナムコワンダーモモ」「ワルキューレの冒険」「バーニングフォース」、任天堂メトロイド」など、女性キャラは存在していた。
 では春麗は新しくなかったのかと言えば、それは否、断じて否である。
 まず当時としては圧倒的に大きくパターン数が多かった。つまり、生きているように動くキャラを操作できたわけだ。これは感情移入してしまう。
 また、他の男性キャラとまったく同じ立場で闘う(対戦する)ということも新しかった。そして動きが速く、必殺技がため技と連打で、(空中)投げも強く、対空対地の通常技も使い勝手も良く、非常に扱いやすいキャラだった。有り体に言って強かった。
 その後のシリーズでも一貫して上位の性能を誇り、「ストリートファイターIII 3rd」では「最強」の呼び名も高い。

 なお、男性と格闘というシチュエーションは簡単にエロと結びつく。ザンギエフに投げられる春麗エドモンド本田に締め上げられる春麗に興奮した諸兄も多いだろう。
 これほど容赦なくボコボコにされるヒロインがかつてあったろうか、いや無い!
 プレイヤーキャラクタであるが故に、強いと同時に弱いキャラでもあるということも忘れてはいけない。

女性人気とコスプレ

 萌え的に極めて重要なこととして、女性人気が非常に高いことが挙げられる。
 一見、萌えキャラに女性人気など関係ないように思われるかもしれない。しかし「女性人気が高い→コスプレ率が高い」ということを見逃してはならない。
 実際、春麗はコスプレの定番中の定番である。誰が着ても春麗と認識される特徴的な衣装。露出がそんなに高くないので恥ずかしくない。そしてセクシーさと可愛さの絶妙なブレンド。東洋人なので日本人がコスプレしても違和感がない。男性人気も高く、お手軽に女王様気分。
 何かコスプレをしようという時に、コスプレしない理由を探すのが困難な程で、理由があったとして「人気がありすぎるから(類似:飽きた)」しか浮かばないほどだ。

 CMで春麗を演じた水野美紀をはじめとして、比較的メジャーな女優・アイドルがコスチュームを着ることが少なくなく、これもコスプレに対する敷居を下げているのではないかと思われる。

安定しないデザイン

 初代「ストリートファイターII」のキャラクタ選択時などのアップの春麗は、正直言えば不細工と言ってもいい。
 それがシリーズを重ねる毎に美しくなり、「スーパーストリートファイターII」でほぼ完成する。
 また、ポスターなどの販促ものに描かれる春麗はかなり自由にアレンジされ、同じものはひとつとしてないというほどのバラエティに富んでいる。

 これらのことが、二次創作の敷居を低くしている。誰が描いてもそのキャラに見える特徴的なコスチューム、そしてオフィシャルの安定しない顔の作画は、萌えキャラに必要な2大特徴であり、春麗は十二分にその特徴を満たしている。

 なお、カプコンは他社に先駆けてグラフィックデザインチームを社内に持ったこともあり、オフィシャルの絵のクオリティは非常に高く、プロのイラストレータや漫画家も含めて、筋肉・骨格の大切さを再認識させ、大きな影響を与えた。
 カプコンブランドの画集の人気は高い。

アンソロ本

 格闘ゲームは直接的にストーリーが語られることがないため、ストリートファイターIIのファンは、よりキャラの魅力を語ってくれる媒体を欲していた(ストーリーそのものは、あまり求められていない)
 同人誌で二次創作を行うということは、このころ既にコミケの中心となっていて、当然ストIIの二次創作も作られるようになった。
 これに加えてストIIを筆頭として、4コマを中心としたアンソロジー本と言われる商業作家による二次創作が盛んに作られた。当時、ドラクエストIIの4コマは、ゲームパロディの二大巨頭となっている。
 そして商業アンソロジー本が同人誌のお手本ともなり、人気のある同人誌を商業出版として発売するようなことも行われるという好循環を産んだ。

 ここで著作権者であるカプコンも、この同人活動に対して苦言を呈するようなこともなかった。少なくとも私の記憶にはない。これは直接出版を行わない、つまり利害関係が発生しづらいゲーム会社のキャラであるからできたこととも言える。
 エニックス(やコーエー)はパロディを禁止するより自社で積極的にパロディ本を作ることで収益を得る、という逆転の発想で大ヒットを産んだ。
 ちなみに、「うる星やつら」ラムの著作権者である小学館高橋留美子は、何度か「不快である」との意思を発表している。高橋留美子の発言は、主にエロ同人作品についてであり、それはそうだと納得できる意見ではある。

 当時カプコンを含む多くのゲーム会社は、ゲーム画面の直接使用には比較的厳しく対応していたが、現在のバンダイナムコゲームスIDOL M@STER」のMADムービーや、カプコンモンスターハンター」のプレイ動画などは、黙認あるいはもっと進んで「暗に推奨」されている。
 また、「初音ミク」がキャラクタの二次創作に関しては、かなり寛容な態度を見せている。
 これらのことは、ソフトウェア著作権の中心はプログラムとなり、音楽や画像は二次創作用の素材としての位置となる流れを示している。
 この流れに連なるメルクマールとして、春麗というキャラの重要性は極めて高い。
 ちなみに任天堂の場合は、著作権的な問題というより、子供向け作品でエロが作られることによるイメージ低下の懸念、から動いている感が強い。

まとめ

 新作「ストリートファイターIV」に登場し新コスチュームを披露。さらに、パチスロ機「春麗にまかせチャイナ」、映画「Street Fighter: The Legend of Chun-Li(仮称)」も発表され、根強い人気を見せる春麗
 正確な年齢は分からないが、ZEROではハイティーン、IIで20ちょい、IVで20後半、IIIで三十路と考えられる。
 それより上となるとエルフやサキュバスのような長命の種族か、コールドスリープなどで一定期間老化していない人物となってしまう。
 萌え界の由美かおるとして、今後も頑張ってほしいところだ。