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鳶嶋工房ゲームザッキ

2013-11-18

[]「装甲騎兵ボトムズ」ATM-09-STスコープドッグ

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 「装甲騎兵ボトムズ」1983は「機動戦士ガンダム」が開拓したリアルロボット路線を受けて制作された、タカラをスポンサーとする「太陽の牙ダグラム」に続くリアル戦場もののTVアニメシリーズである。

 スタッフも監督の高橋良輔、メカデザインの大河原邦男など、ダグラムと同様な布陣。

 アストラギウス銀河ではギルガメスとバララントの百年におよぶ戦争が終結しようとしていた。友軍の基地を襲撃するという不可解な作戦行動時、キリコはカプセルに入った美女と会う。

 恒星間戦争が終わった世界でキリコはATを駆り、パーフェクトソルジャーの秘密やギルガメス軍とバララント軍、そして「結社」に翻弄されながら、アストラギウス銀河全体に関わる大きな謎へと関わっていく。

 舞台やその時々のキリコの目的は大きく変わり、あらすじにするのが難しい話である。

ボトムズとは

 良くある勘違いとして、ボトムズの主役メカの名前が「ボトムズ」だというものがある。

 ボトムズとは「最低の奴ら」という意味で、ボトムズ世界のロボット「装甲騎兵(アーマードトルーパー以後AT)」に乗るパイロット達を指す。

 あるいはATの正式名称Vertical One-man Tank for Offence & Maneuver(V.O.T.O.M)の複数形である。

 一般に目にするボトムズの主役メカの名前はスコープドッグだ。主人公のキリコが一番「慣れている」ので良く乗るという以外の意味はない。

 ちなみに、AT操縦者をボトムズ乗りと言ったり、ボトムズという単語は単数形として使われることも多い。

 アーマードトルーパーという言葉は、本編ではほとんど使われない。


イメージできる大きさの乗用ロボット

 ATの全高4メートル前後というその大きさは、内部機構や動作含めて完全にイメージできる大きさといえる。

 コックピットに乗り込むことを考えても、つま先を足場に、膝の足掛けに乗り、腹部の手すりを掴みつつ腰のアーマーの足掛けを使って、コックピットに入るという一連の動作を想像できる。

 装備も、おおよそ人間の二倍の大きさなので、容易に想像できる。

 もう少し端的な言い方をすると「作れそうだ」ということだ。

参考:根性試しに作ってる。榊原機械 ランドウォーカー

 全高10mとなるともう歩くところがうまくイメージできないし、どうやって作っていいかも良く判らない。

 4m前後となると既に現実に形が作れ、動かすこともできるレベルなのだ。18mのガンダムとは、リアリティの度合いが段違いと言える。ギリギリ6m弱のパトレイバーが、理解可能な巨大さの上限かと思う。

 日本は大仏という巨大な人物像がわりとあちこちにあるヘンな国だが、それらは動くわけではないので建造物という範疇でしかイメージできない。

 超時空要塞マクロスバルキリーは航空機にリアリティを求めたのだが、そもそも航空機は一般人が想像できる範疇にはない。

 ATは誰もが目にする車両のリアリティを求めた、と言えるだろう。


ミッションディスク

 非常にメカニカルな印象の強いスコープドッグだが、コンピュータも搭載されており、音声認識による操作や、ミッションディスクと呼ばれるデータによる基本動作のカスタマイズが可能となっている。

 劇中でも、強敵であるパーフェクトソルジャーに対して、ミッションディスクをカスタマイズする描写(15話)が見られる。

 またミッションディスクのプログラムによって、自動操縦も可能である(11話)


量産の名機スコープドッグ

 スコープドッグはゴルゴ13の愛銃がM16であるのと同様に、そのキャラを象徴するメカではあっても他のキャラも使う大量生産品の一つでしかない。

 ロボットアニメ的には、ザクを主役メカにしたというと分かりやすいかもしれない。デザイン的にもカーキグリーンの機体色や肩アーマーにザクからの流れを見ることができる。

 そして主役であるキリコは敵のATを奪って戦うことも多く、登場するATの大半の機種には乗っているかと思われる。

 逆にATに乗らない状態も多く、ほぼATが動かない回もかなりある。

 ATの装甲は人間の持つ拳銃やマシンガンでやられることはまずない(ということはやられることもある)が、ライフルだとちょっと危なく、携行ロケット弾だとかなり確実に破壊される。

 戦車を下回る装甲の薄さが特徴的で、装甲と言うより砂利やどろよけに近く、丸っきりスーパーロボット感はない。

 実際本編終了後に制作された外伝機甲猟兵メロウリンクでは、ATに対してライフルで対抗する兵士(機甲猟兵)が主人公である。

 要するに生身の人間でも対抗できなくもない、というレベルの兵器なのだ。

 ATは、駆動装置であるマッスルシリンダー内にポリマーリンゲル(PR)液が充填されている。

 PR液は駆動のための化学物質兼燃料および潤滑油という、オイルと燃料が兼ねられている2ストの混合燃料みたいな液体。

 そのためATは全身が燃料タンクと言え、ガソリン袋が歩いているようなものだ。

 それ故ATは「(自働火葬装置付き)鉄の棺桶」とも呼ばれ、撃たれると派手に爆発してしまう。

 長期戦闘用にPR液を供給するタンクをバックパックにする装備もあるが、これなどガソリン背中に背負って戦っているようなもんなので、超危ない。

 一度PR液が流出すると、転けた時に床に接触して火花が散った、みたいなちょっとした事でも爆発が起きて、アニメの絵的に非常に派手だ。

 酸素ボンベなどの生命維持装置はATではなく搭乗者のスーツにある。

 本編の描写を見る限り多くのATは自動車程度の気密性で、気密性が必要な場合は防護服や宇宙服を着る必要があると考えて良さそうだ。

 他にも、映像は計器類も含めコックピット内壁ではなくパイロットのゴーグルに投影されるなど、AT本体の機構は極力簡略化されている。

 このゴーグルのシステムは、今で言う拡張現実(AR)の手法であり、そのアイディアの先進性には唸らされる。

 これは作画的にも、コックピット内を描写する際に、外の景色を描く必要がないという省力化の効果がある。

 というかそれが主な設定理由かと思うが、ローラーダッシュと同様に、結果的には世界にリアリティを与えている。


ごちゃ混ぜの世界観

 世界観としてはマッドマックス2ブレードランナー地獄の黙示録ランボーアラビアのロレンススターウォーズエイリアン2001年宇宙の旅デューン 砂の惑星とにかく流行したSFと戦場映画をぶち込むだけぶち込んだというもの。

 しかし下手は真似て上手は盗むのだ、そう、ボトムズではそれらの要素は借り物ではなく、きちんとその世界のものとして成立させている。

 映画のアイディアにロボットを加えたらどうなるのか、という発想で作られたんじゃないかと思う。

 そのため、ボトムズではロボットがどのように運用されるかのバリエーションを大量に作ることとなった。

 その中でも特に出色なのが剣闘士のロボット版、バトリング(4話)の発明だ。

 バトリングに登場する個人(あるいはチーム)で所有するロボットは様々なカスタマイズが加えられ、プラモデルの改造やTV版以降の作品に豊かなバリエーションを生み出した。


デュアルモデル第二弾

 タカラ発行のデュアルマガジンでダグラムのエンディングをジオラマで再現するという企画があった。

 ダグラムのエンディングは朽ち果ててしゃがみ込んだダグラムという、非常に印象的な絵が使われていた。

 さて、そのとき問題となったのは、腰の装甲プレートだ。ダグラムの腰はガンダムを踏襲した箱形のもので可動範囲は狭く、とてもではないがエンディングのようにしゃがむことなどできなかった。

 そこで取られたのは、ある一定角度からのみ成立するそのポーズ専用の腰を作るということだ。不可能だと思われたダグラムのエンディングのジオラマ化、この企画は大きな反響を呼ぶことになる。

 ここで確認されたのは、受け手からは自由にポーズをとれるロボットが要求されていること、作り手がそれを供給できていないことだ。

 タカラはすぐにこの要求に応えることにした、すなわち自由なポーズが取れるデザインのロボットおよび、その玩具化だ。

 ボトムズではその答えとして腰の周りの装甲を分割し可動するようにしたのだ。単純に可動する部分が増えれば、玩具は作りにくくなるし壊れやすくもなる。

 そして当然開発と(アニメ作画も含め)制作のコストがかさむ。この可動装甲は、デザイナーよりもスポンサーであるタカラの大英断であったと言える。

 そして、ボトムズのエンディングでもしゃがんだロボットという絵は踏襲されており、もちろん腰の可動には矛盾がない!!

 地面に近くコックピットを持ってくる場合、通常スコープドッグは体育座りではなく逆方向の降着ポーズを取るので、あのエンディングはもう「ダグラムよりすごいでしょ!」と言いたいがための絵であると言える。

 分割された腰の装甲板は、瞬く間にアニメのロボットデザインのスタンダードとなった。

 ボトムズはタカラのデュアルモデルシリーズ第二弾としての役割を持っていた番組でもある。

 デュアルモデルとは、装甲を取り外しフレーム状態にすることができる玩具で、実にリアルかつ素晴らしいプロポーションは子供無視の「大人のための玩具」と言っても過言ではない。歴史に残る名玩具である。

 さて、本稿のスコープドッグのデュアルモデルだが、実際はコックピット再現はなされたものの装甲は取り外せない。

 単体の玩具としてのデキはともかく、デュアルモデルと言っていいのかどうかも微妙なものであった。

 ちなみに、装甲を完全にパージできるデュアルモデルはメダロットで復活した。

 しかし、ATのデザインはデュアルモデルを前提にして描かれたものであり、このタカラの要請なしには成立しなかったデザインであるのも確かだ。

 また装甲取り外しはできなかったものの、コックピットの再現や降着ポーズを含む可動範囲の大きさ、さらに豊富なオプション兵器の着脱が可能で、カスタマイズ魂を刺激するこれもまた名玩具と言えるものに仕上がっている。



ケレン味のある装備

 ATが単に地味なメカであれば人気は出なかったろう。

 しかし、ATには非常に強い「メカ的ケレン味」がある。

 ATの胴体はコックピットなのでがらんどうで強度的にかなり不安だ。特に、コックピットの横に付いている肩が脆すぎる(簡単にもげる)だろう。

 コレでは、「胸ががらんどう」とか言ってZガンダムを笑うわけにはいかない。

 だいたい、戦車と比べて装甲も薄ければ、車高も高いATの存在理由自体が、かなり薄いと言わざるをえない。

 だがいいのだ、論理的リアルよりも演出的リアルを取ったからこそATは格好良いし、リアルだと感じることができる。


アームパンチ

 内蔵のアームパンチは火薬によって拳をスライドさせて敵に打込む打撃武器。言ってしまえば飛ばないロケットパンチだ。パンチを打つと腕から薬莢が排出されるのが格好良い。

 これをさらに強化して杭状の金属を打ち出すパイルバンカー(これはスコープドッグの装備ではない)は「男の武器」として、ドリルではリアルさに難がある場合に使われるハッタリ兵器として絶大な人気を誇っている。

 ロボットの体の中で最も繊細である拳を打ち付けるアームパンチが、リアルなわけもない(ちなみに、拳ではなく掌底を打ち付けるシーンもある)

 拳で殴りつけると破損してしまうガサラキタクティカルアーマーメタルフェイクは、ちょっとリアルに寄り過ぎた面がある。

 ちなみに、ちょいちょいキリコはATの腕を担いで持ち運んでいる。ポリマーリンゲル液が抜けているとしても軽すぎる。

 だいたいスコープドッグの重量は6.6トンある。腕だけそこまで軽い理由がない。

 たぶん、あれはシナリオだかコンテだかは分からないが、制作のミスだろう。


ローラーダッシュ

 足の裏の車輪を回転させて滑るように移動するローラーダッシュは、同じく大河原邦男デザインであるヤッターワン(タイムボカンシリーズ ヤッターマン)と同様に作画枚数を減らすためというのが一番大きな採用理由だろう。

 しかしローラースケートのように走るロボットは、スピーディーな戦闘シーンを作り出すことに成功した。

 さらにターンピックという地面に打ち込む杭のアイディアが秀逸で、打ち込んだ杭を軸として超信地旋回並の小回りの高さと、それ以上の旋回スピードを両立させた。

 ターンピックを使って旋回しながら周囲の敵を掃射するという動きを見せ(3、11話)、旋回とアームパンチを組み合わせてよりパンチの威力を高めるという技も見せている(4話)し、旋回によって銃弾を回避する場面(14話)もみられる。

降着ポーズ

 また面白いのが、降着ポーズと呼ばれる、足(特に股関節)を人間では不可能な角度で折り畳むポーズだ。

 基本的には、乗り降りを楽にするための姿勢であリ、運搬・格納時の姿勢を低くする役割ももつ。

 人ではありえない方向に関節が曲がるのが、機械っぽさ丸だしで素晴らしい。

 たびたび行われる降下作戦では、着地のショック吸収するために降着ポーズが繰り返し使われ、迫り来る機械軍団の不気味さを一層高めている。

換装可能なバックパック

 背中のバックパックは交換可能で、宇宙用装備のラウンドムーバーやパラシュートザック、長期行軍用ミッションパックなど、シチュエーションによって換装される。

 パックパックはガンダムのランドセルから進化し、着脱可能になったダグラムのターボザックのアイディアを、より汎用化させたもので、後年ではレイズナーでも換装可能なパックパック採用されているが、ATほどは活用されていない。

豊富なオプション

 その他、手持ち武器のバリエーションも多く、腰にもフロートやミサイルを装着できるラッチがあり、降着状態で装着するドッグキャリアーも局地用にバリエーションがある。

 前述のバックパックと合わせ、組み合わせは無限大だ。

 そして武器のハリネズミといった印象のレッドショルダーカスタムの重装備を再現できるタカラデュアルモデル。

 リアルとかどうとかを別にしても、純粋に玩具として面白いのである。

飛び回るAT

 宇宙でのATは、バックパックにラウンドムーバーを装備する。

 これはガンダムに登場するノーマルスーツの宇宙機動用装備のロボットへの応用である。

 ATを宇宙でまで使うのは汎用性が高すぎるかとも思えるが、この装備は小惑星、あるいは宇宙船へと乗り込むためだけの装備と考えられる。

 前述の通り、生命維持装置はパイロットスーツ側にあるので、AT側の真空・無重力対応は最小限で事足りている。

 ただこのラウンドムーバーは相当高出力で、サンサ星の重力が軽いのかもしれないがATが空を飛ぶシーンもあり(32話)空中戦までこなしている。

 ガンダムよりよほど飛んでるのだが、ほとんど印象としては残っていない。

 また、クメン編ではヘリにぶら下がって輸送されるシーンも頻繁に見られる。これはダグラムからのアイディア転用だ。

 他にも、クメン編後半ではフラインクプラットホームに乗って斜面を飛んでくるATを多く見ることができる。

 その他、飛ぶと言っていいのか微妙だが、AT用のホバークラフトも存在する。

 しかし、ファンの間でも「ATは飛ばないもの」という共通認識ができていると言ってよい。

 あくまでもATは車両の延長である、ということだろう。

 びゅんびゅんモビルスーツが飛び回るようになったガンダムの続編に比べ、ボトムズのATは逆にどんどん飛ばなくなっている。

ATのその後

 小説ベルゼルガ物語で描かれた藤田一己デザインのテスタロッサは、丸っきり世界観を無視したと言っても過言ではないほどの思い切ったデザインのATであったが、まちがいなく格好よかった。

 その細身のシルエットのATというアイディアは、コードギアスナイトメアフレームで結実する。

 ただ、ATはボトムズ世界内では完成されたマシンのようで、その後に作られた30年後の世界でもスコープドッグは現役であり、他のATのシルエットもそれほど大きな変化はない。



ロボットの演出としてのボトムズ

乗用ロボットで物語を作る際に問題となるのが、搭乗者とロボットを一画面に納める事の困難さがある。

搭乗者が見えなくなるからといって、リアルロボットの顔やポーズに表情を付けるわけにもいかない。

この問題を、ATのサイズが小さめである事もあり、ボトムズではかなり解決されている。

ターレットスコープ

 スコープドックの名前の由来ともなっている、ターレット式三連カメラ(ターレットスコープ、ターレットレンズ)が無機質なロボットに表情を与えている。

 これは機動戦士ガンダムジオン軍のモビルスーツに使われたモノアイの進化系だ。

 このカメラの移動やズーム、回転してレンズを入れ替える動作は、印象的なオープニングでも勿論、本編でも様々な演出に効果的に使われている。

バイザー

 頭部のカメラが付いたバイザーを開けると操縦者の顔が覗く。

 演出上はメカ→キャラの展開を容易にする発明であり、このバイザーは簡単に破壊されたり開いたりして搭乗者が露出する。

 バイザーを開けたまま肉眼により戦闘を行うこともできる。

 これは後にパトレイバーなどにも取り入れられたギミックであり、前述のヤッターワンにコックピットがなく、取っ手に捕まって走るのと同じ作劇上の要請から作られたギミックであろう。

 そしてコックピットむき出しのライドバックがもっとも先鋭的にこのギミックを押し進めたものといえるかもしれない。

 とにかく巨大ロボットはキャラクタを描くのが難しいが、ボトムズはATの全高4mというサイズとバイザーによって。キャラクタ心理を上手く演出することに成功した。

ハッチ

 また、スコープドッグは窓であるバイザーを開ける場合と、扉であるコックピットハッチを開けることによる緊張感の使い分けという演出を行なっている。

 体全体をさらけ出すハッチオープンは、戦闘が終わって仲間と談笑するシーンでは開放感を、敵(主にイプシロン)に向けてハッチをオープンするキリコは逆に弱点をさらけ出した緊張感を見事に演出している。

 さらに面白いのは、パイロットのヘルメットのゴーグルを取ることにより顔が見える、あるいは隠れて見えないということが見事に演出に生かされている。

 この三段式の見え隠れ演出が、ドラマに深みを与えている。同じことを巨大ロボットでやるのはかなり難しい。

 例えばガンダムがグフのコックピットを切り、グフのヒートサーベルでガンダムのコックピットが切られて互いにパイロットが露出するが、そんな特殊な状況は作品全体で何度も出せるものでない。

 巨大ロボのコックピットがむき出しになりパイロットが外に出るというのは、無茶なシーンだからこそ印象に残るが、それだけに決めのシーンでしか使えないというジレンマも持つ。


まとめ

 スコープドッグは、戦闘用の乗用ロボットに関してのリアリティを追求し、関節の可動や武装のようなハードウェア、およびミッションディスクやARゴーグルなのソフトウェア、さらに運用面や世界での許容のされかたも含めて、非常に先進的なアイディアを持った名機である。

 登場から30年経った今でもボトムズが「最もリアルなロボットアニメ」と言われていることからも、その先進性が分かるだろう。

 しかしそれだけ長く愛され、今後も愛されるであろう理由は、リアルだけではなく理屈抜きに格好良い仕掛けがふんだんに組み込まれていたことにあった、と言える。

2009-03-15

[]「機動戦士ガンダム」RX-78-2 ガンダム

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 ロボットを取り上げてとことん語るこのシリーズ。第一回目はRX-78-2 ガンダムを取り上げる。
「機動戦士ガンダム」1979リアルロボットと呼ばれるタイプの始祖となったロボットアニメだ。
 ある日突然襲ってきた巨大な人型兵器「ザク」に対抗するため、成り行きで「ガンダム」と呼ばれる連邦の新型試作機に乗った少年アムロは、同じく巻き込まれた少年少女達で構成された戦艦ホワイトベースで、宇宙コロニーから地球そしてまた宇宙へと後に一年戦争と呼ばれた戦場を転戦していく。
 ロボットアニメでリアルなドラマを描いたということで人気となったと言われることが多いが、それ以前にもリアルなドラマを描いたロボットアニメはあった。ガンダムの人気は典型的なヒーローものに見せかけてリアルなドラマを描くのではなく、リアルをさらけ出した、あるいはあえてリアルを演出したことにある。

 本稿では乗用ロボットとしての特徴や立ち位置について語り、特に登場作品については語らない。
 ガンダムは劇中では語られていない、あるいは劇中の描写と矛盾する後付け設定が数多くあるが、それらについては特に分けて語らない。例えばRX-78-2という型番にしても後付け設定である。
 メカデザインについてはアニメータではなく玩具メーカーのデザイナが担当することもあり、キャラクタデザイナがメカ(の一部)も担当するということも珍しくないので、誰が担当したかはっきりしないことが多い。そのため、かなり私の予測の入った記述であることをご了承いただきたい。

機動戦士ガンダム - Wikipediaガンダム (架空の兵器) - Wikipedia機動戦士ガンダム公式Web

ほぼ日刊イトイ新聞 - 野球とガンダム




スポンサー(クローバー)の意向

 まずは従来のスーパーロボット路線から引き継いだ要素を見てみよう。
 それはすなわちスポンサーが玩具を売るために導入された要素といえる。

名称

 ガンダムという名前にしても、濁音の入った名前が幼年男子に人気というスポンサー側のリサーチ(迷信?)を反映させたもので、敵味方問わずやたら濁音がつくのは、やけくそになった制作者がとにかく濁音付けりゃいんだろうと付けまくった結果のような気がする。
 ただ、濁音の入った名前は怪獣的で強そう怖そうなイメージがあるのは確かで、結果的にはガンダムという世界観を独特のものとした立役者の一つだ。
 ガンダムという名称そのものは、企画時の仮タイトル「フリーダムファイター」「ガンボーイ」を合成し「GANDOM」では収まりが悪いので「GANDAM」と決定した。

巨大ロボット

 企画初期は「宇宙戦艦ヤマト」のように戦闘機を主役メカとしていたが、スポンサー側の「ロボットでないと玩具が売れない」という要望のもとデザインされたのがガンダムだ。
 今振り返ってみても、このスポンサーのロボット出せという判断は全く正しかったわけだが、巨大ロボットという荒唐無稽な存在を使ったリアルな戦争ドラマという、存在に矛盾を抱えたぬえ的なジャンルが成立してしまうとは考えていなかったろう。
 ロボットが人型なのは人と同じことができることが利点であるから、全高は2〜4m程度に落ち着くと考えるのが自然かと思うが、リアルロボットアニメはロボットは巨大なまま周辺の描写がリアルになるという、不思議な進化を遂げることになる。
 そもそも人間ドラマを描くのに、ロボットが巨大だと同じフレーム(画面枠)にロボットと人間が入るということが困難になるということもあり、巨大ロボットは不利な筈だが、ガンダムのしばらく前に開発されたカットイン手法(同一画面上に二つのシーンを漫画のコマの様に描く手法)により、その問題も解決とはいかないまでも、さほど問題ではなくなっていた。

 とはいえガンダムの全高18mは「マジンガーZ」と同じで、当時50mあるいは100mという巨大化を続けていたロボットのサイズへのカウンターとなった。
 当時はマジンガーZの主題歌の「強いんだ、大きいんだ、僕らのロボットなんだ」やコン・バトラーVの「身長57m、体重550トン、巨体がうなるぞ空飛ぶぞ」に分かりやすく現れているように、強いことは良いこと、そして大きいことは強いことという価値観に支配されていた。
 それを覆す全く新しいものとして当初ガンダムは2.5m程度のスケールが考えられていたというのだから、18mはギリギリ想像できる戦闘機サイズとして妥協されたとも言える。
 劇中ではそのサイズはかなりいい加減に描かれており、周りのものとの対比できちんと18mであったことの方が少ないかもしれない。
 ガンダムの総重量は60.0t(乾燥・無装備重量43t)で、鉄の城のくせに戦闘機並みに軽いマジンガーZの20tに比べて、それなりの重量を持っている。ちなみにロボットの他に怪獣も含めて、身長に対する体重の設定のいい加減さはびっくりするほどで、多くのロボットでは深く突っ込んでも仕様がない部分ではある。

3機の主役メカ

 ガンダム・ガンキャノンガンタンクの3機は、「ゲッターロボ」の3機を踏襲したものだろうし、「UFOロボ ダイアポロン」などのパターンに則ったものだ。あるいはマジンガーZ・ボスボロット・アフロダイAのようなものかもしれない。
 どちらにしろ、味方のロボが一体では(遊びのバリエーションが作れず)玩具が売りにくいという、玩具会社の要請で3機用意された。

 従来は1キャラ=1ロボットが大前提だったのだが、ガンダム以外のガンキャノン・ガンタンク・Gアーマー(コア・ブースター)では流動的な運用がなされている。リュウが死んでいなければ、ハヤトは待機要員となっていたろうし。カイが船を降りっぱなしだったら、ジョブ・ジョンかオムル・ハングがガンキャノンのパイロットとなっていたろう。
 ガンダムそのものは、セイラを例外としてアムロ専用というところが、結局はスーパーロボットであったことを示している。と同時にそれこそがガンダムというメカの魅力であることも確かだ。

 さて、ガンダム・ガンキャノン・ガンタンクの3機はゲットマシンのように合体するわけではないが、同じコアシステムを採用しており、そのコアとなる胴のコア・ファイターは交換可能である。
 そのようなギミックがあるならば、当然この3機の上半身・下半身も自由に組み合わせ可能となりそうなものだが、TVシリーズ中ではそんな運用もなく、映画版では合体シーン自体がほとんどなく、よりリアル指向へと舵が切られた。
 ただギミック好きの私としては、その方針はがっかり。玩具会社に従って欲しかった。
 全くの余談だが、ケツ顎シャアで有名な「GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH」(アメリカ製の実写ガンダムゲーム)には、下半身ガンタンク・上半身ガンダムのメカが登場している。

ガンプラ

 本編が終了してのち、版権を獲得したバンダイからプラモデルが発売された。あくまでも玩具だったクローバーの製品に対し、バンダイのプラモは戦闘機や戦車のスケールモデルに近く、劇中のイメージに近いものだった。クローバー製品に落胆したファンにとって、待望の製品だったといえる。
 これが空前の大ヒットとなり、全国の模型店に慢性的品不足を発生させることとなる。
 300円という手頃な価格、豊富なロボットバリエーション、模型雑誌・幼年雑誌で取り上げられ、ジオラマ・改造というカスタマイズの面白さによって、新たな遊びが作り出された。
 そしていまや国内のプラモデルの大半が「ガンプラ」という状況は、驚くべきことだ。

 当時はプラモデルといえば戦車のタミヤ・飛行機のハセガワであり、富野監督も当時バンダイから発売されると聞いて「がっかり」したという話がある。これは当時3番手以下だったバンダイを考えると、当前の反応だ。
 しかしキャラクタ商品のノウハウの少ない両者より、バンダイは「サンダーバード」や「宇宙戦艦ヤマト」で培ったキャラクタとメカを結びつけたパッケージや、子供向けの解説文ではない本気度がガンダムにマッチしていた。
 むしろガンダムという作品の持つ熱気は、ちょうどプラモメーカーとしてのし上がろうとしていたバンダイの熱気と相乗効果を産み、アニメとプラモが一緒に世界を作り上げることに成功した。安定感のあるタミヤ・ハセガワより、バンダイだったからこそのガンプラといえるだろう。

 そしてガンプラの隆盛は、ガンダムの設定資料集の需要を産みだすことにもなる。おそらく「機動戦士ガンダム」は、アニメで最も設定資料集が売れた番組だろう。
 このような現象は「宇宙戦艦ヤマト」で発生したが、「機動戦士ガンダム」無しには定着しなかったろう。

リアルの「演出」

 ぱっと見は派手な塗装で、スーパーロボットそのものなガンダムだが、何故リアルロボットと言われることになったのだろう。
 今度は、そのリアルな部分を考えてみよう。

リアルを押さえるポイントが的確

 ガンダムのSF考証は、かなりいい加減である。それでもリアルと言われるのは演出の賜物であるし、スペースコロニーや無重力・真空状態・大気圏突入(コロニー落しという極めて実効性の高い大質量兵器)の描写、弾切れに塩不足、補給艦などの兵站描写などポイントを押さえたSF的・科学的・軍事的な要素の存在にある。
 特に補給については、それまでのロボットものがおざなりにしてきた部分だけあって、しょっぱなから頭部バルカンの弾切れにパニックになるアムロが象徴するように、全編に渡って個々の機体・戦艦・部隊・敵味方を問わず資源(弾・燃料・食料・機体・人員)切れと補給の描写が続く、いささか貧乏臭いところが実にリアルだった。

科学的であることよりリアルであること

 ザクマシンガンの薬莢が落ちるシーンなど、いまだに薬莢が弾体とともに飛ぶトンデモ描写が絶えないのを考えれば、実にリアルであったと言えるが、逆にドラム缶のようなサイズの薬莢をバラまくのが現実的かと言われると、友軍に死傷者や火災が出かねないおかしな作りといえる。

 つまり「演出的リアルさを優先し、科学的リアルさは捨てている」のがガンダムだ。そしてそれは非常に良い方向に働いた。科学的リアルさは一見リアルに見えないし多くの場合地味。さらに脳内シミュレーションなので、後に科学技術が発達して実際に同じ機械が作られた場合、現実は予想と違っていることが分かったりする。その点、演出優先なら最初からウソなので現実と異なっていた所で全然問題ない。
 逆に科学的リアルを追求しようとしたZガンダムでは、ノーマルスーツや大気圏突入システムが一年戦争時より退化しているという不思議な現象が起きている。続編としてはまずガンダムという世界を肯定し、世界観の整合性によるリアルを追求すべきだったろう。

 当時は「ガンダムはSFではない」論争が盛り上がったが、いまやガンダムがSFであろうがなかろうが、そんなことは全くどうでも良い状態となっている。なにせガンダムは何かのジャンルに含まれるものではなく「ガンダム(リアルロボット)というジャンルとなった」のだから。

モビルスーツという総称の導入

「機動戦士ガンダム」はロボット兵器に「モビルスーツ(以下MS)」という総称をつけて、従来のロボットものとは全く違うものであるような印象を与えることに成功した。
 その後、今に至るまでロボットものは兵器としての総称を付けるのが当然のこととなった。
 ガンダム以前の番組にも、敵兵器にも(○○獣とか)総称的なものがあったし、味方にも総称はあった「鉄人28号」もまた「鉄人」という兵器であり、鉄人は沢山いる試作品の中の一つである。
 作品全体に登場するロボット兵器にロボット以外の総称が付き、同じジャンルに属する兵器同士が戦うこと。そして、それらの兵器は量産を前提にして作られていること。これらはガンダムで初めて導入された「リアルさ」であった。

 MSという名前は、ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」パワードスーツからスーツだけいただいたもので、デザイン的にはガンキャノンにスタジオぬえ版(宮武一貴・加藤直之)パワードスーツの影響が強く見られ、主役メカとする案もあったが、最終的には「無敵超人ザンボット3」・「無敵鋼人ダイターン3」の延長線上にあるデザインのガンダムが主役メカとなった。
 一見パワードスーツの影響が見られないガンダムだが、細部を見ればパワードスーツを参考としたことで様々な部分のリアルさの底上げができていることが分かる。
  MS自体は全然スーツらしくないが、巨大なMSに対して通常の宇宙服を「ノーマルスーツ」と呼ぶのは世界を感じさせるナイスネーミングだ。

新たなパイロット像

 結局の所主人公のアムロは不思議な力を持ち、パイロットとしては素人なのに無敵の強さを誇るヒーローではあった。しかし、スポーツマンじゃない、必殺技を叫ばない、すぐいじける後ろ向きな性格などヒーローのお約束を踏襲しないことで、リアル感を担保することができていた。
 アムロはメカオタクであり、ちょくちょくメカの整備や改良をするシーンが入るし、理解不能なメカ蘊蓄「凄い!5倍以上のエネルギーゲインがある」を口走る。このような「ハカセキャラ」が主人公になったというのも新しく、「機械を上手く扱えるのが、スポーツができることより偉い!」というヒエラルキーの逆転にオタクどもは驚喜した。

現実の乗り物のパーツ

 頭部側面の吸気口や胸の排気口は、現実の戦闘機や戦車を思わせるパーツで、荒唐無稽なロボットにリアルな印象を与えた。特に第1話で見せた排気演出が強烈な印象を残した。
 これらはその後の多くのガンダムシリーズに共通のデザイン要素となっている。
 ガンダム以前のロボットではガンダムと同じ大河原邦男による「ゴワッパー5 ゴーダム」にこれが見られる。またマジンガーZの口のスリットからルストハリケーンという破壊の息吹を吹き出す、機能は全く異なるがイメージはガンダムの胸の排気口と重なる。
 そしてなにより、スタジオぬえ版パワードスーツの肩口に付いたインテークから発想したことが容易に想像できる。

「アムロいきまーす」でお馴染みのカタパルト出撃は、空母から発艦する戦闘機に実際に使われているもので、これをロボットにも使おうというのはカッコいいしリアルを感じさせる仕掛けの一つとしてガンダムの産んだヒット装置のひとつと言える。
 コア・ファイター着艦時のワイヤーや着艦フックも、現実の空母からの発想だ。

学習型コンピュータ

 第4話でアムロが得々と語ったように、ガンダムは「戦いのケーススタディが記憶される」コンピュータを持っている、これがそれまでのMSとの決定的な差だ。
 とにかく前線に放り込まれてデータ収集がホワイトベースに課されるのも、この特別な機能があるためであり、序盤から終盤まで次々と開発され実戦投入されるジオンのMSに同じ機体で対応できたのも、この機能があればこそと言える。
 赤い彗星青い巨星黒い三連星と、ジオンのエースパイロットを次々と相手にするという「幸運」に恵まれ、その戦闘データはその後のMS開発に不可欠のものとなっただろう。一年戦争以後の全てのMSがガンダム(つまりアムロ)の戦闘データをベースにした「ガンダムの子供」であったとしても不思議ではない。

 実はガンダムはハロと同じ声で喋る。メカオタクのアムロがこっそり改造したと思えば自然だが、声を出したのは18話のみで、その他では一切喋らない。
 喋るロボットは車に搭載された「ナイトライダー」キット、そして後の「SPTレイズナー」レイが強い印象を残した。

 ガンダムはオートパイロットで動かすこともできる。どのようなプログラムで動かせるのかの仔細は分からないが、戦闘中にプログラムを書くというのは相当な無茶ではあるので、かなりの部分は学習型コンピュータが自動で行なったものと考えるのが妥当だろう。それまでの戦闘パターンから取るべき行動を選択した、というわけだ。
 ガンダムがオートパイロットでジオングと相撃ちになるシーンは「ラスト・シューティング」と言われ、屈指の名シーンとされる。
 ちなみに個人的には「機動戦士ガンダムSEED」でキラ・ヤマトが戦闘中にOSを書き換えるという荒技を使ったのを見て、一気に番組を見る気をなくした。つくなら上手く嘘をついてほしいものだ。

 強さの理由に、強力な武装・強靭な肉体と言うハードウェアではなく、学習型コンピュータ・高い操縦技術というソフトウェア面がクロースアップされたのは新しかった。ガンダムでリアリティを持って描かれたロボットとコンピュータの関係は、後のロボットアニメに大きな影響を与えている。
装甲騎兵ボトムズ」でキリコはパーフェクトソルジャーに対して、単に武装を強化するという方法ではなく、コンピュータをチューンナップするという方法をとる。また、ミッションディスクと呼ばれる戦闘パターンを記録したディスクを読ませることにより、ソフトウェア的に機体の汎用性を高めるという手法も取られた。
 そして運用データ収集およびOSの重要性は「機動警察パトレイバー」で物語の中核として語られることにもなる。


外見

武者鎧と西洋甲冑

 ガンダムは日本的要素と西洋的要素が混在したデザインである。

 まずガンダムは直近のロボット作品である「無敵超人ザンボット3」や「無敵鋼人ダイターン3」の流れを汲むデザインで、顔に限らず、盾の十字などまんまダイターンの胸の意匠であったりと、随所に類似点が見られる。
 ガンダムの武者っぷりは、この2作に比べると随分おとなしめで、大河原邦男が「兜を取ったイメージ」と言うように、その白さと相まってちょんまげ頭にも見える。
 物語としては戦記ものとなったガンダムだが、デザイン的には戦記(戦国時代)ものから剣豪・チャンバラ(江戸時代)ものへと変化し、劇中の戦闘シーンも剣劇のできが素晴らしく、じつに印象深い。

 トサカや額の鍔の下に二つ存在する黄色い目、口のない顔、背中の噴射装置など、ガンダムは確実に西洋甲冑系の「鉄人28号」「マジンガーZ」の流れの上に乗ったメカでもある。
 盾と剣という戦闘スタイルも西洋的だ。

 これらのふたつの要素は後に「武者頑駄無(ガンダム)」と「ガンダム騎士(ナイト)」というスピンオフ作品が作られたことからも分かる。

白いロボット

 真っ白な機体は、「新造人間キャシャーン」や「宇宙の騎士テッカマン」のような等身大ヒーローに近いカラーリングだ。白はコスチュームカラーとしては既に認められていたのだ。

 もともとの構想としては宇宙服のような、あるいは「2001年宇宙の旅」や「スターウォーズ」「スタートレック」などのSF映画の宇宙船のような白一色とする予定だった。しかし玩具メーカーの要請もあり、最終的には所謂トリコロールカラーとなっている。そのため「連邦の白い悪魔」とか言われるのに違和感を覚えるが、当時としては斬新な白面積の広さではあった。その白さは武者鎧というより、銀色の西洋甲冑を思わせるものでもある。初期稿には、足の甲などにより甲冑的な意匠が見て取れる。
 そもそも当時銀色の皮膜を均一に塗布する技術が確立し、それを使った玩具を作るという要請があった。しかしアニメでは銀色というわけにもいかず白にした、という経緯がある。結果、発売されたガンダムの玩具は劇中と全然違う銀塗装が大不評と言う、クローバーの目論みが完全に空回りした結果となった。

 リアルタイプガンダムと呼ばれるプラモデルでは、無彩色をベースにアクセントで赤というカラーリングとなっており、劇中の色は「リアルではない」という認識は制作者・ファンともに共通のものと思ってよいだろう。これは1982当時放映中「太陽の牙ダグラム」ほとんどまんまのカラーリングであり,ダグラムのリアルさを借りてきたリアルさと言える。
 ガンダム本編で考えると,宇宙空間で黒では熱を吸収し過ぎて危険であり現実的でないと言える。
 プラモデルの模型雑誌での作例では、ウェザリング(汚し)塗装などのミリタリーモデルに使われていた手法が施され、劇中よりもリアルなイメージを作り出していた。
 あの派手なカラーリングは試作機であるから観察しやすいように、その後塗り替えなかったのは「おとり部隊」であるから、という理由があるにはある。

 さらに言えば宇宙では白がリアルかもしれないが、地球上ではどうなのか。そもそも他の機体の色を見れば白ではないため、色以外の方法で降り注ぐ太陽光(放射線)に対抗する手段が確立されていると考えられる。そうなると宇宙で白というのも、有視界戦闘が前提の世界では目立ちすぎでリアルでない。
 ちなみに「2001年宇宙の旅」の影響は連邦軍のボールのデザインに色濃く見られる。ボールは13m弱と無茶苦茶でかいが。

頭部

 ガンダムの顔は隈取りや面頬、頬当てや兜飾り(ツノ)のような武者的意匠を取り込んでいる。
 以前のロボットのツノや、その後のガンダムのツノの多くが黄色いので意外な感じがするが、初代ガンダムはツノも白い。設定画も決定直前までツノは黄色だったので、設定画を見るほどのガノタ(ガンダムオタク)だからこそるある勘違いともいえる。
 あのV字のツノはアンテナとしての機能を持っているが、劇中では特にそのことに関する描写はなかった。萌えキャラのデザインで良く見る額から出るアホ毛はアンテナと呼ばれていたが、これはガンダムのVアンテナをイメージしたものかと思われる。

 このツノと、背中のビームサーベルによって仏像の光背(後光)のような効果を産んでいる。つまりオーラ漲る強いロボットというイメージだ。ガンダムの光背は、その後のシリーズで大げさになる傾向にあり、Gガンダム、ガンダムダブルエックス、ストライフクリーダムガンダム、スターゲイザーガンダム、プロヴィデンスガンダムなどは丸っきり仏像と言っていいほどの光背を背負っている。
 キャノン、ウイング、プロペラントタンク、バーニアアーム、ファンネル(ビット)、肩につくフィン、スタビライザー、その他もろもろの名前や役割があるが、その絵的効果は光背(オーラ)の一言で片がつく。
 初代ガンダムのツノとビームサーベルは、それらに比べれば実に質素なものだ。

 ところでガンダムの頭部には集音機がある。これは18話で使われた。アレが入っているところバルカンのマガジンを装填するところだが、どういう作りなんだ。
 実はチョンマゲの前方にあるのがメインカメラで、二つある目はサブカメラである。この頭頂部のメインカメラのデザインは、スタジオぬえ版パワードスーツから拝借したものだろう。

 首まわりは黄色い襟状のものが付いている。これもスーツからの発想だろう。
 このようなロボットのモチーフに服を使う発想は「ゲッターロボ」のマントや「UFO戦士ダイアポロン」のヘルメット・プロテクターなどに見られる。ダイアポロンはロボットと言うより本当に巨人だが。

 ガンダムは特に頭部正面(顔)が複雑で、ガンダムが描けるだけで小学生の中ではヒーローになれるほどの難易度を誇る。
 小さい目とその周囲の墨入れと赤い隈、サイドの片側5つ計10の吸気口、マスクの2つ逆v字の溝、小さな顎の突起。ガンプラを塗る際に必要とされる技術は高く、素人が面相筆をもったところでどうにかなるものではない。
 素人どころか、この複雑なデザイン・配色は劇中でも、耳のインテークやムネの放熱フィン、首のボーダーは数がちょくちょく変わるし、ややこしい塗り分けはたびたび塗り違いを発生させていている。
 そういう作画のしやすさという面から見ると、ガンダムのデザインは失敗作だったと言え、その後のガンダムでは、例えば耳のインテークは数えやすい3つまでの数になっているし、胸の排気口もシンプルなガンタンク型が主流となっている。

 番組中で唯一両目を持ったMSがガンダムである。黄色い目はヒーローとして捨てきれなかったというところか。
 富野監督の「伝説巨人イデオン」で悲願の目が2つではない主役ロボが登場するまで、主役は目が2つであるのが不文律であったし、2009年現在でもそれは当のガンダムの影響もあって主流である。
 目の下の赤い部分は、歌舞伎の隈取りや鎧の面頬を意識したものだろう。
 あれがガンダムの顔デザインを引き締め、目に視線を誘導する役割を持っている。目の下に赤を配置すること自体は「鋼鉄ジーグ」が既に行っていたものだが、ガンダムは頭部がほぼ白であるので赤の視線誘導効果が高い。

 初期稿では口もあったが、リアルなドラマを描こうとするロボットアニメで喋られては困る、ということで口は無くなった。鼻の部分にある二本の逆V時は唇の名残でもある。
  ガンダムのマスクの部分は真ん中から左右にぱかっと開いてメンテナンスができるようになっている。「大空魔竜ガイキング」のフェイスオープン程ではないが、結構怖い顔だ。
 そして顎の突起は、ライディーン以来サンライズ系(安彦良和)のロボットに付いていたものだが、ガンダムの象徴的意匠のひとつとなった。赤が舌を出しているように見えて間抜けにも見えるが、あの顎がシャープでありながらも力強さを与えているのは確かだ。あれが顎髭だとしたら、ヒゲの∀ガンダムは単に伝統を踏襲したに過ぎない。

 これらの要素を多く含むガンダム顔は「宇宙戦士バルディオス」「戦国魔神ゴーショーグン」や「愛の戦士レインボーマン」「SPTレイズナー」に見られ、ガンダムのパクリ的雰囲気が強い。
戦闘メカ ザブングル」「機甲戦記ドラグナー」「魔神英雄伝ワタル」「 NG騎士ラムネ&40」「勇者シリーズ」などもかなりガンダム顔ではあるが、それほどガンダムのパクリのように見えないのは、マスクに溝がないからだろう。本家ガンダムでマスクに溝が無いのは「Zガンダム」と「∀ガンダム」ぐらいかと思う。
 意外にガンダム顔を決定づけているのは、目でも顎でもツノでも耳でもなく鼻なのだ。

 ガンダムの腕はびっくりするほどシンプルだ。ほとんど箱をつなげただけ。
 しかし、ガンダム手持ちの装備として盾と武器(ライフル、バズーカ、サーベルetc.)を持つ、ここはシンプルすぎるぐらいでちょうど良い。

 肩にブロックを置くことで、可動軸を二つ取ることができるようになり、より自然な動作が可能となったのはガンダムの発明と言っても良いだろう。
 しかし劇中では、それまでのロボの発想で完全に装甲で包まれていて、とても動きそうにない状態で描かれていることもままある。
 たぶん結構なガノタでも、というかガノタだからこそガンダムの肩は怒り肩の印象があると思うが、初代劇中のガンダムはなで肩とは言わないまでも、ほぼ胴から水平に肩がついている。怒り肩ガンダムは、後のモデラー達の創意工夫によって開発された格好良さである。

 肘・膝・足首の関節には円形の部品があり、関節がどの方向に曲がるのかをはっきり示している。
 これが意外なことにガンダム以前のロボットには存在していない。
 今となっては「動かす気があったのか?」とも思えるガンダムのデザインだが、その時代を考えると関節可動に革命を起こしたデザインであったことが分かる(「機動戦士ガンダム」で一番リアルな関節デザインをしたMSはボールなんだが)

 とはいえ当時でも玩具の可動範囲の大きさという意味ではマグネロボ「鋼鉄ジーグ」に明らかに退けを取るものであった。もちろん「変身サイボーグ」などの「GIジョー」系のアクションフィギュアにも到底かなわないのもだ。
 折角の関節デザインを殺した商品は、クローバーはもちろん、ガンプラを作ったバンダイもまた「お人形さん」的な発想から抜けきれずにいたと言えるだろう。

大きな盾

 ガンダムは主役なのに盾を持っているのが新しかった。それまでのロボットはわりと戦車の延長のような思考でデザインされていて、厚い装甲を持っているから剥き身でも強い。装甲は既にあるのだからさらに盾が必要という発想はあまりなかった、というより盾など持ってはロボットの典型的描写である「ピストルで撃たれても平気」がウソっぽくなる。
 とはいえ、序盤にはザクマシンガンが全く効かないという典型的スーパーロボット描写もある。

勇者ライディーン」や「合身戦隊メカンダーロボ」にも盾があったが剣やスパイクと一体になっており、防具というより武器に近いものだった、対してガンダムの盾は飛び抜けて大きく、投擲して武器として使用することもあったが、これは「防具を武器代わりに使う意外性」があるほどの特殊な状況だった。
 そして盾はとりもなおさず本体の装甲が(盾なしのガンキャノン・ガンタンクに比べ)薄いことを示し、力持ち的な強さから技の達人的強さへの転換の象徴と言える。こういう強さは、かなり演出力を必要とするので扱いが難しい。
 実際その後もガンダムのような盾を持つ主役ロボットは永野護「重戦機エルガイム」、大河原邦男「銀河漂流バイファム」「機甲戦記ドラグナー」などの少数の例外を除くと存在しない。しかもこれらは「ガンダムのリニューアル版」という意図をもった作品であったので、「ガンダム以外に盾を持った主役ロボはいない」と言ってもあながち言いすぎとはいえないのである。
 あ、大河原邦男「機甲界ガリアン」があった、言いすぎでした。なお河森正治交響詩篇エウレカセブンニルヴァーシュが持っているのはボードであって盾ではない。

 ガンダムは、この盾を背中に背負って背面装甲とすることもある。これでマゼラトップの近距離砲撃を防ぐことがあったが、どうやって盾を体に着けていたかは謎。
 盾の裏側は結構謎が多く、そもそも腕に接続しているのか、取っ手を持っているのか、取っ手があるなら縦か横か、予備のビームサーベルなどの武装はあるのかないのか。このあたりプラモデルにしてもキット毎に色々と差がありはっきりしない。
 劇中に見ることのできる盾の裏は、真っ赤なだけで丸っきり何もなかったりする。磁石でくっついてんの?また、Gアーマーから分離した時には二つの盾は重なって一つに合体する。ますますの不思議アイテムだ。

 映画版ではシールドと噴射機(何を噴射しているのかは良く判らないが冷却効果があるようだ)の組み合わせで大気圏突入を行う。溶け出すシールドはその蒸発によって気化熱を奪い、大気圏突入を可能にしたという理屈かとおもう。
 TV版の「股間から取り出すラップ」程度では大気圏突入を甘く見すぎだ、という視聴者の抗議を受け入れた変更と思われる。

 ガンダムは剣を使った近接戦闘(つまりチャンバラ)の魅力に溢れている。
 そのとき演出として盾が切られるという描写がたびたび見られる、これは「肉を切らせて骨を断つ」の非常に分かりやすい表現、アムロが達人であることが視聴者に分かりやすく提示されているのだ。
 ちなみに、つま先もちょいちょい切られて同様の効果を産んでいる。

射撃系武装

 主要武器であるビームライフル、それにハイパーバズーカ。別に頭部カメラの前に持ってこなくても、スコープに付けたカメラからの映像を普通にケーブルを通してコックピットのディスプレイに送れば良いだろー!!と誰しも思う筈だ。もちろん盾の覗き穴も同じことが言える。あんな大きな銃にトリガつけてマニピュレータで引かせるというのもおかしな感じだ。手の汎用性はそれに対応する道具があって成立する、あんな巨大な人のための道具などMS以前に存在する筈はないのだから、専用のアタッチメントを持たせた「鋼鉄ジーグ」のほうがよほどリアルと言える。
 だがそれではロボットの面白さはあっても「大きい人」という巨人の面白さが無くなってしまう。スコープを顔の前にかざしトリガを引くガンダムは格好良く、多くの人にガンダムの象徴的ポーズとして印象に残っていることだろう。

 固定武装でない銃をもったロボットとしては「無敵超人ザンボット3」のサブメカであるザンボエースがいて、ガンダムは明らかにこの流れを汲むロボットだ。ザンボエースの「ザンボットマグナム」は延長バレル・ターゲットスコープなどの追加装備で、ピストルからライフル、さらにはグレネードランチャにまで使い分けることができる。
 ガンダムのビームライフルは2話に登場したスーパーナパームが付属武器としてあるようだが、実際の運用方法としては、ビームライフルのバレルに取り付けられるのか、設置後ビームライフルで着火するのかはっきりしない。バンダイの見解としてはビームライフルの下部にグレネードランチャのように取り付けるもののようだ。
 ビームライフルは、おそらく「ゴルゴ13」の愛銃としても有名なアサルトライフルM16をイメージソースにしてデザインされている。様々な映画にも登場し、当時「カッコいい銃」といえば確実に名前が挙がった銃だ。
 また、この番組でバズーカという名前を覚えた人も多いだろう。ちなみにバズーカは一般名ではなくアメリカの携行ミサイル発射器シリーズの愛称だ。

 固定武装の頭のバルカンは、カメラと同じように動くため銃座的で使いやすい兵装かと思われる。おそらく戦闘機のバルカン+ミサイルの武装を踏襲したものだ。コストカット最優先と思われる量産型ガンダム(ジム)にも装備されていることを見ると、ガンダムの戦闘で有用性が認められたものかと思う。
 ガンダムの場合、さらにコア・ファイターの武装としてもバルカンやミサイルが用意してあり、かなり無駄に重量増やしている。

近接戦闘武装

 ビームサーベル、ビームジャベリンは明らかに「スターウォーズ」ライトセイバーを意識した兵器。だいたいビームでできた剣ってのが意味不明だ。しかも装備場所が背中で肩の後ろに突き出している。長過ぎて背中に背負ったという佐々木小次郎の物干竿(とか忍者部隊月光とか)を意識したものだと思われるが、実用性や科学(SF)考証云々より格好良さ優先なのは明らかだ。
 格好よさを優先してくれたおかげで、ビームサーベルによる文字通り地に足の着いた格闘戦がガンダムの魅力となった。残念ながら、その後のガンダムはびゅんびゅん飛び回ることが多く、殺陣としての面白さは無くなってしまった。Gガンダムの場合は格闘戦は行うが、どちらかとういと聖闘士星矢的な必殺技の応酬であり、初代ガンダム的な面白さではなかった。

 ガンダムは他にガンダムハンマーやハイパーハンマーなど、「超電磁ロボ コン・バトラーV」超電磁ヨーヨーや「無敵鋼人ダイターン3」ダイターンハンマーのような路線の武器を持つ。にしてもトゲトゲの鉄球は、どーみても悪役の武器だ。
 しかし後になって「∀ガンダム」がぶんぶんハンマーを振り回す名シーンを見ることができたのだから、よくぞこんなアホな武器を装備してくれたとクローバーには感謝したい。

 さてこのように、ガンダムの武装は不思議を通り越して失笑すら呼びかねないものだが、「必殺技を叫ばないので」リアルとされた。
 もちろんミノフスキー粒子というレーダーを無効化する物質により、基地からのミサイルの撃ち合いではなく近接戦闘が必要である、という理由づけはしてある。
 ただミノフスキー粒子の後付け設定が万能過ぎて、逆に説得力が無くなってしまったのは返す返すも残念。ミノフスキー粒子もゲッター線と同レベルの科学的根拠のない魔法となってしまった。

ランドセル

 背中のランドセルにはマイナスネジ(風)の意匠が存在しており、その後の漫画・アニメのメカに多く使用された。マイナスネジの意匠は「ファイアボールドロッセルお嬢様などにも使われており、人気があるメカ的萌えパーツと言える。マイナスネジの頭が盛り上がったタイプは、天野喜孝がメカはもちろん服飾デザインにも多用するパーツでもある。

 噴射口がロケットでお馴染みの釣り鐘型ノズルとなっているのが地味にリアルだ。


コア・ファイター

「機動戦士ガンダム」は巨大ロボットを量産兵器として扱った画期的な作品ではあったが、その主役メカのガンダムはほぼそれまでのヒーローロボットの路線の上にあるデザインのメカである。
 その証拠の一つとして、Aパーツ+コア・ファイター+Bパーツが合体してガンダムになり、そのガンダムがさらに前後パーツに挟まれてGアーマーとなる。お前は「闘士ゴーディアン」か!マトリョーシカか!!
 ガンダムは武器の多さもさることながら、こういう玩具向けギミックも多い。

 コア・ファイターは戦闘機が変形してマッチ箱のような形態(コアブロック)になる。このブロック形態では何の役にもたたないが、その凝縮感は妙に魅力的だ。
 造形が比較的単純だったので、厚紙でそれなりの形に変形するものが作れた。また玩具もほぼ完全に変形することができた。これがガンダムで一番面白いギミックだったと言える。これはライターから変形する「ゴールドライタン」のアイディアの元となったのではないだろうか。
 分離したA・Bパーツを見ると、コア・ファイターを完全に包む構造になっているようにも見えないのに、合体直前に腹巻き状の赤い部分が出現したりするし、毎回ちょっとずつ接続部分の作りが変わっている。相当いい加減な設定と言わざるをえない。設定集を見ても下半身のみしか描いてなかったり、正確に描いてあるものを見たことがないので、設定そのものがなかったと考えて良いだろう。
 オープニングの合体シーンを見ると、腹巻きの下部はコア・ファイターの白い部分がむき出しになっているが、合体途中でしれっと赤くなっている。折角コア・ファイターからコアブロックへはちゃんと変形したのに、最後になって色も形も自在なゲッター変形だ。画竜点睛を欠くと言わざるをえない。
 クローバー製品をみると、腹巻きの下部はコア・ファイターむき出しでコックピットも見えている。これはこれで魅力的なデザインだが、劇中と異なる絵は(劇中にも設定にもない武器の長斧を含め)「パチモン感」を大いに振りまいていたのも確かだ。

 戦闘機は機体に重大な損害を受けた場合にシートがコクピットから射出され、パラシュートを展開してパイロットを生還させる。この脱出シートはメカ好き男子の大好きなギミックで、漫画やアニメでは戦闘機以外のメカにも搭載されることが多い。
 ガンダムの胴体にあるコア・ファイターは、この脱出シートが単独で戦闘機となるギミックだ。
 コア・ファイターをマジンガーZのホバーパイルダーの発展と見ることもできるが、コア・ファイターを搭乗を楽にするために使うことは全くなく、むしろコア・ファイターで出撃して途中でガンダムのAパーツBパーツと合体することは、大変難易度の高い行為だと劇中でも描写されている。
 また、合体中に敵は攻撃を仕掛けないというヒーローものの不文律をあっさり破り、ジオンは合体中のガンダムを狙う。当時私もこの描写には驚喜したと同時に、ならなんで合体メカ(ガンダム)なんか作るかなー、という思いをもったのも確か。
 この3体合体は、「無敵超人ザンボット3」のザンブル・ザンベースを無人にしただけとも捉えられるが、残すパーツが無人であることにより「脱出装置」として機能する。これにより、コア・ファイターはザンボエースとはまた別の魅力をもつこととなり、あの感動の最終回「脱出」が成立した。
 このコアシステム、ガンダム以外のMSでは、ガンキャノン、ガンタンクにしか搭載されておらず、その後のガンダムシリーズではガンダムにすらコアシステムがないこともあり、ちょいと面白みに欠ける。

 脱出シート的なコックピットは「銀河漂流バイファム」ポッド、「新世紀エヴァンゲリオン」エントリープラグ、「コードギアス 反逆のルルーシュナイトメアフレームモジュール型コックピットなどに見られる。

コックピット

 それほどあからさまではないが、コックピット内の計器は松本零士(ヤマト)の影響がある。
 ビームライフルを撃つ時にコックピット内でスコープを目の前に持ってくるのが、なかなか格好よい。
 戦闘機とロボットの操縦を同じコックピットで行うため、中央に操縦桿があり左右にレバーがならんでいるという複雑な構成になっている。ただし、コンピュータのサポートが充実しているようで、ペダルと左右のレバーだけで基本的な操作が可能となっている。

 ガンダムは合体した状態でも腹部のコックピットのハッチが開き、出入りができるようになっている。
 ザクでは手のひらに乗ってコックピットに乗り込んだり、ズゴックでは昇降用にハッチ兼エレベータが装備されていたりするが、ガンダムはそのような乗り込みのためのギミックはなく、ホワイトベース以外では寝転んだ状態でコックピットに乗り込むようになっている。
 このコックピットへの出入りでガンダムの大きさが表現される。逆に言えば、他にはほとんどガンダムの大きさが理解できるシーンはない。前述の通り、劇中で大きさが安定しない理由はここにもある。
 頭部にコックピットを置くよりも、安定した腰部に置く方がリアリティはあるが、キャラとの対比が分かりづらくなる。「太陽の牙ダグラム」や「SPTレイズナー」は頭部にコックピットを置き「マジンガーZ」へ回帰した。人間との対比がはっきりして大きさが認識できるようになるため、逆に感覚的なリアリティは高まっている。

腰回り

 ガンダムの股間は前に張り出しており、上部は赤地に黄色いVの連邦マークがあり男根を意識させる。その後もガンダムシリーズには男根的な股間があり、特に∀ガンダムに顕著だ。∀ガンダムの場合は、股間に透明なキャノピーのコックピットがあり大きさも分かりやすくなっている。
 この連邦マークの下にはフィルムが内蔵されていて、それをつかうと大気圏突入ができる。これは盾の項で語った通りで、汎用性が高いにも程がある。

 腰の装甲はまるきり箱で、とてもではないが自由に足が動せるようなデザインではない。
 劇中では、腰の装甲が曲がったり無くなったりするのは日常茶飯事で、あれはもう装甲というより半ズボンだと思った方が納得できる。
 肘や足首も結構ひどいが、股関節の自由度の低さはガンダム随一といっても良いだろう。

膝アーマー

 ガンダムの膝には膝当てがある、これはガンダム以前では「大空魔竜ガイキング」などではっきりとデザインされているが、主流は単純に円筒や四角柱が膝の部分でスパっと切れているだけのデザインだった。
 それがガンダム以後は、完全に膝当てありのデザインが主流となり、もはや膝アーマーのないロボットは何か落ち着かないぐらいに定着した。
 これはモビルスーツがパワードスーツ(肘膝アーマーあり)をベースにしたこともあるし、スーツという言葉から鎧をベースにしたことも関係しているとおもう。そもそも、スタジオぬえ版パワードスーツ自身も鎧をモチーフの一つとしているだろう。

ダム

 トニーたけざき言う所のダム(膝下のふくらはぎ部分)もガンダムらしいデザインのひとつだ。
 白い足にあのダムがあるとガンダムにしか見えないぐらいの特徴である。ガンダム以前では「マグネロボ ガ・キーン」(足の色は青)、ゲームの「電脳戦記バーチャロンテムジンはあえてガンダムっぽいデザインとして白い足にダムが装備されている。また大河原邦男デザインメカとしては「勇者王ガオガイガー」ガイガーにも白い足にダムがある。

 それまでのロボットは大きな人という発想か、逆に機械の足という発想であった。
 ガンダムのつま先にはスリッパのように赤い部分があり、接地部分を別の材質のもので作ろうという発想(例えばタイヤのゴム)が伺える。ガンダムは人でも機械でもなく、ロボットに必要なデザインという地点に立ったデザインが行なわれているのだ。
 しかしその発想は新しすぎたのか、ガンダムの劇中でも、設定通りなら長方形に近くなる筈なのに、どーみても靴の裏という形に足の裏が描かれることがしばしばあり、まだ「ロボットの足」が確立していなかったと言えるだろう。

 以後、足底部分を別パーツとするこのデザインパターンは繰り返し使われて洗練され、「コードギアス 反逆のルルーシュ」ランスロットなどにも見られる定番デザインとなった。
 今や当たり前すぎて、これ以外のパターンを思い浮かべることが一瞬できなくなる程だ。


その他のガンダムの要素

空前絶後コスプレ向きのロボ

 ガンダムの背中の背嚢をランドセルという、名前自体は間違っていないが、どうしてもその半ズボン風の腰回りや紅白帽(白)と合わせて「おまえは小学生か」と突っ込みたくなる。
 とはいえ小学生は素直に自分のランドセルに定規とアルトリコーダーを差し、ガンダムになりきったものである。ついでに赤い便所スリッパを履けば完璧だ。
「ガンダムはコスプレしやすかったので人気があった唯一のロボ」ではなかろうか。そう、当時全国の小学生はみな「オレがガンダム」だったのだ。

試作機

 ガンダムは試作機である。本来試作機は当然「試しに作ってみた」ものであるから、高い性能を持っている筈はない。そして量産機の方が洗練され強いものだ。実際ガンダムも小説版ではジムの方が高性能であったりする。
 しかしTVアニメ劇中でのガンダムは、新型機が陸続と投入された物語後半にも鬼神の強さを発揮する。そしてガンダムの量産機であるジムは、まるっきり雑魚だ。
 試作機というより、採算度外視で作られたオートクチュールであると考えた方が、劇中での性能を理解しやすい。

 このことは量産型=雑魚の等式を多くの日本人男性に植え付けることになる。
 例えば「芸能人の○○に似ているんだけど、なんだか凡人の空気がある人」を「○○の量産型」とか言ってしまったりする。それほどのインパクトがガンダムにはあった。

効果音

 ガンダムはかなり斬新な効果音を作り出した。
 ザク等を突き刺した際のメカのショート音がベストガンダム効果音だと思うが、その他にも多くの名効果音が産まれ、ガンダム世界のリアリティを作る要素の大きなひとつとなっていた。
 未だに、ガンダムで作られた効果音はリアルロボットの基本であり、そのバリエーションが使われ続けていると言っていいだろう。
 と思っているが、効果音についてはあまり研究されている書籍やCDなどがなく、実際のところ様々な効果音が、ガンダムのオリジンであるのかどうかは良く判らない。

構造材

 ガンダムはルナチタニウム合金でできている。放映当時は超合金の玩具が流行だったので、そのあたりを押さえた設定だ。劇中は「なんか凄いもの」以上の説明は特にない。
 後にこの合金はガンダリウム(ガンダニウム)合金と呼ばれるようになるが、このスーパーロボットっぽい響きで、ますますSFから遠ざかっている。

ガンダムのデザイナは誰だ

 ガンダムのメカニックデザインは一応、大河原邦男となっているが、実際は安彦良和が主体となって作られたのではないかと思われる。腰の黄色の四角(ザンボット3クラッシャージョウの服に見られる)など、随所に安彦良和っぽいデザインがあるし、あのカラーリングも安彦良和が(一晩で)考えたという話だ。また、多くのポスターは安彦良和によって描かれている。アイキャッチなどの決め絵の多くも安彦良和が描いたものと思われる。
 全くの余談だが、この腰の四角はガンダムシリーズには残らず、勇者シリーズや意外な所では「超獣機神ダンクーガ」に受け継がれている。
 安彦デザインは現場では「カッコいいが描きにくい」と言われていた。安彦良和はメカをキャラクタの延長として描くため、MSはその名の通り服的な線となり機械的整合性は無視される。そのウソのつき方は凡人には「高度すぎる」のだ。
 有り体に言って、量産のための絵でなければいけないアニメに使うには安彦良和は絵が上手すぎるし、あくまでも絵として描くので立体(玩具)にしづらいという欠点もあった。

 そこで自身で絵の凡才と言う大河原邦男が、線を減らして描きやすく立体の把握しやすいデザインにリファインした(設計図的な)玩具用の設定が作られ、さらに場合によっては安彦良和によるアニメ設定が起こされたという流れらしい。
 そして監督である富野喜幸もMSデザインには多く関わっていたし、当然スポンサーの意向も多く盛り込まれていた。またスーパーバイザーとしてスタジオぬえの果たした役割も大きい(前述のパワードスーツはぬえ経由のアイディア)
 ガンダムに限ったことではないが、TVアニメのメカデザインは簡単に誰のデザインと言い難いものがある。

 大河原邦男デザインの「宇宙魔神ダイケンゴー」は、かなりガンダムと近いデザインなのだが、どうにもダサくて「ガンダムのぱちもん」にしか見えないのは、やはり安彦良和が噛んでいないからだろう。
 大河原邦男は要望を素直に取り込むタイプのデザイナーであるため、組む相手によってデザインの善し悪しの差が激しい。


パワーアップ

 パワーアップといえば、「マジンガーZ」ジェットスクランダーのような分かりやすい追加パーツや追加武器と相場が決まっている。
 この路線としてはGアーマーがある。ガンダムはGアーマーとして、あるいはGファイターに乗って飛べるようになるのだから、間違いなくジェットスクランダー路線だ。
 それと同時に本体に強化パーツも組み込まれたが、これは殆ど変化を感じさせなかった。
 ガンダムウイングというなんか聞いたことのあるような追加装備も考えられていたそうだが、ホント取り入れられなくてよかった。
 映画版ではGアーマーはコア・ブースターと入れ替えられてなくなっている。Gアーマーの方が色々組み合わせられて面白いのに…。

 もう一つのパワーアップはマグネット・コーティングだが、外観に特に変化はなく拍子抜けした記憶がある。
 ただ、演出だけでパワーアップを表現しようというのは、極めて挑戦的なことであったし成功もしていたが、やはりそれは制作者的にも視聴者的にも高度にすぎるし、折角パワーアップするなら玩具も売りたい。そんなわけで、その後ロボットアニメのパワーアップも結局視覚的なものが主流である。
 ちなみに、個人的にはアムロの父であるテム・レイの機械でもパワーアップできたんではなかろうか?という疑問を今も捨てきることができないでいる。ちょっと狂ってるぐらいの人が凄いの作りそうだし。そもそもガンダムの設計者だし。


まとめ

 ガンダムは画期的なロボットだった。しかしそれ以前のメカの延長線上に存在し、突然変異のメカではない。
 格好良さの典型的な部分を上手く集積させたものではあるが、それは子供の感じる格好良さの方に軸は大きく振れており、それが逆に格好わるいメカでもある。
 つまりガンダムそのもののデザインやギミックが、ザクレロやオープニングの歌詞並みに世界観プチ壊しではある。このような玩具(スポンサー)の要請から「戦闘メカ ザブングル」や「機甲界ガリアン」のように、主役マシンが世界から浮いてしまうことはままある。

 ガンダムの面白さは、世界から浮いていること自体が特別製であることを強調し、そのロボットの魅力となっていることだ。
 作中でも、ガンダムがスーパーロボットであるということは認めつつも、ガンダム一機が活躍したからといって戦局に影響はない、という冷静な立場をことあるごとに強調している。
 もし戦争の中にスーパーロボットがいたら、というifとしての面白さとも言える。