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この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

森見登美彦日誌RSS

2017年04月19日

[] 「シャーロック・ホームズの凱旋」(小説BOC


 

小説 - BOC5

小説 - BOC5


 中央公論新社の小説BOC第五号に、森見登美彦氏の連載「シャーロック・ホームズの凱旋」の第三話「マスグレーヴ家の儀式(前篇)」が掲載されている。あいかわらずシャーロック・ホームズ氏は有益な推理をいっさい披露しない。

 

 「ワトソン君。君はどう思う?」

 ふいにホームズに声をかけられ、私は我に返った。

 いつの間にかホームズはベッドで仰向けになり、下宿の天井を見上げていた。その胸には『イケてる世の捨て方』を抱いている。

 「……なにが?」

 「隠居するのにふさわしい場所を考えていたのさ。たとえば大原はどうだろうか。ヴィクトリア朝京都の忌々しい喧噪もスモッグもあそこなら届かない。心穏やかに生きていける。苔むしたわらべ地蔵たちとぷつぷつ語り合い、そして蜜蜂を飼うんだ」

 「どうして蜜蜂なんだよ」

 「ハチミツは身体にいいんだぜ。ローヤルゼリーも」

 「そりゃそうだが」

 「あるいは吉田兼好みたいに竹林に庵を結ぶ手もある。いかにも世を捨てた感じがするだろう。洛西には立派な竹林がいくらでもあるさ。小さな庵に立て籠もって毎朝タケノコを掘る。そして若竹煮を主食にして生きていく。いや待てよ、若竹煮だけでは栄養が不足するな。やっぱり蜜蜂も飼ったほうがいいかな。若竹煮とローヤルゼリーだけで人間は生きていけると思うかい?僕は栄養学には不案内だからね、医師としての君の意見が聞きたい」

 「栄養はともかくとして、そんな退屈な生活に君が耐えられるとは思わないね。君に隠居は向いてない」

 「失敬だな、ワトソン君。隠居する才能ぐらいあるさ」

 「何を言ってるんだ、ホームズ。まだ君の人生は始まったばかりなんだ。これからバリバリ活躍するんだ」

 「……なるほどね。で、それはいつからなんだ?」

 ホームズは吐き捨てるように言うと、本を放り投げ、布団にもぐりこんで背を向けてしまった。

 「僕の活躍はいつから始まるんだ?教えてくれ!」

 その悲痛な叫びには私も返す言葉がなかった。

 

2017年04月04日

[] テレビアニメ有頂天家族2」関連書籍


 アニメ有頂天家族2」の開始にともなって、『有頂天家族 二代目の帰朝』が文庫化される。

 もろもろ、よろしくお願いいたします。

 

 


 

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)


 

 

 


 


 

有頂天家族フィルムコミック(上)

有頂天家族フィルムコミック(上)

 

 

有頂天家族 Blu-ray Box

有頂天家族 Blu-ray Box

2017年04月02日

[] 映画「夜は短し歩けよ乙女」関連書籍


 森見登美彦氏は奈良にて春の空をボーッと眺めている。

 映画「夜は短し歩けよ乙女」とTVアニメ有頂天家族2」が始まろうとしているとは思えないほど、奈良はのどかである。登美彦氏は淡々とした日々を送っている。次作『熱帯』を執筆するか、のりあげた暗礁に寝転がってボーッとしているかである。

 関係者の皆様の一助となるべく宣伝をしておく。


 以下、映画「夜は短し歩けよ乙女」の関連書籍である。

 ちなみに『夜は短し歩けよ乙女』が角川つばさ文庫にもぐりこんだのは驚くべきことである。

 「大丈夫なんだろうか」とチラリと思わぬでもないが、しかし丁寧な注釈や総ルビ、挿絵、ほかにも丁寧な仕掛けがあり、たいへん読みやすくステキな本になっている。単行本版・文庫版を読まれた方も、ぜひ一度手に取っていただけると幸いである。


 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)


 

夜は短し歩けよ乙女 オフィシャルガイド

夜は短し歩けよ乙女 オフィシャルガイド


 


 


 


 ついでに『四畳半神話大系』関連である。

 こちらも合わせて宜しくお願いいたします。


 

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)


 

四畳半神話大系 Blu-ray BOX

四畳半神話大系 Blu-ray BOX


 

四畳半神話大系オフィシャルガイド

四畳半神話大系オフィシャルガイド


 

四畳半神話大系公式読本

四畳半神話大系公式読本

2017年03月29日

[] 10周年の終わり、広島本大賞、「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」


 2017年の四分の一が終わろうとしている。

 この三ヶ月、森見登美彦氏は近年まれに見る多忙ぶりであった。年明け早々の下鴨神社におけるイベントを皮切りに、直木賞関連のもろもろ、10周年記念イベント、劇場アニメ夜は短し歩けよ乙女」のもろもろ、テレビアニメ有頂天家族2」のもろもろ……。

 色々なことがありすぎて、当日誌を更新することもできなかった。


 三月上旬に叡山電車さまの全面協力のもと開催された10周年記念イベント「ぐるぐるミステリーツアー」によって、登美彦氏の四年近くにわたった「10周年」は終了した。時空の歪みは修正され、登美彦氏は14周年目へ跳躍して一気に老けこんだのである。10周年記念作品『聖なる怠け者の冒険』『有頂天家族 二代目の帰朝』『夜行』でお世話になった朝日新聞出版幻冬舎小学館の皆様に御礼を申し上げる。そしてご応募いただいた皆様に御礼を申し上げる。

 四年も立て籠もれば「10周年」にも愛着が湧く。

 登美彦氏は一抹の淋しさをおぼえている。


 聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫) 有頂天家族 二代目の帰朝 夜行


 さらに、登美彦氏の小説『夜行』が広島本大賞をいただくことになった。

 「尾道をちょこっと描いただけなのに……」

 と、登美彦氏はたいへん恐縮している。

 五月、登美彦氏は授賞式のために広島へ出かける予定である。


 劇場アニメ夜は短し歩けよ乙女」は四月七日全国公開予定である。 

 来場者特典として「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」という掌編小説が期間限定で配布される。

 詳しくは公式サイトを参照していただきたい。 

 http://kurokaminootome.com/#news

 この掌編は「先輩から乙女への手紙」「乙女から先輩への手紙」という一対で構成されている。いわゆる書簡体小説である。

 しかし製作委員会という黒幕の悪辣な陰謀によって、公開第一週は「先輩から乙女への手紙」、第二週は「乙女から先輩への手紙」というように期間を区切って配布されることになった。これこそ資本主義の横暴、血も涙もない大人の都合というべきである。原作者としてまことに遺憾でありそのような非浪漫的策略は御免こうむる!と言うべきところを登美彦氏はスンナリ承知して黒幕と手を結んだ。このようにして人間は堕落していく。

 読者諸賢のご寛恕を乞う。

 「銀幕篇」と大層な題名がついているものの、姫りんごのごとき、小さな小さな小説である。

 本篇のほんのオマケとして楽しんでいただければ幸いである。

2017年01月31日

[] 登美彦氏、フロンティア文学賞候補作を読み耽る


 一月の終わりである。

 我らが2017年もすでに「十二分の一」を終えた。

 森見登美彦氏は時間に追われるのを嫌悪する者だが、しかし年頭に2017年氏から言われた言葉が頭からはなれない。

 彼はこう言ったのである。

 「すでに新年は始まっている。この確固たる事実を受け容れることです。そして、これまでないがしろにしていた『一月から三月』にこそ、いっそ燃え尽きる覚悟で努力しなさい。なにごともスタートダッシュが肝心。やらねばならぬこと一切を春までに終わらせればビッグな男になれます」

 登美彦氏はカレンダーを見上げて呟く。

 「もう二月か……」


 そんなわけで焦ったり開きなおったりしながら、登美彦氏はフロンティア文学賞候補作を読み耽っている。

 先日、いくつもの大作が東京からドサッと送られてきたのである。

 残念なことに昨年は「大賞なし」という結果に終わったので、登美彦氏は「今年こそは!」と願いながら読んでいる。選考委員冲方丁さんと辻村深月さんと会うのは楽しみなことである。

 それから、前々回のフロンティア文学賞を受賞した阿川せんりさんの新作も出た。受賞作『厭世マニュアル』と同じく、第二作『アリハラせんぱいと救えないやっかいさん』にも、「阿川節」というべきものが漲っている。

 どうぞ宜しくお願いします。

 

 

厭世マニュアル

厭世マニュアル