Hatena::ブログ(Diary)

この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

森見登美彦日誌RSS

2015年01月24日

[] 森見登美彦氏、新年会に出る


 森見登美彦氏は東京へ出かけていった。

 二月に刊行予定の『有頂天家族』の続編について、綿矢りささんと対談するためである。


 対談が終わったのち、万城目学氏も合流して新年会を行う予定であった。

 しかし万城目氏がヌルリと電車に乗ってこちらへ向かっている最中、「ワタクシめがお店を予約しました」と堂々宣言していたはずの綿矢さんが実は予約していなかったという不可解な事実が判明し、いささか状況は混乱した。

 登美彦氏が考えるに、綿矢さんは「新年会の準備をしなくてはならぬ」と責任を感じて店の予約を繰り返し脳内でシミュレーションするうち、妄想と現実の境界が融解する「りさランド」に迷いこんだのであろう。その戦慄の「りさランド」では、妄想で予約することと、現実に店へ連絡して予約することが、等価交換の関係にあるという。かくして妄想上では予約がなされたが、現実に予約はなされなかったのである。

 これぞ妄想力のなせるわざというべきである。


 やがて彼らは、同席した編集者の機転で確保された新年会場所に移動した。

 「万城目さんは大丈夫でしょうか」

 と、綿矢さんは心配していたが、

 「どうせ万城目さんだから大丈夫でしょう。気にしない気にしない」

 と、登美彦氏は綿矢さんを慰める一方で、万城目氏をないがしろにする発言を重ね、先に乾杯しようと言ったりするのであった。

 お店の入り口でドアの鳴る音がすると、綿矢さんは「あ、万城目さんが」と言って立ち上がって見に行ったが、「違う人でした」と帰ってきた。

 「気にしない気にしない」と登美彦氏はあくびをしていた。


 そうして登美彦氏が気にしないようにしていると、万城目氏が妖怪みたいな感じでヌルッと現れた。

 万城目氏は、とりあえず綿矢さんが妄想の中だけでも店の予約を完了し得たことを「まあ、よく頑張りましたわ」と評価したものの、「まあ、まだそのレベルです」と述べた。

 「次こそはきっと、ちゃんと予約してみせます」と綿矢さんは言った。

 そこで万城目氏は、もう何年も前の話をまたぞろ引き合いに出した。森見登美彦氏と京都焼き肉を食べようという話になったとき、登美彦氏が「行きましょう」と言って紹介した店がとっくに潰れていたという間抜けな想い出である。万城目氏が、綿矢さんと登美彦氏の現実感覚の崩壊ぶりを鋭く指摘して、己の社会人としてのシッカリぶりを誇示せんとするのはいつものことである。

 社会人として形勢不利な登美彦氏としては、「店の予約を成し遂げた自分を幻視する能力も、二年以上前に潰れた焼き肉店を幻視する能力も、きっと小説的には役立つに違いない」と期待するほかない。

 「これからも崩壊していこう」と登美彦氏は決意をあらたにするのであった。


 というわけで、愉快な新年会であったそうな。

2015年01月08日

[] 2015年 年頭之感




謹賀新年




 森見登美彦氏は妻といっしょに、玄関先にある信楽焼きの狸を磨いていた。

 一年の埃を積もらせた大小二つの狸は、まるで近年の登美彦氏のごとく光を失って薄らぼんやりとしていたが、登美彦氏と妻がキュッキュと磨いてやると、あたかも信楽で地上に降り立ったあの日のような輝きを放った。

 「磨けば光るというものだなあ」

 「ぴかぴかですねえ」


 そうして彼らが狸を眺めていると、2015年氏がやってきた。

 「やあ、どうも。じつにステキな狸でございますなあ」

 「これはどうも、2015年氏」

 「じつに寒いですな」

 「どうか中にお入りください」

 「それではお言葉に甘えて、ゴホゴホ。どうも風邪気味で困っちゃう」

 登美彦氏は2015年氏を居間に招き入れ、自慢のカズノコを御馳走した。登美彦氏は人生で初めて、カズノコの薄皮を剥いて味付けをしたので、すっかり得意になっていたのである。「どうです、うまいでしょう?」

 2015年氏は「うまいうまい」と言ってポリポリ食べて酒を飲むと、グッと身を乗りだした。

 「それで森見登美彦氏の今年の目標は?」

 「そんなことを言わせに来たのか君は」

 登美彦氏はムッとした。「そんなの知らないよ。おとなしくカズノコ食べてろ」

 「ぽりぽり。しかし二月頃には『有頂天家族』の続きが出るともっぱらの噂ですな」

 「かもしれん」

 「その次の『夜行』も書いているでしょう。これも今年には出るでしょう」

 「かもしれん」

 「ついに魔の十周年から解放されるときが来るわけですよ。これは2013年氏から2014年氏への、そして2014年氏から私への引継ぎ事項でしてね。本来なら2013年氏が片を付けてるはずの問題なのに」

 登美彦氏は腕組みをして言い返した。

 「しかしこういうことは、川の流れに身をまかせるかのごとく、いわば『ひとりでに為る』という感じでなくちゃ。目標を立ててガリガリ頑張るべきものではない。もう私はそういうことはできない。誰かに呪いをかけられたんだな。目標を立てても達成できないことが分かった。失望するだけであることが分かった。失望をするとやる気がなくなるだろう。やる気がなくなるのが一番悪いことだろう。だとすると、はなから目標など立てないことが一番いいのだ。今を生きる。今を生きるだ!」

 「なるほど。説得力を持たせてきましたな」

 2015年氏はトロンとした目で登美彦氏を見た。

 それから2015年氏はゴホゴホといやな咳をした。

 「どうも喉がイガイガする。カズノコのつぶつぶが喉にひっかかったかも」

 「うちのカズノコはそんなへんてこなカズノコじゃないぞ」

 「おたくカズノコの悪口を言ってるわけではない。なにやら体調が悪いのですよ」

 「おや、2015年氏も風邪をひくのかい?」

 「どうも、なんだか熱っぽい」

 2015年氏はゴホンゴホンと咳をして、そんなことを呟いた。


 翌日の一月二日夜から登美彦氏は発熱して倒れ、続いてその妻も倒れた。

 病院が開くのを待って、這う這うの体で出かけていくと、インフルエンザであることが判明した。2015年氏のもたらした黴菌によって、夫婦そろって高熱にうなされているうちに、楽しかるべき三が日は過ぎ、盛大に祝われるべき登美彦氏の誕生日兼結婚記念日も過ぎた。

 ようやく意識が戻り始めても、なにをする元気もなく、布団の中で『聊斎志異』を読むのがやっとである。登美彦氏が第二巻を読んでいると、妻が第四巻を読みだした。

 「この『聊斎志異』というのはとても面白いですねえ」

 「すごく面白いだろう。いくら読んでも忘れてしまうのが面白い」

 「同じような話がたくさんですね」

 「たいてい貧乏な学生がいて、美人といちゃいちゃして、その美人がキツネか幽霊なんだ」

 「ステキですねえ」


 かくして――。 

 登美彦氏がようよう布団から這い出して衰弱した身体で家の中をさまよい始めたとき、すでに2015年の世の中は動き始めていた。

 「2015年に完全に遅れを取ったぞ」

 病い明けの登美彦氏は呟いた。

 「明けましておめでとうございます」

2014年11月14日

[] 『聖なる怠け者の冒険』、京都本大賞をいただく。

 

 聖なる怠け者の冒険


 登美彦氏は『聖なる怠け者の冒険』が京都本大賞になったと聞いた。

 しかしながら、登美彦氏が書いているのは偽京都である。

 「ひょっとすると京都本大賞を貰ったのでは?」

 「狸たちが授与しているのでは?」

 登美彦氏はそのように考えて本気にしなかった。

 よかろう、彼らがその気ならば期待にこたえて、森見登美彦を授賞式へ送りこむべきであろう。森見登美彦偽授賞式京都本大賞を貰うならば八方毛深く、丸くおさまる。登美彦氏はそうするつもりだったのだが、有頂天家族第二部の書き直しに忙しくて、適当な影武者を見つける暇がなかった。

 「ちぇっ、しょうがないなあ。狸どもめ!」

 そうして登美彦氏が化かされる覚悟で出かけていくと、ぽんぽこっぽい人たちが大勢いて狸気濛々としていたので、登美彦氏は「ほら見ろ。やはりな」と思った。しかし大賞はホンモノであった。狸っぽいのは、ぽんぽこ仮面のお面をつけた書店員の方々だったのである。

 登美彦氏はおおいに恐縮した。

 下記、「みんなのミシマガジン」で授賞式について触れられている。

 http://www.mishimaga.com/hon-kobore/048.html


 登美彦氏はユッタリした記者会見っぽいものをしたり、書店員の方々と喋ったりして、記念品をもらって帰った。

 なにしろ小説はふわふわしたもので、まるで青空を流れていく白い雲を作るようなステキに地に足つかない仕事であるから、この記念品のように手で触れて棚に飾れるカッチリしたものを貰えることを登美彦氏は喜ぶ。

 そういうわけで登美彦氏は記念品を仕事場に飾った。

 へんてこなものがたくさん写っているのに、肝心の受賞作が写っていないのは、写すのを忘れたからである。

   

 f:id:Tomio:20141114224218j:image:w360


 ところで本日、登美彦氏が妻といっしょに近所のクリーニング店へ出かけていくと、店員の人に「第二部が出るというから、『有頂天家族』の第一部を読んで復習してます!」と言われた。

 このような方に出逢うと登美彦氏は恐縮するしかない。「ありがたやー」

 ちなみに登美彦氏は、その後卓袱台をひっくり返すようなこともなく書き直しを進め、すでに『有頂天家族』第二部の執筆を終えた。登美彦氏は身体中にまとわりついた狸の毛を払い、天狗や狸がうごうごする偽京都にサヨナラして、次なる新天地を求めて早くも旅立ちつつあるが、担当の編集者氏はこれからいよいよ頑張らねばならない。おつかれさまである。

 以上、「ちゃんと仕事をしてます」という、さりげないアピールに他ならない。

2014年10月06日

[] 森見登美彦氏、新刊を待つ。

 

 よつばと! 12 (電撃コミックス)


 森見登美彦氏は『よつばと!』の新刊を待っているが出ないのである。

 しかし「新刊が出ない」ということについては、色々な人が色々な事情を持っていることを、登美彦氏はいやというほど知っている。

 もっと我々はやさしさを持たねばならぬ。


 「スケールの大きな古事記的時間に身をまかせるしかないな」

 登美彦氏は言ったが、妻は「いやです」と言った。

 「なぜなら『よつばと!』が読みたいのは厳然たる事実」

 「贅沢を言ってはならん」

 「どうして言ってはいけないの」

 「そもそも私に人様の新刊を『待っている』などと言う資格があろうか。『有頂天家族』の続編は、そもそも昨年の夏に出版され、アニメ化の勢いに乗じておおいに盛り上がるはずであった。それがどうだ。アニメ化のタイミングを逃してビジネスっ気のなさを満天下に宣伝したばかりか、アニメ放映が終了した秋になっても出ず、もはや完全に手遅れとなった冬になっても意地のように出ず、ふたたび季節がめぐり二度目の夏がやってきてもなお出ない。調子にのって『十周年記念作品』などという愚かな宣言をしてしまったばかりに、本が出ないかぎり十周年に終止符を打てず、十周年という恐るべき時空に閉じ込められたまま歳もとれない。迂闊なことをしたものだ。かくも情けない三十路のピーターパンが人様の仕事ぶりに口を出すとは言語道断!」

 登美彦氏はたいへん怒った。

 そうすると妻がもっと怒った。

 「よそはよそ!うちはうち!」


 しかし実際のところ、いつまでも十周年を延長しているわけにもいかないのである。

 「そろそろマジメにやらねばならぬ」

 そういうわけで登美彦氏は禁断の儀式を始めた。

 この儀式とは、生贄たる「ひこにゃん」のぬいぐるみを中山式快癒器に寝かせて神棚にそなえ、その前で「傑作おどり」を踊ることによってインスピレーションの訪れを促すものである。

 登美彦氏の一日の大半はその儀式に費やされた。


 その甲斐もあって、『有頂天家族』第二部の初稿は本日をもって完成した。

 これからは地道にコツコツと手直しの日々が続くが、まさかこの期に及んで卓袱台をひっくり返すという大技が許されるはずもなく、また登美彦氏にそんな元気はない。

 いずれ来年にでも、キチンと世に出ると信じたいものである。

2014年09月04日

[] 森見登美彦氏、アニメ有頂天家族」イベントへ出かける


 続篇のことはともかくとして、下記のようなイベントが開催されるのでお知らせする。

 続篇のことはTO・MO・KA・KUとして。。。 



有頂天家族」トーク&上映会


 2013年に放送され、文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した森見登美彦原作のTVアニメ有頂天家族」から、物語のキーとなる弁天様に関係する回をセレクション上映。上映後には、アニメ弁天役を演じた声優能登麻美子さん、吉原正行監督、堀川憲司プロデューサー(P.A.WORKS代表)に加え、スペシャルゲストとして原作者の森見登美彦氏を加えたトークショーを実施します。


有頂天家族」トーク&上映会〜弁天セレクション〜

【日時】2014年9月21日(日) 13:00開場

【会場】京都コンピュータ学院・京都駅前校 大ホール(京都市南区西九条寺ノ前町10-5)

【スケジュール】

13:30〜16:30 本編セレクション上映【1話、3話、4話、5話、6話、12話、13話(最終話)】

16:30〜17:00 トークセッション

【出演】

能登麻美子弁天役)、吉原正行監督、堀川憲司プロデューサー

スペシャルゲスト:原作者・森見登美彦

【入場料】前売2,500円/当日2,800円

【チケット】チケットぴあセブンチケットで販売中

全席指定・途中入退場可能


 イベント公式HP

 http://www.kbs-kyoto.co.jp/contents/ticket/2014/ticket_037105.htm