登美彦氏、生きてる。


 どれだけの人が気にしている問題か分からないが、ともかく森見登美彦氏は生きているという厳然たる事実をここに報告するものである。
 そして、もはや話題にすることさえ憚られるが、登美彦氏はいま『有頂天家族』第二部のえんえんたる書き直しを経てクライマックスにさしかかり、いよいよ耳から毛を噴きそうな思いをしている。
 「え、まだ書いてるの?」と呆れる人もあろう。
 しかし気高い登美彦氏は言い訳をしないのである。
 言い訳のしようがないがゆえに。
 しかしこの広い世の中には、この登美彦氏の気高さを讃えてやろうではないかというステキな人がいないともかぎらない。登美彦氏はこの世のどこかで清らかに生きているであろうその人の存在にすべてを賭ける。トモダチ。握手。


 本来ならば『有頂天家族』第二部の刊行めどが立った時に、煮汁のように魂から染み出すヨロコビとともにこの日誌を更新しようと筆者は考えていたが、登美彦氏がちんたらぽんたらやっているものだから、まったく更新することができぬまま早五ヶ月。近所のTSUTAYAで断片的に聴き憶えた「アナと雪の女王」の歌に合わせて台所で妻の名を朗々と繰り返して遊んでいるうちに早五ヶ月。2014年も折り返し点に至った。
 さすがの登美彦氏も愕然とした。
 「許すべからざること山のごとし!」
 登美彦氏は奈良盆地の山々に叫ぶのだ。
 奈良の山々にも責任の一端はある、と登美彦氏は考えているらしい。
 「ないとは言わせませんぞ」
 登美彦氏は呟く。
 「この恐るべき、雄大古事記時間め……」

 
 登美彦氏が抱える幾多の問題は脇に置く。
 筆者にはお知らせすべきことをお知らせする義務があるのだ。
 以下、お知らせすべきことである。


 

森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)

森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)

 かつて「とんぼの本」の一冊として出版された『京都ぐるぐる案内』が編集者氏の奮闘によってギュッと圧縮され、携帯にたいへん便利となった。
 しかしながら、森見登美彦氏は現在小説家としてキャリアがぐるぐるしているのであって、もはや京都をぐるぐる案内している場合ではないのではないか。そう指摘する人もあるだろう。筆者もまったく同感である。握手。

 
 

 登美彦氏の母親の愛読書であり、登美彦氏が『夜は短し歩けよ乙女』にチラリと登場させた愉快な本。
 登美彦氏は帯にコメントを寄せている。 
 

 

深泥丘奇談 (角川文庫)

深泥丘奇談 (角川文庫)

 登美彦氏が解説を書いた綾辻行人氏の本。
 にゅるにゅるした偽京都が現れる小説である。解説はいわば「にゅるにゅる案内」である。

 
 

 
 アニメ「四畳半神話大系」がblu-rayボックスとなった。 
 登美彦氏は「まさかワタクシがblu-rayボックスをいただけないということはありますまい?」と編集者にイヤらしく念を押した。
 その甲斐もあってちゃんと貰えたので登美彦氏はおおいに満足したのである。


 

 アニメ「四畳半神話大系」の湯浅政明監督の新作「ピンポン」。
 登美彦氏は毎週「すごいのう」と脳味噌を揺さぶられながら観ていたという。
 たんに「楽しく観ていた」というだけであって登美彦氏自身は何ら関係ないのだが、湯浅氏の素晴らしい作品なのでここに紹介する次第である。
 

 報告はとりあえず以上である。
 また会う日まで、サヨウナラ。