Various Artists 「Cuban Jam Session under the direction of Julio Gutierrez vol.1 & 2」

アンダー・ザ・ディレクション・オブ・フリオ・グティエーレス Vol.1&2

  • レコード・コレクターズ9月号の山本幸洋のレヴューで興味を持って購入。曰く「制約にとらわれずジャム・セッションの良さを刻んだ名品も確かにあって、ジャズならマイルズ・デイヴィスの51年『ディグ』、キューバンなら56年の本盤が当初の代表作」、「仕事がはねた後のミュージシャンが気ままに演奏していたものに音楽価値、商品価値を見いだしたフリオ・グティエーレスが音楽監督を担った本盤は、キューバ音楽史上の重要作」、「本CDはLPの2in1で、第5集まであるキューバン・ジャム・セッション・シリーズのうち、真にアフター・アワーズらしい開放感のある名企画」。
  • レコード・コレクターズのレヴューは更に「最高なのが『ペルフィディアのテーマで』と『デスカルガ・カリエンテ』で、特に後者、名手ペルチーンのピアノのリフに乗った伸びやかな各ソロはもちろん、数人の女性が囃し立てる間の良さとか、即興のコーラス、それに応えるミュージシャンとの呼吸が最高に楽しい。女性たちは、たぶん関係者だと思うのだが、セッションを謳歌しているのがカッコいいし、普段通りの雰囲気をレコードに刻もうとした発想がナイス!掛け値なしの名盤だ」と続いていて、読んでいるだけでワクワクしてくる訴求力の高いレヴュー。
  • ライナーも実に素晴らしく、「チャ・チャ・チャとソン・モントゥーノの中間的なリズムで、徐々に盛り上がっていく感覚はキューバ特有」、「チャ・チャ・チャのリズムで展開されている。しかし、ブラスのリフはマンボで、その2つのリズムの相乗効果が面白い」、「6/8の要素が強くスピード感も早い、ルンバ・コロンビアといわれるスタイル」といった、当該ジャンルの聴き巧者による具体的な解説は大変に好み。
  • 山本幸洋イチ推しの「デスカルガ・カリエンテ」がやはり伸び伸びしていて和みます。曲前のリフの合わせはソロの交代サインの確認でしょうか。
  • ラテン音楽におけるジャム感覚というのが分かったような分からないような。エモーションの発露なり技量の披瀝なり、プレイヤー個々の演舞性が感じられないのがいまひとつピンと来ないポイントだと思うのですが、「キューバは多くのスタイルやリズムを産んだ音楽大国であるが、他のラテン諸国と同様、音楽は大衆のものであり、歌や歌心を聞かせ、ダンスを促するのが本筋であるという考えが今でも根強い」という音楽文化の違いなのか、ソウル/ブルース的なマナーでないと個人的に感知できないだけなのか。
  • 「音楽は大衆のものであり、歌や歌心を聞かせ、ダンスを促するのが本筋」と言いながら、打楽器アンサンブルの「テーマ・フォー・コンガ」や「バタ・リズム」など、ひたすらハードボイルドで、これが大衆エンターテインメントとして成立する世界に疎外感を覚えざるを得ません。
  • この心理的な距離に鑑みれば、サルサには親近感を覚えるところもあり、サルサ米国音楽、という慣用的な説明にも納得ができるような気がします。