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映画評論家町山智浩アメリカ日記

町山智浩の映画解説リストです。
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ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2004-02-28

TomoMachi2004-02-28

メル・ギブソンが『パッション』を作ったのは、反ユダヤで原理主義カソリックの父の影響だけじゃないだろう。

この男は昔から延々と似たような役ばかり演じ続けてきた奇妙な俳優だ。

まず世間に登場した『マッドマックス』は妻子を殺されて復讐鬼と化した警官。

リーサル・ウェポン』は妻を亡くして自殺志願の狂った警官。

『ブレイブハート』では妻子を殺されて復讐鬼と化したスコットランド人。

『パトリオット』では妻子を殺されて復讐鬼と化したアメリカ入植者。

スケジュールの都合で出られなかった『グラディエイター』では、

妻子を殺されて復讐鬼と化したローマの将軍。

そして『サイン』では妻を亡くして…。

いろんな映画に出てるようで、実はキャラクターは同じだ。

そして、妻を殺された復讐をしているうちに、『マッドマックス/サンダードーム』では再生した人類の伝説のなかで英雄になり、

『ブレイブハート』ではスコットランド独立の英雄になり、

『パトリオット』ではアメリカ独立の英雄になり、

『グラディエイター』では…。

と、国家的英雄に何度も何度もなっているわけで、

まあ、次に神武天皇を演じると聞いても驚かないくらいの国造りの英雄俳優なのだ。

こうなると自分が人類を背負ってるような錯覚に陥るのもしかたあるまい。

何が言いたいかといえば、もしメルギブはあと十歳若かったら、絶対に自分でキリストを演じたかったはずだということ。

そもそも『ブレイブハート』では「彼はすごいぜ」とか自分自分を褒め称える演出をしてるわけで、

常人には考えられないエゴ、オレ様感覚なのは間違いない。

プロモで十字架背負ってキリストを演じて「いいかげんにしろ」と総スカンを食ったパフ・ダディとあまり変わらない。


それでもカソリックに対する忠誠だけは本物らしく、

メルギブは共和党支持の右翼にもかかわらず、

神学校に通って神父を目指していたカソリック左翼のマイケル・ムーアと、

ローマ法王がイラク攻撃に際してブッシュを批判したという一点で結びついて、

ブッシュの再選を阻止するためのプロパガンダ映画『華氏911』のプロデュースを引き受けた。

動機はどうあれ、ブッシュ再選さえ防げれば人類のためにはなるのだが。