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映画評論家町山智浩アメリカ日記

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2009-04-21 『ブッシュ』オリバー・ストーン監督インタビュー

町山 『ブッシュ』は2008年10月にアメリカで公開されました。現職大統領の自伝映画が在任中に公開されたのはアメリカでも初めてだと思いますが、妨害などはありませんでしたか?

オリバー・ストーン「妨害はないけど、この企画にハリウッドの映画会社はどこも金を出さなかったね。出資してくれたのは主に香港。あとはオーストラリア、ドイツ、フランスから制作費を集めた」

町山 ブッシュ政権になってから、イラク戦争や政治の現実をテーマにした映画はひとつも当たってないですからね。

ストーン「でも、この映画は2008年11月の大統領選挙までに公開したかった。アメリカ人がどんな男を大統領にしたかを見せて反省させるために」

町山 それなら、どうして2004年のブッシュ再選時に公開しなかったんですか? マイケル・ムーアがブッシュ再選阻止のために『華氏911』を作って、ブッシュと石油軍事産業の関係を暴いた時、あなたは何もしなかった。

ストーン「私はジャーナリストではなく、ドラマティストだ。私が興味を持ったのは、あの間違った戦争に突入してしまったブッシュというキャラクターだ。そのためには2004年の段階ではまだ資料が足りなかった。ブッシュという人間を詳しく研究、分析した本が出版されるようになったのは2005年,2006年だった」

町山 ブッシュを人間として描くということですが、あなたは彼に共感するところがあるのではないですか? 二人とも1946年生まれで、父親の卒業したイエール大学に入れられました。大学では知り合いでしたか? 

ストーン「大学では会っていない。彼はコネで入学したが私は違う。私はブッシュのようなお金持ちのお坊ちゃんではないから、共感(シンパシー)は抱けない。だが、理解(エンパシー)はできる。この映画はブッシュという男の精神分析だ。ブッシュは心理分析的な意見を一切受け付けようとしない男だった。『そんなのサイコバブル(精神分析的なたわごと)だ』と言ってね。それほど拒絶するのは、それほど重要だからだ。だから私はこの映画で、彼の心の中に入って彼の視線で彼の行動の理由を分析した」

町山 それはつまり、父親に対するコンプレックスですね。

ストーン「父ブッシュは、太平洋戦争ではパイロットとして日本軍と戦った英雄だった。石油産業で成功した優秀なビジネスマンでもあり、大統領にまでなった。それにひきかえブッシュは父のコネでイエール大学に入るが、放蕩三昧で成績が悪く、父の会社を任されても経営に失敗、政治家に立候補するがそれも落選する。ベトナム戦争が始まっても州兵になって兵役を逃れたし」

町山 父から「お前は何をやってもダメだ」「がっかりした」と言われ続けたブッシュが酔っ払って父親に「タイマンなら負けないぞ!」と殴り合いを挑む場面は、事実とはいえ悲しいですね。

ストーン「親に頼りきって生きてきたのにな。ブッシュはコンプレックスの塊だ。やり場のない不満と怒りのためにアルコール中毒になっていく。周りから否定され続けたので、自分を守るために、批判的な意見や事実を拒絶する性格になった。人を敵か味方かに分けてしか考えられなくなった。そして最終的には『私に従わない者はみんな敵だ』と発言して対テロ戦争に突き進んだ」

町山 コンプレックスを解消するには父と同じ大統領になるしかなかった。そして父は湾岸戦争の時、フセインを追ってバグダッドまで侵攻しなかった。でもブッシュはフセインを倒せば父を超えられると思った。実は父はイラクに攻め込んだら後始末が大変なことになると思ったから手を出さなかったのに。

ストーン「ブッシュのイラク攻撃計画を知った父はなんとか止めさせようとして、自分の補佐官だったスコウクロフトに命じてウォール・ストリート・ジャーナル紙に『フセインを攻撃するな』という記事を掲載させた。それが自分を諌める父のメッセージだと知って、ブッシュは逆に『ファック・ユー!』とイラクに突入してしまったんだ」

町山 ブッシュのイラク侵攻はチェイニー副大統領にけしかけられたものですが、ブッシュは父の影から逃れるために、チェイニーを父親の代理にしたように見えますね。

ストーン「いいポイントだ。実際、ブッシュはチェイニーにまるで父親に対するような口をきくんだよ。チェイニーを演じるリチャード・ドレイファスは素晴らしいだろ。あの曲がった口(笑)。チェイニー自身素晴らしい悪役だった。まさにダース・ヴェイダーだ」

町山『スター・ウォーズ』のダース・ヴェイダーは息子ルークをダークサイド(暗黒面)に引きずり込むダーク・ファーザー(闇の父)です。チェイニー自身、それを意識していたらしく、テロ容疑者への拷問を容認する際に「時にはダークサイドも必要だ」と発言しています。

ストーン「でもブッシュ自身はチェイニーにはなりたくなかった。彼が憧れたのはレーガンだ。父よりもレーガンを尊敬していると発言している。レーガンも父の代理だ。ブッシュもレーガンのようにカウボーイになろうとした。ひ弱な内面を隠すために」

町山 東部エスタブリッシュメントのお坊ちゃんであるブッシュは30代になるとテキサス訛りとジョン・ウェイン風の歩き方を身につけるようになる。レーガンもまた西部劇俳優にすぎませんでしたが、アメリカ人はレーガンとブッシュをカウボーイと信じました。

ストーン「アメリカ人はカウボーイが好きだ。それでブッシュを大統領に選んだ。8年間も。『群衆の中の一つの顔』(57年)という映画とそっくりだ。南部のカントリー・シンガーがカウボーイ的な話し方で人気を得て、政治的なカリスマになっていく。彼の本性は卑しいが、国民は気づかない。それがアメリカのポピュリズムだ」

町山 カウボーイと共にアメリカ人が愛するものにキリスト教があります。アメリカには「福音派」という聖書を字義通りに信じる熱心で保守的なキリスト教徒がいる。その人口は8千万人から1億人といわれ、ニクソンやレーガンは彼らを共和党の支持基盤に取り入れた。しかし「監督派」キリスト教徒であるブッシュの父は福音派と距離を置いたため、再選されなかった。しかしブッシュは福音派として「再生」し、父に「オレにはあんたよりも偉大な、天にまします父がいるんだ」とタンカを切る。神もまた父の代理ではないですか?

ストーン「映画ではブッシュは突然、天啓に打たれて神に目覚めるように描いたが、実際はちっとも福音派に『再生』なんかしてないと思う。あいつのエゴを見てくれ。本当に神に身を捧げる者はもっと謙虚だよ。それに再生というのは、それまでの自分を捨てることだ。ブッシュ家の一員でなくなることだ。でも、彼は本質的に変わっていない。相変わらず父親に依存しているし」

町山 映画『ブッシュ』は『エデンの東』を髣髴とさせます。父ブッシュはいつも「お前よりも弟のジェブのほうが出来がいい」と比較する。『エデンの東』で父アダムが「お前よりも双子の兄のほうが優れている」と言ってキャル(ジェームズ・ディーン)を苛むように。

ストーン「『エデンの東』との類似は後から言われて気がついた。私はそれよりも、ギリシャ神話のイカロスに似ていると思う。イカロスは父に作ってもらった翼で空を飛ぶが、父の警告を無視して太陽に近づきすぎて翼を接合していた蝋が溶けて落ちてしまうんだ」

町山 シェイクスピア的でもありますね。シェイクスピアの描いたイングランドの王ヘンリー4世の長男、サル王子はどうしようもない放蕩息子で、失望した父は騎士ホットスパーを後継者だと考える。ところが王子は突如、権力を目指し、ホットスパーを打ち破り、ヘンリー5世となる。

ストーン「ヘンリー5世はフランスを侵略して、多くの人の命を奪ったが、それもブッシュと似ているな。ブッシュも弟のジェブのほうが優秀で、誰もが彼がブッシュ家を背負うと思っていた。ところがブッシュが先に政界に出てしまった。」

町山『ブッシュ』はオリバー・ストーン監督自身の映画『アレクサンダー』にも似ています。アレクサンダー大王は偉大な父の影に追われるように、際限なく侵略戦線を拡大する。

ストーン「たしかに。ただアレクサンダーは異国の文化や人々を尊重し、彼らから崇められた。そこがブッシュとは全然違う。アレクサンダーは偉大だ。男の原型だ」

町山 しかし、あなたの映画は主人公と父との確執の物語が多いですね。『ニクソン』も厳格に父に育てられたニクソンが人を悲観的な信じられない性格に育ち、大統領になって盗聴事件をしでかす。

ストーン「その通りだ。それにニクソンはオレの父に似ている。父は株式コンサルタントだったが、実に悲観的な人生観を持っていた。母は逆に人生を楽しむパーティ・ガールだったね。彼女は今も元気だよ」

町山 あなたの『プラトーン』は、彼自身のベトナムの戦場での体験を描いた映画ですが、主人公は二人の対照的な上官の薫陶を受けます。この世は殺すか殺されるかだと考えるバーンズと、戦場でも善を貫こうとする陽気なエリアス軍曹。バーンズはあなたの父で、エリアスは母を象徴しているのではないですか?

ストーン「サイコバブル(心理学者的な戯言)だな(笑)。君は心理学でも研究してるのか?」

町山 いえ、あなたの映画を研究してるんです(笑)。ところで、ブッシュは映画『ブッシュ』を観たんでしょうか?

ストーン「観たと思う。映画公開の後に行われたインタビューで、ブッシュは映画『ブッシュ』のラストシーンとまったく同じセリフを言ってるから」

町山 それは12月1日のABCテレビ、チャーリー・ギブソンのインタビューですね。「あなたは歴史においてどのように評価されると思いますか?」という質問に対して「歴史になる頃には死んでるよ(だから歴史的な評価は気にしない)」と無責任に答えた。しかし、それは映画『ブッシュ』の最後のセリフでした。もともとはジャーナリストのボブ・ウッドワードが2004年の本『攻撃計画』で明かしたブッシュとの会話が元ですが。

ストーン「ブッシュは映画のブッシュを模倣したんだ。きっとブッシュはジョシュ・ブローリンが演じる自分を気に入ったんだろう。ジョシュのブッシュは本物よりもずっとハンサムで、感情移入できるキャラクターだからね(笑)」

町山 ニクソンはフロストのインタビューで謝罪しましたが、ブッシュは将来、自分のしたことを謝罪すると思いますか?

ストーン「私は、あのインタビューでニクソンが謝罪したとは思わないがね。なにしろ『大統領だったら違法行為でも許される』とも言っているんだぞ。……それはさておき、ブッシュはこのまま将来も決して謝罪しないだろう。自己反省するということがない。自分に都合の悪いことは心からシャットアウトしてしまう」

町山 だからあなたは映画のなかで、ブッシュの夢に出てきた父に彼を叱らせた。

ストーン「そのとおりだが、あの親父も、ブッシュが傷つけたアメリカ国民や世界の人々のために怒ってるわけじゃない。『ブッシュ家の名を汚しやがって!』って怒ってるだけでね。本当に責任を感じてるのは奥さんのローラだけじゃないかな。ブッシュが自己を客観視しないのは本を読まないからだな。もっと本を読むべきだ」

町山 ブッシュは本を読まないのではなく、読めない、つまり難読症だと言われています。ローラ夫人は図書館司書で、子供の読者障害と取り組んでいるのだから皮肉ですね。映画『ブッシュ』にもブッシュが拷問を認可する書類をまったく読まないでサインするシーンがありますが。

ストーン「私はブッシュは難読症よりも、注意欠陥症候群の一種だと思う。集中力がなく、人の話を聞けない事例が数多く報告されている。オバマとは正反対だな」

町山 本を読まなくても、せめてベトナム戦争に行けば、現実を学ぶことができたと思いませんか? それに父親の影を断つこともできた。あなたのように。

ストーン「(笑)。オレはベトナムに行ったせいで大学も中退し、タクシーの運転手くらいしか職がなくて苦労したがね。それでも実際の戦場で何が起こるか、殺し殺されることを体験することができた。本物の戦争を体験したものは戦争を避けるようになる。だからブッシュの父も、パウエル国務長官もイラク攻撃に反対した。それを蹴散らして戦争に突き進んだのはベトナムの兵役を五度も逃げたチェイニーやラムズフェルド国防長官などの実戦経験のない連中だ。奴らは口先だけの安楽椅子愛国者だよ」

町山 たしかに戦争体験者は戦争を止めようとするけれど、アメリカ国民はなぜか、戦争を知らない連中の戦意高揚に乗ってしまう。

「ベトナム戦争は、戦場を知らないジョンソンやニクソンがやらかしたもので、戦争の英雄マクガヴァンが72年に大統領に立候補してベトナム戦争に反対したときも、国民はなぜかニクソンのほうを選んだ。いつもこうだ。2000年に共和党の予備選にベトナムの英雄マケインが出たときも、ブッシュに負けてしまった。マックス・クレランド上院議員を知っているか? 彼はベトナム戦争で両脚と片腕を失った英雄だが、イラク戦争に反対したことで共和党から売国奴呼ばわりされて選挙に負けた。2004年の大統領選にケリーが立候補した時はひどかった。ベトナムから逃げたブッシュ陣営はケリーがベトナムの戦争で活躍した事実を否定するデマを流した。」

町山 FOXニュースなどの右派メディアがケリーへのデマ攻撃に加担しましたね。

ストーン「そうだ。ベトナム戦争の時、新聞やテレビが戦場の実態を報道したために反戦運動が起こったことに懲りて、体制側は巧みにメディアを操作するようになった。イスラエルのシンクタンクがその放送を教えたんだ。それに金だ。大資本と視聴率を求めてメディアはどんどん右傾化していった。私も『プラトーン』でアメリカ軍によるベトナムの民間人への残虐行為を描いた時、ものすごい攻撃を受けた。そこには拒絶の心理がある。都合の悪い事実を認めようとしない。虐殺とか、侵略戦争とか。同じ心理は日本人にだってあるだろう」

町山 ベトナムでアメリカ軍が非武装の農民を虐殺したソンミ事件を映画していたそうですが。

ストーン「虐殺から、それを止めようとして農民を救った軍人、事件の隠蔽、裁判、すべてを描こうとした。セットまで建てて撮影直前にウォール街の崩壊が始まって出資元が手を引いてストップしてしまった。しかし、私は映画化をあきらめていない。ソンミの物語は語られなければならない」

町山 ウォール街といえば、あなたは22年前に『ウォール街』で80年代証券バブルを描きました。そこでインサイダー取引で儲ける証券マン、ゲッコー(マイケル・ダグラス)が言うセリフ「強欲は素晴らしい!」が、今回の金融崩壊を導いたメンタリティとしてあちこちで引用されていますね。ウォール街はゲッコーの教訓を生かさなかった。

ストーン「資本主義は懲りない。バブルを膨らませて弾けさせ、それを何度も繰り返す。何の実体もないIT産業株に人々は30億ドルも投じた。バブルだ。醜悪だ。またゲッコーは帰って来る。私は今、『ウォール・ストリート2』を準備している。この22年でウォール街は変わった。それを表現したい。マネーはますます実体からかけ離れて取引され、崩壊した。それはアメリカだけでなく世界中の貧しい人々をさらに貧しくする。しかし、それを引き起こしたウォール街の連中は責任を取らない。逆に何十億ものボーナスをもらう。これがアメリカだ。君たち日本人から見たら、許せないだろうけどね」

町山 『ウォール街』も象徴的な父と息子の物語ですね。主人公チャーリー・シーンは真面目だが貧乏な父親を尊敬できず、強烈な上昇志向のゲッコーを父のように崇め、インサイダー取引に加担してしまう。ブッシュは父親のコンプレックスで侵略戦争をしたわけですが、アメリカの軍事や経済での強欲さは、こうしたエディプス・コンプレックスに起因していると思いませんか? 全員が貧しい移民だったアメリカ人は二百年間ずっと、父の世代よりも豊かになるのが一種の「掟」でした。

ストーン「それは真実だ。家でも学校でも競争ばかり教えられる。勝たなければダメだと。それが戦争や経済の弱肉強食へとつながる。戦争などを経験した年寄りの助言を聞かない。私の妻は韓国系だが、アジアの年長者を敬う文化は参考にすべきことが多い。私も『おくりびと』を観た。亡くなった人を敬う。それはアジアが誇るべき素晴らしい考え方だ。13歳の娘にもぜひ受け継いでもらいたい。でも、実際の話、娘はバカなアメリカのテレビばかり観て困るよ(笑)。アメリカのテレビの登場人物は尊敬に値しない人間ばかりだ。『24トゥエンティー・フォー』のジャック・バウアーなんてアメリカ人の典型だ。敵をやたら拷問する、ダメな父親だ」

町山 アメリカも大英帝国という父に反逆して建国して、父親以上の帝国へと成長しましたが、ブッシュの失政で、アメリカ帝国も没落し始めています。

ストーン「し始めている、だって? ベトナム、ソマリア……没落はずいぶん前から始まっていると思うよ(笑)。ローマ、モンゴル、イスラム、大英帝国……。数々の帝国があったが、アメリカ帝国はたった百年で終わるのか。ファスト・フードの国だから滅びるのも早いな(笑)」

町山 ブッシュがメチャクチャにしたアメリカを、オバマ大統領は建て直すことができるのでしょうか?

ストーン「アメリカをこの非常に厳しい状況から救えばオバマは第二のローズヴェルトになるだろう。彼が強かったのはイラク攻撃に対して最初から反対し続けていたからだ。ケリーは最初にイラク攻撃決議に賛成票を入れて、後から反対に転じたので首尾一貫性のなさを突かれた。そういう隙がオバマにはなかった。しかし、オバマがアフガニスタンでタリバンに勝つと約束したことには賛成できない。アフガニスタンはベトナムと同じ泥沼だ。オバマにはアフガンからも撤退するガッツを望む。アメリカはもう世界の警察である必要はない」

町山 しかし、あなた自身は政治的パワーに魅力を感じているのではないですか? JFKニクソン、ブッシュと三人の大統領と、アレクサンダー帝王についての映画を作り、キューバのカストロ首相にインタビューしたドキュメンタリー『コマンダンテ』を撮り、今、またヴェネズエラのウーゴ・チャヴェス大統領の映画を企画しているでしょう。

ストーン「チャヴェスやカストロはロビン・フッドのような人物だよ。独裁者のように見えるかもしれないが、彼らはスイスの銀行口座に金を増やそうとしているわけではない。彼らは国民のためにやっているのだ。カストロはアメリカの傀儡政府を倒したからアメリカから攻撃された。彼は生き延びるためにソ連とも手をつながざるを得なかった。それを批判するのは公平じゃない。チャヴェスもアメリカと戦っている。アメリカは南米を支配するために各国の政治に激しく介入してきたからだ。私は映画のために中南米各国を取材してきたが、彼らは皆、チャヴェスを熱烈に支持している」

町山 とはいえ、実はあなた自身がカストロやチャヴェスのような英雄に憧れているのでは? 『アレクサンダー』で、何万もの人間を指揮して戦闘シーンを撮影しましたね。ベトナムでは歩兵として泥の中を這いずり回ったあなたが、そこでは将軍になったわけです。どんな気分でしたか?

ストーン「最高だったよ(笑)。でも、私は後方でふんぞり返ってる将軍じゃない。先頭に立って一番戦う将軍だ。アレクサンダーのようにな」

町山 あなたは今も反逆者ですね。

ストーン「(笑)。今の世の中、みんな体制寄りになってしまった。リベラルだ左派だと呼ばれている連中も中道に過ぎない。本当の左は存在しない。日本も同じだろう。1945年以降、ずっと自民党一党支配だ。左はどこに行っちまったんだ?」

町山 さあ? でも、ひとつ面白いのは、ブッシュ政権に追従してきた日本の政治も、ブッシュみたいなお坊ちゃんばかりが仕切ってるんですよ(笑)。