Hatena::ブログ(Diary)

映画評論家町山智浩アメリカ日記


音声ファイルの有料ダウンロード「町山智浩の映画ムダ話」。
先日亡くなったアッバス・キアロスタミ監督を追悼します。

上記は、STORES.jpのオンラインストアを借りて運営しています。
メールが届かない、表示されない、ダウンロードできない等すべての技術的なトラブルは
「お問い合わせフォーム」ではなく、STORES.jpにメールhello@stores.jpか、
直接電話03-6455-1391(受付時間 平日10:00〜18:00)にお問い合わせください。
告知やリクエストの受け付けはツイッターhttp://twitter.com/@info_tomomachiで。




映画秘宝連載中の「男の子映画道場」が単行本になりました。
「狼たちは天使の匂い 我が偏愛のアクション映画」です。


町山智浩の映画解説リストです。
現在約800本の映画が50音順に整理され、解説へのリンクが貼られています。
お探しの映画解説はたいていここで見つかると思います。


週刊文春の連載「言霊USA」はオンラインで読めます。

もうじき連載100回になるサイゾーのコラム『映画がわかるアメリカがわかる』はここで読めます。


町山智浩のWOWOW映画塾がスマホのアプリになりました!
iPhone版 Android版


町山智浩のWOWOW映画塾、YouTubeで観られます!

町山智浩の映画塾2(101〜200)

町山智浩の映画塾3(201〜)


集英社WEB連載「町山智浩の深読みシネガイド」



TBSラジオ『たまむすび』に毎週火曜日午後3時から出演中です。


過去のたまむすび

「キラ☆キラ」はYouTubeに残ってます

ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」は復活しました!
特電ポッドキャストVol.1〜67
Vol.68〜80
Vol.81〜95

ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2013-01-20 『TEDテッド』の字幕に「くまモン」が出てくるわけ

f:id:TomoMachi:20130121111435j:image:w360:left

おかげさまで『TEDテッド』は大ヒットしました。ありがとうございます。

町山のトークショーについてのニュース↓

http://blog.eigafan.com/ted/

トークショーでは全部話しましたが、上のニュース記事は詳細を書いてないので、一応以下に文章化しておきます。

字幕について、日米の文化の差という敷居をなんとか下げられないかと思いました。

アン・リーを紹介するときに「目の大きな前田吟」と説明する感じです。

そこで、上のニュース記事の文中にあるように、以下の部分で原語の固有名詞を日本の人にわかるように変更しました。

たとえ英語が百パーセント聞き取れてもアメリカで生活していないと意味がわからない固有名詞が中心です。

変更する際はツィッターで「原語ではこう言ってるんだけど、日本人にはどういえばニュアンスが伝わると思いますか?」と公募したものから選びました。


「お前よりくまモンのほうがいい!」というセリフは原語では「お前よりテディ・ラクスピンが欲しかった」と言っています。

テディ・ラクスピンは80年代の懐かしおもちゃで、背中に入れたカセットテープの音声に合わせて口と目を動かします。

アニメにもなってました。テッドがライバル視しているわけです。

でも「テディ・ラクスピンが欲しかった!」じゃ日本の観客には何のことやら意味がわかりません。

これは最初、「お前より熊田曜子のほうがいい!」にしよう、と言って配給会社から「頼むから勘弁してください」と止められました。熊田曜子のほうがいいのに……。

D


走る車のボンネットに乗ったテッドが「ガチャピンよりすごいだろ」と言うのは、原語では「『パトカー・アダム30』みたいだろ」と言っています。

『パトカー・アダム30 T.J.Hooker』は80年代初めのTVドラマで、日本でも放送されましたがそれほど有名ではありません。

オープニングタイトルにボンネットに乗るシーンがあります。

公募した答えには「千葉ちゃんよりすごいだろ」「西部警察よりすごいだろ」など古いものが多く、いかに最近の日本がアクションものを作ってないのかよくわかりました。

D


マーク・ウォールバーグが甘やかされた子供を殴った後に「誰かが星一徹にならなきゃ」というのは原語では「誰かがジョーン・クロフォードにならなきゃ」と言っています。ジョーン・クロフォードは1940〜50年代に活躍した女優で、彼女が養子を虐待する様を描いた映画『愛と憎しみの伝説』がアメリカでカルト映画になったことで、クロフォードは幼児虐待の代名詞になりました。この映画は残念ながら日本では30年ほど前にテレビで放送しただけです。

「星一徹」も配給会社から「アメリカに星一徹いません!」と止められましたが、「ジョーン・クロフォードじゃ誰にもわからないでしょ」と押し切りました。どうもすみません。

D


テッドが「俺をアルフと間違えてた。目がテンだったよ」というのは、原語では「俺をアルフと間違えてたよ。ユダヤ人だと思い込んでやがった」と言っています。アメリカでは、宇宙人アルフは皮肉ばかり言っているのでユダヤ人的だといわれることがあるのを踏まえています。

これは最初「俺をアルフと間違えてた。所ジョージじゃないっての」にしたい、と言って配給会社に「それだけはやめてくれ」と止められました。


「キラキラ☆ネーム」は原語ではWhite Trash Name(クズ白人、貧乏白人の名前)と言っています。白人に限らず貧乏なアメリカ人は、アンバーとかクリスタルとか、よく言えばキラキラした名前、悪く言うとストリッパーのような名前をつけることが多く、ベストセラー『ヤバい経済学』にも、キラキラした名前の女性ほど収入や教育が低いという統計が出ています。


就職の面接を受けるためにリクルート・スーツを着たテッドは原語で「まるで、親の葬式で泣いてる子供に与えられる熊のぬいぐるみみたいだ」と言いますが、これは伝わらないので、「七五三みたいだ」にしようとしましたが、配給会社から「アメリカに七五三ないですよ」と言われたので、「七五三みたいだ。アメリカなのに」と加えておきました。


「あなたのダンス、盆踊りみたいだったわよ」は原語では「あなたのダンス、パーキンソン氏病みたいだったわよ」でした。

イヤな上司は「ルー・ゲリック病で死んじまえ」と言われて、本当に「ルー・ゲリック病で」死ぬというオチがつきます。

これについては、アメリカでも難病を茶化すのはよくないと問題になりました。

苦しんでいる患者さんが多くいるのに、それをあえて揶揄してお客さんを不快な気持ちにさせる必要はないと考え、特定の病気でないアホらしい死因にすべきだと思いました。

そこで最初は「豆腐の角に頭をぶつけて死んだ」にしようとしました。豆腐はアメリカにもあるので。

でも、全編にオナラのネタがやたら多いのと、上司が屁をずっと我慢して溜め込む描写があるので「屁の爆発で死んだ」にしました。


逆に原語の意味が伝わりやすいように加筆したものもあります。

テッドがビール瓶をシュートするときに原語では「カリームみたいに!」と言ってますが、日本で知られている名で「ジャバールみたいに!」にしました。

原語でただ「ミン!」と叫んでいるシーンでも『フラッシュ・ゴードン』の悪役のことなので「ミン皇帝」にしました。

体が千切られたテッドが原語で「ビショップみたい」というのも、「『エイリアン2』のビショップみたい」としました。

ライアン・レイノルズがいきなりゲイの恋人役で登場するところも、わかりやすいように「グリーンランタンと」と入れました。

原語で「ゲイ同士の殴り合いクラブに入ったの?」と言ってるのも、それが揶揄している『ファイト・クラブ』の題名を入れました。 


スケベな上司が女子社員に原語では「チャニング・テイタムの人差し指の話してるの?」と言います。

あれは「薬指に対して人差し指が長い分、ペニスが大きい」という都市伝説があって、

チャニング・テイタムのペニスのサイズについて話してるの?」とセクハラしているわけですが、

チャニング・テイタムが日本ではセクシー・スターとして認知されていないので、

「薬指より人差し指が長い男はペニスもデカいんだって?」と説明的な字幕にしました。


面接で「特技は?」と聞かれたテッドが「あんたのカミさんいかせること」「そんな口を利くやつは初めてだ」「熊ん子って呼ばれてるよ」という字幕にしたやりとりは、原語では、「特技は?」「あんたのカミさんのマンコ舐めること」「そんな口を利くやつは初めてだ」「みんな、あんたのカミさんのマンコで口がふさがってるからさ」でした。

熊ん子というのは国産バイブレーター第一号で、アイヌの男性型のディルドーにクリトリスやアナル刺激用の小熊がついています。

http://www.fuzoku.sh/teaches/0017/0004.html 

こんなもの、普通知るわけないって! どうもすいませんでした!


マーク・ウォールバーグミラ・クニスに「俺がレイプされても自分の責任だ」と言うのは、メル・ギブソンが愛人に「お前はそんなエロい服装してると、レイプされても自分の責任だ」と言ったことをネタにしてます。


ちなみに既に僕が字幕監修した『キックアス』と『宇宙人ポール』『ブライズ・メイズ』では、このような固有名詞の日本化をしていません。

その必要がなかったからです。

『TEDテッド』のセス・マクファーレンは、アメリカのローカルなサブカルチャー・ネタを「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」と片っ端から言い捨てるのが作風のようです。

だから、これらのジョークが全部アメリカでウケたわけじゃなくて、アメリカの観客が笑ってたのは全ジョークのうち6割くらいでした。