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映画評論家町山智浩アメリカ日記

町山智浩の映画解説リストです。
現在約800本の映画が50音順に整理され、解説へのリンクが貼られています。
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2013-10-16 谷岡雅樹『竜二漂泊1983』を読め

この本は、名作主義、ベストテン主義という番付的なヒエラルキーで語られてきた映画評論への挑戦状である。

もし、今も私が映画評論家であるとしたなら、この本は最期の血判状である。

という真正面からの挑戦状で始まり、1983年、バブル最盛期に登場した金子正次脚本・主演の映画『竜二』に乗って疾走する400ページ。

『竜二』の製作過程の緻密な調査、関係者の証言、各シーン、各セリフの詳細な解説、1980年代というバブルな時代の分析、などのガッチリしたエンジンに、著者の怒りというハイオクのガソリンをぶちこんでこの『竜二漂白』というバイクは爆走していく。

なぜ、普通のヤクザ映画ではなく、小市民とヤクザの間で揺れる『竜二』に自分は魅了されたのか?

それをつきつめる著者の意識は、『俺たちの旅』長渕剛の『とんぼ』、「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」、女子高生コンクリート殺人、著者自身のがん、幼少期の辛い体験、を貫通していく。

著者は前書きでこう書く。

「映画を観たその瞬間に奇跡が起きている。映画評論とは、映画そのものよりも、その奇跡的な一瞬の幻覚を再現したものだ」

 映画に限らず、何かを好きになるのは、恋をするのと同じことだと思う。

 自分がなぜそれが好きなのか、その理由を知りたい。それを徹底的に突き詰めて書いていく。

 それが評論になり、ラブレターになる。

 ラブレターといっても、相手に好かれるために言葉と論理を弄する口説き文句じゃない。

 自分の胸をナイフで切り開いて「ほら」とさらけ出す恋文だ。

 胸の中はけっして綺麗なもんじゃない。怒りや恨みや妬みや寂しさや惨めさが詰まっている。

 だって、何かを好きになるのは、嫌いな何かへの反論だからだ。

「何かを上げるために、何かを下げるな」と言う奴がいる。

 馬鹿野郎!

 何も憎めない奴に、何かが本当に愛せるか!

 世の中、いや、己のなかにも、どうしても嫌な奴らやモノがあふれている。

 そうじゃない人や映画や歌を見つけた時、それを好きになるんじゃないのか?

 この世が天国で、足りないものが無いないなら、誰も何も求めない。

 何かを好きになった理由を徹底的に探っていけば、自分の理想と自分が嫌いなものが明確になっていく。

 それは自分の世界に対する考え、つまり思想になる。

 それが批評ではないのか?

 谷岡雅樹の批評は、『竜二』を愛する自分を解剖するナイフで、同時に自分が憎む者たちも斬る。

 どっちか一方だけではない。どっちも同時にだ。

 「人を斬れないのは優しいからじゃない。自分も斬る覚悟が無いだけだ」

 『竜二漂泊』はそう言っているようにも思う。

「傷ついてこそ批評」

「自分にとばっちりが来ない所で、はしゃいでみたって始まらない」

「『あなたは毎回、遺書のつもりで文章を書いているのですが?』という質問をよく受ける。

 そうじゃない奴がいたとしたら、そんなものを、私は読みたくない」

「弱さはそれ自体では魅力にならない。強がっている中にしかその魅力は生まれない」

 そんな素晴らしい言葉であふれている、この本もまた奇跡だ。



11/9(土)22時から 池袋新文芸坐 オールナイト

http://www.shin-bungeiza.com/allnight.html

『竜二漂泊1983』出版Presents 『竜二』公開30周年記念/金子正次没後30年 錆びつかない“30年”、さらに輝きを増して

【特別料金】2500円、前売・友の会2300円

【トークショー】川島透監督、高橋伴明監督、細野辰興監督、谷岡雅樹さん(映画評論家、『竜二漂泊1983』著者)

22:00〜

竜二(1983/マコトヤ)監督:川島透 脚本・出演:金子正次 ★キネ旬6位

竜二 Forever(2002/ショウゲート)監督:細野辰興 出演:高橋克典、石田ひかり

獅子王たちの夏(1991/Gカンパニー)監督:高橋伴明 出演:哀川翔的場浩司

ア・ホーマンス(1986/東映)監督・出演:松田優作 出演:石橋凌、手塚理美

〜6:00

前売券:当館窓口は販売中、チケットぴあは10/16(水)より発売

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