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映画評論家町山智浩アメリカ日記


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ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2014-06-05 『プールサイド・デイズ』14歳の卒業

『プールサイド・デイズ』Way Way Backについて映画秘宝に書いた原稿の転載です。

f:id:TomoMachi:20141020021010j:image:w360:left

町山 あのさ、昔、那須にロイヤル・センターってレジャー施設があったのね。

――なんですか、いきなり。

町山 大きな温泉施設で、中に遊園地みたいのがあって、学生時代の夏休みに泊まり込みでバイトしてた。お客さんの似顔絵を描くんだけど。夜になるとそこで働く大人たちが飲みに連れてってくれるんだ。その時は大野剣友会の人たちがいてさ。

――ああ、『仮面ライダー』のスタントしてた。

町山 そうそう。その時は何か戦隊モノのショーやってて泊まり込んでた。いちばん年上の人は『仮面ライダー』の1号ライダーの最終回で仮面ライダー演ったって言ってた。トカゲロンの回。

――藤岡弘が出てこない回ですね。撮影中にバイクで事故ったから。

町山 そうそう。東映版『スパイダーマン』のスタントもしてたって。♪ビルの谷間の暗闇に〜。

――歌わなくていいですが、それがどうかしたんですか?

町山 で、似顔絵描いてたら、6歳くらいの女の子が来たんだ。お婆さんの顔をした。

――え?

町山 いわゆる早老症という、普通の何倍ものスピードで老化する病気なんだね。でも心は6歳の女の子なの。それをどうやって似顔絵に描いたらいいか、本当に悩んだ。人生で最も悩んだことの一つだね。

――パイ投げは?

町山 全然悩まなかった。即決。

――悩めよ!

町山 ホント「遊園地のバイト」って青春時代の大事な経験なんだよね。で、そういう映画もあるわけよ。

――『アドベンチャーランドにようこそ』がそうでしたね。

町山 あれは『スーパーバッド童貞ウォーズ』や『宇宙人ポール』の監督グレッグ・モットーラが童貞の頃に遊園地でバイトした経験を映画にしたんだけど、『ウェイ・ウェイ・バック』もそういう映画。ジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』でアカデミー脚色賞を受賞したジム・ラッシュの初監督作。ジム・ラッシュはオスカー受け取るときに、プレゼンターのアンジェリーナ・ジョリーの立ち方のマネしてた若ハゲの人。

――ああ、腰に手を当ててね。

町山 彼の14歳の頃の経験が基になってる。

――というと?

町山 主人公ダンカンは14歳の内気な少年。両親は離婚して母親(トニ・コレット)に引き取られた。母はやはり離婚したシングルファーザー(スティーヴ・カレル)と付き合っていて、夏休みに両方の家族が一緒に海辺のリゾートに行く。カレルは既に継父気取りで、ダンカンにこんなことを聞く。「君という人間は10点満点で何点だと思う?」ダンカンは謙虚に答える。「……6点くらい……?」するとカレルは言う。「違う。3点だ! おどおどして根性なしで!」

――ひどいなあ。それスティーヴ・カレルのキャラと違いますね。だって『40歳の童貞男』でしょ?

町山 それは実際にジム・ラッシュが14歳の時に母のボーイフレンドから言われたことなんだって。カレルはウジウジしてるダンカンにイライラしてる。で、リゾートに行く時もダンカンをワゴン車のいちばん後ろの後ろ向きについてる補助座席に乗せる。それがタイトルの「ウェイ・ウェイ・バック(ずっとずっと後ろ)」なんだ。

――後ろ向きの席って車酔いしそうですね。

町山 大人たちは子どものことなんか考えてないんだ。リゾートでハメを外して酒とマリファナとセックス三昧。カレルはリゾートで会ったエロくて若い人妻(アマンダ・ピート)と浮気してる。14歳のダンカンには何も面白くない。

――小さい頃は海に行くと楽しいけど、思春期は親と旅行しても気まずいだけですよね。

町山 話し相手は隣に住む小学生だけ。彼も斜視のせいで友達いないんだ。しかたなくゲーセンに行くと、どう見てもカタギじゃないおっさん(サム・ロックウェル)がパックマンやってる。それがデタラメなプレイなんでダンカンは思わず「パックマンにはパターンがあるよ」と口を出しちゃう。するとロックウェルは言い返す。「パターン通りに遊んで何が面白いんだ?」

――パックマンって古くないですか?

町山 ジム・ラッシュの中学生時代だからさ。ダンカンはREOスピードワゴンを歌うし、サム・ロクウェルはボニー・タイラーの「ヒーロー」の歌詞を引用するし。

で、ロックウェルは近所のウォーターパークの職員だった。

――ウォーターパークって?

町山 滑り台とかのあるプール施設のこと。ロックウェルは寂しそうなダンカンをバイトに雇ってくれる。ダンカンは遊園地で接客するうちに人に慣れて、自分の心の開き方を少しずつ知っていく。ジム・ラッシュによると、ロクウェルのキャラは彼が子供の頃に観た『ミートボール』(79年)のビル・マーレーへのオマージュなんだって。

――夏休みの子どもキャンプの指導員の役でしたっけ?

町山 子供よりダメな指導員でね、だからこそ落ちこぼれの問題児の気持ちがわかる。「立派な大人」の皮をかぶった偽善者よりも、さらけ出してるダメ大人のほうが子どもの教育にはいいんだよ。うん。

――一人で自己弁護的にうなずかないように!

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