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映画評論家町山智浩アメリカ日記

町山智浩の映画解説リストです。
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2014-07-07 菊地凛子が『ファーゴ』の埋蔵金を探す

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菊地凛子が『ファーゴ』の埋蔵金を探す『トレジャー・ハンター・クミコ』という映画を観ました。

町山 コーエン兄弟の『ファーゴ』(96年)ってあったでしょ?

――スティーヴ・ブシェミが粉々にされる映画ですよね。

町山 そうそう。ブシェミが殺される前に、身代金が詰まったカバンを雪の中に埋める場面覚えてる? 

――ああ、真っ白な雪原にね。

町山 あの金を探しに、舞台になったミネソタ州ファーゴに行った日本人がいるって話がある。

――探しにって?

町山 2001年11月、ファーゴの雪の中でタカコ・コニシという28歳の日本人女性が凍死していた。彼女は前日、ひとりで雪の中をうろついていて地元の保安官に保護され、『ファーゴ』のロケ地はどこか尋ねていた。だから、ブシェミが埋めた金を探しに来て、死んだといわれた。

――だって、あれは映画でしょう?

町山 でも『ファーゴ』は最初に「これは実話である」という字幕が出る。彼女だけじゃなく、公開当時はマスコミはみんな実録犯罪映画と紹介した。でも、地元の人々はそんな事件は聞いたことが無い、と怪しんだ。結局、コーエン兄弟は後に「実話のフリをした」と認めた。トンデモねえウソつき兄弟だよ!

――そのタカコさんは本当だと信じて金を探しに行ったんだから、コーエン兄弟、罪な奴ですねえ。

町山 まあ、どこまで本気かわからないけどね。タカコさんはアメリカ人の男に捨てられて自殺するつもりで遺書も書いてたらしいから。この実話は2003年に『これは実話である』というタイトルのドキュメンタリー映画になったんだけど、今度、アメリカで劇映画になったんだ。『トレジャー・ハンター・クミコ』って。

――クミコ? タカコじゃなくて?

町山 うん、クミコ。演じるは菊地凛子。ファーゴに来る前、日本でOLをしてる。ていうか、お茶くみ。

――そういう差別的な仕事ってまだあるんですね。

町山 クミコはアラサーの不思議ちゃんで、愛想が悪くて友達もいない。ぶすーっとお茶入れるんだ。仕事以外ではゴミだらけの自宅に閉じこもって、VHSビデオで『ファーゴ』の、ブシェミが金を埋めるシーンを何度も何度も繰り返して、場所を特定しようとする。

――だからドキュメンタリーじゃないから、そんなことしても意味ないって!

町山 ブラウン管をトレースして金のありかの地図を刺繍で作ったりして、クミコはやってることのピントが外れてる。逃避してるだけなんだよね。会社では居場所がないし、高校時代の友達は幸福そうにしてるし、田舎の親は電話で「もう30なんだから、いいかげんに結婚しなさい」ってプレッシャーかけるし。つまり、BLの代わりに宝探しにのめり込んでる、と。

――そうですか?

町山 中盤でクミコは会社のクレジットカードを盗んで、その金でファーゴに行ってしまう。で、現地で彼女を保護した保安官をデヴィッド・ゼルナーという俳優が演じてるんだけど、彼がこの映画の製作・脚本・監督もしてる。

――でも前半は日本のシーンなんでしょ?

町山 これが意外とちゃんとしてる。日本の会社の描き方もリアルで、日本人が撮ったみたいだよ。オイラはこれ、サンフランシスコ映画祭で観たんで、監督に質問したんだ。どのくらいタカコさんについて取材したんですか? どのくらい事実に近いんですか?って。そしたら、「全然取材してない。事実に基づいてない」って。

――ええっ?

町山 タカコさんの話から、想像の翼を広げたんだって。

――『花子とアン』ですか!

町山 だからラストはすごいよ。クミコと同じようにブシェミの埋蔵金を探してるギャングたちと鉢合わせして、雪原での大バトル!

――そんな『トゥム・レイダー』な展開ですか?

町山 いや、どうせフィクションなら、そっちのほうが面白くなると思ってさ。

――あんたもウソつきだよ!