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映画評論家町山智浩アメリカ日記

町山智浩の映画解説リストです。
現在約800本の映画が50音順に整理され、解説へのリンクが貼られています。
お探しの映画解説はたいていここで見つかると思います。


週刊文春の連載「言霊USA」はオンラインで読めます。


町山智浩のWOWOW映画塾、YouTubeで観られます!

町山智浩の映画塾2(101〜200)

町山智浩の映画塾3(201〜)


TBSラジオ『たまむすび』に毎週火曜日午後3時から出演中です。


過去のたまむすび

「キラ☆キラ」はYouTubeに残ってます

ロフトプラスワンでタランティーノと公開飲み会(無修正)

2011-11-01 ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」リスト

ポッドキャストへのリンクはここから↓

http://enterjam.com/?eid=135#sequel

第67回 2008/12/11up

『ウォーリー』と70年代デストピア映画『THX1138』『未来惑星ザルドス』

第66回 2008/12/05up

ジョニー・トーのフレンチでウェスタンな男泣きノワール『エグザイル/絆』

第65回 2008/11/20up

アクションしないヴァンダムなんて! 『その男ヴァンダム』

第64回 2008/10/30up

現代を予言したポリティカル・フィクション『傷だらけのアイドル』

第63回 2008/10/17up

非モテ男のためのラブストーリー『寝取られ男のラブ♂バカンス』

第62回 2008/10/09up

ホラー映画より怖いハッピーエンド。アニエス・ヴァルダの『幸福』

第61回 2008/09/26up

トラウマ映画館『ある戦慄』はサブウェイ・パニック!

第60回 2008/09/18up

『ラスト・カーチェイス』他、リスナーの皆さんの思い出そうとしても忘れられないトラウマ映画特集

第59回 2008/09/11up

『イントゥ・ザ・ワイルド』と『北国の帝王』の知られざる関係

第58回 2008/09/05up

コーネル・ワイルド製作監督脚本主演の『裸のジャングル』は元祖アポカリプト!

第57回 2008/08/28up

思い出そうとしても忘れられない映画『コンバット/恐怖の人間狩り』

第56回 2008/08/21up

トム・クルーズがチビ・デブ・ハゲ姿で大暴れ! バカ俳優たちの地獄の黙示録『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』!

第55回 2008/08/14up

へなちょこリーマンにアンジェリーナ・ジョリーのパンチ炸裂!『ウォンテッド

第54回 2008/07/17up

『ホット・ファズ』の遠い原点『スーパーコップ』『破壊!』『複数犯罪』そして『フリービーとビーン大乱戦』

第53回 2008/07/04up

平山夢明氏の忘れようとしても思い出せない超怖い映画『不意打ち』

第52回 2008/06/12up

新作『ハプニング』でシャマランの起死回生なるか?

第51回 2008/06/12up

水野晴郎さん追悼、それと関係なく『インクレディブル・ハルク』

第50回 2008/06/05up

トラウマ映画館?『早春』は『傷だらけの天使』の原点

第49回 2008/05/12up

『サイレント・ランニング』他、あなたの『忘れようとしても思い出せない映画』を探せ!

第48回 2008/04/07up

クリント・イーストウッドの「白い肌の異常な」映画群

第47回 2008/02/27up

元祖ゾンビの巨匠ジョージ・A・ロメロが『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』はネット時代に挑戦!

第46回 2008/01/23up

全米ナンバーワンの謎の映画『クローバーフィールド』を観た!

第45回 2007/12/24up

『アイ・アム・レジェンド』と藤子不二雄と「時代は変わる」

第44回 2007/11/08up

http://enterjam.net/podcast/tokuden/tokuden044.mp3:title=コーエン兄弟の新作はウルトラ・バイオレントな追跡劇『ノーカントリー(血と暴力の国)』

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第43回 2007/11/01up

俺たちフィギュアスケーター』は男子ペア!『死亡遊戯』幻のオーディション『フィニッシング・ザ・ゲーム』!

第42回 2007/10/25up

これぞ秘宝映画だ! 藤原章監督『ヒミコさん』(10月27日から東中野ポレポレ座で公開)と井口昇監督

片腕マシンガール』!

第41回 2007/10/11up

童貞コメディ『スーパーバッド』が全米で200億円の大ヒット!

第40回 2007/10/04up

心に残るバカ映画?国際スター、真田広之の香港・日本合作映画『龍の忍者』(82年)で「ばいちゃ!」

第39回 2007/09/27up

クローネンバーグとヴィゴ・モーテンセンのヤクザ映画第2弾!『イースタン・プロミセズ』

第38回 2007/09/13up

ジョン・ウー学校志願者の銃撃銃撃また銃撃!『シュートエム・アップ!』

第37回 2007/08/30up

ウォシャウスキー兄弟の新作(?)『インヴェージョン』と『盗まれた街』リメイクの歴史

第36回 2007/08/17up

ジョン・ウォーターズ監督のウルトラ変態大作『ダーティ・シェイム』をオクラから救え!

第35回 2007/08/02up

マイケル・マン製作『ザ・キングダム』は911テロ以降の世界を90分に圧縮した傑作アクションだ!(UIP配給秋公開)

第34回 2007/07/20up

ヘンなゾンビ映画『ゾンビーノ』とゾンビの意味

第33回 2007/06/21up

リスナーのメール特集「私のトラウマ映画」……でも、話はどんどん横道にそれていく……

第32回 2007/06/07up

トラウマ映画館? カーソン・マッカラーズの『愛すれど心さびしく』

第31回 2007/05/24up

名作カルト・ホラー『ウィッカーマン』のニコラス・ケイジ版リメイクは、なぜラジー賞映画になってしまったのか?

第30回 2007/05/10up

ホット・ファズ』は田舎の駐在さん版ダイ・ハード

第29回 2007/04/26up

トラウマ映画館? 悪魔の女教師ジャンヌ・モローの『マドモアゼル』

第28回 2007/04/19up

ヘンリー・カットナーのSF小説『ボロゴーヴはミムジイ』の映画版とルイス・キャロル

第27回 2007/04/12up

タランティーノ&ロドリゲス監督の新作『グラインドハウス』観戦記後編、タランティーノ監督の『デス・プルーフ

第26回 2007/04/05up

タランティーノ&ロドリゲス監督の新作『グラインドハウス』PART1:ロバート・ロドリゲス監督の

プラネット・テラー』篇

第25回 2007/03/29up

クリス・ロックがリメイクした『愛の昼下がり』を、エリック・ロメール監督のオリジナルと徹底比較!

第24回 2007/03/22up

『ビハインド・ザ・マスク/レスリー・ヴァーノンの誕生』

第23回 2007/03/15up

トラウマ映画館?『私は誘拐されたい』

第22回 2007/03/08up

クリスティーナ・リッチの勇気ある映画『ブラック・スネーク・モーン』と『パンプキン』

第21回 2007/03/01up

アカデミー主演女優賞のヘレン・ミレンが『ザ・クイーン』と同時に出た強烈映画『シャドウボクサー』

第20回 2007/02/22up

『Inland Empire』

第19回 2007/02/15up

トラウマ映画館? 世界各国で上映禁止になった恐ろしい少女たち『小さな悪の華』

第18回 2007/02/08up

おとなの悲喜劇『リトル・チルドレン』

第17回 2007/02/01up

トラウマ映画館?行方不明映画の最高傑作『バニー・レイクは行方不明』

第16回 2007/01/25up

500年後の地球は「バカの惑星」だった? 超バカ映画『イディオクラシー

第15回 2007/01/18up

トゥモロー・ワールド』と長回し

第14回 2007/01/11up

『PAN'S LABYRINTH』

第13回 2006/12/27up

メル・ギブソンの『アポカリプト』とグリフィスの『国民の創生』。面白いけど間違ってる映画』

第12回 2006/12/21up

『アメリカ人が毎年クリスマスに必ず観る映画』

第11回 2006/12/14up

APOCALYPTO

第10回 2006/12/06up

ザ・ワールド・イズ・マイン

第9回 2006/11/30up

『007/カジノロワイヤル』

第8回 2006/11/23up

イカとクジラ

第7回 2006/11/16up

ボラットBORAT

第6回 2006/11/09up

『テネイシャスD 運命のピック』

第5回 2006/11/02up

『ファンタズム』ドン・コスカレリ監督の自宅訪問記

第4回 2006/10/26up

特別編『映画秘宝の歴史』

第3回 2006/10/19up

『Jackass Number Two』

第2回 2006/10/12up

『アドレナリン』

第1回 2006/10/05up

『スネーク・フライト』

2008-11-23 『ブラインドネス』パンフに原稿書きました

f:id:TomoMachi:20140731172120j:image:w640:left

昨日から公開の映画『ブラインドネス』に原稿書きました。

 最近、よく似たSF映画が三本次々に作られた。

 アルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』では、人類に赤ん坊が生まれなくなる。M・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』では、人々が理由もなく自殺し始める。そしてフェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』では、人々の目が見えなくなる。

 SF(サイエンス・フィクション)と書いたが、この三本の映画では、異常現象の科学的な原因はまるで解明されない。理由もわからないまま世界はゆっくり破滅していく。原因や理由はどうでもいい、この破滅を通じてもっと大事なことを伝えたいんだ、と言わんばかりに。

 それはいったい何なのだろう。なぜ、フェルナンド・メイレレスはこの題材を選んだのだろう。

 メイレレスが今までにとった映画は三本とも破滅的な状況を描いている。しかも最初の二本は恐ろしいことに事実を基にしている。

 デビュー作『シティ・オブ・ゴッド』は、ブラジルのリオ・デジャネイロで、「神の街」と呼ばれる貧民街の少年たちの成長を追う。掘っ立て小屋がひしめくスラムはゴミだらけで半分砂埃に埋もれている。ガキどもは半ズボンにサンダルで遊んでいる頃から拳銃の撃ち方を、人の殺し方を覚える。そのギャングたちより凶悪なのが警察で、殺人略奪なんでもし放題。暴力だけが支配する「神の街」は、まるで核戦争で文明が滅んだ後の世界のようだ。

 二作目『ナイロビの蜂』の舞台となるアフリカでも、掘っ立て小屋に住む貧困層はまともな医療も受けられない。彼らにヨーロッパの医薬品会社は無料で薬を提供するが、決して慈善事業ではなく、新薬の副作用を調べる人体実験だった。この実験で死んだ犠牲者は人として埋葬されることすらなく「処理」される。ヨーロッパは今も貧しいアフリカの人々をモルモット並みに扱っているのだ。

 この二本に対して『ブラインドネス』は寓話的だ。どこともしれない国が舞台で登場人物にも役名がない。それでも描かれる状況の酷さは他の二本と共通している。視力を失った人々が家畜のように収容所に隔離される。その中では『シティ・オブ・ゴッド゙』と同じように銃を持った独裁者が君臨する。彼らは食糧を独占し、それを購う富を持たざる者たちを奴隷のように扱う。

 この弱肉強食の地獄に対して、主人公たちは無力で受身だ。

シティ・オブ・ゴッド』の主人公ブスカペはカメラが大好きなオタク少年。荒々しいギャングたちのなかで育ち、理不尽な暴力を目撃しながらも、度胸がないので傍観するしかない。ただカメラマンになって街を出る日を夢見ながら。

ナイロビの蜂』の主人公はケニア駐在のイギリス外務省職員ジャスティン(レイフ・ファインズ)。アフリカの貧しい現実を目の前にしても「僕ごときが何をしてもどうにもならない」と目を背けて趣味の園芸に没頭する。

ブラインドネス』の医師は収容所の中でも人間らしく生きようとするが、暴力による独裁に屈し、妻が犯されても何もできず、別の女性との情事に逃避する。

 これが現実だというのか。人間というものの。 

 国際視覚障害者連盟のマーク・マウラー会長は『ブラインドネス』を激しく非難した。「目が見えなくなった人々が何もできない存在として描かれています。卑しく、利己的に振る舞い、堕落していきます。この物語では目が見えないということが、人間の悪しき考えや行動のメタファーとして使われているのです」

 彼の言うとおり、『ブラインドネス』では視力を失った人々が理性を失ったように野獣化し、強欲になる。見えないというのに貴金属に狂喜する場面など「目開きは金に目がくらむ」と笑っていた座頭市に怒られそうな描写だ。

 だが、それだけではない。その地獄に、メイレレスはいつだって小さな希望の種を投げ込んでみせる。女性の姿をした希望を。

シティ・オブ・ゴッド』のブスカペのカメラマンへの夢を支えたのは大好きな美少女への恋心だった。写真への情熱はブスカペを犯罪の誘惑から救い、ついに彼はカメラを武器に暴力に立ち向かう。

ナイロビの蜂』のジャスティンは、貧困層のためにボランティアをしていた美しい妻(レイチェル・ワイズ)を突然殺されてしまう。そして妻の死の真相を探るうちに今まで見えなかったアフリカの現実に目を開き、製薬会社の犯罪と戦うことになる。

ブラインドネス』の医師は絶望の淵に落ちかけるが、妻(ジュリアン・ムーア)の愛で立ち直り、再び他の患者たちを救う意思を取り戻し、我が家に招く。

 医師の家で彼らは家族になる。白人、ラティーノ、黒人、そしてアジア人。その家は世界そのものだ。見えなくなったおかげで、人種の違う彼らがこんな風にひとつになることができた。見えなければ肌の色や美醜や見た目は気にならない。気になるのはもっと大事なことだ。

ブラインドネス』の市街地のシーンはメイレレスの故郷サンパウロで撮影された。サンパウロとは聖パウロという意味だ。教会で神父が聖パウロのエピソードを語っている。聖書によればパウロはもともと熱心なユダヤ教徒で、新興勢力であるキリスト教徒を弾圧していたが、ある日、強烈な光に打たれて視力を失い、キリストの声を聴いた。三日間、パウロは何も食べられずに苦しむが、キリストへの祈りで「目からウロコが落ちて」視力を取り戻し、以後、キリスト教の布教に命をかけた。この物語に『ブラインドネス』が大きな影響を受けているのは明らかだ。

 見えないほうが見えるものがある。正義(ジャスティス)の象徴であるローマ神話の女神ユースティスは人の罪を裁くとき、外見に惑わされないよう目隠しをしているではないか。

 メイレレスは撮影前、出演者たちに包帯で目隠しをして見知らぬ場所に置き去りにする実験を行ったという。目が見えないことの恐怖を体験するためだ。ところが彼らは誰かに突き飛ばされたり財布を取られたりはしなかった。必ず、通りがかりの人が親切に手を引いてくれて「行きたいところまでご一緒しましょう」と申し出たそうだ。 

 僕が『シティ・オブ・ゴッド』でいちばん好きなのは、ブスカペがとうとう自分もギャングになろうと決心してバスの運転手などを強盗しようとするのだが、襲おうとした人たちに次々に親切にされてしまって気が抜けて諦めるシーンだ。『ナイロビの蜂』ではケニアの道を歩くレイチェル・ワイズが地元の子供たちに囲まれるシーン。これは脚本になく、子どもたちもエキストラではなくて、そこいらの子たちがロケ中に勝手に集まってきたのを撮影しただけだそうだ。レイチェル・ワイズと子どもたちは朗らかに挨拶を交わす。

  「こんにちわ」

  「こんにちわ」

  「みんな元気?」

 優しさもまた人間の現実なのだ。

2008-09-20 売春窟に生まれついて→未来を写した子どもたち

TomoMachi2008-09-20

 3年前からブログやラジオや雑誌で何度も紹介したり、各映画会社に「配給してよ」とDVDを押し付けたりして回ってきたアカデミー長編ドキュメンタリー部門受賞作『売春窟に生まれついて』ですが、

やっと、やっと、『未来を写した子どもたち』の邦題で11月から日本公開されることになりました。

http://www.mirai-kodomo.net



こういう映画がなかなか公開されなくて、ケータイ小説映画とかアキモトコー映画とか手塚治虫や黒澤明の墓泥棒みたいな百害あって一利なし映画ばかりが劇場を支配している日本の映画界現状ってなー。






もうひとつ。

『未来を写した子どもたち』とは直接、何も関係ないけどさ、ムカつくから言わせてくれ。


この映画はアカデミー賞まで獲ってるし、アメリカではDVDまで出てるのに、配給会社が決まるまで、日本の映画評論家は誰一人として話題にしなかった。

文芸評論家だったら、普通、芥川賞受賞作品には目くらい通すだろう。

あんたら、試写室でタダで見せてもらえる映画以外は観ないのか?

『ホテル・ルワンダ』のときも、『ホットファズ』のときもそうだった。

配給会社が試写をやるまで、誰も見やしないのだ。英語版のDVD出てるのに。

徹底的に受身。


日本で映画評論家とか映画ライターとか称してる連中には、日本の映画会社が配給する映画をタダで試写室で観せてもらって、ちまちました感想文書いてるだけのが多すぎる。


評論家といいながら、映画観ただけの印象批評ばかり垂れ流して、自分で資料を調べようともしないし、過去の関連作品を探して観ようともしない、作り手に直接会って質問しようともしない、撮影や編集の現場は経験したこともない、カメラの仕組みも知らない、シナリオやコンテも勉強したことがない、映画は観るが、歴史や政治や経済のことはこれっぽちも知らない安楽椅子ライターが山ほどいる。


だから、アメリカが善意からタリバンを育ててしまった愚行を皮肉ったブラック・コメディ「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を観ても「アメリカ万歳の映画だ」などと正反対のことを堂々と「TVブロス」に書いちまうし、「エデンより彼方に」を観てもダグラス・サークのパスティーシュだと気づかないし、シャマランの映画がパクリだとも知らず、今のハリウッド映画がどういう金の流れで作られているのかもまるで知らないんだよ。


「評論」家といっても、資料の読み込みと調査と考察と仮説と検証と独自の結論が必要な「論文」など一回も書いたこともなく、一生に一度も後世にも読み継がれる本を著すこともなく、雑誌にクズみたいな感想をちまちま書き散らして小銭を稼いで、誰にも惜しまれず、誰にも影響を与えることなく死んでいく。


その人生に意味はあるのか?

何のために生まれてきたんだ?

ただの寄生虫だ!


そもそも現在の映画ライターは、漫画家や小説家、エッセイストと違い、競争と無縁の存在だ。

雑誌でも読者アンケートによって淘汰される対象にならない。

ファンを持っていなくても、編集者と知り合いであれば仕事がもらえるという、コネだけで生きている職業なのだ。

現在、書き手の名前で読者を呼べる映画評論家、読者を映画館に誘うことができる映画評論家は数えるほどしかいなくなってしまった。

ほとんどの読者は映画コラムの書き手なんぞ、これっぽちも意識しちゃいない。

その質なんか誰も問題にしない。

人気があろうがなかろうが問題にならない。

早い話、編集者とのつながりさえあれば仕事がもらえる。

批評はするけど、その批評は誰にも批評されない。

何を書いたところで、反応はせいぜい映画会社の宣伝マンから「扱ってくれてありがとうございます」と挨拶されるていど。

誰も動かせない、誰も感動させられない。

のれんに腕押し、ぬかに釘!

そんな、手ごたえのない仕事、いくらやってても空しくないか?


だったら、今すぐ、意味のない試写室通いをやめろ。

基礎もできてないのにいくら数見たって意味ないんだ

過去の大事な作品を観て、それについて考えてから、それについて書かれた文献を読んで自分の映画を観る目を切磋琢磨しろ。

誰でも最初は、独りよがりな解釈をしたりするものなのだが、優れた批評や作り手自身の言葉とつきあわせて自分の批評を添削するうちに、だんだんと映画の見方が上達していくものだ。

それから、誰にもマネできない独自のテーマ、独自の視点、独自のタッチを確立しなければならない。

単に文体でなく、中身のオリジナリティだ。

レトリックなんてクソの役にも立ちゃしないのだ!

それを真剣にやってたら試写室通いなんかしてる暇はないはずだ。

何もわからない人間がいくら一人で考えたって、感想以上のものは絶対に出てこないんだ

そんな感想に商品としての価値があるか?

だって、感想なんかガキだって持てるんだぜ!


そして、試写室では観られない映画を探すんだ

宝を探してみんなに教えることが、評論家の最も基本的な存在意義なんだから

与えられた映画だけ観てるんじゃねえよ

ブロイラーじゃないんだから、自分で映画を見つけ出せよ!

2008-06-19 新作「ハプニング」でシャマラン起死回生なるか?

TomoMachi2008-06-19

毎週第1・第3木曜日更新ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」http://www.eigahiho.com/podcast.html

今週は予告どおり、M・ナイト・シャマラン監督の新作「自殺サークル」、いや違った「ハプニング」についてお送りします。


ある日、ニューヨークのセントラルパークに不思議な風が吹いた。

その風に吹かれた人々はその場で自殺を始める。

その自殺病は東部の都市を次々に襲った。

ボストン、フィラデルフィア……。

テロか?

アメリカの生物兵器の漏出か?

奇病か?

主人公の高校教師(マーク・ウォルバーグ)は妻(ズーイ・デシャネル)と同僚(ジョン・レグイザモ)と同僚の娘と一緒に都市を脱出し、田舎へ、田舎へと逃げていくが……。

↓予告編

D

2008-06-14 M・ナイト・シャマランの新作『ハプニング』は……

TomoMachi2008-06-14

『シックス・センス』で一世を風靡したM・ナイト・シャマラン監督は『ザ・ヴィレッジ』のつまらないオチで顰蹙を買い、『レディ・イン・ザ・ウォーター』の内容をめぐってディズニーとケンカ別れして、ワーナーで作ったが批評も興行成績も最低で大失敗。

シャマランはこのまま消えてしまうのかと思われたが、新作『ハプニング』が本日、アメリカで公開された。


ある日突然、NYのセントラル・パークで人々が自殺を始める。

その集団自殺は、フィラデルフィアやボストンにも広がる。

テロリストによるガスが原因か?

高校の理科教師マーク・ウォルバーグは妻と同僚(ジョン・レグイザモ)と彼の娘の四人で、田舎に避難する。

しかし、自殺病は都市から田舎へと広がっていく……。


この映画、何かおかしかった。

アメリカで配給の20世紀FOXは、この映画をほとんど宣伝しなかったのだ。

TVCMは一度も観なかったし、新聞広告も小さい。ビルボードの看板はどこにもない。

どういうこと?


映画を観たら理由がわかった。

詳しくは木曜日(6月19日)のポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」で話します。


↓予告編

D

2004-08-21 10月はたそがれの国

TomoMachi2004-08-21

M・ナイト・シャマランの『ザ・ヴィレッジ』をこれから観ようと思ってる人は、

くれぐれもレイ・ブラッドベリの『10月はたそがれの国』を読まないように。

読んだ人は忘れるように。


あ、特に『びっくり箱』はダメだ!


ブラッドベリのジイサンも、タイトルを使われただけの『華氏911』より、

こっちのほうが問題だろうが。


とても素晴らしい映画評を読みました。

http://www4.ocn.ne.jp/~temp/index.html

ちゃんとホワイトハウス前でのやりとりについて書いている。

あの場面はムーアを「ヤラセ」と批判する連中への強烈な反撃にもなっている。


あの映画を批判する連中は前半ばかり突くけど、後半については何も論評しない。

なぜなら後半、ムーアはナレーションを押さえて画面の裸の事実だけに語らせているからだ。

それは議論の余地のない事実ばかりだ。

でも、評論家はとにかくムーアを叩かないと自分が利口に見えないから、

後半部を論じずに逃げてしまうばかりなのだ。

チェイニーとつながってる企業が集まったパーティで「戦争は儲かるね」と喜んでる企業家の映像などは決定的なのに、誰も触れようとしないもんな。

2004-08-06 シャマランの「ザ・ヴィレッジ」は「××の××」のモロパクだ!

TomoMachi2004-08-06

そろそろ『華氏911』の試写が日本でも始まったから、

どうせまた「これはドキュメンタリーとして公平じゃない」「鵜呑みにするな」とかいつものゴタクを並べるバカどもが出てくるんだろうからあらかじめ言っておく。


公平? バカか。

マイケル・ムーアは反政府ゲリラだよ。

爆弾や銃の代わりにカメラを使ってるだけだと前から言ってるじゃん。

反政府ゲリラのパンフレットを見て「政府の言いぶんも書いてないからよくない」とか言ってどうするの?

ムーアに反対意見があるなら、あんたがそれを言えばいいだけであって、

ムーアの映画に反対意見も盛り込んでバランスを取ることを要求するな。

野球の試合やってるチームに「敵にも反撃の余裕を与えろ」と言ってるようなもんだ。


何度も書いてきたように、アメリカのメディアはイラク戦争以来、毎日24時間ブッシュ万歳報道をタレ流してきた。そして、『華氏911』に登場するイラクの民間人の被害、米兵の負傷者、息子の戦死に号泣する母親といった「戦争の悪い面」の映像は一切、国民の目から隠されてきたのだ。

くわしくは以下の日記を参照。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040725

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040308

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20040703


こんな、公平さのかけらもない、一方的な情報ファシズム体制の支配に対するたった一人の男の叛乱が『華氏911』なのだ。

だからさ、レジスタンスなんだよ。

ナチに抵抗するレジスタンスのパンフレットを「ヒットラーのいい面(そんなものあるとして)も公平に描くべきだ」と批判するのか? 

バカも休み休み言え。




M・ナイト・シャマラン監督の新作『ザ・ヴィレッジ』The Villageを観た。


19世紀アメリカ東部の村(ヴィレッジ)。

その村を囲む森には怪物が住み、時たま家畜を襲っていた。

そのため、人々は村から決して外に出ずに自給自足で暮らしていた。

しかし、ある事件で、一人の若者が結界の外に出る決心をする。


シャマランの『シックス・センス』は『恐怖の足跡』Carnival of Souls(61年)にヒントを得ていると思われる(『ゾンゲリア』にもおそらく影響されている)。

『アンブレイカブル』は『墜落大空港』Survivorと発端部が酷似している。

『サイン』はヒッチコックの『鳥』の状況設定と演出をそのまま使っていた。

で、今回の『ヴィレッジ』はどうかといえば。


××××・××××監督のテレビ邦題『×××××』(58年)を19世紀アメリカに置き換えただけ、まったく置き換えた「だけ」の映画だった(しかもオチはスケールダウンしている)。

オイラは実は、この『ヴィレッジ』のプロットが発表された時点で

「これって『×××××』じゃないの?」と思って、あちこちに書いていたのだが、

まさか、本当にそのまんまとは驚いたね。


これって著作権的にどうよ? ここまで同じだと盗作の範疇に入ると思う。

偶然というにはあまりに似すぎてるし、それに過去4作品がどれも既成の映画と類似していたことを考えると、偶然とは思えない。

(ちなみにアメリカでは、特許や著作権においては類似しているアイデアが先にある場合、たとえ偶然であっても何らかの対価を支払う場合が多い)

でも、裁判にはならないだろうなあ。

まず、その映画『×××××』はあまりにも有名な××××××××の大ヒット作『××××』にもアイデアが流用され、それは当時から指摘されたが裁判になっていない。

その理由は『×××××』を作った××××・××××がパクリと二番煎じで×本くらい映画を作っている男なので、他人のことを言えないからだ、と言われている。


それはさておき、『ヴィレッジ』のアメリカでの評判は悪い。

全米の印刷メディアに出た批評をチャートで示すサイトRottentomatoによると、

http://www.rottentomatoes.com/m/village/

全批評のうち、57パーセントがこの映画を嫌っている。


そのなかからアメリカで最も権威のある映画批評家ロジャー・エバートがシカゴ・サン・タイムズ紙に書いた『ヴィレッジ』評を引用しよう。エバートはピュリッツァー賞を受賞した唯一の映画批評家で、なおかつラス・メイヤー映画の脚本家でもあり、ゲテモノ映画には理解がある(平成『ガメラ』をいち早く絶賛した人でもある)。

最後についに秘密が暴かれる。このオチを「アンチクライマックス」と呼ぶ人がいるかもしれないが、それは「クライマックス」という言葉への侮辱であるだけでなく、「アンチ」という接頭語にすら失礼だ。この映画の秘密はあまりに安っぽくて「夢オチ」とハシゴ一段ほどしか違わない。あまりにひねりがないので、実際、観客はこのオチを見ると見なかったことにして、映画を巻き戻したくなるだろう。

ついでにもっともっと巻き戻して、巻き戻そう。映画が始まる前、席から逆回転で立ち上がり、後ろ向きで歩いて映画館を出て、エレベーターでキップ売り場に戻って、レジスターからお札が飛び出して財布に戻るまで。


えらい言われようだなあ(笑)。

ちなみにアン・リーの『ハルク』は明らかにトビー・フーパーの『スポンティニアス・コンバッション』から基本プロットを盗用していたのだが、日本の批評家でそれに気づいたのは他には樋口泰人さんだけだった。

まあ、フーパーとか『×××××』観てても威張れないけど、批評家があまりに映画観てないから、こういうカンニングが横行するんだよ。


でも、わかっちゃった人も、それをコメントに書き込まないでください。他の人に悪いので